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Web3.0の重要キーワード「DAO」とは? 意味やメリット・デメリット、2022年の状況をわかりやすく解説

         

Web3.0に関連する重要キーワードとして、NFTにつづき広がりを見せているのがDAO(ダオ)です。DAOという言葉をそもそもここで初めて目にしたという方や、見たことはあったけど、自分からは縁遠いものに感じられるという方もまだまだ多いのではないでしょうか。

本記事で、DAOの意味やメリット・デメリット、現在の状況、DAOが知られる最初のきっかけとなった「THE DAO事件」など基礎的な部分を押さえてしまいましょう!

DAOは“非中央集権的かつ自律的な組織” そのメリット・デメリットは?

DAO(Decentralized Autonomous Organization:分散型自律組織)とは、イーサリアムなどに代表されるスマートコントラクトを基盤とした“非中央集権的かつ自律的な組織のあり方”のことです。

イーサリアムは、2013年にヴィタリック・ブテリン氏、ギャビン・ウッド氏らによって開発されたブロックチェーンプラットフォームです。同プラットフォームを利用した世界時価総額2位の暗号資産の名前として認識している方も多いでしょう。(正確には暗号資産の名前は「イーサ」で、プラットフォーム名が「イーサリアム」です。)そしてスマートコントラクトとは、イーサリアム上で可能となる、契約をはじめとする一連の処理の自動的な実行プログラムを指します。

DAOのメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。

1.トークンの所有数に従って誰もが組織の運営に影響を及ぼせるフラット性
2.低コスト・高スピードで資金調達と、トークンを介したコミュニティ構築ができる
3.トークンの流れや意思決定プロセスなど全てオープンにされる高い透明性

一方、DAOのデメリットとしては以下が指摘されています。

1.投票によって決定することがルールとなっているため、トップダウンによる意思決定ができない。その結果、一つずつの決議に時間がかかりすぎる場合がある
2.「THE DAO事件」で生じたようなスマートコントラクトのセキュリティ上の不安
3.2022年上半期時点では法整備や税制が追いついていないため、投資には慎重な姿勢が求められる

なお、トークンとは、DAOのデジタル会員証としても用いられる独自の暗号通貨のことを指します。

2022年現在、どんなDAOが存在する?

イーサリアムを所有する人が増え、仮想通貨ウォレットとしてMetaMaskを用い、コミュニティの連絡手段にはDiscord、分散投票システムにはsnapshotを……とある程度DAO立ち上げの方法が見えてきたことで、2022年現在、数多くのDAOが立ち上がっています

例えば日本国内発のDAOとしては最大級の規模である「Ninja DAO」は、商用利用可能なIPコンテンツ「CryptoNinja」を育てることをミッションとして立ち上げられたそうです。フリーランサーと雇用先企業が集まり「世界で最もインパクトのあるタレント・ネットワークの構築」を目的とするBraintrustのようなDAOも存在します。

また、Wiredには、雑誌『The New Yorker』の大喜利コーナーでの優勝を目的としたDAOを自ら立ち上げたライターの記事が掲載されていました。

当然ほかのWeb3.0の動きとのかかわりも深く、FlamingoPleasrDAOのようにNFTへの投資を目的としたDAOや、シンガポールの仮想通貨取引所Bybitが主導するDeFiのプラットフォームとなることを目指すBitDAOなども存在感を放っています。

「THE DAO事件」の顛末とそこから得られた教訓を知ろう

DAOという言葉が知られることとなった最初のきっかけは2016年の「THE DAO事件」です。ドイツのスタートアップ企業Slock.it社により、独自トークンDAOによるICO(新規暗号資産公開)が行われ、12M ETH(当時の1億5,000万米ドルに相当)に迫る資金が調達されました。ICOとは、Initial Coin Offeringの略で、オフラインの世界の株式による資金調達と同じ仕組みを株式の代わりにトークンを使って行うようなイメージです。DAOは当初の発行元であるSlock.it社から完全に独立したものとするという理念の下で開発が進められ、トークン所有者ひとりひとりの提案とDAOを用いた投票により投資先を決定可能で、さらに出資額に応じたリターンも受け取れるという仕組みが構築されました。

従来の企業のように中央管理者やピラミッド構造が存在せず、意思決定は民主的な投票によって行われ、その手順やルールの透明性も確保されるという理想的な組織のイメージがDAOによって描かれたのです。

しかし2016年6月、DAOのスマートコントラクトに存在するリエントランシーという脆弱性が攻撃を受け、3.5M ETH近い資金が強奪されることに。従来と完全に切り離された新たな環境を作り出すアップデート──ハードフォークにより資金の不正流出は無効化できましたが、非中央集権性の揺らぎが指摘され、またイーサリアムが分裂する最初のきっかけともなりました。

Slock.it社を運営していたクリストフ・ジェンツ氏はDAOの歴史を通して学んだことをまとめた記事の中で「THE DAO事件を通してスマートコントラクトのセキュリティ性は向上したこと」「DAOの非中央集権化は段階的に進めるべきこと」などを記述しており、現在話題に上っているDAOはそのような教訓を反映した2020年代型のものを標榜していると予想されます。

終わりに

「従来の会社やプロジェクト立ち上げのスピード感や透明性をがらりと変えてしまうかもしれない」と期待を集める「DAO」についてまとめてまいりました。「トークンの所有が必要なのか……」と少しハードルが高く感じられた方もいるかもしれませんが、DiscordなどでつくられたDAOのコミュニティには、トークンなしで参加できる場も多く存在します

まずは気軽にDAOのコミュニティを覗いてみて、そこから本格的に加わりたいと思える場を探してみてはいかがでしょうか。

【参考資料】
・Kayleigh Barber『WTF is a decentralized autonomous organization (DAO)』┃DIGIDAY
・Christoph Jentzsch『The History of the DAO and Lessons Learned』┃slock.it Blog
・The Standard DAO Framework, including Whitepaper┃GItHub
・Stephan Tual『A Primer to Decentralized Autonomous Organizations (DAOs)』┃Stephan Tual’s Blog
・NATHAN REIFF『Decentralized Autonomous Organization (DAO)』┃Investopedia
・Web3の鍵となる「DAO(分散型自律組織)」とは? 実際に構築してみた結果┃WIRED
・ジェイク・ライアン『誰がブロックチェーンのルールを定めるのか』┃Harvard Business Review
・Laura Shin『独自取材で判明、イーサリアム史上最大の謎「The DAO事件」の犯人』┃Forbes Japan
・イーサリアム分裂の歴史┃DMMBitCoin
・イーサリアムを生んだ23歳の天才が語る、ブロックチェーンのこれからと「分散の力」┃WIRED
・知念 祐一郎, 芦澤 奈実, 矢内 直人, クルーズ ジェイソン ポール『スマートコントラクト――ブロックチェーンからなるプログラミングプラットホーム――』┃電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン
・web3とは | DAOがなぜ注目されているのか?┃Yotube Joichi Ito
・【徹底解説】DAOってなんだお?〜課題と未来┃イケハヤnote

宮田文机

 
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