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家を買う上でネックとなるのが、やはり住宅ローンでしょう。数十年も払い続けることを躊躇し、「やっぱり賃貸でいいや」と考えている人も多いのではないでしょうか。筆者も持ち家に住んでいますが、このままずっと毎月返済し続けるデメリットを感じています。
この住宅ローン負担が軽減されれば、生活も楽になりますし、新たなチャレンジ(例えば大学院に通うなど)ができるようになるかもしれません。そんな夢のような話を実現させてくれるかもしれない会社があります。それが、今回紹介する「セレンディクス」という会社です。
セレンディクスは、3Dプリンター住宅の事業化を日本で初めて実現させました。建設用ロボットプリンターを用いた生産方式で、大幅な建設コストの削減を可能にしています。同社のブログには、「車を買う価格で買えるスタイリッシュな生活を皆様にお届けします」とあります。車を買う価格で家が買える!?まずはどんな家なのか、見ていくことにしましょう。
まずはSphere(スフィア)と呼ばれる家から。
近未来的な外観となっており、セレンディクスによれば「高さ約4m壁厚30㎝の強固な外装構造は、高い耐熱性、耐震性、耐久性を実現しています」とのこと。外壁にはガラス繊維が混合された新素材の防水塗料が使われており、高い防水性能が得られるようです。外装色はカスタマイズ可能。
なんと10㎡しかないスペースに2人を収容できるとあり、ベッド・デスク・チェアの3つが中に設置されているそう。「ゆったりとした」作業机とベッドと同社ホームページには書かれていますが、これは実際に見てみないとわかりませんね(笑)。
このように、実際に住むにはあまり適していないように思えます。しかし、書斎としてや自分だけのスペース(作業部屋)のために庭に置いたりなどはもちろんのこと、災害時の仮設住宅などとしてはかなり良さそうです。それにしても、24時間で家がつくれる時代になったのだなあと、技術の進歩には驚くばかりです。
上の家はちょっと……という方には、こちらのほうはいかがでしょう。Fujitsuboと呼ばれる49㎡の家です。写真で外観を見ると、いささか近未来感は否めないものの、いわゆる住居と呼べそうな見た目です。部屋の間取りを見ても、ダイニング・キッチン・ベッドルームなど、一般的な住居にある部屋は揃っています。これなら住んでみたい、という人も中にはいるかもしれません。
このserendix50(フジツボモデル)ですが、1LDKでわずか550万円。建設にかかる期間も2日間となっている模様。550万円だったら手が届かないほどではないですし、何より完成まで2日という点が魅力ですね。今後、日本家屋風のデザインの商品が出てきたら、ますます注目されていくものと思われます。
ところで海外では、3Dプリンターを使った住宅はどの程度進んでいるのでしょうか。
不動産テック専門メディア「スマーブ」によると、ニューヨークとオスロに拠点を構えるFramlabという会社が、ニューヨークに「Homed」という商品を展開しています。特筆すべきは、ビルの窓のない壁面を利用している点。ここに、3Dプリンターを使った六角形の住宅ユニットを取り付け、住居としてリリースしました。同記事によれば、ニューヨーク市が抱えるホームレス問題を解決するためのものだそうですが、どこか「中銀カプセルタワービル」を彷彿させるところがあり、不思議と馴染みがある印象を受けます。
サウジアラビアの不動産開発会社Dar Al Arkanは、地上3階建て、130㎡もの広さを誇る住居を3Dプリンターで実現しました。バスルームが2つもあり、浴室付メイドルームや多目的ホールまであります。バブリーな雰囲気は、サウジアラビアならではですね。写真で見た限り、ごく普通の住居にも見え、日本の高級住宅街にあっても違和感はないのではないかと思われます。
オランダの不動産管理会社Vestedaは、3Dプリンターでつくった住居をついに賃貸物件として提供する事業を始めました。94㎡、2LDKの平屋となっており、家賃は月800ユーロ(約12万6000円)。近未来感あふれる外観ですが、ちょっと住んでみたい気持ちもあります。94平米で12万6000円という相場も妥当な水準と言えますね。
3Dプリンターは納期が短いというメリットのほかに、「材料の無駄が出にくい」という長所もあります。また、上記のオランダの賃貸物件では、3Dプリンター用に開発された特別なセメントを使用しており、従来のセメントよりもCO2排出量を削減できたのだとか。今後はより環境負荷の少ない素材の改良・開発が進められているといい、3Dプリンターを用いた住居建設は、まさにSDGsのためになるものとして注目されているのです。
以上、日本と海外の事例を取り上げました。国内でも、建設用3Dプリンターメーカー「Polyuse」と「MAT一級建築士事務所」による共同事業において、日本初の建築基準法に準拠した3Dプリンターによる建築物が誕生しました。もちろん、記事冒頭のセレンディクスの住居も、日本の建築基準法に準拠しています。このように、3Dプリンターによる住居建設も、現実味を帯びてきているのです。
実際に住む家として購入するのはまだ先の話かもしれませんが、例えば災害時における仮設住宅の建設などで、このような技術は活かせるのではないかと思います。災害の多い日本だからこそ、3Dプリンターによる住居建設には注目していきたいものです。
(安齋慎平)
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