地域の課題解決、RESAS APIを活用したアプリ開発で | データで越境者に寄り添うメディア データのじかん
カテゴリー
キーワード

地域の課題解決、RESAS APIを活用したアプリ開発で

         

地域経済分析システム(以降、RESAS)とは、産業構造や人口動態などの官民ビッグデータを集約し、可視化したシステムのことで、システム内の様々なデータを自由に活用できるようAPIを公開しています。

2018年1月27日、このRESAS APIを活用して開発し、地域における課題解決につながるアプリケーションを競う「第2回 RESASアプリコンテスト」が開催されました。全国からの応募総数319組の中から選ばれたファイナリストの10組が、東京のベルサール六本木グランドコンファレンスセンターに集まり、6名の審査員が「独創性」「完成度」「デザイン性」「地域活性度」を基準に審査を行う最終審査会に臨みました。 RESASが提供するデータは公共セクターだけが活用するものではなく、企業やNPOなど、社会を構成する皆が活用できるものです。

この記事では、コンテストのテーマである「官民ビッグデータ活用と地域創生の今」を明らかにすると同時に、オープンデータ活用の方向性を探りたいと思います。

バリバリのプログラマーでなくてもアプリ開発は可能

最優秀賞に輝いたのは、東京都立川市 たましん地域経済研究所が開発した「TAMA Data Visualization」。

同アプリケーションは、東京都の23区と島嶼部を除く30の市町村からなる多摩地域の様々なデータをWebブラウザー上で可視化するものです。受賞にあたり、多摩信用金庫 経営戦略室 地域経済研究所の中西英一郎氏は、「このアプリ開発のきっかけは、1年前のCode for Tokyoでデータ可視化に関する講演を聞いたことでした。

その時は、プログラミングについては全くの初心者でしたが、コツコツと勉強して、『行ける』と実感できたので、会社の名前で公表することができました。

他の地域でもデータの可視化ができますから、もっとこの取り組みが広まっていけばと思います」とコメントしています。

これに次ぐ優秀賞は、宮崎県都城市 都城高専 情報処理部が開発した「宮崎地方創成シミュレーションゲーム 輝け☆ミライの観光大使」というゲームアプリ。

同アプリは、小学生を対象に、宮崎県の全市町村の中から好きな自治体を選び、新しい店を出すという設定で、その地域の特徴を考えた効果的な活性化施策を考えることがゲームになっています。グループ代表の都城高専 電気情報工学科 原翔耶さんは、「去年も宮崎県から最優秀賞が出たので、(優秀賞という形で)それに続くことができたのがうれしいです。受賞できたのは、このアプリが必要とされているということでもあると思うので、アップデートを続けてより良いものに仕上げたいです」と話していました。

最終選考会で、バリバリのプログラマーがいない2組が最高の評価を得たことは、RESAS APIで誰もが自由に官民ビッグデータをプログラムに取り組むことができることを示しました。

地域の課題解決が開発の動機

最優秀賞と優秀賞、二つの選には漏れた他の8組も含め、ファイナリスト10組のアプリケーションは、いずれもRESASが期待する地域経済の分析や地域の魅力発掘につながるものでした。共通点は、自分たちが住んでいる地域の社会課題の解決を動機として、開発に取り組んだことです。
 「TAMA Data Visualization」の場合、対象となった多摩地域は全体で420万人の人口を抱えるものの、30の自治体はそれぞれが小さく、自治体単位では解決できない地域の課題を広域連携で解決できるのではないかと考えたそうです。
「宮崎地方創成シミュレーションゲーム 輝け☆ミライの観光大使」の場合も、個人的な体験が開発動機となりました。原さん自身が小学生の頃、宮崎のことを県外の人に質問された時、うまく魅力を伝えられなかったことがありました。この体験を基に、小学生の頃から宮崎県の魅力を知り、その良さを伝えられる人が増えれば、地域が活性化するのではないかと考えたそうです。
アプリのコンテストでよくあるのは、技術的にすごくても、誰が使うかの観点がスッポリと抜けていることでしょう。けれども、「TAMA Data Visualization」は地域のデータをもっと見たいと考える行政、民間事業者、市民、「宮崎地方創成シミュレーションゲーム 輝け☆ミライの観光大使」は小学生と、それぞれのターゲットユーザーは明確でした。

他の地域にも可能な展開

さらに、最優秀賞と優秀賞に共通していたのは、これから様々な人に使ってもらい、改善を重ねる中で、他の地域にも展開が可能という将来性を感じさせたことがあります。「TAMA Data Visualization」の場合は多摩地域でしたが、両毛地域のように二つの県をまたがる地域にも応用可能ですし、「宮崎地方創成シミュレーションゲーム 輝け☆ミライの観光大使」の場合は、全国の高専に呼びかけ、他の県でも同様のアプリケーションを作ることもできるでしょう。

いわゆる「横展開」のために参考になるのは、IPAが策定を進める「共通語彙基盤」です。個々の単語についての表記、意味、データ構造が統一されていなくては、分野を超えた情報交換はできません。

さらに、コンテストの基調講演に登壇したjig.jp 代表取締役社長 福野泰介氏が紹介する「5つ星オープンデータ」の考え方も参考になります。これは、WWWの始祖の一人である英Tim Berners-Lee氏が提唱したモデルで、オープンデータの公開度を5段階で評価したものです。福野氏は、「オープンデータを広めるためには、地域の中だけで採用している独自形式は障害になります。ある地域の中でしか使えないのはもったいないことですよね。地域で作ったいいものを横展開するには、世界中で使える標準形式としての5つ星オープンデータの普及が重要になります」と話したことが印象的でした。

熱意を大切に継続的な改善を

コード・フォー・ジャパン 代表理事 関治之氏は、全体講評で「どの組の作品の完成度も高く、特に若い人たちの発表にやりたいことに対する熱意を感じました。最優秀賞と優秀賞は、あくまでも現時点での評価です。今後もいろんな人と対話して改善を続け、その先の地域での価値創出のきっかけにしてほしいと思います。引いては、日本がデータドリブンな施策を展開する国になればといいと思います」と参加者全員にエールを送りました。

 
×

メルマガ登録をしていただくと、記事やイベントなどの最新情報をお届けいたします。


データ活用 Data utilization テクノロジー technology 社会 society ビジネス business ライフ life 特集 Special feature

関連記事Related article

書評記事Book-review

データのじかん公式InstagramInstagram

データのじかん公式Instagram

30秒で理解!インフォグラフィックや動画で解説!フォローして『1日1記事』インプットしよう!

おすすめ記事Recommended articles

掲載特集

デジタル・DX・データにまつわる4コマ劇場『タイムくん』 デジタル・DX・データにまつわる4コマ劇場『タイムくん』 データのじかんをもっと詳しくデータのじかんフィーチャーズ データのじかんをもっと詳しく データのじかんフィーチャーズ 「47都道府県47色のDXの在り方」を訪ねる『Local DX Lab』 「47都道府県47色のDXの在り方」を訪ねる『Local DX Lab』 DXの1次情報をを世界から『World DX Journal』 DXの1次情報をを世界から 『World DX Journal』 データで越境するあなたへおすすめの『ブックレビュー』 データで越境するあなたへおすすめの 『ブックレビュー』 BIツールユーザーによる、BIツールユーザーのための、BIツールのトリセツ BIツールユーザーによる、BIツールユーザーのための、BIツールのトリセツ CIOの履歴書 by 一般社団法人CIOシェアリング協議会 CIOの履歴書 by 一般社団法人CIOシェアリング協議会 なぜ、日本企業のIT化が進まないのか――日本のSI構造から考える なぜ、日本企業のIT化が進まないのか――日本のSI構造から考える 日本ビジネスの血流である帳票のトレンドを徹底解説 日本ビジネスの血流である帳票のトレンドを徹底解説 データを武器にした課題解決家「柏木吉基」のあなたの組織がデータを活かせていないワケ データを武器にした課題解決家「柏木吉基」のあなたの組織がデータを活かせていないワケ BI(ビジネスインテリジェンス)のトリセツ BI(ビジネスインテリジェンス)のトリセツ 入社1年目に知っておきたい差が付くKPIマネジメント 入社1年目に知っておきたい 差が付くKPIマネジメント CIOLounge矢島氏が紐解くトップランナーたちのDXの“ホンネ” CIOLounge矢島氏が紐解く トップランナーたちのDXの“ホンネ” データのじかん Resources越境者のためのお役立ち資料集 データのじかん Resources 越境者のためのお役立ち資料集 AI実装の現在地点-トップITベンダーの捉え方 AI実装の現在地点-トップITベンダーの捉え方 データでビジネス、ライフを変える、面白くするDATA LOVERS データでビジネス、ライフを変える、 面白くするDATA LOVERS データマネジメント・ラジオ by データ横丁 データマネジメント・ラジオ by データ横丁 データのじかんNews データのじかんNews データ・情報は生もの!『DX Namamono information』 データ・情報は生もの! 『DX Namamono information』 ちょびっとラビット耳よりラピッドニュース ちょびっとラビット耳よりラピッドニュース AI事務員宮西さん(データ組織立ち上げ編) AI事務員宮西さん(データ組織立ち上げ編) 藤谷先生と一緒に学ぶ、DXリーダーのための危機管理入門 藤谷先生と一緒に学ぶ、DXリーダーのための危機管理入門 生情報取材班AI時代に逆行?ヒトが体感した「生情報」のみをお届け! 生情報取材班AI時代に逆行?ヒトが体感した「生情報」のみをお届け! データはともだち 〜怖くないよ!by UpdataTV Original データはともだち 〜怖くないよ!by UpdataTV Original データ飯店〜データに携わるモノたちの2.5thプレイス by UpdataTV〜 データ飯店〜データに携わるモノたちの2.5thプレイス by UpdataTV〜 インサイトーク〜データで世界を覗いてみたら〜by WingArc1st + IDEATECH インサイトーク〜データで世界を覗いてみたら〜by WingArc1st + IDEATECH
close close