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オーストラリアに出向いたのは今回で2回目でした。2011年に初めてオーストラリアを訪れた時にはなんだかんだと半年ほど滞在し、人生で初となる車生活を体験したり、アウトバックを走り抜けてエアーズロックを訪れたり、ヒッピーたちと生活を共にしたり、となかなか得難い体験をすることでき、オーストラリアはこれまで訪れた旅先の中でもかなり上位に食い込むお気に入りの場所となりました。
スーパーで食材を調達する場合はそれほど高くないのですが、ちょっと外食をするとなると、その頃からオーストラリアは物価が高い国、という印象でした。2011年頃はカフェで働いている人たちの時給が2000円くらいでした。働いている人の賃金が高い分、当時から人の手がかかった商品は価格が高い、というのが相場で、バターを塗っただけのトーストが500円みたいな金額設定になっていました。そして、今回、10数年経って再び訪れてみると物価が高い国、という表現ではすでに事足りず、物価がえげつない国、ということを思い知ることになりました。
その物価高がえげつなさはとどまるところを知らず、現在では最低時給がおよそ3000円(正確な金額は州によって異なります)に設定されています。つまり、カフェで3時間くらい働くと10000円くらいはもらえることになります。それだけを聞くと、なんて暮らしやすい国なのだろう、と考えるかも知れませんが、これはこれで結構ややこしい事情があったりして、人を雇用する側からしてみると、それだけの金額に見合った働きをしてくれる人しか雇うことができない、ということになります。つまり、人を雇う、イコールその分以上に売り上げが増えないことにはどうもこうもならないわけです。
当然、人を雇うことに対して経営者はかなりシビアになっています。したがって、人がやらなくてもよい作業は当たり前のように自動化されており、可能なところでのテクノロジーの活用、あらゆる場面でのDX化はかなり進んでいます。オーストラリアにおいては、どんな些細な作業であれ、人がやった方が安い、ということは基本ありえないので、これは選択肢のない状態だと言えます。
今回の旅の途中で、オーストラリア人の友人と一緒にとある国立公園を訪れました。今回訪れたのはグレートサンディ国立公園のクーローラ・レクリエーション・エリアというところで、信じられないくらい美しい場所だったのですが、このエリアに入るにはパーミットが必要で、今回は友人が年間パスを持っていたので、それで入ることができました。
国立公園自体は広大な場所でエントリーポイントもいくつもあるのですが、どのエントリーポイントにも人はおらず、その代わりにカメラが配置されていて、そこを通過する車両のナンバープレートを全て記録していきます。パーミットを取得する場合にはナンバープレートを必ず登録するので、パーミットがない場合は100%確実に罰金が科せられるシステムになっているそうです。友人も、少し前に年間パスの有効期限が切れていることに気づかずにキャンプに来てしまい、数百ドルの罰金を支払う羽目になった、と教えてくれました。しかも数日切れていただけで、罰金を支払ったあとまた年間パスを新しく取得したそうなのですが、数日切れていただけでも確実に捕まるほどシステムがきちんと稼働していることに思わず感心してしまいました。
パーミットの確認方法が完全に無人化されていて、こんなに合理化されているとは、という驚きと、複数あるエントリーポイントの全てに人を24時間体制で配置するのは完全に理にかなっていない、という納得とが同時に訪れる感じでした。
今回ご紹介したエントリーポイントの無人化は、全てを合理的に考えるオーストラリアのやり方の典型的な例の一つのように思いますが、「完全に無人化することによって人件費を安く保ち、それが利用者が負担する金額の軽減に繋がっている」「24時間、365日体制でズルができないようになっている」という2点において理にかなっているDX化のように感じました。DX化が進む前はおそらくさほど厳しく取り締まったりできてなかったのではないかと思うので、DX化への投資はすぐに回収できるレベルだったのではないかとも想像できますね。オーストラリアを訪問する機会がある方は、そのえげつない物価の高さと、それに引っ張られているDX化率の高さにもぜひ注目してみてください。
(データのじかん編集部 田川)
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