About us データのじかんとは?
サステナブル社会を実現するため、オープンイノベーションにまつわる取り組みが日本各地で巻き起こっている。政府もその施策の一つとして、行政・自治体の持つ情報を企業・開発者向けに公開する「オープンデータ推進」を強化し始めた。
官民データ活用推進基本法に基づき、2017年5月30日には「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」が閣議決定。基本法ならびに基本計画では、20年を一つの区切りとして「国民すべてが、IT 利活用やデータの利活用を意識することなくその便益を享受し、真に豊かさを実感できる社会官民データ利活用社会の構築を目指す」という。
この時流を背景に、2017年7月、日本マイクロソフト株式会社の品川本社にて「オープンデータ」の最新動向を共有するシンポジウムが開催された。官民のスピーカー5名から語られた、公共データの活用促進のあり方について2回連続でレポートする。
最大のデータホルダーである行政機関の代表として、最初に登壇したのは、内閣官房政府CIO上席補佐官・経済産業省CIO補佐官である平本 健二氏。平本氏いわく「2008年頃からオープンデータが活用されるようになった」という日本であるが、オープンデータの存在が広く知れわたることとなった契機は東日本大震災だ。震災後の混乱のさなか、国・自治体の保有するデータが広く提供され、民間の企業・開発者たち主導でさまざまなサービス、アプリが開発・リリースされた。
先述のとおり「官民データ活用推進基本法」が施行された今、これからいっそうのオープンデータ利活用が期待されているが、平本氏は自身のセミナー冒頭「オープンデータ2.0——すなわち『とりあえずあるものを出す』状態から、『先にテーマを決めデータ利活用の仕方を考える』という“課題解決型”のオープンデータ新時代がやって来ている」と提言した。
他方で、政府が同時並行的に進めているのが、デジタル・ガバメントの取り組みだ。官民データ活用推進基本計画が発表されたのと同じ日、政府は「デジタル・ガバメント推進方針」を発表。この方針では、サービス、プラットフォーム、ガバナンスといった電子行政に関わるすべてのレイヤーをデジタル社会に対応させる「デジタル・ガバメント」の実現に向け、次の3本の柱(方針)が提示されている。
(1)デジタル技術を徹底活用した利用者中心の行政サービス改革
(2)官民協働を実現するプラットフォーム
(3)価値を生み出す IT ガバナンス
デジタル・ガバメント推進方針の中で、政府が目指しているのは「オールデジタル」という概念だ。言い換えれば“デジタル・ファースト”の切り口でものごとを見直そうとしており「Fintechやデジタルワークスタイルも、オールデジタルの考えを踏まえながら、行政の側から整理する時期に差し掛かっている」と、平本氏はCIO補佐官としての見解を話した。
政府のそうした取り組みを受け、地方自治体でも官民データをめぐる動きが活発になっている。地方自治体の動きの事例として、横浜市 最高情報統括責任者補佐監(CIO補佐監)の福田 次郎氏も登壇。
日本の市区町村で人口が最も多い横浜市では、2017年3月に「官民データ活用推進基本条例」を制定。翌4月には副市長(本部長)以下、各局長などで構成されたオープンイノベーション推進本部も設置された。横浜市独自の「官民データ活用推進計画」の策定のほか、「データ活用および企業等との先進的・重要な取り組みについて庁内横断的に推進する会議体」として活動していくという。
「オープンイノベーション推進本部の大きな目的は二つあります。一つはデータマネジメントプロジェクト。これはデータに基づく政策展開のための基盤づくりであり、オープンデータの取り組みの多くがここに含まれます。そして二つ目が、先進的公民連携プロジェクト。先進的で重要な公民連携の検討を図るということであり、特に“公民連携”というところが大きなポイントです」(福田氏)
“オープンイノベーション推進”の実現に向けた公民連携の手法として福田氏は、海外で普及する「ソーシャルインパクトボンド(SIB)構想」の導入、さらには、新たな事業やビジネスを創発するプラットフォーム「リビングラボ計画」などの「場づくりにも注力していきたい」と、横浜市の先々の展望を解説した。
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