先端技術のコモディティ化がモノづくりを加速させた 「自分でもできそう」が実現できる時代のプロダクト開発 | データで越境者に寄り添うメディア データのじかん
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先端技術のコモディティ化がモノづくりを加速させた 「自分でもできそう」が実現できる時代のプロダクト開発

         

2018年11月13日、ANAインターコンチネンタルホテル東京にて「WAF2018(ウイングアークフォーラム2018)東京」が開催されました。ウイングアーク1st株式会社が毎年開催しているこのイベント。2018年度は“データによるエネルギー革命、あなたが変わる、世界を変える”をテーマに、データ活用にまつわるさまざまなセッションが行われました。本記事では、東京会場で行われたセッション「欲しいモノは自分で作る。初期衝動で生まれるもの。実践のすすめ」の後半の模様をお送りします。

エンジニアから農家・薬剤師まで、幅広いコミュニティメンバー

大川真史(以下、大川):発表にもあったように、日本で一番大きい「作りたいな」っていう人が集まるコミュニティを、彼は主催してずっとやっていて。もう3年ですか?

菅原のびすけ(以下、菅原):3年。でも、そろそろ4年経つのかな……くらいですよね。

大川:4年くらい。それでいま、8,000人くらいが「なにか作りたいな」と思っている。来る人はどんな人が多いですか?

菅原:やっぱり幅はありますよね。Web畑もあるし、ハードウェア畑もあるし。と思ったらエンジニアだけじゃなくて、経営者だったりマーケターだったり。本当にいろんな人が来ているなって印象。それこそ農家も薬剤師も(笑)。

(会場笑)

大川:ふつうに来て(笑)。今日はこの終わったあとに、IoTLTの中でとくにおもしろいな、というような人を6、7人くらい集めて、この場でまた同じようにやるので。もしよかったら参加いただきたいと思います。

僕がやっているエンタープライズのほうは、ふつうの会社員の人とかがけっこういらっしゃいます。

ここからお三方に、こちらからいくつか聞きたいことがあるので、ちょっと僕のスライドに切り替えてもらってもいいでしょうか。

日常的に使う開発ツールはなにか

大川:まず小池さんと山口さんは、開発ではふだんなにを使っていますか?

小池誠氏(以下、小池):いろいろあるんですけど、一番コアな部分はAIの開発になるので、それにはGoogleが出しているオープンソースのTensorFlowというソフトウェアを使って開発しています。

大川:TensorFlowはだいたいデファクトですかね、のびすけさん。

菅原:だいたいデファクトでいいと思っています

大川:みんなまぁ、よく使う。

菅原:ですし、たぶん出たタイミングもわりと早めですよね?

小池:そう。2015年には出ていたので。

菅原:調べたときに、よくみんなが「実装した」という記事が出やすいところはありますね。

大川:そういうのを使ったほうが使い勝手もいいし、というのももちろんありますよね。

小池:そうです。いわゆるオープンソースのソフトウェアを使うというのは、やっぱりコミュニティがしっかりしているんで。情報がたくさんWeb上に転がっているっていうのは、非常に助かると言いますか。

大川:うんうん。ありがとうございます。山口さんは何を使うことが多いんですか?

山口洋介(以下、山口):開発で言うなら、もちろんエディターもそうなんですが、環境としてはGoogleプラットフォーム。BigQueryでデータを抜いてくることが多いです。ローカルではDockerで仮想環境を立ち上げて、そこでぐるぐる回しているという感じですかね。

菅原:薬剤師ですよね?(笑)。

(会場笑)

山口:どこを目指しているのかわからないですけども(笑)。

提携業務の確認はチケットドリブンで

大川:(笑)。あともう1点、山口さんは仕事の中でITのツールはどう使っていますか?

山口:ふだんの業務の中では、うちはチケットドリブンに仕事をやっていて。

大川:チケットドリブンってわかりますかね(笑)。「チケット」っていう概念がわかる人ってどのくらいいらっしゃいますか。

(会場挙手)

チケットってどんな概念ですか、のびすけさん。

菅原:なんていうんですかね……付箋かな。

大川:やんなきゃいけないやつが。

山口:ToDoリストを付箋にして、今日やることが終わったら貼り替えていくっていうものです。そちらを薬剤師やアルバイトが見れるようにして管理し、ふだんの薬局業はハンドリングしているという感じになりますね。

大川:要は作業指示みたいなことを口で言ったりする代わりに見てもらうと。

山口:みなさんもご経験があると思うんですけど、「あれやった」「これやった」という作業、とくに定型業務の確認とかって、言われるほうもストレスだし、言うほうもストレスが溜まったりするじゃないですか。そういうのがないようにやっているところです。

大川:薬局なのに、そのチケットという概念を取り入れるって、すごく違和感があるんですけど、自分の中じゃそんなに違和感はないですか?

山口:スタートアップもやっているので。いわゆるスタートアップって、資金調達して……要は窓から飛び降りて地面に激突する前に離脱するようなものじゃないですか(笑)。

(会場笑)

菅原:あー、いい表現(笑)。

山口:そうすると生産性というか、いかに時間を大事に使うかとか、単位時間当たりのものをどう出すか、っていうことにこだわる組織体系になります。そういうことも僕はやっているので、そこの生産性の概念を薬局経営にも使うということです。

「本当に自分でやらないといけない仕事なのか」をちゃんと考える

大川:なるほど。じゃあ気になった別の話を聞きます。話の中でもいくつか出ていたんですけど、そもそも原体験として、こんなに面倒で、いろいろ調べて、エディターインストールして全部やっていかなきゃいけないのを、「なぜやったんですか?」っていうことについて。やり始めたらきっといいんでしょうけど。お二人がなんでこれをやり始めたのか、小池さんから教えてください。

小池:いや、本当に単純に、「忙しかったから」っていうのが一番なんです(笑)。やっぱり農業に限らず「なんでこんなことをやっているんだろう」「こんなに時間をかけてやることなの?」というようなことってあると思うんですよ。

とくに仕分けの仕事って、実は時間をかけてがんばったところで売上が上がるわけでもないし、収量が増えるわけでもないので、できるだけ減らしたい仕事だったっていうのがあるんですね。なので、そういった「これ、本当にやらないといけないの?」というところから、疑問を持ったっていうところがきっかけ(です)。

大川:なるほど、ありがとうございました。何個仕分けしているんでしたっけ?

小池:最終的には3万です。3万6,700。

大川:3万6,000も読み取らせていると、たぶん自分でもわかるようになりますよね。

小池:なりますね(笑)。

(会場笑)

大川:でも、そういう話じゃないんですよね(笑)。そこじゃないんですよね。

小池:たしかに、解説は大変なんですけど(笑)。

大川:いや、素晴らしいなと思って(笑)。

小池:それが、ゆくゆくはもっと楽にしたいっていうこと。

大川:いま楽になるかどうかっていうこともそうですけどね。

小池:そうです。いまの仕事を何年続けていっても、いまのままじゃ恐らくなにも変わらないし、下がっていかないんです。それを少しでも……最初は大変かもしれないんですけど、ゆくゆくはよくなるっていうところを目指して開発しています。

「なんか自分でもできそう」を行動に移しただけ

大川:山口さんはどうですか。山口さん、もともとバックグラウンドってITは……?

山口:ないです。

大川:薬学部なんですか?

山口:そう(笑)。統計をちょっとかじって、そのあとちょっとRを触ったりしていたんですけど。

大川:なぜ薬局でRを触ることになるんですかね。

山口:「満足度を測りたい」というような、ちょっとマニアックな話なんですけど。そもそもなんでやろうかって(思ったのかと言うと)、「プログラミングに対して抵抗感が比較的薄かった」っていうのはあると思います。それから、「楽したい」っていうのも当然あります。

それで、やっぱり目の前の課題があったときに、自分が解決できそうだっていう。確信ではないんですけど、「なんかできそう」「がんばれば解けそう」というような、そういう技術を知っているから。

例えば最初の事例であれば、「機械学習でやったら」っていうの(を考えたの)は、もともとバスケット分析みたいな……レシートを分析したら紙おむつと缶ビールがよく売れている、という話を知っていたので。「それって、なんかできるんじゃない」というような気持ちがあったっていうのも1つ。「楽したい」のと、「できそうだ」と。

大川:それにしたって、最新の技術をすごく調べたりするわけじゃないですか。

山口:まぁ、やりながら勉強をしました。

大川:いまちょうどその話を聞こうと思ったんですけど、いまのに関連して、そもそも農業や薬局を日々やりながらどうやって勉強するのか、さっぱりわからないんです。

(会場笑)

菅原:確かに(笑)。

大川:のびすけさんはそういうのを調べるのがちょっと仕事だったりするじゃないですか。それでも大変じゃないですか。

菅原:そう、確かに。気になりますね。

大川:どうやっているんですか、これ?

小池:いや、本当に……一緒で、やりながら勉強なんですけど。なんだろうなぁ(笑)。

大川:そもそも途中でイヤにならないんですか。「もういいかな」というような。

小池:いまのところ、私は(イヤには)なっていないです。今後ないかはわからないですけど(笑)。

(会場笑)

いまのところは楽しみながら開発していますね。

同じようなことをしている人たちとの関わりがモチベーションの源に

大川:そういえば、「Maker Faire」に出されていますよね。

小池:あ、そうです。私はこういった作ったものを、年に1回「Maker Faire」っていうところに出展していて。

大川:「Maker Faire Tokyo」って、ご存知の方?

(会場挙手)

これはモノづくりをやっている個人の、DIYとかをすごく集めたような、日本で一番大きな祭典がビッグサイトで行われていまして。

菅原:まぁ、「Maker Faireを知っていますか」でいいんじゃないですか(笑)。手を挙げてくれた人は、いま10人もいなかったですけど。

小池:私みたいに個人でモノづくりをやっている人が日本中から集まってくる、という場所があって。そこに出すっていうのは、1つのモチベーションにはなっていますね。そこに行けば同じような仲間がたくさんいるので、情報共有したり。「いまどんな開発しているの?」という話になりますし。そこで自分のやったことを……発表するじゃないですけど、見せて意見をいただくっていうのは、非常に開発の参考にもなりますし。それがモチベーションになっていますね。

大川:山口さんはどうやって勉強したんですか?

山口:やりながら勉強っていうのはもちろんそうなんですけど、それ以前に、技術を知らないと課題が見えないと思って。

大川:あぁ、そっちもあるんですね。

山口:そう。IoTLTはもちろんすごくいいきっかけだったと思うんですが、その前に筑波大のサービス科学の校外講座であったり、専門外のところに飛び込んで知らない言語を仕入れてきて。知らない言葉を調べていくと、意外と自分の仕事につながるっていうのがけっこういままであったので。そういうかたちで技術を知って、できそうだと思ったらやりながらいろいろ調べて、勉強する。そういうかたちが多いですかね。

大川:同じく、面倒くさくなったりイヤになったりしないものなんですか。

山口:うーん……作り始めるときに「なんかできそうだ」っていうのがあるので。そこに対して面倒くさくなるというのは、あまりないですね。

技術のコモディティ化がモノづくりを加速させた

大川:じゃあちょっと、ここから毛色を変えまして。のびすけさんにお聞きしましょう。

(スライドの質問項目:「なぜ、簡単に作れるようになったか?」)

たぶん10年前は、こんなに簡単にモノづくりはできなかったと思うんですよ。ここ数年ですよね。なんで急にできるようになってしまったんですかね。

菅原:プログラミング教育とかの流れでよく言われるんですけど、「技術がコモディティ化してきた」という話があって。例えば僕らがなにかを作ったというときに、同じ課題を考える人とか感じる人、後ろを歩いてくる人って絶対にいるわけですよね。

「オープンソース」という言葉があって……Web業界にはよくあるんですけど、そういう先陣を切って開発していった人たちって、作ったものを周りに公開して、後ろを歩いてくる人たちにも「ぜひ使ってほしい」「同じ過ちを繰り返さないでほしい」というような(笑)。そういう文化があるんです。

それがどんどん加速していった感じだと思っていて、「自分たちが大変だった思いをできるだけ簡略化して後ろの人たちに使ってほしいな」「つらいところは省いて、成功体験をできるだけ残したい」といった流れがあるんじゃないかなっていう気はしますよね。

それがすごく過激化してきたというか(笑)。悪い言い方かもしれないですけど。

大川:「クラウドが流行った」「Webサービスが増えた」という話ではないんですかね。

菅原:メタっぽく言うと、たぶんいまそんな感じなのかなと。細かいところで言うといろんな話があって。その「クラウドが~」っていうのもあるかと思いますね。

3号機のソースコードは公開済み

大川:お二人は実際作っているとき、なにかそういう「データソース共有サービス」みたいな、GitHub的なものやブログを見たりされます?

小池:はい。私は使っています。

大川:なにに使われます?

小池:ネットに出ている情報はいろいろ調べますし、私自身も発信しています。自分のGitHubを持っていて、例えば今回の3号機のソースコードは全部公開しています。

わりとそういった、「オープンにする」っていうところが非常に広がってきたのが大きいかなと。これはソフトウェアだけじゃなくて、いまハードウェアのほうも、デジタルファブリケーションでいろんなデータが公開されていまして。私が使っている3Dプリンターでもフル活用しています。データを自分で作ったり、ほかの人のデータを参考にしたりしてパーツを作っていく、というようなことをやっています。

大川:いまGitHubというのが一番有名ですね。この前ビッグサイトでやったふつうの展示会で、どこかのちゃんとした会社が出していましたよ、きゅうりのアレ(笑)。

小池:そう(笑)。

大川:しかもFPGAを実装していて、クラウドじゃなくてエッジでやっていますって(笑)。

小池:あぁ、はいはい(笑)。

大川:そこ自慢するんだ、と……関係者の方がいたらすみません(笑)。

(会場笑)

シェアの文化がなければ、いまのモノづくり時代は来なかった

大川:「GitHubにあったから、それを使ってみました」って、「あぁすごいな」と思って。山口さん、なにか使われます? なにかそういう、GitHubみたいなものとかブログとか。

山口:GitHub、ブログとかはすごく参照して。Qiitaとか……エンジニアの方がすごいなと思うのは、シェアするっていう文化があって。Webの教材とかすごく活用させてもらっていますね。

大川:そうなんですよね、QiitaとかGitHubの文化って、見ていてときどき理解できないレベルのことを書いている人もいるじゃないですか。

山口:そう。

菅原:いますね、「これ、無料で出すんだ」というような。

山口:だいたい調べれば出てくるっていう。

大川:あの文化が根底にないと、こうはなっていない。

菅原:僕らもそうですけど、そういうオープンに出してくれている人からの恩恵を受けて、それで力をつけてきているんで、「それに対して貢献したいよね」っていう感じなんですかね。

大川:うん。本当にそういう雰囲気がすごく伝わって。リアルな世界でもそうだし、オンライン上のコミュニティもみんなそんな感じですもんね。これがすごく不思議なもので。

最後。どうすればそういう文化の中に入ってこれて、一緒に作るような仲間が増えていくんでしょう。いま手を動かしてない人は、どうやったらちょっとでも動かせるようになるのか。たぶん答えはないと思うんですけど。

菅原:これ、本当に思っている課題はそこなんです。「じゃあ作ろうよ」ということは言えるんですよね。「作ると楽しいよね」って僕はすごく思っていて、「作るのが楽しいから作る」という話なんですけど。「だから、みんな作ろうよ」ということはたぶん言えるんですけど、やっぱりきっかけってすごく大事じゃないかなと思っていて。

それこそIoTLTやMaker Faireへまず行ってみて、「こんなことが行われているんだ」「個人レベルでも作れるんだ」とか。そして、自分の生活だったらそれってどんなことに活かせるだろうか、というのを考えるとかですね。

現場のプリミティブな課題から、きっかけは始まる

菅原:それこそWAF(ウイングアークフォーラム)で、「大川さんがIoTLTをテーマにこんなことを言ってくれている」というような。これもたぶん1個のきっかけだと思うんですよね。たぶんみなさんが触れたことのないワードに、いま触れたっていう。そういったところの感度を上げて、って言うのかな。「あ、それがきっかけだ」って思えれば、1歩踏み出してもらって。あと1歩踏み出してくれたら、もう僕らが巻き取るんで。

(会場笑)

1歩踏み込んでくれたら、そこから「作り方わかりません」でも、「じゃあこうすればいいよ」というようなことは僕らがガンガンやるし。「どんなことがやれるの」って言ったら「こういう事例がいっぱいあるから」とか。そういうことじゃないですかね。

大川:はい、わかりました。まさにいま言ってもらったようなことは、僕も日々こういうことをやりながら考えていまして。お二人に今日お話しいただいたのは、現場のすごくプリミティブな課題から始まって、ここまでやっていただいたということでした。

今日お二人を選んだのはなぜかと言うと、仕事に近くて実用的で、きっかけもすごくわかりやすいというところで選んだんですね

最後に、このあと15分後、同じ会場で(IoT)LTを行います。本当に初期衝動を持ってなにかものを作っている人です。そしてこっちも聞いてみると、インスパイアされるものがとっても多いと思いますので、もしお時間があればぜひ引き続き聞いていただければなと思います。

それでは、これでちょうどお時間ですね。こちらのセッションは以上になります。最後、お三方に大きな拍手をお願いいたします。

(会場拍手)

[著] ログミーBiz編集部
世界をログする書き起こしメディア「ログミーBiz」は優れたスピーチや対談、パネルディスカッションなどを全文書き起こしてログ化し、価値ある情報をより多くの人に届けるためのサービス。本記事は「ログミーBiz」に掲載された「先端技術のコモディティ化がモノづくりを加速させた「自分でもできそう」が実現できる時代のプロダクト開発」を許可を得て掲載しています。

 
 
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