About us データのじかんとは?
イベント後半は、登壇者3氏によるトークセッションです。トークテーマに沿って、お三方が回答していくスタイルとなっています。ここでは回答をダイジェスト形式で掲載します。
長年日本を支えてきた製造業が、21世紀の日本でどのような方向性に向かっていくべきなのでしょうか。
「十分な教育が受けられない、貧困から抜け出せない、そういう問題を解決したり、何か力になれるようになることが必要です。ものづくりがそのようなことに役立てばうれしいなと思っています」(浜野氏)
「製造業の中で、共に創り共に生きる共創共生という精神が必要ではないかと思っています。浜野さんの考え方に共通するのですが、新しい価値を生み出す力が、これからの社会に必要な力になると思っています。新しい価値を生み出すのは難しいのですが、そこを目指す空間こそがものづくりではないかと。これからの社会にはとても重要なことではないかと思っています」(名取氏)
一方で、現場レベルでは技術の継承という課題が残されています。これについてはどう思われているのでしょうか?
「我が社はデジタル化を進めることで、技術の継承をしやすくする空間を作ってきました。現在は20代の女性が多く活躍する会社となっており、すべて数字で示さなければ納得されないという形になっています。そういう意味では、技術継承がしやすい環境作りを進めてきたと思っています」(名取氏)
「以前のものづくりは職人さんがメインでした。職人さんは技術の囲い込むクセがあった。僕らは旭鉄工さんのように大きな会社ではないので、新しい技術導入やチャレンジをするときに、工場を建てたり設備を投入するということがなかなかできません。そこで、それぞれの分野で活躍されている方たちに技術を持ち寄ってもらって、ひとつのプロダクトを作っているというのがGarage Sumidaがチャレンジしていることですね。それぞれが技術を出し合ってひとつのプロダクトを完成させるということが、ひとつの技術継承になっているのかなと思っています」(浜野氏)
労働者人口の減少が切実な問題となっている日本社会ですが、その中から次世代を切り開く人材を見つけ出すことも必要となります。
「本来の業務とは違うことをやってもらうことかなと思います。弊社では自動車部品を製造していますが、それとは別にアイスクライミングに使用するアイスアックスを社員が作るプロジェクトがありまして。今年はボルダリングフリークライミング世界ランク女性4位の選手のサポートを行っています」(木村氏)
業務とは異なる分野にもチャレンジできる環境を作ることで、そこから新しいアイデア、新しい人材が生まれることもあるようです。
月井精密では、週休3日を実施し、休みのうち1日は勉強に充てるというシステムを導入しているとのこと。
「1日10時間の勤務で週4日。週40時間は仕事をする時間で、勉強をする時間ではないと言っています。勉強は3日の休みのうちの1日でやってくださいと。その代わり展示会や勉強会に行く費用などは当社が負担しています」(名取氏)
浜野製作所では、「自分の力で考えられる人材育成が教育」という位置付けで、教育訓練に関して単位制を導入しているとのこと。
「部署ごとに必須の単位があって、それ以外は選択制です。向島にある置屋さんにお願いして、芸子さんや舞妓さんのトレーニング、見番を見学させてもらうツアーなどもあります。取得した単位はきっちりと評価に繋げることで、自分自身で考えて楽しく仕事ができるようにしていく。それが価値を増やす人を作るひとつの方法かなと思っています」(浜野氏)
各社それぞれ、人材育成に関しては独自の観点で取り組んでいるよう。共通するのは、業務外である程度自由に勉強できる場を設けていることでしょうか。
同業他社、または異業種とのコラボレーションなどが現在ではそれなりに行われていますが、それぞれがライバルでもあるわけです。この境界線はどこにあるのでしょうか。
浜野氏は「下町ボブスレー」を例に挙げました。
「下町ボブスレーは大田区が舞台ですよね。三軒先は同業他社のライバルばかりの大田区で、みんなが協力してひとつのものを作ったということは。非常に価値があります。要は、競争相手が誰なのかをグローバルな視点で考えなければいけないということです。自分たちだけでできることは限りがあるので、足りない技術の面は協力していく。今、どこが競争相手なのかを間違わないことが大切なことだと思います」(浜野氏)
木村氏は「かけ算をしろ」と語ります。
「共創については、サービスの直販を辞めて外注にしました。我々は現場とデータを持っていることが強みなので、まずはそこに経営資金を集中し、営業に関しては得意なところを組むという方針です。競走に関しては、かけ算をしろと言っています。ある分野でトップを取るのは難しいことですが、そこに何かを掛け合わせることで新しい価値を生み出す。うちの場合はIoTのサービスを開発していますが、現場もあり改善の力も持っている。この3つを持っている会社はまずありません。競走をするのではなく、かけ算をすることで競走をしないようにしています」(木村氏)
これまで、ライバルに追いつけ追い越せという精神で発展を遂げてきた日本の製造業。しかし、労働者人口の減少や働き方改革などの影響もあり、従来のやり方ではなかなか成長しづらくなってきています。
そのような中、独自の方法で製造業のあり方に変革をもたらした3人のお話は、これからの製造業だけでなく日本の産業全体にとって参考となるものでした。
GEMBAでは、今後もこのようなイベントを開催していくとのこと。次回はどんな話が聞けるのか、今から楽しみです。
(取材・TEXT・PHOTO:三浦一紀)
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