今「個」としてできることを問う。「Middle of コロナ 〜今、私たちができること〜」リポート | データで越境者に寄り添うメディア データのじかん
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今「個」としてできることを問う。「Middle of コロナ 〜今、私たちができること〜」リポート

         

「データのじかん」は2020年7月15日、無料ウェビナー「Middle of コロナ 〜今、私たちができること〜」を開催。新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延によりこれまで当たり前だった社会活動・組織の在り方が変化する中、私たちが「個」としてできることとは何なのか? それを問うべく、データとヒト、そしてテクノロジーを軸に第一線で活躍するゲストとして、株式会社JX通信社のデータサイエンティスト・松本健太郎氏、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授の前野隆司氏をお迎えした。

Middle of コロナの時代において、私たちができること

ニューノーマル——突如として訪れた新しい時代の波は 社会のこれまでの常識や慣習を根本から見直すことを私たちに迫っています

UPDATAセミナーでは 変化が当たり前となる これからの社会の在り方について考えていきます

ウイングアーク1st株式会社「データのじかん」編集長 野島光太郎

開会と同時に流れたオープニングムービー。それを受けて登場したのは、ウイングアーク1st「データのじかん」編集長の野島光太郎がウェビナーの口火を切った。

「『データのじかん』ではこれまで、データテクノロジーを軸に、役に立つ情報や事例、ソリューション紹介などを提供してきましたが、それだけでよいのかという思いを持ち続けていました。このウェビナーのテーマは、社会・組織・家族を構成する最小単位の『個』です。コロナや集中豪雨など、時代はまさにVUCA(変動・不確実・複雑・曖昧)の時代を迎えていますが、そんな今、私たちは個としてどうあるべきなのか、そして今というこの時代をどう捉えるべきなのか——。それを考えるセッションにしていきたいと思います」

個の時代に養うべき「観察力」と「分析力」

データサイエンティスト・株式会社JX通信社 社長室 マーケティングマネージャー 松本健太郎氏

 その後のセッション1「行動経済学が教えてくれる『今』を生き抜くためのデータの使い方」のゲストは、データサイエンティストの松本健太郎氏。2020年3月から株式会社JX通信社 社長室でマーケティングマネージャーを務めている。

テクノロジーで「今起きていること」を明らかにする報道機関、それがJX通信社だ。報道機関ではあるが、会社の中に記者はいない。同社ではTwitterなどSNSにある情報・データをAI解析しながらリアルタイムで緊急情報を配信する「ニュース速報」を、報道機関およびコンシューマー向けに提供している。

さて、加速する「個」の時代の重要な視座として「正しいデータがあれば万事解決なわけではない」「多くの人が『正確なデータ症候群』に陥っている」と提言する松本氏。「(これからの)意思決定にはデータを『観察する力』、そして『分析する力』が必要である」と話す。

「観察力とは『見る力』のことです。自分の視野の中に入っている(見ている)つもりでも、注意を向けていない物事は見落としてしまいがち。これはヒューリスティックスと呼ばれる現象で、全ての意思決定で脳を働かせることを避ける脳の仕組みによるものです。ある程度の意思決定を『直感的な意思決定(経験則)』に頼ることで、脳を省電力モードで稼働させているのです。このヒューリスティックスがあるため、観察する力は『意識を働かせられる力』とも言えるでしょう。ただ、一人で全てに意識を向けるのは難しい。そのため『見ること』を、一人に依存するのは避けた方がいい」

また、分析力においては「分析=データ集計・統計手法の活用」だと思われがちだが、「そうではない」と松本氏は強調する。

「データ集計・統計手法はあくまで手段に過ぎません。真の分析力とは、『事実——何を知っているか、何を知らないか、何を知らなければならないか』と、『事実が発生した背景・原因・理由を洞察し、何をすべきか考えること』です。事実(ファクト)と憶測(オピニオン)を区別しながら、理解するのがとても肝心です」(松本氏)

以上を踏まえ、松本氏はセッションを次のようにまとめた。

「データがあればよい、は真っ赤な嘘。データだけでは何も分かりません。脳を起こし、意識を向けて事実を発見し、洞察を導き、さらには裏付けを取る。それらを行ってこそデータが役立ちます。いま私たちにできることは、観察力と分析力を磨くことです」(松本氏)

当日には視聴者のratsbane666氏によるグラフィックレコーディングでセミナー内容を振り返る反応も。視覚的にセッションの内容をより理解し易くまとめて頂いております。ぜひご参照ください。

私たちにとっての「幸せな働き方」とは何なのか?

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 教授 前野隆司氏

セッション2「今こそ考えよう。これからを生きる『幸せ』と働き方」のゲストは、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 教授の前野隆司氏。

『幸せのメカニズム』『幸せな職場の経営学』などの著作がある前野氏は近年、共同代表として「みんなで幸せでい続ける経営研究会」を運営している。同会がコロナ拡大後に行った緊急アンケート調査によると「コロナによって働きにくくなった」との声が聞こえる一方で、「幸福度」については、「下がったと感じる人が2割、変わらないと感じる人が4割、上がったと感じる人が4割」だったという。

「最前線で働いている医療関係者の気持ちを考えれば、『幸福度が下がった』という声を無視することは絶対にあってはなりませんが、『幸福度が上がった』という方が4割もいることはとても興味深い結果でした」(前野氏)

7月15日には、慶應義塾大学前野研究室とパーソル総合研究所「はたらく人の幸福学プロジェクト」の成果の発表がされ、はたらく幸せ・不幸せをもたらす7つの要因を特定。誰でも幸福度を測れるツールを公開した。

前野氏は「幸福度の高い社員の創造性は3倍、生産性は31%増、売上は37%増になる」「幸福度の高い従業員は欠勤率も離職率も低い」「予防医学の観点からも、幸せな人は長寿である」「幸福度と年収との相関性はない」などのエビデンスを一つずつ示しながら、コロナ禍で注目度が高まっているウェルビーイング経営の在り方を説いた。

「かねてより言われている『幸せの4因子』は、『やってみよう』(自己実現と成長)、『なんとかなる』(前向きと楽観)、『ありのままに』(独立と自分らしさ)、『ありがとう』(つながりと感謝)で表現できます。さらに、ちょうど今日、慶應義塾大学とパーソル総合研究所による『はたらく人の幸福学プロジェクト』では、『はたらく幸せ・不幸せをもたらす7つの要因』を発表しました」(前野氏)

「今、私たちはコロナ時代を生き抜こうとしていますが、よくよく考えてみれば、縄文時代から現代に至るまで、実にさまざまなことが起きている。人類はずっと『不確定』の中を生き抜いてきたともいえます。これからの時代を乗り越えていくためには、まずは皆さんが幸せになることが第一。働いた先に幸せがあるのではなく、幸せな状態で働けばもっと幸せになれる、と考えていただきたいと思っています」(前野氏)

当日には視聴者のratsbane666氏によるグラフィックレコーディングでセミナー内容を振り返る反応も。視覚的にセッションの内容をより理解し易くまとめて頂いております。ぜひご参照ください。

コロナ時代、組織と個はどう変化するべきか

ウイングアーク1st 執行役員 マーケティング本部 本部長 久我温紀

後半のパートでは、松本氏と前野氏をパネリストとして迎え、ディスカッションを行った。モデレーターは、ウイングアーク1st執行役員 マーケティング本部 本部長の久我温紀が務めた。

——コロナ禍によって私たちを取り巻く環境はどう変わったのでしょうか。

前野 コロナで先の見えない不確定性が増しました。幸せ研究者の立場から申し上げるならば、結局、幸せの条件を満たしている人が『勝ち』なのだと思います。身の回りに多様な知人がいて、創造性があり、楽観的である……といった幸せの条件は、イノベーターの条件(イノベーションをおこす人の条件)にも似ているのです。この条件を備えている人は、時代の変化にも強い。現代社会は二極化が進む格差拡大社会なんて言われますが、これからは幸せな人と不幸せな人の分断が起こっていくのかもしれません。

——変化を起こすイノベーターが、幸せの条件を備えているということはよく分かります。でも、イーロン・マスクやスティーブ・ジョブズって、やりがいのある仕事に携わっているとはいえ、少し“しんどそう”にも見えます。

前野 セッションで紹介した幸せ・不幸せの7因子は「正反対」の関係性ではありません。すなわち「幸せ因子もあるけど、不幸せ因子もある」。幸せ7因子はほとんど満たしてしているけどオーバーワークみたいな人もいる。本当の「幸せ」になるのは、実は大変なことなのです(笑)。

——そういう意味では、今、組織や個はどう変わっていくべきなのでしょうか。

松本 まず、「個」という存在をものすごくざっくり分けると、「世の中を変えるくらいの面白い発明をする人」と「その変化による便益が享受される人」がいると思います。ほとんどの人が後者だと思うのですが、どう変わっていくべきかという観点で言えば、誰でも一度くらいは「変化」というものを経験した方がよい、というのが私の主張です。変化に対して素直な気持ちを持つことが大切なのではないでしょうか。

それを踏まえ、今度は「組織」という観点で言うと、早いタイミングでの変化は「金」になります。よく例えているのですが、変化とは「電車」です。1両目にいるからこそ、2両目以降では見られない景色が見えたり、先に良い景色を眺められる。1両目は多くの利を得られる可能性があります。これは、どんな業界にも同じことがいえると思います。

——「移動手段」そのものを生業としていれば、馬車や鉄道が廃れることはなかった、ともいわれています。今のコロナ禍もそうなのかもしれません。コロナで世界が変化している中で、自分たちの商品の提供が事業目的なのではなく、その先にある「どんな世界・社会にしたいのか」に注力すれば、この大きな変化にも対応できるのではないでしょうか。最後に「未来に向けて」のご意見を教えてください。

松本 人はぼやっとした不確実な未来に対して不安を抱えがちですが、そもそも「未来」なのだから、確実なことなんてあまりない。そう考えると、自分の手でコントロールできないことに時間を使うのはもったいない。確実に分かっていることに関しては、自分でコントロールすべきですが、前野先生の「幸福論」を聞いていて思ったのは、オピニオンの部分(どうなるか分からない部分)は、自分の気持ちをよくする努力をしなければいけないということでした。 

前野 松本さんがいま言ったのは、ネガティブでいるのはもったいないから自分らしく生きようということでもあると思います。その話につなげるのなら、今、世界人類は人類史上最高に健康な状態です。だから後は幸せになるだけです。幸せの要素は解明されてきています。「幸せ」という言葉だけ聞くと敬遠されがちですが、だまされたと思って幸せの要素を試してほしいと思います。そうすれば、現代社会は人類史上、最高に幸せになれます。

約2時間にわたって開催された「Middle of コロナ 〜今、私たちができること〜」には、約900名(申込数)に参加いただいた。大手企業の方や企業の管理職の方の参加も目立ち、「個」と「組織」の新しい在り方を、多くのビジネスパーソンが模索していることが伺えた。

(取材・TEXT:JBPRESS+安田 PHOTO:Inoue Syuhei)

 
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