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ヒューマンコンピューターインタラクション(HCI)とは? なぜ今の時代に重要?

         

社会が成熟し、ものづくりからコトづくりへとニーズが移行するなかでUI/UXやデザイン経営の必要性は広く知られるようになりました。PCやスマホ、タブレットなどのモバイル端末にほとんど一日中触れている我々にとって、特に重要なのがコンピュータを利用するときのUI/UXです。

そんな領域に深くかかわる学問「ヒューマンコンピューターインタラクション(HCI)」をみなさんはご存じでしょうか?

本記事では、ヒューマンコンピューターインタラクションとは何か、なぜ今の時代に重要なのかやDX・AI活用において注目すべきポイントについて解説します!

ヒューマンコンピューターインタラクション(HCI)は「人とコンピューターの間で生まれる‟相互作用」

ヒューマンコンピューターインタラクション(HCI)とは、「人とコンピューターの間で生まれる‟相互作用(インタラクション)”」および、それを研究するための学問です。

パーソナルコンピュータが誕生した1960年ごろ、コンピュータへの命令は現在のプログラミングにあたるCUI(Character User Interface)で行われていました。しかし、1980年ごろに画面上のボタンをクリックしたりドラッグ&ドロップしたりすることで簡単に操作できるGUI(Graphical User Interface)が生まれ、人々にとってコンピュータはぐっと身近な存在に。

そして、2000年代にはiPodやスマートフォンが誕生し、タッチスクリーンを用いて指でGUIを操作することが当たり前となりました。タッチ画面は今では駅の券売機やカーナビ、飲食店の注文などさまざまな場面で用いられていますね。また、音声入力や視線入力など、コンピュータへの命令方法の可能性も広がっています。

「相互作用(インタラクション)」というからには、研究領域は「人間→機械」への入力だけでなく、「機械→人間」への出力へも及びます。チャットボットによる音声の受け答えやVR、味やにおい、触覚の出力など、現在コンピュータが人間にものごとを伝える手段は広がりつづけているのです。

そのような領域すべてに関わるのがHCIという学問領域であり、その研究事例は、たとえば下記のように多岐にわたります。

・目の角膜に映る手の位置を利用して、自動的に画面表示を調整するユーザーインターフェース
・指先だけでなく「爪」も用いた手による入力パターンの多様化
・不気味な外見のロボットは人間にどのような印象を与えるのかのアンケート調査
・身体7カ所に装着した分割型キーボードの直立・着席・歩行時における入力効率の違い

ご覧の通り興味深い事例が多く存在するため、もっと知りたいという方はぜひ情報処理学会ヒューマンコンピュータインタラクション研究会の「研究報告(情報学広場)」等にアクセスしてみてください。

情報処理学会ヒューマンコンピュータインタラクション研究会HP:http://www.sighci.jp/

今の時代にHCIはなぜ重要?

HCIはなぜ現代においてより重要性を高めているのでしょうか?

その背景には、以下のような理由があると考えられます。

・DXの普及やAIの開発が進展した
・SNSなどインターネット上でのコミュニケーションが活発化・多様化した
・ダイバーシティ&インクルージョンの実現において、誰でも快適にコンピューターを利用できる環境が求められている
・IoTやウェアラブルデバイスの発展により人間の反応をデータとして取得したり、デバイスに反映したりしやすくなった
・コンピューターやモバイルデバイスを一人一台持つことが当たり前になった

Googleの創業者ラリー・ペイジ氏を輩出したことで知られるスタンフォード大学のテリー・ウィノグラード研究室では、研究対象をAIからHCIに移行しました。その背景には、‟人のように考えるコンピューターではなく、人とうまくやり取りできるコンピューターに焦点を当てることが人間のために機能するコンピューターをつくるために重要だ”という考えがあったという趣旨の発言を、ウィノグラード教授は2012年のインタビューで行っています。

生成AIに一気に注目が集まった2022~2023年。『Midjourney』や『ChatGPT』など、誰にでも使いやすいインターフェースを持ったサービスの登場がそのカギだったことは間違いありません。AIと人のやり取りが活発化することでより多くのデータや投資が集まり、その結果として市場や研究が発展する──。

そのサイクルをつくるにあたってもHCIは注目すべき領域といえるでしょう。

インターフェース→インタラクションへ──DXやAI活用で注目すべきポイントは?

HCIは以前は、HI(ヒューマンインタフェース)という名前で呼ばれていました。前述の「ヒューマンコンピュータインタラクション研究会」が、その前の名称である「ヒューマンインタフェース研究会」から改称されたのは2007年のことです。

その際に発表された記事『インタフェースからインタラクションへ』で、ヒューマンインタフェース研究会主査 東京大学先端科学技術研究センター/株式会社SRA先端技術研究所の中小路 久美代氏は、以下のように記述しています。

<インタフェース>が「面」を強調する言葉であるのに対し,<インタラクション>では「時間」や「流れ」,「変化」をより強く意識します.人間が居て,技術が存在して,その間のインタフェースを考えるのみではなく,人間と技術との相互作用としての系そのものを研究の対象とするコミュニティの現状を,より適切に表現する名称となると考えています.

引用元:中小路 久美代『インタフェースからインタラクションへ From Interfaces to Interactions』┃ヒューマンインターフェース研究会

これはUI→UXへと変化することで「インターフェース(Interface)」から「体験(Experience)」へと力点が移行したことや、AIの存在が人間に影響を与えることで生成AIが適切な答えを返しやすい文章を創造する新たな役割「AIプロンプター」が生まれたことなどとも重なる現象ではないでしょうか。

人間と技術ははっきりと分けられるものではなくなり、両者が影響を与え合うことで生まれる「相互作用」に注目が集まっています。コンピューターやAIをどう使うかに加え、それらを使うことで個人や組織、環境はどう変化するのかに着目することで、DXやAI活用はより効果的なものになるでしょう。

終わりに

DXやAIが進展する2023年現在だからこそ注目したいヒューマンコンピューターインタラクション(HCI)について解説してまいりました。

難解そうな名称ではありますが、先に挙げた例のように我々の社会で使われるイメージがしやすく、かつユニークな実験が多数行われているため、深く知るほど親しみが感じられるはずです。理系や情報系の学問には詳しくないという方もぜひ臆せず、HCIの世界へ入門してみてください。

【参考資料】
・情報処理学会 ヒューマンコンピュータインタラクション研究会
・人とコンピューターのより良い関係を築くために HCIが実現するもの┃Yahoo! JAPAN
・中小路 久美代『インタフェースからインタラクションへ』┃情報処理学会 ヒューマンコンピュータインタラクション研究会
・北原 義典『イラストで学ぶ ヒューマンインタフェース 改訂第2版 (KS情報科学専門書) 』2019、講談社
・マンガでわかるHCI: インターフェイスってなに?┃マンガでわかるHCI(ヒューマン・コンピュータ・インタラクション)note
・電気×コンピュータで食文化を変える!? 「電気味覚」研究の第一人者が目指す未来【五十嵐悠紀】┃エンジニアtype
・人工知能からHCI(ヒューマン=コンピューター・インタラクション)へ グーグルの生みの親が語る、コンピューターと人の関係。┃テレスコープマガジン

宮田文机

 
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