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DAO(分散型自律組織)とは? 特徴や3つのメリットをわかりやすく解説

本記事では、Web3.0に関連する重要キーワードとしてDAO(ダオ)を紹介します。DAOの意味やメリット・デメリットを知りたい方はもちろん、現在DAOがどのような存在なのかも解説しています。そもそもDAOという言葉を初めて目にしたという方や、見たことはあったけど、自分からは縁遠いものと感じている方はぜひ本記事をご覧ください。

         

Web3.0に関連する重要キーワードとして、NFTにつづき広がりを見せているのがDAO(ダオ)です。DAOという言葉をそもそもここで初めて目にしたという方や、見たことはあったけど、自分からは縁遠いものに感じられるという方もまだまだ多いのではないでしょうか。

本記事で、DAOの意味やメリット・デメリット、現在の状況、DAOが知られる最初のきっかけとなった「THE DAO事件」など基礎的な部分を押さえてしまいましょう!

また、下記記事でもDAOを漫画形式で解説していますので、ぜひ参考にしてください。

DAOとは? 非中央集権的かつ自律的な組織

DAO(Decentralized Autonomous Organization:分散型自律組織)とは、イーサリアムなどに代表されるスマートコントラクトを基盤とした“非中央集権的かつ自律的な組織のあり方”のことです。

イーサリアムは、2013年にヴィタリック・ブテリン氏、ギャビン・ウッド氏らによって開発されたブロックチェーンプラットフォームです。同プラットフォームを利用した世界時価総額2位の暗号資産の名前として認識している方も多いでしょう。(正確には暗号資産の名前は「イーサ」で、プラットフォーム名が「イーサリアム」です。)そしてスマートコントラクトとは、イーサリアム上で可能となる、契約をはじめとする一連の処理の自動的な実行プログラムを指します。

DAOのメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。

  1. トークンの所有数に従って誰もが組織の運営に影響を及ぼせるフラット性
  2. 低コスト・高スピードで資金調達と、トークンを介したコミュニティ構築ができる
  3. トークンの流れや意思決定プロセスなど全てオープンにされる高い透明性

一方、DAOのデメリットとしては以下が指摘されています。

  1. 投票によって決定することがルールとなっているため、トップダウンによる意思決定ができない。その結果、一つずつの決議に時間がかかりすぎる場合がある
  2. 「THE DAO事件」で生じたようなスマートコントラクトのセキュリティ上の不安
  3. 2022年上半期時点では法整備や税制が追いついていないため、投資には慎重な姿勢が求められる

なお、トークンとは、DAOのデジタル会員証としても用いられる独自の暗号通貨のことを指します。

DAOの4つの特徴とは?

DAOの特徴を4つ紹介します。

  • 中央管理者がいない
  • 組織経営の透明性が高い
  • ガバナンストークンを活用した投票がある
  • 所有権を分配している

それぞれ紹介します。

1. 中央管理者がいない

DAOの特徴は、中央管理者が存在しない組織であることです。DAOの組織運営では、特定のリーダーはおらず、運営方針はコミュニティメンバーの総意(投票活動)によって決定されます。このような運営方式の具体例として、ビットコインが挙げられます。

しかし、より進んだDAOの活用は、イーサリアムブロックチェーンにおけるスマートコントラクト技術の開発によって始まりました。そのため、現在のDAOの議論は、イーサリアムブロックチェーンを含むレイヤー1系統のブロックチェーンや、それらのブロックチェーン上で開発されるDappsに関するシステムへのDAOの導入について、よく話されています。

2. 組織経営の透明性が高い

管理者が存在しないDAOでは、中央集権的な権力者がいないため、意思決定のプロセスは一般的な株式会社などと比べて非常に民主的です。具体的には、DAOの意思決定に関わるためには、そのDAOのコミュニティ内で使われる「ガバナンストークン」という仮想通貨を保有する必要があります。このトークンを保有している人々による投票によって、DAOの意思決定が行われます。さらに、投票のプロセスは全てブロックチェーン上に記録されるため、組織運営は民主的かつ透明性の高いものとなります。

また、投票に使用される「ガバナンストークン」は、組織運営のための資金調達にも役立ちます。実際に、多くのDAOがこのトークンの発行によって資金を調達しています。ガバナンストークンを保有することで、組織運営に関する権利を得るだけでなく、プロジェクトが成功した場合には金銭的なメリットも得ることができます。

3. ガバナンストークンを活用した投票がある

DAOの運営方針は、コミュニティメンバーの投票によって決定されます。投票にはガバナンストークンが使用されます。ガバナンストークンは暗号資産の一種で、保有者はDAOの組織運営に関する提案や投票に参加することができます。

4. 所有権を分配している

DAOでは、組織の所有権を分散させるという考え方が強く反映されています。ここで言及している所有権とは、株式会社における株式(会社の所有権)をイメージしていただければ分かりやすいです。

DAOの所有権に相当するのが、前述したガバナンストークンです。一般的に、DAOに参加している開発者、提携パートナー、ユーザーなどに対して、彼らの貢献度合いに応じてガバナンストークンが分配されます。このようなシステムにより、従来の株式会社の場合に起こっていた創業者や投資家による所有権の集中を防ぐことができます。

実際には、DAOの立ち上げ時や投資家には一定量のガバナンストークンが与えられることが多いですが、彼らもコミュニティの一員として所有権を持っているという立場です。このような所有権の分散により、幅広いステークホルダーに対してDAOへの貢献を促し、個々の人が組織ではなくDAOに対して価値を生み出すことができるようになります。

DAOの3つのメリットとは?

前章ではDAOの特徴を4つ紹介しましたが、本章ではDAOのメリットを改めて3つ紹介します。

  • インセンティブがわかりやすい
  • 資金調達を効率的にできる
  • 自由に参加できる

順に紹介します。

1. インセンティブがわかりやすい

DAOでは、参加者にインセンティブを提供するために、トークンエコノミーを活用しています。参加者は組織に貢献することでトークンを獲得し、そのトークンが組織の意思決定や利益配分に直接関与します。

これにより、参加者は組織の成功によってトークンの価値が上昇することを期待し、積極的に組織に貢献するようになります。このようなシステムは、参加者が自身の貢献が組織の成長につながることを実感し、モチベーションを高める効果があります。

また、トークンを保有することで、参加者は組織のガバナンスに参加し、意思決定プロセスに影響を与えることができます。これにより、参加者は組織の運営に対するオーナーシップを感じることができ、組織全体としての一体感や連携が生まれやすくなります。

2. 資金調達を効率的にできる

DAOはスマートコントラクトを通じて資金調達を行うことができるため、従来の組織体系と比べて効率的です。

一般的に、DAOはイーサリアムなどのパブリック・ブロックチェーン上に構築されており、ガバナンストークンの発行などによって簡単に資金調達が可能です。このプロセスは従来の資金調達に比べて非常にシンプルで、コストも抑えられます。

3. 自由に参加できる

従来の組織に参加するためには、試験や面接を受けて合格し、契約書を交わす必要があります。そして、組織を離れる場合にも、契約解除の手続きが必要です。

一方、DAOは、国籍や性別に関係なく、インターネット環境さえあれば誰でも参加することができます。さらに、DAOでは匿名での参加も多く認められており、顔や実名を明かさずにプロジェクトに参加することができる点が、従来の組織と大きく異なる特徴です。

DAOの3つのデメリットとは?

DAOのメリットだけではなく、デメリットも紹介します。

  • 意思決定に時間がかかる
  • 法整備が整っていない
  • セキュリティのリスクがある

メリットと一緒に押さえておきましょう。

1. 意思決定に時間がかかる

AOのメリットとして、中央集権者がおらず民主的に運営される点が挙げられます。しかし、この特徴は裏を返せば、組織の意思決定が遅くなるという懸念があります。

なぜなら、DAOではガバナンストークンによる投票が必要となり、方向性を決めるまで時間がかかるからです。そのため、DAOが運営や管理しているサービスがハッキングされたり、スマートコントラクト上の欠陥が発見されたりすると、意思決定が遅れる可能性があります。

このような状況でも、組織の意思決定には原則的にガバナンストークンによる投票が必要です。もし投票活動によるコミュニティの意思を無視するようなことがあれば、その組織はDAOとして機能していないと言えます。

上記のような予期しない事態に対して、トップダウンで迅速に対処することができないという点は、DAOの運営上のデメリットと言えるでしょう。

2. 法整備が整っていない

DAOは、株式会社などの伝統的な組織体系とは異なり、民主的かつシステミックな運営プロセスを前提としています。

そのため、このようなブロックチェーンを基本としたシステムは、既存の法律の範囲外で運営されており、多くの国や地域ではまだDAOに関する法整備が進んでいません。このような状況では、DAOを中心にプロジェクトを立ち上げる際には、いくつかの障壁が生じる可能性があります。

ただし、特定の地域ではこの問題が解決に向かっています。例えば、2021年4月にはアメリカのワイオミング州で、DAOを有限責任会社として正式な法人格とする法案が承認されました。また、2022年2月にはミクロネシアのマーシャル諸島でも、DAOを法人として認める法改正が可決されました。

マーシャル諸島の場合も、ワイオミング州と同様に、DAOに有限責任会社と同等の権利を与えるものです。これにより、マーシャル諸島は世界で初めてDAOを承認した国となりました。

3. セキュリティのリスクがある

ブロックチェーンの進歩により、セキュリティは向上していますが、一方でDAOはスマートコントラクトの脆弱性や不正行為のリスクにさらされています。

そのため、DAOの運営者はセキュリティ対策を徹底し、参加者の資産を守ることが求められています。

DAOの5つの事例とは?

DAOの事例を5つ紹介します。

  1. BitDAO
  2. Compound Grants
  3. PleasrDAO
  4. CityDAO
  5. Nouns DAO

それぞれ紹介します。

1. BitDAO

BitDAOは、シンガポールを拠点とする暗号資産取引所「Bybit」が主導するDAOプロジェクトです。2021年6月に設立され、新たなDeFi(分散型金融)プロジェクトの開発を支援しています。

BitDAOは、ガバナンストークンの「Bit」を発行しており、組織の運営に関わる問題については、Bitトークンを保有する人々の投票によって決定されます。

例えば、出資先の選定や是正措置の実施などです。また、2022年4月には、BitDAOが650万ドルをPleasrDAOというNFTアート収集のためのプロジェクトに出資することが決まり、多くの注目を浴びました。

2. Compound Grants

Compoundは、イーサリアムのブロックチェーン上に作られた暗号資産の代表的なレンディングプラットフォームです。

また、「Compound Grants」とはCompoundの関連DAOの名前です。Compoundでは、スマートコントラクトを使って、ユーザー同士が直接暗号資産の貸し借りをすることができます。貸し手となるユーザーは、自分の持っている暗号資産を流動性プールに預け入れることで、一定期間後に利息を得ることができます。

Compound Grantsは、Compoundのガバナンストークンである「COMP」の保有者たちが集まって、システム内の流動性を増やすためのアイデアを出し合ったり、関連イベントを開催したりして、Compoundの成長を目指して活動しています。

3. PleasrDAO

PleasrDAOは、2021年3月に設立されたDAOで、NFTの共同購入を目的としています。高額なNFTは個人では手に入りにくいため、DAOのメンバーが共同で購入し、その後に価値が上がった時に売却して利益を分配することを目指しています。

これまでPleasrDAOは、Uniswapが作成したNFTを約5,900万円で購入したり、元NSAのエドワード・スノーデン氏のNFTを約6億円で落札するなど、注目を浴びてきました。

4. CityDAO

CityDAOは、ブロックチェーン上にデジタル都市を作り上げることを目指すプロジェクトです。このプロジェクトでは、土地の証明書がNFTとして販売され、それを購入したユーザーはその土地の「市民」となることができます。

CityDAOの特徴の一つは、ブロックチェーン上の土地が現実世界の土地と関連づけられていることです。市民となったユーザーは土地の所有権を持つことはできませんが、その土地に関するさまざまな意思決定に参加する権利を得ることができます。例えば、どんな建物を建てるかや、どんなお店を誘致するかなどです。

2021年9月、CityDAOはNFTの売上を元に、ワイオミング州にある40エーカーの土地を共同で購入しました。この土地のガバナンスは、CityDAOのメンバーによって行われています。

5. Nouns DAO

Nouns(ナウンズ)は、オートチューンで作成された32×32ピクセルのドット絵をモチーフにしたNFTアートのシリーズ作品です。

Nounsの特徴は、発行と販売方法にあります。Nounsはスマートコントラクトを使用しており、24時間ごとに1つずつ自動的に生成され、運営者の介入なしでオークションに出品されます。Nouns DAOは、このNounsのエコシステムを管理する組織です。

DAOの運営や財政に関する意思決定は、メンバーによる投票で行われます。1体のNounsに対して1票の投票権が与えられるため、Nounsを多く所有するメンバーの意見が重視される仕組みです。

「THE DAO事件」の顛末とそこから得られた教訓とは?

DAOという言葉が知られることとなった最初のきっかけは2016年の「THE DAO事件」です。ドイツのスタートアップ企業Slock.it社により、独自トークンDAOによるICO(新規暗号資産公開)が行われ、12M ETH(当時の1億5,000万米ドルに相当)に迫る資金が調達されました。

ICOとは、Initial Coin Offeringの略で、オフラインの世界の株式による資金調達と同じ仕組みを株式の代わりにトークンを使って行うようなイメージです。DAOは当初の発行元であるSlock.it社から完全に独立したものとするという理念の下で開発が進められ、トークン所有者ひとりひとりの提案とDAOを用いた投票により投資先を決定可能で、さらに出資額に応じたリターンも受け取れるという仕組みが構築されました。

従来の企業のように中央管理者やピラミッド構造が存在せず、意思決定は民主的な投票によって行われ、その手順やルールの透明性も確保されるという理想的な組織のイメージがDAOによって描かれたのです。

しかし2016年6月、DAOのスマートコントラクトに存在するリエントランシーという脆弱性が攻撃を受け、3.5M ETH近い資金が強奪されることに。従来と完全に切り離された新たな環境を作り出すアップデート──ハードフォークにより資金の不正流出は無効化できましたが、非中央集権性の揺らぎが指摘され、またイーサリアムが分裂する最初のきっかけともなりました。

Slock.it社を運営していたクリストフ・ジェンツ氏はDAOの歴史を通して学んだことをまとめた記事の中で「THE DAO事件を通してスマートコントラクトのセキュリティ性は向上したこと」「DAOの非中央集権化は段階的に進めるべきこと」などを記述しており、現在話題に上っているDAOはそのような教訓を反映した2020年代型のものを標榜していると予想されます。

終わりに

「従来の会社やプロジェクト立ち上げのスピード感や透明性をがらりと変えてしまうかもしれない」と期待を集める「DAO」についてまとめてまいりました。「トークンの所有が必要なのか……」と少しハードルが高く感じられた方もいるかもしれませんが、DiscordなどでつくられたDAOのコミュニティには、トークンなしで参加できる場も多く存在します

まずは気軽にDAOのコミュニティを覗いてみて、そこから本格的に加わりたいと思える場を探してみてはいかがでしょうか。

 

参照元

・Kayleigh Barber『WTF is a decentralized autonomous organization (DAO)』┃DIGIDAY ・Christoph Jentzsch『The History of the DAO and Lessons Learned』┃slock.it Blog
The Standard DAO Framework, including Whitepaper┃GItHub
・Stephan Tual『A Primer to Decentralized Autonomous Organizations (DAOs)』┃Stephan Tual’s Blog
・NATHAN REIFF『Decentralized Autonomous Organization (DAO)』┃Investopedia
Web3の鍵となる「DAO(分散型自律組織)」とは? 実際に構築してみた結果┃WIRED ・ジェイク・ライアン『誰がブロックチェーンのルールを定めるのか』┃Harvard Business Review ・Laura Shin『独自取材で判明、イーサリアム史上最大の謎「The DAO事件」の犯人』┃Forbes Japan
イーサリアム分裂の歴史┃DMMBitCoin
イーサリアムを生んだ23歳の天才が語る、ブロックチェーンのこれからと「分散の力」┃WIRED
・知念 祐一郎, 芦澤 奈実, 矢内 直人, クルーズ ジェイソン ポール『スマートコントラクト――ブロックチェーンからなるプログラミングプラットホーム――』┃電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン
web3とは | DAOがなぜ注目されているのか?┃Yotube Joichi Ito
【徹底解説】DAOってなんだお?〜課題と未来┃イケハヤnote

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