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雪が降ったり、はたまた春の陽気になったり、寒暖差の多い季節になりました。前日の暖かさを物差しに、春物をおろして出かけたら、身も凍るような寒さに襲われ即座に後悔する、なんて一日を過ごした人も少なくないのではないでしょうか?

しかし、真冬並みの寒い日でも、街中で時折、半袖姿の観光客を見かけることがあります。

「彼らはなんで大丈夫なんだろう?」

見るだけで体が寒くなるような光景を前に、思わずスマホで調べてしまいました。すると出てきたのは、「欧米人はアジア人に比べて平熱が高い」という説でした。

そのほかにも、体温については「冷えは万病の元」や「体温をあげて免疫力をあげよう」なんて説もよく目にします。

しかし、近年、ビッグデータの活用によって、体温に対する私たちの認識を裏返すような新たな調査結果が見えてきました。

そこで、今回は「意外と知らない体温と健康の関係」について、最新のデータをもとに深掘りしていきます。

日本人とアメリカ人、平熱はそんなに変わらない?

調査の前にまず気になったのが、日本人の平熱ってどのぐらいなんだろう?ということです。 

現在、日本において、体温の基準に用いられているのが、1957年に10歳から50歳までの3094人の日本人を対象に計測を行い、算出された36.89±0.34℃という値です。つまり日本人の平熱の基準は36.5〜37℃程度であるということになります。予想外に高い数値に驚いた人もいるかもしれません。

一方で、調査から60年以上が経ち、日本人の体温がどんどん下がってきているという説もあります。

そこで、2012年に女子大生136人を対象に行われた調査を見てみました。すると、基礎体温平均値は36.11±0.35℃と1957年の結果に比べ若干低めの値が算出されましたが、1日の中でも体温にリズムがあり、日中の体温は概ね平熱の範囲内にあったということでした。

このちょっとした差は、ひょっとすると、体温計の性能の違いなども反映しているのかもしれませんね。

続いて、アメリカ人の平均体温を調べてみると、これまた36.5〜37℃程度ということで日本人とそんなに変わらないということがわかりました。

ではなぜ半袖の観光客をよく見かけるのか?

この問いに対して、有効な説としては筋肉量の違いなどが挙げられていますが、論文などをもとに、きちんと裏付けるデータなどは見つけられませんでした。

しかし、観光大国となりつつある日本において、今後こうした日本人と観光客の体感温度の違いを様々な場面で反映する必要はあるのかもしれませんね。

「平熱が高い=健康」ではない?ビッグデータが明らかにした新たな説

さて、続いては体温と健康の関係について調査していきます。

「冷えは万病の元」なんて言葉をよく耳にします。テレビ番組で「体温を高めれば免疫がつく」、や「体温が高いことで朝起きやすくなったり病気になりにくくなったりする」 なんて言葉を耳にしたことも一度や二度ではありません。

そのため、低体温に対して、なんとなく「体に悪い」というイメージがあります。しかし、「平熱が高い=健康」の等式は科学的に実証できるのでしょうか?

そこで調べてみたところ、ビッグデータをもとに、平熱と人種、健康の関係を調査した研究が2017年に発表されていました。

この研究では、個体差の大きい体温について、その差の要因となっている要素を検証するという調査が行われました。

調査手法としては、アメリカの病院の電子記録などをもとに、ウイルスなどによる感染症にかかっていない患者3万5488人の体温を追跡調査し、データ解析したそうです。

被験者たちの平均年齢は52.9歳。性別の割合は、男性が36%、女性が64%。人種は白人が59%、黒人が16%、ラテンアメリカ系が17%、その他の人種が7.4%だったそう。平均体温は36.6℃だったということです。

まず、この調査では平均体温と時間、季節のサイクルの関係が明らかになりました。

1日(今回の調査では、午前7時〜午後5時までの区間で計測された)の体温のサイクルでは、午前8時の体温がもっとも低く、午後4時にもっとも高くなったそうです。

季節ごとの体温は、夏が低く、冬が体温が高くなる傾向にあったそう。実際、真冬の2月と真夏の7月の平均体温を比べてみると、その差は0.08℃だということです。

また、体温が低くなる因子として最も関連性が高かったものが、加齢でした。その他にも甲状腺機能低下症なども体温の低さに関係していたそうです。

体温が高くなる因子としては、がんや高いBMIが関係していました。つまり、がんにかかっている人や、 肥満の人は、体温が高くなる傾向にあったのです。さらに、黒人女性であることも体温が高い因子の一つでした。

しかし、病気や人種、性別といった様々な因子を合わせても、平熱の個人差のうち、8.2%しか説明できなかったそうです。つまり、体温の個人差の要因のほとんどは、未だに明らかにされませんでした。

一方で、体温の差が予測因子となった要素がありました。それが死亡率です。

この調査において、わずか0.149℃体温が上昇することが、1年死亡率を8.4%上昇させることに繋がっていたのです。

従って、この研究によって、「平熱が高い=健康」という説は裏付けられませんでしたが、「平熱が高い=死亡率が高い」という新しい説が浮上したのです。

なぜ平熱が高いと死亡率が高いのか、その理由については、今回の調査では明らかになりませんでしたので、新たな科学的な課題として注目されそうですね。

体温は自分の状態を知るバロメーターの一つ!

今回、体温について調べてみてわかったことをまとめると、

  • 「欧米人はアジア人に比べて平熱が高い」と言われているが、アメリカ人と日本人の平均体温を見てみるとどちらも36.5〜37℃程度で大きな差はなかった
  • 体温と季節、1日のサイクルは密接に関係している
  • 「冷えは万病の元」と言われているが、病気は体温の低さとそれほど関連性が高くなかった
  • 平熱が高くなると死亡のリスクが高まる

ということが明らかになりました。

こうした調査結果を調べる中で、体温は時間や季節、環境などと呼応しているんだな、と実感しました。

体温について、まだまだわからないことは多いけれど、自分の体の異変を知るためには、重要なバロメーターの一つであることは変わりません。

自分の体温ときちんと向き合って、健康状態を保っていってくださいね。

参考引用論文・サイト
・Harvard Health Publications, Normal Body Temperature : Rethinking the normal human body temperature
・楠原 慶子、女子大学生の基礎体温と日中体温、月経周期との関連性
・Ziad Obermeyer et al., Individual differences in normal body temperature: longitudinal big data analysis of patient records.
欧米人観光客、寒さもなんの おもてなしのヒント

(大藤ヨシヲ)

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