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世界の二酸化炭素(CO2)排出量の約5分の1を占めているのが交通機関であるということをご存知でしょうか?エネルギーからのCO2排出量のみを考慮すると実に24%が交通機関によるものです。特に頻繁に旅行する人口が多い一部の富裕層の国においては、交通機関は個人に起因するカーボンフットプリントの中で最も大きな要素の一つであると言えます。
国内であれ、海外であれあなたがもし旅行にでかける場合、どのようにすればCO2の排出量を抑えることができるでしょうか?
それでは移動手段によるカーボンフットプリントの比較をグラフで見てみましょう。これらは1人が1km移動するために排出される温室効果ガスの量で測定されます。
このデータは、英国政府の温室効果ガス報告のための方法論文書に基づいており、各企業が排出量を定量化して報告するために広く使用されています。温室効果ガスは二酸化炭素換算値(CO2eq)で測定され、CO2以外の温室効果ガスや高地での航空機の排出による温暖化効果の増加も考慮されています。
短距離の旅行では、車の代わりに自転車を利用することでCO2の排出量を約75%削減することができます。さらに、中距離の移動の場合、車の代わりに電車を利用することで約80%、飛行機の代わりに電車を利用することでなんと約84%ものCO2の排出量を削減することができます。
しかしながら、排出量は主に、①旅行の距離、②地域の電力供給源、③公共交通機関の混雑状況、④車を運転する場合は車と乗客の数によって大きく変動します。
短距離から中距離の移動の場合、徒歩やサイクリングがCO2の排出量が最も少ない移動手段になります。またグラフにはありませんが、1kmのサイクリングにおけるカーボンフットプリントは、効率的なサイクリングと食事の内容によりますが、通常1キロあたり16〜50gのCO2eqになると言われています。
飛行機を利用すること、1人で車を運転することが最もCO2の排出量の多い選択肢です。この2つのうちどちらがマシかは、移動距離によって異なります。中距離(1000km未満、または英国内の国内線)を移動する場合は、中程度の車よりも飛行機の方がCO2の排出量が多くなります。もし長距離の場合(1000km以上、または国際線)は、同じ距離を車で走行するよりも、実際には飛行機を利用したほうが1kmあたりのCO2の排出量はわずかばかりですが少なくなります。
お住まいの地域の電力源のCO2の排出量も重要なポイントです。石炭の代わりに原子力や再生可能エネルギーで電力を供給していれば、電気自動車や電気鉄道の方がより効率的です。例えば、フランスは非常に「グリーン」な電力ミックス:電力の90%以上が低炭素源であり、そのうち70%は原子力によるものを利用しています。フランスで短距離の飛行機を利用する代わりにユーロスターに乗れば、旅行にとって残されるカーボンフットプリントを約96%削減することができます。
車を運転する際の排出量は、主にどの車を使用しているか、また同乗者の人数によって異なります。小型の軽自動車を運転した場合、1kmあたり111gのCO2eqを排出するのに対し、大型の4×4車は1kmあたり200gのCO2eqを排出します。この場合、同じ場所への同乗者を1人追加すると、1人キロあたりの排出量は半減します。
例えば、エジンバラからロンドンまで(約500km)車で移動した場合、100kg近いCO2eqを排出することになります。飛行機を利用した場合、約3分の1(128kgのCO2eq)になり、電車の場合はおよそ20%(21kgのCO2eq)にまで削減されます。
それぞれの移動手段のCO2排出量は下記の通りです。
Travel mode | Greenhouse gas emissions |
Black cab (taxi) | 212 g |
Bus | 105 g |
Coach | 28 g |
Diesel car, 2 passengers | 85 g |
Diesel car, 4 passengers | 43 g |
Domestic flight | 255 g |
Eurostar (international rail) | 6 g |
Ferry (car passenger) | 130 g |
Ferry (foot passenger) | 19 g |
Large car (diesel) | 209 g |
Large car (hybrid) | 132 g |
Large car (petrol) | 283 g |
Large car (plug-in hybrid electric) | 77 g |
Large electric vehicle (UK electricity) | 67 g |
Light rail and tram | 35 g |
London Underground | 31 g |
Long-haul flight (business class) | 434 g |
Long-haul flight (economy) | 150 g |
Long-haul flight (economy+) | 240 g |
Long-haul flight (first class) | 599 g |
Medium car (diesel) | 171 g |
Medium car (hybrid) | 109 g |
Medium car (petrol) | 192 g |
Medium car (plug-in hybrid electric) | 71 g |
Medium electric vehicle (UK electricity) | 53 g |
Motorcycle (large) | 135 g |
Motorcycle (medium) | 103 g |
Motorcycle (small) | 84 g |
National rail | 41 g |
Petrol car, 2 passengers | 96 g |
Petrol car, 4 passengers | 48 g |
Short-haul flight (business class) | 234 g |
Short-haul flight (economy) | 156 g |
Small car (diesel) | 142 g |
Small car (hybrid) | 105 g |
Small car (petrol) | 154 g |
Small car (plug-in hybrid electric) | 29 g |
Small electric vehicle (UK electricity) | 46 g |
Taxi | 150 g |
上のグラフを見る限り、飛行機の1キロあたりのCO2排出量は、国内線の方が短距離の国際線よりも多く、長距離の国際線の方がわずかに少ないことにお気づきでしょう。これはなぜでしょうか?
国際クリーン輸送協議会(ICCT)は、民間航空会社のCO2排出量に関する報告書の中で、飛行距離に応じた炭素強度(乗客1kmあたりで排出されるCO2のグラム)の変化の内訳を示しています。このグラフは、炭素強度を赤い線で示しています。飛行距離が非常に短い(1,000km未満)場合、炭素強度は非常に高く、1,500〜2,000km付近までは距離に応じて低下し、その後は横ばいになり、距離の増加に伴って殆ど変化しないことがわかります。
これは、離陸には飛行の「巡航」段階よりも遥かに多くのエネルギーを必要とするためです。そのため、非常に短いフライトでは、離陸に必要なこの余分な燃料の分、より効率的な「巡航」段階に比べて大きなものとなります。ICCTはまた、短距離飛行には燃料効率の低い飛行機が使用されることが多いと指摘しています。
(注:この記事はOur World in Dataに掲載されている記事をデータのじかん編集部が独自に翻訳したものです。)
(原文:Which form of transport has the smallest carbon footprint?/翻訳:小林玲実・データのじかん編集部)
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