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「働き方改革」と聞いて、フレックスタイム、テレワークなどを連想する人は多い。

だが本来の働き方改革とは、自社の経営課題の可視化と克服に向け、組織全体のワークスタイルや業務プロセスをドラスティックなまでに変えていく試みに他ならない。株式会社セゾン情報システムズは2年前の危機をきっかけに、一因となった縦割り組織に潜む問題を徹底的に検証。新たな情報共有のためのオフィス空間やBIツールの導入などの改革を進め、2018年3月期決算では前年対比130%超の営業利益を達成するなど、めざましい成長を続けている。そこにどんな努力があったのだろうか。

縦割り組織の弊害を克服するための「新しい働き方の仕組みづくり」が急務

HULFT事業部 事業企画グループ グループ長
金川直貴さん

Fintechプラットフォームソリューション、流通ITサービスソリューション、データ連携プラットフォーム「HULFT」を主たる柱として事業を展開する株式会社セゾン情報システムズ(以下、セゾン情報システムズ)。同社が全社を挙げて改革に取り組むことになったのは、2016年のこと。

ある大型の開発プロジェクトの工期が大幅に延び、多額の損失が生じたことが契機になった。
 同社HULFT事業部 事業企画グループ グループ長 金川直貴さんは振り返る。

「幸い金銭的な損失はそう時間をかけずにリカバリー、経営指標も改善できました。ただ、今回の件を引き起こした原因をどう改善するかが問われました。改善の3つ柱として「技術レベルの向上」「プロジェクトマネジメントの改善・強化」「組織風土改革」の施策を講じていくことになり、その中でも「組織風土改革」を阻害する一因として捉えたのが、縦割り組織の弊害とも言える情報伝達・共有の悪さです」。

本来勢いよく全身を巡るべき血液が、そこかしこで滞留していた。 同社では各事業部が完全に縦割りで独立しており、情報共有がスムーズに行われていなかった。しかも当時のオフィスは部署が階ごとに分かれ、物理的にもコミュニケーションの妨げとなっていた。たとえば営業と開発部隊との連絡などもメールやインスタントメッセージで行うことが多く、そうした不十分なコミュニケーションが積もり積もって冒頭の事態を招いていたと金川さんは明かす。

「この課題を根本から解決するために、移転を含むオフィスの再構築や、事業部の枠を超えた業務連携の仕組みづくりは急務でした。ちょうどそのタイミングで現在の社長(内田和弘氏)が就任し、新しい組織づくりに向けた取り組みが本格的にスタートしたのです」。

社員の声を基に改革。新オフィスへの移転で一気に加速

手始めに行われたのが、内田氏による「one-on-one」(個別面談)だった。

新たな組織をつくるには、現場がどんな課題を抱え、何を望んでいるのかを、経営陣が正確に知らなくてはならない。そこで課長以上のマネージャーとは個別面談、その他の一般社員とは月1~2回のペースでランチミーティングを実施していった。このトップによる面談の試みは、現場の社員の生の声を引き出すのに大いに役立ったという。 改革は組織にも及んだ。これまで3つの事業部ごとにあった経営企画と財務・経理を統合するなど、組織面でも「サイロ化」の懸念がある部署の構造を見直した。これと並行してフレックスタイムの導入や人事制度の大幅な刷新など、働き方の多様性や、より柔軟で効率の良い業務を実現する改革が次々に実施されていった。 こうしたセゾン情報システムズの改革の極めつけが、2017年11月のオフィス移転だ。

執務スペースのほぼ中央にある上下階を結ぶ階段。
効率的に行き来できるだけではなく、情報漏洩のリスク対策にも繋がる。

現在の新しいオフィスは高層オフィスビルの2フロアにわたっているが、各フロアは空間をあえて仕切ることなく広々とした印象だ。

来客者を受け入れるロビーと執務スペースを隔てているのも巨大なガラスで、開放感を妨げない。ロビーにはコーヒーなどを提供するラウンドしたカウンターがあり、いくつかのソファセットが置いてある。まさにカフェのようなくつろいだ雰囲気だ。 注目は執務スペースのほぼ中央にある上下階を結ぶ階段だ。この階段は元からあったわけではない。

驚いたことに、移転に際して床をぶち抜き改造したものだ。かなりの費用を要したというが、狙いは旧オフィスで問題となっていた、オフィスの物理的な分断を避けること。見れば、しきりに階段を行き来している姿がある。社内の連絡が圧倒的に良くなったことは見て取れるが、「コミュニケーションを妨げるものは、床であろうが壁であろうが取り払う」という、改革に賭ける同社の強い意志を感じる。

「上下階の行き来が簡単になったため、ちょっとしたことでもすぐに出向いて対面で会話するようになり、他の事業部との交流が飛躍的に増えました。何か頼みたいことがあっても、お互いに顔見知りなので気軽に話せる空気が広がってきたのは大きな収穫です」(金川さん)。

「人の見える化」と「情報の見える化」が
ビジネスの成長を力強く支える

セゾン情報システムズでは新しいオフィスへの移転を機に、社内のコミュニケーションを加速させるための施策を次々に実行している。その中から代表的なものを見ていきたい。

① フリーアドレス化:決まった席がないからその日の気分でどこでも座れる

従業員は自分の決まった席を持たず、どこでも好きな場所で仕事ができる。デスクにはいくつものタイプがあり、「今日はこのタイプにしよう」と変化が楽しめ、席が固定化しないよう工夫されている。その日たまたま隣合わせた他部署の人と話したのがきっかけで、後日仕事で連携した、といった例も出てきたという。移転前の縦割り組織ではありえなかった社内交流が生まれ、フリーアドレス化は同社の「顔の見える化」に大きく貢献している。なお、書類や個人の所有物は個々のロッカーに収納しているが、ロッカーは容量が限られているため、それまで保管していた書類を整理するきっかけが生まれ、ペーパーレスにもつながっている。

② モバイル環境の強化:いつでもどこでも社内と同じ環境で仕事ができる

HULFT事業部エンタープライズ営業第二グループ
グループ長 中村 慎さん

移転前は社外からのモバイルアクセスの環境が整っておらず、営業担当者がわざわざ戻って仕事をしてまた出かける、ということもしばしばだった。

だが現在は、社外のどこからでも社内とまったく同じように仕事ができるため、飛躍的に生産性が上がったと、HULFT事業部 エンタープライズ営業部 エンタープライズ営業第二グループ グループ長 中村 慎さんは語る。

「ムダな移動がなくなって空き時間を有効活用できるようになり、仕事のしかたがより効率的になってきました。場所を選ばず書類や資料を共有できるだけでなく、Skype for Businessを使って外出先からミーティングや会議にも参加できます」 移動が不要になった時間を使ってお客様への説明資料を作成し、全国の営業担当者で共有するといった“攻めの営業”も可能になり、「営業担当者が自分で考えて、新しいものをつくる力がついてきた」と中村さんは評価する。

③ BI ツールの活用:ビジネスの今を “見える化”して次の一手につなげる

HULFT 事業部では近年、情報発信ツールとしてのBIの必要性を痛感していた。セゾン情報システムズではこの3年ほどの間に、中国、シンガポール、アメリカ、そしてイギリスに拠点を開設し、急速にグローバル化を進めてきた。 「世界中の拠点で、ほぼリアルタイムで売り上げなどの主要な財務指標を確認でき、即座に営業判断や経営判断に活用できるBI の仕組みを構築しようと考え、MotionBoard‎を導入しました」(金川さん)。 MotionBoard は基幹システムをはじめ社内のさまざまなデータソースをクラウド上に収集・統合し、PCだけでなくモバイル端末からでも分析結果を共有できる

MotionBoard によるデータの見える化は、経営陣の評価も高いが、一方で現場の営業担当者にも効率化をもたらしていると中村さんは言う。 「ダッシュボード画面一枚ですべてのデータが見られるため、会議の度にあちこちからデータをかき集めて報告用の資料をつくる作業がなくなりました。その分の時間を、他の重要な仕事に振り向けられるのでとてもありがたいですね」。

新しいオフィスとBIツールで改革は第二章へ

新しいオフィスによって、物理的、心理的な社内の分断が解消し、一方ではBI ツールによってデジタル情報のシェアの仕組みもできあがった。

金川さんは、「社員のコミュニケーションから生まれた成果や情報を、積極的に横展開できる環境が整いつつあります。グローバルの各拠点がお互いの業績を見て、良い意味で競争心を持ってくれるのでは、という期待もあります」と語る。 環境は整った。この先は、社員がそれをいかに活用するかにかかっている。「そのために私たちも、精一杯の知恵を絞っていきたいと考えています。それが今の一番のテーマです」と抱負を語る金川さん。セゾン情報システムズの働き方改革は、すでに次のステージにシフトしているようだ。

お話をお伺いしたDataLovers:
株式会社セゾン情報システムズ HULFT事業部 事業企画グループ グループ長 金川直貴さん(右)
HULFT事業部エンタープライズ営業第二グループ グループ長 中村慎さん(左)

HULFT  1993年より、セゾン情報システムズが提供するFTP、SFTPに代わる企業のファイル連携、データ連携ツール(MFT:Management File Transfer)。

(取材・TEXT:JBPRESS+田口/工藤 PHOTO:一原 真巳)

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