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『オープンデータ・プラットフォームと公民連携シンポジウム』レポート01(レポート02はこちら
実施日時:2017年7月6日14:00~17:00、実施場所:日本マイクロソフト品川本社(東京都港区)、主催:ANNAI株式会社、協賛:日本マイクロソフト株式会社、後援:京都市、一般社団法人オープン&ビッグデータ活用・地方創生推進機構(VLED)、協力:横浜コミュニティデザイン・ラボ、Code for Kanazawa、Code for Kyoto

サステナブル社会を実現するため、オープンイノベーションにまつわる取り組みが日本各地で巻き起こっている。政府もその施策の一つとして、行政・自治体の持つ情報を企業・開発者向けに公開する「オープンデータ推進」を強化し始めた。

官民データ活用推進基本法に基づき、2017年5月30日には「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」が閣議決定。基本法ならびに基本計画では、20年を一つの区切りとして「国民すべてが、IT 利活用やデータの利活用を意識することなくその便益を享受し、真に豊かさを実感できる社会官民データ利活用社会の構築を目指す」という。

この時流を背景に、2017年7月、日本マイクロソフト株式会社の品川本社にて「オープンデータ」の最新動向を共有するシンポジウムが開催された。官民のスピーカー5名から語られた、公共データの活用促進のあり方について2回連続でレポートする。

なぜ今「オープンデータ」なのか? 

内閣官房政府CIO上席補佐官・経済産業省CIO補佐官 平本 健二氏

最大のデータホルダーである行政機関の代表として、最初に登壇したのは、内閣官房政府CIO上席補佐官・経済産業省CIO補佐官である平本 健二氏。平本氏いわく「2008年頃からオープンデータが活用されるようになった」という日本であるが、オープンデータの存在が広く知れわたることとなった契機は東日本大震災だ。震災後の混乱のさなか、国・自治体の保有するデータが広く提供され、民間の企業・開発者たち主導でさまざまなサービス、アプリが開発・リリースされた。

先述のとおり「官民データ活用推進基本法」が施行された今、これからいっそうのオープンデータ利活用が期待されているが、平本氏は自身のセミナー冒頭「オープンデータ2.0——すなわち『とりあえずあるものを出す』状態から、『先にテーマを決めデータ利活用の仕方を考える』という“課題解決型”のオープンデータ新時代がやって来ている」と提言した。

他方で、政府が同時並行的に進めているのが、デジタル・ガバメントの取り組みだ。官民データ活用推進基本計画が発表されたのと同じ日、政府は「デジタル・ガバメント推進方針」を発表。この方針では、サービス、プラットフォーム、ガバナンスといった電子行政に関わるすべてのレイヤーをデジタル社会に対応させる「デジタル・ガバメント」の実現に向け、次の3本の柱(方針)が提示されている。

(1)デジタル技術を徹底活用した利用者中心の行政サービス改革
(2)官民協働を実現するプラットフォーム
(3)価値を生み出す IT ガバナンス

   デジタル・ガバメント推進方針の中で、政府が目指しているのは「オールデジタル」という概念だ。言い換えれば“デジタル・ファースト”の切り口でものごとを見直そうとしており「Fintechやデジタルワークスタイルも、オールデジタルの考えを踏まえながら、行政の側から整理する時期に差し掛かっている」と、平本氏はCIO補佐官としての見解を話した。

地方自治体で進める「オープンイノベーション」

横浜市 最高情報統括責任者補佐監(CIO補佐監)福田 次郎氏

政府のそうした取り組みを受け、地方自治体でも官民データをめぐる動きが活発になっている。地方自治体の動きの事例として、横浜市 最高情報統括責任者補佐監(CIO補佐監)の福田 次郎氏も登壇。

日本の市区町村で人口が最も多い横浜市では、2017年3月に「官民データ活用推進基本条例」を制定。翌4月には副市長(本部長)以下、各局長などで構成されたオープンイノベーション推進本部も設置された。横浜市独自の「官民データ活用推進計画」の策定のほか、「データ活用および企業等との先進的・重要な取り組みについて庁内横断的に推進する会議体」として活動していくという。
「オープンイノベーション推進本部の大きな目的は二つあります。一つはデータマネジメントプロジェクト。これはデータに基づく政策展開のための基盤づくりであり、オープンデータの取り組みの多くがここに含まれます。そして二つ目が、先進的公民連携プロジェクト。先進的で重要な公民連携の検討を図るということであり、特に“公民連携”というところが大きなポイントです」(福田氏)

“オープンイノベーション推進”の実現に向けた公民連携の手法として福田氏は、海外で普及する「ソーシャルインパクトボンド(SIB)構想」の導入、さらには、新たな事業やビジネスを創発するプラットフォーム「リビングラボ計画」などの「場づくりにも注力していきたい」と、横浜市の先々の展望を解説した。

オープンイノベーションのハブとな
官民共同の「データポータル」とは?

京都市 総合企画局情報化推進室統計解析担当 井上 景介氏

オープンデータ推進で大きな障壁となるのが「官民のデータ連携」である。先に登壇した平本氏も「いまだデータをどのように活用したいか、そのストーリーができておらず、大きなビジネスにまで直結した事例は少ない」と指摘した。

その解決策ともなる官民共同の「データポータルサイト」のテーマで登壇したのは、京都市 総合企画局情報化推進室統計解析担当の井上 景介氏、そしてANNAI株式会社 代表取締役の紀野 恵氏の2人だ。

京都市オープンデータ推進ガイドライン(骨子)<クリックするとPDFファイルが立ち上がります>

「京都市では,2011~2020年の10年間,「はばたけ未来へ!京プラン」(京都市基本計画)を推進中です。同プランの後半5年間に取り組む具体的な事業などを示した「実施計画第2ステージ」の中でも,オープンデータに関する事項が記されており,2016年9月にはガイドラインを策定。同年11月に京都市オープンデータポータルサイト「KYOTO OPEN DATA」を開設しました」(井上氏)

2017年8月22日現在、同サイトにおけるデータセット数は237、データリソース数は8,000を超える。サイト内では「観光・産業」「文化・芸術」「安心安全・防災」「子育て・教育」「環境・まちづくり」「市政情報」の6領域ごとに、京都市に関係するオープンデータが公開されている。

京都市オープンデータポータルサイト(画像クリックで遷移)

「KYOTO OPEN DATA」には「検索のしやすさ」「プレビュー機能の充実」といった特徴があるが、中でも注目すべきは「データのAPI化」だ。その詳細について、Webシステム開発会社として、エンタープライズ向けCMSのDrupalをベースにつくられたオープンデータ公開支援ソリューション「DKAN」を使い「KYOTO OPEN DATA」の開発を手がけたANNAI株式会社 紀野氏が解説する。

プログラマーがデータを使うときには、PDFやCSVといった形式のままでは使えず、API化しなければいけません。さらにいえば、そのデータをビジネスにまで発展させられる、はたまたソーシャルにもつながる状態にするということが最重要課題です」(紀野氏)

行政/市民/開発者など
すべてのステークホルダーにとって使いやすく

ANNAI株式会社 代表取締役 紀野 恵氏

紀野氏が指摘するとおり、自治体の各部局が保有する多くの“データ”の形式は、PDFやXLSが一般的。これは「オープンデータの5つ星スキーム」における1つ星、2つ星に当たる。オープンデータとして利活用させていくには不十分であり、CSV形式(3つ星)あるいはRDF形式(4つ星)への変換、さらには最高位(5つ星)である「LOD(Linked Open Data)」(ほかのデータとの連係しやすい状態)の構築が求められてくる。これに対しKYOTO OPEN DATAでは「1ページ=1つのLODデータ」という考え方により、データ公開ページの情報(データセットのメタデータ)が、RDFやJSONなどの形式でもデータを出力・提供が可能となっている。

こうしてポータルサイトとしての利便性を高めることにより、
KYOTO OPEN DATAからは、現在地や主要駅周辺から公共施設(保育所・学校・福祉施設など)を検索できる「findfacility」(アプリ提供元: 福野 泰介氏)、京都に点在する石碑・道しるべを巡る「いしぶみアプリ」(アプリ提供元:京なかGOZAN)など、京都という土地の“強み”を生かした数々のアプリが開発・リリースされた。さらには京都大学 工学部情報学科の授業の一環として、KYOTO OPEN DATAを用いたオープンデータ分析「データ分析結果発表会」が行われているといい、今後もさらなる展開が期待されている。

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