攻めのDXと守りのDX
両者の違い、ハードル、実践の流れを解説

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、データやデジタル技術を活用して企業のビジネスモデル、業務、プロセス、組織などを改めること。このDXを成し遂げる上で、攻めと守りに分解されることはご存知でしょうか? 攻めのDXと守りのDXにおける両者の違い、ハードル、実践の流れを解説します。

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デジタルトランスフォーメーション(DX)の分類

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、データやデジタル技術を活用して企業のビジネスモデル、業務、プロセス、組織などを改めることです。

DXの場合、従来の慣習や常識にとらわれないドラスティックな取り組みを必要とするため、多くの企業は単なる“改め”ではなく、経営戦略上の“変革”や“改革”として取り組んでいます。

そんなDXも企業にとっての関心から実践の段階へと突入し始めています。

最近では、企業がDXに取り組みやすくするよう「守りのDX」や「攻めのDX」で分類し、DXのスタイル、テーマ、内容を明確化したり、フレームワークを定義したりする動きが進んでいます。

“攻めDX”と“守りのDX”の違い

引用元:「日本企業のデジタル化への取り組みに関するアンケート調査」結果速報 | NTTデータ経営研究所

「日本企業のデジタル化への取り組みに関するアンケート調査」実施した株式会社NTTデータ研究所は、「取り組みテーマ」という設問で以下を選択肢とし、A~Cまでを「攻めのDX」、D~Fまでを「守りのDX」に区分けしています。

  • A:ビジネスモデルの抜根的変革
  • B:顧客接点の抜根的改革
  • C:既存の商品・サービスの高度化や提供価値向上
  • D:業務プロセスの抜根的な改革・再設計
  • E:経営データ可視化によるスピード経営・的確な意思決定
  • F:業務処理の効率化・省力化

「攻めのDX」と「守りのDX」との大きな違いは、DX実践のターゲットにあり、「攻めのDX」は「ステークホルダー」、「守りのDX」は「自社」に向けた改革・変革にしている点にあります。

その次の違いは目的であり、「攻めのDX」は「競争力強化」、「守りのDX」は「業務効率化」としています。

難易度はDXの影響対象の大きさに依存することになりますので、必然的に「攻めのDX」の方が達成は困難になります。

守りのDXとは

「守りのDX」は自社に向けた変革であり、難易度を易しい順に並べた場合、以下の実現が到達点になります。

  • ・業務処理の効率化・省力化
  • ・業務プロセスの抜本的な改革・再設計
  • ・経営データの可視化におるスピード経営・的確な意思決定

これらはまず、デジタル化やデータが活用できる環境を整えることが必要不可欠で、デジタイゼーションに取り組む必要があります。

デジタイゼーションとは、紙の帳票を電子化したり、データの集計を自動で行ったりする“デジタル化”ことです。

様々な情報がデジタル化されることで検索・集計・分析が人手からITツールやデータ基盤に代替され、効率や生産性が向上するようになります。

その次に、

  • ・デジタル技術の活用を目的としたデジタライゼーション
  • ・企業内のデータ活用を円滑化するデータオプス
  • ・データに基づき、企画立案や経営戦略などを判断し、行動に移すデータドリブン

に取り組むのが一般的な守りのDXの流れになります。

攻めのDXとは

一方、「攻めのDX」は顧客やステークホルダーなど外側に向けた変革であり、難易度を易しい順に並べた場合の到達点は以下になります。

  • ・既存の商品・サービスの高度化や提供価値向上
  • ・顧客接点の抜根的改革
  • ・ビジネスモデルの抜根的変革

これらはSFA(営業支援)やCRM(顧客関係管理)やMA(マーケティング自動化)といったデータを活用するITツールやシステムを駆使し、顧客や市場のニーズを見出しつつ、販路や集客を拡大させ売上や企業価値を高めていきます。

最終的にはまだ世の中にない製品やサービスを生み出し、それらをビジネスにすること、できるようにすることが到達点になりますが、それには企業全体のインテリジェンス化やイノベーションが起こせる士気の向上なども必要になります。

「攻めのDX」は、デジタイゼーションはもちろん、高度なデータ活用が浸透していなければ実践は困難です。

そのため、現状、多くの企業は難易度が易しく、また「攻めのDX」の土台にもなる「守りのDX」に注力しています。

DXは変革、その手段であるITにも”攻め”と”守り”がある

出典:バイモーダルSIビジネスのすすめ | ネットコマース株式会社

DXは目的であるため、それを達成させるには、手段を必要とします。
それには、”攻め”と”守り”を使い分けた手段であるITへの投資が必要不可欠です。
具体的にはツールやシステムを始めるとするITの導入なのですが、DXに“攻め”と“守り”があるようにIT投資にも“攻め”と“守り”があり、電子情報技術産業協会(JEITA)が集計したアンケート結果では、理由や用途で以下のように分類しています。

攻めのIT投資

  • ‐市場や顧客の変化への迅速な対応
  • ‐新たな技術・製品・サービスの利用
  • ‐ITを活用したビジネスモデルの変革
  • ‐ITによる製品・サービスの開発強化
  • ‐ITによる顧客行動・市場分析の強化
  • ‐事業内容・製品ライン拡大への対応

守りのIT投資

  • ‐定期的なシステムの更新
  • ‐未IT化業務プロセスのIT化
  • ‐ITによる業務効率化・コスト削減
  • ‐会社規模拡大への対応
  • ‐法規制対応
  • ‐売上増加への対応

出典:0116.pdf(jeita.or.jp)

またIT調査会社のガートナー社は、情報システムをモード1=守り、モード2=攻めで区分し、両者の共存・連携であるバイモーダルの必要性を提唱しています。

  • ・モード1:効率化によってコストを削減するERP、SCM、販売管理など
  • ・モード2:差別化によって利益を拡大するCRM、MA、ECなど

他にも2011年に「キャズム」の著者、Geoffrey A. Mooreが出版した「Systems of Engagement and The Future of Enterprise IT」では、システムをSoR(System of Record )=守り、SoE(Systems of Engagement)=攻めで大別しています。

  • ・SoR:記録処理や信頼性を重視する基幹系システム
  • ・SoE:処理速度や利便性を重視した企業と顧客との繋がりを実現するシステム

出典:Blue-GMoore-future-enterpriseIT(icon-uk.net)

DXの攻めと守りとの間のハードル

株式会社NTTデータ研究所による「日本企業のデジタル化への取り組みに関するアンケート調査」の「テーマ別の取り組み状況」で「取り組んでいる」と回答した企業の比率は、

  • ・業務処理の効率化・省力化(守り):84.0%
  • ・業務プロセスの抜根的な改革・再設計(守り):61.1%
  • ・経営データ可視化によるスピード経営・的確な意思決定(守り):36.1%
  • ・既存の商品・サービスの高度化や提供価値の向上(攻め):34.4%
  • ・顧客接点の抜根的改革(攻め):29.9%
  • ・ビジネスモデルの抜根的改革(攻め):24.7%

であり、現状、守りのDXへの取り組みが中心となっています。

引用元:「日本企業のデジタル化への取り組みに関するアンケート調査」結果速報~日本企業のDXへの取り組み実態、成功企業の特徴について~ | NTTデータ経営研究所(nttdata-strategy.com)

上位2テーマはITツールを導入し、それに沿う、即ち、データやツールが人や組織を動かすので、ある程度、自然に無理なくDXが推進されます。

それ以下、特に攻めのDXの3テーマでは、最適な分析、判断、決断、行動の選択肢を導き出さなければなりません。

これには人や組織がアクティブにデータと向き合わなければ、到底、実践はできません。

守りのDXと攻めのDXとの間の障壁は、データに対しての受身な姿勢や人や組織の能動性の欠落にあると言えます。

攻めのDXを実践するには?

組織体制・人材の強化

情報戦略を真に理解し、企業全体をけん引できるCIO・CDOの設置、データ活用の民主化を担うデータサイエンティストの育成といった組織力や人材の強化が守りのDXの早期成熟に繋がります。

守りのDXの成熟化

「攻めのDX」の中心となるテーマは、既存の商品・サービスの高度化や提供価値、顧客接点の向上・改革などですが、これらを実現するには源泉となる“データ”が必要不可欠です。

例えば、顧客に提供している製品、サービスの状況がデータ化されていれば、ライフサイクルを知ることができ、アフターサービスを創作することでサービス型のビジネスが展開できるようになります。

これには守りのDXを成熟させ、蓄積したデータが活用できる状況にする必要があります。

小さな失敗の許容

「攻めのDX」はドラスティックな取り組みのため、完全な成功を前提とすることはナンセンスで、それ相応のリスクは覚悟しなければなりません。

失敗で課されるペナルティの厳しさに恐れ、担当者や組織が躊躇してしまうことが攻めのDXの障壁になってしまっている組織も少なくはありません。

またDXの攻めへは守りと違い、全社一斉にシフトする必要はありません。

取り組みの対象や規模を限定し、トライアルという位置づけで“小さな失敗”を許容し、それを積み重ねることで多くの企業は、攻めのDXへの活路が見出しています。

成功事例の体験

「小さな失敗」の積み重ねが企業のバネとなり、「成功」へと繋がるようになります。

企業がこういった成功を体験すると、従業員のモチベーションや組織の士気の向上し、また外部やステークホルダーからも注目されるようになります。

成功事例のプロセスやアプローチは、派生や応用が利くケースが多く、これらを有効活用する上でも、デジタル化とデータ活用は非常に重要な役割を担ってくれます。

まとめ

今回は攻めと守りのDXついて紹介させて頂きましたが、両者の違い、そして守りと攻めとの間のハードルについてご理解頂けたでしょうか?

それでは最後に今回紹介させて頂いた要約をまとめとして、以下に記載させて頂きます。

  • デジタルトランスフォーメーションは関心から実践への段階に突入し、細分化やフレームワーク化が進んでいる。
  • 「守りのDX」と「攻めのDX」との違いは以下
     ・「守りのDX」の影響対象は「自社」で目的は「業務効率化」
     ・「攻めのDX」の影響対象は「顧客・ステークホルダー」で目的は「競争力強化」
  • DXに守りと攻めがあるように、IT投資にも守りと攻めがあり、ガートナー社の提唱やGeoffrey A. Mooreのホワイトペーパーとの区分では以下の関係で紐づいている。
     ・守りのIT投資:モード1、SoR
     ・攻めのIT投資:モード2、SoE
  • データに対しての受身な姿勢や人や組織の受動さが障壁で、守りから攻めのDXへのシフトが阻まれているケースが多い。

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