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データで見る:2023年度の運賃改定 関東大手私鉄の中でコスパのいい私鉄はどこだ

         

ビジネスシーンにおいて多様される「可視化」ですが、社会動向やもっと身近な事象を数値として「見える化」しようとする人はそれほど多くないのではないでしょうか。その一例としてぜひ注目していただきたいのが、鉄道会社の「運賃改定」です。

2023年は鉄道会社の各社が運賃改定を実施することを知っていても、数十円単位なのであまり気にならない人もいるかもしれません。ただ、コストを「見える化」することによって全体像が見えるほか、「コスパの良い地域」なども導き出すことができます。また、鉄道会社の考え方が可視化されることで今後の生活設計における重要な情報となるでしょう。

今回は2023年に関東大手私鉄で行われる運賃改定を取り上げます。

2023年度に運賃改定する関東大手私鉄はどこ?

関東大手私鉄(京王、京急、京成、小田急、西武、相鉄、東急、東武、東京メトロ)の中で2023年に運賃改定の実施を決定もしくは予定している鉄道会社は京王、京急、小田急、西武、相鉄、東急、東武、東京メトロです。

実施時期は京王、京急を除く各社が2023年3月、京王、京急は2023年秋頃を予定しています。今回運賃改定を実施しない京成はコロナ禍前の2019年に運賃値上げを実施しました。

気になる運賃改定幅ですが、大きく「一律10円値上げ」か否かに大別できます。

「一律10円値上げ」の鉄道会社は小田急、西武、相鉄、東武、東京メトロです。これらの鉄道会社では全線にわたり普通運賃(大人)が一律10円に上がり、通勤定期券も軒並みアップします。なお通学定期券は据え置きます。

「一律10円値上げでない」鉄道会社は京王、京急、東急です。京急は2023年1月13日に運賃改定の詳細を発表しました。平均改定率は10.8%です。近距離は値上げしますが、41キロ以上は値下げします。京急によると長距離区間を値下げする理由として、新たな需要創出と活性化を目指すとしています。さらに品川~京急川崎、品川~横浜間に関しては、運賃認定後に新たに運賃改定の届け出を予定しています。実施予定運賃(1円単位)は品川~京急川崎間が240円、品川~横浜間が313円となり、10円程度の値上げにとどまっています。初乗り運賃(切符)は京王が130円から140円、京急が140円から150円になります。通勤定期券も上がりますが、家計負担を考慮して通学定期券は据え置きます。

一方、東急は改定後の運賃の詳細が発表されており、改定率は12.9パーセントとなっています。こどもの国線、世田谷線を除く各線の初乗り運賃(1円単位)は126円から140円に、渋谷~横浜間(1円単位)は272円から309円になります。東急も通勤定期券は上がりますが、通学定期券は据え置きます。

ここで2022年に運賃改定をした鉄道会社についても触れておきましょう。小田急は2022年10月1日に特急「ロマンスカー」特急料金の運賃改定に踏み切りました。平均改定率は22.2パーセントにもなり、新宿~相模大野間は420円から500円になりました。

ただし同時に小田急ではMaaSアプリ「EMot」や、EMotオンラインチケット、e-Romancecar、 ロマンスカー@クラブのオンラインサービスで購入した電子特急券に対応した「チケットレス特急料金」を導入。こちらは通常の特急料金よりも全区間一律50円安くなっています。

例外は京成です。この値上がりラッシュの世の中で、何と2022年10月1日に値下げを決行しました。値下げ区間は成田スカイアクセス線(京成高砂~印旛日本医大~成田空港間)で、京成高砂~印旛日本医大間は北総鉄道が値下げする運賃と同額になりました。これにより、京成高砂~千葉ニュータウン中央間の運賃(切符)は780円から720円に減額。ただし成田スカイアクセス線を通る特急「スカイライナー」の運賃は変わりません。

運賃改定の理由も2つに分けられる

「鉄道会社による運賃改定」と聞くとコロナ禍による乗客減少を思い浮かべる読者が多いと思います。確かにコロナ禍もありますが、鉄道会社は来るべき少子高齢化社会への布石も背景にあります。改定理由を知ることにより運輸業界のトレンドを把握でき、値上げの納得感も得られるのではないでしょうか。

2023年の運賃改定の理由も大きく2つに分けられます。

1つ目は「鉄道駅バリアフリー料金制度」を活用した運賃改定です。「鉄道駅バリアフリー料金制度」とは2021年12月に国により創設された制度で、鉄道駅のバリアフリー化促進のために広く薄く利用者に負担をお願いするものです。端的にいうと駅のバリアフリーに特化した運賃改定といえます。

先述した全線一律10円運賃改定の鉄道会社は「鉄道駅バリアフリー料金制度」を活用しています。例えば小田急ですと2022~2025年度に11駅32番線にホームドアを設置し、16駅45番線にホームと車両間の段差・隙間を縮小するために設備を設けます。

2つ目はコロナ禍を背景とした総合的な理由です。東急では運賃改定の理由としてコロナ禍によるテレワークなどの新しい生活様式の定着を挙げています。つまり、コロナ禍以前の利用客数には戻らないと予測しているのです。

一方、東急固有の理由としては以前から安全性・安定性の確保を目的とした「3つの100%」を掲げ、車内防犯カメラや踏切障害物検知装置の完備などの設備投資を積極的に行った点を挙げています。

このように運賃改定といっても鉄道会社によって理由は様々。鉄道会社には利用者を納得させるだけの丁寧な説明が求められます。

コスパがいい駅はどこだ?

それでは運賃改定後のコスパのいい駅はどこでしょうか。ここでは東京メトロを除く各社を比較します。

発駅は「東京方のターミナル駅から10キロ前後・20キロ前後に位置する優等種別が停車する駅」。所要時間を計測する列車は「平日12時台に運行する特別料金が不要な優等種別」とし、改定後の運賃を用いるものとします。なお京王については改定後の詳細な料金表が公開されていないため、予測値(現行運賃×1.1)を算出しました。

10キロ前後地点で最も所要時間のパフォーマンスが良い都内の主要駅は西武池袋線の石神井公園駅です。西武池袋線の主要種別である急行は、石神井公園~池袋間はノンストップであり、池袋駅までの所要時間は10分です。同区間の速達性の要因として石神井公園~練馬間の複々線区間が挙げられます。運賃も220円になり、近くを走る東武東上線よりも割安な点も見逃せません。

一方、同じ西武でも西武新宿線上石神井→西武新宿間(急行)の表定速度は西武池袋線石神井公園→池袋間よりも時速10キロ以上、遅い計算になります。また上石神井駅から西武新宿方面の運賃が上がる点も注意する必要があります。

運賃ですと京王線千歳烏山→新宿が注目に値します。200円前後の運賃で新宿に出られることは確かに魅力的です。実際に、コロナ禍前まで同駅の1日平均乗降人員は増加傾向にありました。2022年3月ダイヤ改正で特急停車駅になり、利便性が大いに高まっています。ちなみに京王は9.9キロ(千歳烏山~新宿)、11.5キロ(仙川~新宿)の運賃は同一です。

反対にコスパが悪い区間は京成本線青砥→京成上野です。この区間はカーブが多く、成田空港へのアクセス特急「スカイライナー」もスピードダウンします。一方、青砥駅からは押上線が分岐し、都営浅草線に直通する点は確認する必要があります。

次に20キロ前後の区間です。所要時間20分を切る区間が京急本線横浜→品川です。同区間の快特の表定速度は時速約70キロにもなります。快特に使われる車両は関東大手私鉄では珍しい特別料金不要な転換クロスシート。最高時速は時速120キロにもなり、韋駄天ぶりを発揮しています。

運賃面ですと相模鉄道本線さがみ野→横浜の293円が目立ちます。ただし同駅には特急は停車せず、快速は西谷まで各駅に止まります。相鉄は2023年3月に相鉄新横浜線(西谷~新横浜)が開業し、新横浜駅・日吉駅を経由し、東急東横線・目黒線に乗り入れます。これにより、相鉄線の価値がますます高まります。

ちなみに東京方ターミナル駅から20キロ圏内にある主要優等列車が止まる主要駅の中で、注目したい坪単価が割安な駅は京急の神奈川新町駅です。「ウチノカチ」によりますと神奈川新町駅周辺の坪単価は102万円です。

神奈川新町駅は特急停車駅で、東京・横浜のどちらにもアクセス至便です。京急は2022年11月下旬にダイヤ改正を実施し、特急を大幅に増やすダイヤに。そのため神奈川新町駅の乗車チャンスが増えました。

勘のいい方ならお気づきかもしれませんが、近年のダイヤ改正では全駅とは言わなくても「コスパのいい主要駅」に配慮したダイヤ改正が目立ちます。今後もコロナ禍による社会情勢の変化により、大幅なダイヤ改正が行われる可能性があります。引っ越し時は運賃改定もにらみながら、各社が発表するダイヤ改正に関するニュースリリースにも目を通してはいかがでしょうか。

今回の調査により運賃改定の実態を把握できただけでなく、ダイヤ改正の狙いも見通すことができました。このようにデータを読み解くことにより、鉄道会社の今後の狙いを予想することができるでしょう。また住まいだけでなく出店の選定の参考にもなります。


図版・著者:新田浩之(にったひろし)
2016年より個人事業主としてライター活動に従事。主に関西の鉄道、中東欧・ロシアについて執筆活動を行う。著書に『関西の私鉄格差』(河出書房新社)がある。


【参考資料】

京王電鉄 京浜急行電鉄 小田急電鉄 西武鉄道 相模鉄道 東急電鉄 東武鉄道 東京メトロ(東京地下鉄)

(TEXT:新田浩之 編集:藤冨啓之)

 
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