NetflixやAmazonプライムといった有料の動画配信サービスが日本で提供されるようになってから約4年、現在20代後半の私の周りでは、ほとんどの人が何かしらの有料動画配信サービスを利用しています。
また、これまで若者を中心に人気を博していたYouTubeやTikTokなどの誰もが動画の配信者になれる無料の配信サービスも、この2、3年の間でグッと幅広い世代に受容されるようになってきました。
2010年代前半には、インターネット上でごく一部の人にしか知られていなかった「YouTuber」も今や、子どもたちの憧れの職業の一つになっており、実際、2018年9月に学研が発表した小学生白書では、将来就きたい職業の第3位にランクインしています。
順位 | 将来つきたい職業 | 回答者の割合(n=1200) |
1 | パティシエ(ケーキ屋) | 5.5% |
2 | プロサッカー選手 | 3.8% |
3 | YouTuberなどの動画配信者 | 3.5% |
動画を見るだけでなく自分で動画を撮影してそれを発信するということが一般的になる中で、動画配信市場は幅広い分野から高い注目を集めています。
そこで、今回は、現在の動画配信市場についてのデータや主な動画配信サービスの紹介をしていきます。
動画配信と一口に言っても様々なサービス形態があります。
今回は、様々な動画配信サービスを以下のように分類してみました。
既存のコンテンツやオリジナルコンテンツの配信を主に行なっておりユーザーは視聴するのみというサービスを「視聴型」、ユーザー自らが制作したコンテンツの配信を行うことができ、他のユーザーが視聴できるサービスを「共有型」として分類しています。
視聴型のサービスの中にも、 Netflixや Huluのように月額一定で様々な映画やドラマを視聴できたり、Amazon Primeのように、作品のデータの購入やレンタルもできたりする有料の動画配信サービスと、GyaoやAbema TV、TVerのように基本的には無料で利用できる動画配信サービスがあります。後者は、インターネットTVとして広告費でマネタイズを行い、オリジナルコンテンツを配信していたり、放送事業者が中心となってTVで放送された番組の見逃し配信を行っていたりします。
一方の共有型のサービスでは、YouTubeやTikTokのように編集した映像を共有する動画共有サービスと、LINE LIVEやSHOWROOMのようにリアルタイムでのライブ配信がメインとなるサービスがあります。
動画共有サービスにおける配信ユーザーは、広告費や様々な企業から提供を受けることで、マネタイズを行っており、これらはインフルエンサーマーケティングと呼ばれています。またライブ配信サービスでは、配信ユーザーは動画共有サービスと同様に企業から提供を受けることもありますが、多くのサービスにおいて視聴者が「投げ銭」をできるシステムになっているため、配信者と視聴者の間でより直接的な報酬の授受が行われていることが多いです。
今回はわかりやすいように単純な分類にしていますが、実際はAbema TV(無料で利用できる動画配信サービス)が月額支払いで過去の配信作品の見放題プランを用意していたり、Instagramのストーリーでライブ配信ができたり、と多くのサービスが様々な方法でマネタイズを行っています。
同レポートによると、日本における有料動画配信サービス(サブスクリプション型、レンタル型、買い切り型)の市場は、以下のグラフの通り、年々成長を遂げており2018年には2200億円規模となり、これは日本国内の映画業界の市場規模と比肩する規模だそうです。
また世界的に見ても日本の有料動画配信サービスの市場規模(2019年)は全体の3位とその市場の大きさが伺えます。
他の国を見てみると、多くの有料動画配信サービス誕生の地であり日本よりはるかに早く動画配信サービスが広がっていたアメリカでは、市場が成熟し、日本の7倍以上の収益が出ていることがわかります。こうした結果からも今後日本の動画配信市場はまだまだ伸びてゆくのではないかと考えられます。
また動画配信サービスの市場を考える上で無視できない存在が、隣国、中国です。
スマホユーザーにおける動画配信サービスの普及率で見ても2019年時点で日本が26.8%であるのに対し中国が50.2%と、その利用者層の厚さが特徴です。
日本貿易振興機構(ジェトロ)が2017年にまとめた「中国の動画配信市場調査」をみるとその市場の急成長ぶりが伺えると思います(グラフで予測になっている2019年度の市場規模は上述のstatistaの調査で25億ドル、中国人民元にして約180億元となっており、予想より成長は鈍化しています)。
中国では様々な情報規制などもあるため、 Netflixをはじめ、アメリカ発のサービスはほとんど使うことができず、その結果、愛奇芸(iQIYI:アイチーイー、中国版Netflixと呼ばれている)や騰訊視頻(Tencent video)など独自に発達した配信サービスが人気を集めています。
また動画配信サービスを利用したインフルエンサーマーケティングが盛んで、インフルエンサーを取り巻く市場規模は2018年の時点で32兆円を越えていた、と言われています。
そうした中で特に人気が高いのが、中国では「快手(Kuaishou)」や日本でも人気の「TikTok(中国語名:抖音)」などのショートムービーの共有アプリです。リリース直後は10〜20代の若者ユーザーを中心に広がり、この数年で幅広い年齢層のユーザーを獲得していきました。
また、 「YY Inc.(歓聚時代)」をはじめとしたライブ配信サービスの利用も活発で、2017年時点での市場規模が6300億円まで成長しているそうで、2020年までに1.6兆円規模の成長が見込まれるなど、注目度がグッと上がってきています。
ライブ配信の市場の拡大は、日本においても期待されており、2018年のライブ配信市場の売り上げ規模が132億円でしたが、2020年までに7442億円の市場規模になるのではないかと予測されています。
動画配信先進国、中国で流行ったものが日本でも流行るという傾向は、今後とも続いていくと予想されるので、中国の動きから目を離せなそうですね。
来年度には5G回線の普及を控える中で、さらに活発になるであろう動画配信サービスの動きは今後ますます注目を集めていくと思います。
ビジネストレンドとしてあるいは日常で使うツールとしても動画配信が今後重要な役割を担っていくと考えられます。そうした中で市場の動きや世界各国での傾向などを捉えていくことが新たなトレンドや仕事を生み出すきっかけにつながっていくかもしれません。
5G時代の変化を捉えるためにも、動画配信の動きを追っていきたいですね!
【参考引用サイト】 ・ 中国の動画配信市場調査 - ジェトロ ・ Video-on-Demand - worldwide | Statista Market Forecast ・ Tiktok だけじゃない!32兆円超、中国インフルエンサーの威力とは ・ 2AUGUST 2019有料動画配信はどこまで拡大するのか~「メディア利用動向調査」を読み解く~ ・ 動画配信市場は、映画興行と同じ規模に成長した。そこに巨人たちが乱入する ・ 小学生白書Web版 学研教育総合研究所|学研
(大藤ヨシヲ)
メルマガ登録をしていただくと、記事やイベントなどの最新情報をお届けいたします。
30秒で理解!インフォグラフィックや動画で解説!フォローして『1日1記事』インプットしよう!