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フィンランド発のテックイベント「Slush Tokyo」が東京ビッグサイトで2018年3月29日・30日の2日間に渡って開催された。データのじかんも現地へ駆けつけ取材を行った。

複数のステージやブースが並ぶ会場を歩くと、予想通りIoT、AR、VR、AIなどをテーマにしたものが多かったが、ブロックチェーンや仮想通貨(または暗号通貨)をテーマとしたものも数多く見受けられ、技術者にとってブロックチェーンというテクノロジーがいかに魅力的かつ画期的なものなのかを裏付けているような印象を受けた。

ブロックチェーン 、仮想通貨、というと多くの人が「ビットコイン」を連想するかも知れないが、実際、仮想通貨はビットコイン以外にも数多く存在する。仮想通貨取引所コインチェックから仮想通貨の1つであるNEMが大量に盗まれたことは大きなニュースとなったが、それ以外にも、イーサリアムやライトコインなどの仮想通貨がよく知られている。その中の1つにリップル社が開発したXRPという通貨がある。仮想通貨に馴染みのない方にはそれほど知名度は高くないかも知れないが、ビットコイン、イーサリアムに次いで、時価総額3位の仮想通貨だ(2018年3月現在)。

Slush Tokyo 2018にはリップル社でCTOを勤めるステファン・トーマス(Stefan Thomas)氏を始め、リップル社の他のメンバーも多く参加していた。中でも、リップル社の暗号技術責任者(Chief Cryptographer)デイヴィッド・シュワーツ(David Schwartz)氏(通称Joel Katz)が行なった「価値のインターネット (Internet of Value)」と題されたXRPに関するプレゼンは熱のあるもので、非常に興味深い内容となっていたので、その内容を紹介したい。

リップル社の野望とその仕組み

 

 

「価値のインターネット (Internet of Value)」について今日はお話しようと思います。簡単に言うと、インターネット上で情報を移動させるのと同じくらい簡単にお金を移動させる能力のことです。今日の世の中では、メールや写真や動画を世界中どこへでも送ることが可能です。それがどこからやってきたかなんてあなたはいちいち考えないでしょう。ロケーションはもはや関係ないのです。ですが、お金のやり取りが必要な場合、話は別です。その場合は、ロケーションが全てといっても過言ではないでしょう。国外への送金方法は、国内のものと全く異なります。支払方法がたくさんありすぎて、システムを越えた支払いをすることができない場合も多々あります。こんな状況をブロックチェーンで変える、というのが我々のゴールです。

現状では、ブロックチェーンには全ての活用方法に対して1つの設計しかありません。ブロックチェーンがあり、それに対するトークンがあります。テクノロジーが発達するに伴って、この状況は変わってきます。例えば、かつて「自動車」というと一種類しかありませんでしたが、技術の発達と共に、スピードを重視したスポーツカー、荷物がたくさん積めることを重視したトラックなど、使用用途によって異なる種類の自動車が開発されるようになり、人もそれぞれの用途に沿った車種を選ぶようになりました。仮想通貨も同じように用途に沿った通貨が必要となります。

メール送信と同じくらい簡単な支払いシステムを作りたい

リップル社の暗号技術責任者(Chief Cryptographer)デイヴィッド・シュワーツ(David Schwartz)氏

価値を移動させる、という我々の使用用途の場合、決済、証券、知財、音楽、金融商品など資産価値のあるものを移動させる全てが含まれます。これらの使用用途は大抵の場合、支払いを必要とします。証券の取引をする場合、誰かが証券を売り、誰かが証券を買うことで成立するわけです。お金を誰かに貸す場合でも、貸す人は借りる人になんらかの手段を通じてお金を渡す必要があります。お金の動きを考える時、その根本にある支払いは全ての使用用途に関連してきます。そこでリップル社は、根本にある支払いの際に生じる問題をブロックチェーン技術を使うことで解決することに焦点を当てました。

我々のチームは、この業界での経験が豊富な数多くの技術者、規制関連を扱う人、コンプライアンス、マーケティングなど、220名のフルタイム従業員によって構成されています。C++の専門家が多い、というのも特徴の一つです。XRP LedgerはC++で書かれています。価値のインターネットを実現させるために、およそ14人のエンジニアが常にLedgerのセキュリティー、パフォーマンス、機能性の改善を行っています。

リップルのゴールは、情報と同じくらい簡単にお金を移動させるようにすることです。

例えば、ケニアで作られている素敵な商品を目にした時に、支払方法をどうすればいいのか、という問題に悩まされることなく、すんなりと購入することが可能になる、ということです。支払いの過程で発生するその摩擦を消し去りたい、とリップルは考えています。お金をあるところから、別のところへいとも簡単に移動させることができる、そんな世界を実現させたいと考えているのです。

現代の人が支払いに対して欲しい、と思っている機能性は、従来のものと異なっている、ということに我々は気づきました。支払いもグローバル化することが求められているのです。求められているのは、数秒で処理可能なリアルタイム送金です。そしてその確実性です。いつその支払いが行われたかを正確に把握したいと人は考えています。

そしてそれに伴うコストも非常に重要です。経済活動が低コストで実現できる、ということは発展途上国にとって極めて重要な問題です。今ある送金システムでそれは実現していません。その必須条件をクリアできているものは1つもないのです。まったくもってバラバラです。独自のAPIもなければ、他のシステムとの接続もできません。それにエラーも頻繁に起こります。そこで我々はリップルネット(RippleNet)を開発しました。これは、グローバル規模で、他の支払システムにもお金を移動することができる決済システムです。

これに参加しているほとんどは大企業、中小企業、銀行、ペイメントプロバイダー。彼らはネットワークを使った送金を必要としている人たちで、実際に頻繁に送金を行なっています。銀行やペイメントプロバイダーの中にいる人たちが資産との繋がりを持っています。この人たちがお金を保有するLedger(台帳)を運用しているのです。

リップル社が提供している3つのプロダクト:xCurrent, xVia, xRapid

弊社には、3種類からなるプロダクトスイートがあります。

1つはxCurrentで、これは主に支払いを行うために銀行によって使用されています。xRapidはXRPを使用した流動性を提供します。そしてxViaはグローバル送金を可能にしています。xViaはネットワークのどこからでもアクセス可能なリアルタイムな流動性を提供しています。これは世界の支払ネットワークへアクセスする1つのAPIとして機能します。xCurrentは、いわばSWIFTのライバルのような存在です。これはメッセージシステムとして機能し、資産の移動を実行する前に双方向へメッセージを送信します。実際にお金が移動する前に、このトランザクションが成功することを確認するため、お金がプッシュされる前にトランザクションを検証します。従来の支払方法は、宛先に向けてお金をプッシュした後、到着するまでの過程でエラーが発生した場合、お金の追跡が必要となります。xCurrentではその問題は発生しません。全ての情報は事前に開示されており、パスは決定しています。支払いは原子的に実行され、全てのお金が移動するか、全く移動しないか、のいずれかしかないため、支払いの途中でお金が止まってしまうことはありません。

xCurrentを使用している会社は主に銀行で、すでに100社を超えています。xRapidはパイロットフェーズにあり、XRPを通じた流動性を実現させようとしています。これが実現すると、送金と同時にお金が移動し、1度の操作で送金は原子的に完了します。これにより流動性コストを下げることが可能となり、オンデマンドによる流動性へのアクセスが可能となります。これは、少額の支払が大量に発生する場合に特に効力を発揮します。現状のシステムでは、金額の小さい1度の支払に対してかかるコストは割高になりがちです。

xRapidの仕組みを説明しましょう。アメリカの銀行から、メキシコの銀行に送金する場合、米ドルをXRPに両替し、XRPをメキシコペソに両替する必要があります。これをつなぎ合わせて考えると、ここには2回の国内での決済が存在します。送金した人は米ドルで送り、受け取る人はペソで受け取ります。そしてXRPの動きは1回のみです。これにより、送金した瞬間に、受け取れる、というシステムが実現しています。ここでの利点は、コストが高くなりがちな国際的な送金過程が省略できる、ということです。移動したのは仮想通貨のLedger上にあるXRPのみとなっています。XRPの移動はとても迅速で、信頼性の高いものです。

XRPとは何か?

それではXRPとは何でしょう?この決算機能を持ったデジタル資産はどんなものなのでしょうか?全てのデジタル資産が同じというわけではありません。デジタル資産にとって重要なのは、どのように使用されるか、です。つまり、このデジタル資産はこの用途に使われる、という専用の用途があるかどうかで価値が決まります。法定紙幣は政府からその価値を受け、その紙幣の使用を強要します。価値は政府によって決められ、管理されます。デジタル資産には暗号化のアルゴリズムによって支えられています。政府や権威は介入せず、参加者全員によって実行される一式のルールがあるだけです。

ビットコインは「Proof of Work」を使用しています。イーサリアムも「Proof of Work」を以前は使用していましたが、今は「Proof of Stake」を使用するように変更しています。XRPはデジタルの同意アルゴリズムを使用します。これは非中央集権性のアルゴリズムで、トランザクションを実行するためには人による同意が必要となります。これはXRPにビットコインよりも強靭な基盤をもたらします。より多くのトランザクション数に対応することができ、低コストによる実行が可能となり、エネルギーの消費量も抑えることができます。確実性もより短い時間で実現できます。ビットコインに確実性を求めることは実質不可能です。30分から1時間、という枠の中であれば、ほぼ確実、というレベルの確実性であれば可能ですが。XRP Ledgerは数秒で確実性を実現可能です。

XRPのパフォーマンス特性を他の暗号通貨と比較すると、他を圧倒していることがわかるかと思います。その差は歴然としています。実行にかかる時間も数秒、または数分の1秒です。その中でも最も大切なのは、これらの数値が予測可能である、ということです。フィーや時間が激しく上下することはありません。XRPのトランザクションレートを見ると、どれだけ一定になっているかがわかるかと思います。よく見ないと個々のトランザクションが認識できないほどです。そして、トランザクションを確立させる際に、迅速な確実性は非常に重要なものです。

今日までの5年間にXRP Ledgerは3500万件のトランザクションを完了させました。XRPは50以上の取引所で売買されています。

つまりXRPこそが支払手段として使用されるべきデジタル資産だと我々は考えています。XRPを通じて金融機関間がつながっているので、現実の世界での支払いはXRPで可能となるのです。RippleNetは支払いに必要な標準化されたAPIを提供するので、リアルタイムで、確実で、コスト効率のよい送金が可能となります。

グローバルペイメント市場の今後

グローバルペイメントは数兆ドル単位の大きな市場であり、これは大きなチャンスです。現状のインフラは新興企業の需要を満足させていません。ウーバーやアマゾンは現在の決済システムは彼らのニーズにマッチしていない、と考えています。XRPおよびXRP Ledgerはすぐにでも企業向けに導入できるブロックチェーンソリューションです。だからこそ我々は支払方法として使用するデジタル資産の中では、XRPが最も優れていると考えているのです。

テクノロジーの進化と仮想通貨の目指すところ

David Schwartz氏のプレゼンの概要は以上だ。仮想通貨の開発者たち、そして仮想通貨そのものが目指している未来と、投機目的に捉えられがちな仮想通貨の現状とがかなり乖離していることがこれを読めば理解してもらえるかも知れない。かつて手紙だったものがメールになり、大変だった画像のやり取りや動画のやり取りが簡単になり、アプリやプログラムなどもクラウド化、とテクノロジーの進化は常に我々の生活を変えてきた。次は支払いシステムが変わる番なのかも知れない。支払いシステムが根本的に変われば、消費傾向にも確実に変化をもたらすだろう。従来の支払いシステムは銀行の存在を前提としており、そこに手数料が発生することも避けては通れない道だった。それが簡略化され、人々により多くの選択肢がもたらされるとすれば、それは世界にさらなる豊かさをもたらす類の変化なのではないだろうか。

ブロックチェーンや仮想通貨はデータの取り扱いなどにも深く関連してくる可能性のある分野だけに、データのじかんでは今後も注目していきたい。

(データのじかん編集部)

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