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特集「CIOの履歴書」 周回遅れからの逆転を一気に進める中外デジタル(前編) 中外製薬 志済聡子氏

当協議会では「CIOの履歴書」と題し、CIOとして活躍されている方々の「CIOに至るまでのキャリア」、「CIOの後のキャリア」について迫りCIOのキャリアについて考察するとともに、読者の皆様に「CIOの魅力」をお伝えできればと考えています。 第7弾となる今回は、中外製薬株式会社で上席執行役員 デジタルトランスフォーメーション統括 デジタルトランスフォーメーションユニット長を務める志済さんにお話を伺いました。 どの業界に行っても、所属している会社を出ても、自分が価値のある人間と見られるようなセルフブランディング、セルフディベロップメントが大切と語る志済さんのこれまでのキャリアや現在のポジションに至った経緯、また、IT責任者やDX統括というポジションの魅力、今後の展望について前編、中編、後編に分けてご紹介いたします。

         

IT責任者に至るまでのキャリアについて

── 事業会社側の立場になりたいというような思いがあって中外製薬さんを選ばれたのか、もしくは中外製薬さんからお声掛けがあって事業会社の中で働くのもいいかなと思われたのかどちらだったのでしょうか。

志済氏:IBMではいくつかの部署を担当しましたが、公共部門での経験が長くなり、そろそろ別のことをやりたいという気持ちがあって本格的に転職を考えて探し始めました。

報酬面で折り合わないのではなく、「会社の中で社長がやりたいと言っているが周囲に対して根回しをする必要があるため、隠れ蓑的にグレードを下げて入社してくれ」というオファーがすごく多かったのです。

それまでも様々なオファーを頂いていましたが、そのほとんどは外資系の同業他社でした。

もちろん会社によって違うところはありますが、ITベンダーであれば基本仕事の中身は一緒だろうと思いました。IBMはITというカテゴリーでは様々な経験できる会社なので、他の会社に行く必要はないとも思っていて、転職するのであればITベンダーではなく他の事業会社であることを条件に探していました。

もう1つ、自社の戦略策定に係るという意味では外資系企業ではなく、日本の事業会社に入ることも選択肢だと考えていました。IBMなどの外資系企業は、全て本国のヘッドクォーターが戦略を決めます。日本IBMは、米国のヘッドが決めた事業戦略に基づいて Go to market 戦略等を立てることが中心です。アカウント関連のエグゼキューションプラン等です。中外製薬に入社してみて、前職と一番異なる点はそこだと感じています。

── 色々な方にインタビューさせて頂く中で、日本の企業に貢献したいという考え方をお持ちの方がすごく多い一方で、大半の方が外資系企業で力をつけている印象で、日系企業の中で育ってきて本当に活躍できる、組織を変革できるCIOになられた方が少ないと思っているのですが、外資系企業あるいはベンダー系企業のどういった経験がCIOとして活躍する上でポイントと思われるかお伺いさせてください。

志済氏:歴史的に、長年システム開発、保守、運用といった縁の下の力持ち的な役割を務めてきた情報システム部門出身者が、ITによる会社の大変革を担うCIOに抜擢される例は少ないかもしれません。そのためDXを本格的に進める会社が外部からIT担当あるいはDX担当の役員を招聘するケースは多くなっていると思います。

ITベンダーでの経験は、ITのプロ役員という意味で経営への貢献もできると思いますし、プロジェクト、あるいはベンダーのマネジメントにおいても手腕が発揮できると思います。

外資出身の良さという観点では、曖昧さを排除し、物事を常にロジカルに進めるスタイルや、パフォーマンスを上げるための戦略立案力や、客観的に数値化してデジタルに目標設定を考える訓練を受けているところですかね。

また、私はベンダーの営業として、お客様のCIOの方に対してさまざまな提案をさせて頂いてきました。優れたCIOの方たちに巡り合うことができて、どんな視点でITを捉えていらっしゃるか、どうやって戦略的にITを使われるかを見ていたので、自分がその立場になったときに、そういう方たちから学んだことはヒントになっています。

── 北海道大学新渡戸カレッジフェローや経済同友会の活動等、中外製薬以外でも様々な活動をされていらっしゃいますが、中外製薬に転職される前から行っていた活動でしょうか?

志済氏:ほとんどIBM時代から続いている活動です。北海道大学の新渡戸カレッジフェローは、2014年から務めています。

スーパーグローバル校に指定された北海道大学が未来のグローバル人材育成を目指し「新渡戸カレッジ」を開校し、そこにOBOGがフェローとして学生との対話や、ゼミ等に講師として参加しています。私は北海道大学のOGで、同窓会からの推薦により活動しています。また、内閣サイバーセキュリティの専門調査会委員についても、IBMでセキュリティ事業本部長を務めていた際に内閣府から招聘され継続しています。

中外製薬に転職後は、経団連の「Society5.0における新たなガバナンスモデル検討会」の委員、北海道北広島市のCIO補佐官、2022年4月にパナソニックコネクト社の社外取締役に就任しました。

もともとは社外の人脈を広げる活動はあまり得意ではありませんでしたが、同窓会や委員会などお声がけいただいて入ってみると、仕事だけでは得られない知見を得て視座を上げていくこと、自分と全く異なる立場や仕事の方と人脈を作っていくということはとても重要だなと感じています。

お話を伺ったCIO:志済聡子氏のプロフィール

志済 聡子(しさい・さとこ)氏
中外製薬株式会社 上席執行役員 デジタルトランスフォーメーション統括 デジタルトランスフォーメーションユニット長
パナソニックコネクト株式会社 社外取締役
北海道大学 新渡戸カレッジフェロー
内閣サイバーセキュリティ戦略本部 専門調査会委員
北海道北広島市 CIO補佐官
経団連 Society5.0時代のデジタル・ガバナンス検討会 委員

 
 

1986年に北海道大学を卒業後、日本IBMに入社。官公庁システム事業部第二営業部長、ソフトウェア事業 公共ソフトウェア営業担当(部長職)や理事 インダストリーソフトウェア事業部長などを歴任後、2009年から同社執行役員として公共やセキュリティ事業を担当。2019年5月に中外製薬にキャリアチェンジし、執行役員 IT統轄部門長に就任。2019年10月に執行役員 デジタル・IT統轄部門長、2022年1月に執行役員 デジタルトランスフォーメーションユニット長を経て、2022年4月より現職。


聞き手:坂本俊輔
CIOシェアリング協議会 副代表理事、GPTech 代表取締役社長、元政府CIO補佐官


大手SIerでの業務従事ののち、ITコンサルティングファームの役員を経て、2010年にCIOアウトソーシングを提供する株式会社グローバル・パートナーズ・テクノロジーを設立。以降、一貫してユーザ企業のIT体制強化の活動に従事している。2017年からは政府CIO補佐官を兼業で務めた他、IT政策担当大臣補佐官や株式会社カーチスホールディングスのCIOなども務めた。

 
 

本記事は「一般社団法人CIOシェアリング協議会」に掲載された「CIOの履歴書」のコンテンツを許可を得て掲載しています。(インタビュー実施日 2021年5月7日)

 

 

 
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