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「世界初のツイート」が3億円以上で落札!「 8歳児の絵」が140万円に……!
日本のNFT元年と言われる2021年、上記のような「NFTアート」関連のニュースが注目を集めました。
他方、仕組みを良く知らないまま話題性や投機的側面にばかり着目する風潮に、警鐘をならす声も少なくありません。
NFTとはいったい何で、どんな可能性やリスクを持つのでしょうか?
本記事では、NFTについて基礎からご紹介。ブロックチェーン技術やイーサリアム、メタバースなどの関連用語も解説します!
NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)とは、“唯一無二であることが証明されたデジタルデータ”のことです。デジタルデータはコピーが容易かつ、オリジナルと区別がつかないのがこれまでの常識でした。例えばこの記事もそのままそっくりコピーして見分けがつかないものを公開することは可能です。ドメインが違っても、“どちらが本当のオリジナルか”を証明するには時間も手間もかかります。
仮想通貨の取引管理などでも使われているブロックチェーン技術を用いることで、オリジナルの証明を容易にしたのがNFTの革新的なポイントです。これにより、ありとあらゆるデジタルデータを現実世界のように「所有」することが可能になります。NFT化できるデータの例を挙げると、以下の通り。
・アート(デジタル上の絵画、彫刻など)
・音楽
・ゲームのアイテム
・デジタルファッション
・デジタル上の物件
・ファンクラブのデジタル会員証
・SNSの投稿
・ブログ記事
そして、データをNFTとして所有することは、売買したり、資産として残すという次の選択肢につながります。冒頭で触れたニュースのようにNFTにときとして多大な評価額がつくのは、コロナ禍による世界的な金余りなどの事情も指摘されていますが、デジタル上で資産を所有できるという新しい価値に可能性を感じた人が多かったという理由も大きいでしょう。
ブロックチェーンはネットワーク内の相互承認・監視のシステムにより改ざんや消去、ネットワーク障害を防ぐことのできるデータの管理システムです。ノードと呼ばれるネットワークの参加者ひとりひとりが取引データを分散して保有し、そのデータをブロックという単位で暗号化し、記録、共有することで中央管理者なしにデータを管理することを可能にします。
ブロックチェーン技術を用いたシステムはビットコインをはじめ多数存在しますが、NFT市場で先行するのは仮想通貨としての時価総額2位(2021年10月28日時点)で、スマートコントラクト(条件付けにより取引を自動化する仕組み)を扱える「イーサリアム」です。
それでは、NFTの持つメリット・可能性を3つのポイントでみてみましょう。
NFTが実現する技術の先にあるのが「メタバース」という概念です。メタバースとは仮想空間に構築されたもうひとつの現実のこと。現在は特定の設定、サーバ内でゲームなどのバーチャル世界は構築されていますが、それを拡張し、メタバース内で遊びや仕事、恋愛などもうひとつの生活を送る未来が想定されています。2021年10月発表された米Facebook改名後の名前、メタ(Meta)も「メタバース」から取られていますね。
そして、現実と同様の生活を送るためにはものを「所有」することが不可欠です。例えば通常は特定のゲームのアイテムは別のゲーム世界には持ち込めませんが、NFTによりそれが可能になると期待されています。
NFTアートやNFTファッション、NFT不動産などデジタルアートであっても唯一性が保証されることで新たな交換価値が生まれるというのももちろんNFTの重要なポイントです。ブロックチェーン技術を用いれば、NFTが売買されるたびに最初の所有者にさかのぼってリターンが還元されるという仕組みを設けることも可能になります。
現実のアートやコレクターズアイテムは管理や鑑定に大きなコストが発生しますが、確かな鑑定書がブロックチェーンにより保証されているような状態のNFTならば、そのような問題は発生しません。所有権を移転するたびに管理団体に登録や訂正を依頼する手間も、データ管理のコストなども削減されるのです。
非常に夢のある技術に思えるNFTですが、新しい技術であることも相まってリスクも小さくありません。こちらも、メリット・可能性と同じく3ポイントでご紹介します。
NFTが法律や会計上どのように位置づけられるのか理解している方はそう多くないでしょう。前例も少なく、どこまでの権利を明け渡したのか、NFTの取引に関する会計処理はどうすべきかについて理解が不十分なまま、知らず知らずのうちに法律に抵触したりトラブルに巻き込まれたりする可能性は否めません。著作権法、金融規制法、景品表示法などNFTと関連の深い法律は多数存在します。また、NFT制作者のあずかり知らぬところで起こったトラブルの責任が、のちに問われる可能性も指摘されています。
NFTブームの盛り上がりとともに、他人が権利を持つ商品を勝手にNFTとして販売する事案が世界中で増えているといいます。正当な権利を保証するための技術であるNFTが、著作権侵害の原因になるとはなんとも皮肉な状況です。防ぐための有効な方法も「先に著作権者が登録しておく」などのほかに確立されておらず、根の深い問題となっています。また、NFTがマネーロンダリング(資金洗浄)を容易にするのではないかという懸念もあります。
NFTに限った話ではありませんが、ブロックチェーン技術はデータの暗号化にあたってコンピュータが膨大な計算を行う必要があります。イーサリアムのネットワーク手数料をガス代といい、そのコストもNFT普及の課題と指摘されていますが、現実のエネルギーは電力であり、大量消費は環境破壊につながります。
何かと話題性の高いNFTについて、基本を説明したうえでプラス面・マイナス面の両方を検証してみました。2017年ごろに登場した新しい概念であり、良くも悪くも未知の可能性が広がっています。今後も進化を遂げていくであろう分野ですので、活用してみたい、という方は常に最新情報を探し、アップデートを続ける必要がありそうです。
新規参入したい場合は、「NFTビジネスに関するガイドライン」(日本暗号資産ビジネス協会)や書籍を使って、下調べを徹底することをおすすめします。
【参考資料】 ・天羽健介 (著), 増田雅史 (著) 『NFTの教科書 ビジネス・ブロックチェーン・法律・会計まで デジタルデータが資産になる未来 Kindle版』朝日新聞出版、2021 ・swmr「NFTアートには手を出すな!」┃note ・話題のNFTとは?10分でわかる仕組みと最新の活用例を紹介┃Coincheck ・森川夢佑斗 (著)『ブロックチェーン入門 (ベスト新書) Kindle版』ベスト新書、2017 ・SNSの投稿が数億円に? 話題の「NFT」の仕組みと魅力を解説┃EL BORDE by Nomura ・TwitterのドーシーCEOの初ツイートNFT、3億円超で落札 全額寄付┃IT media NEWS ・斎藤健二,ITmedia「唯一無二のアイテムをデジタル化 NFTとは何か?」┃ITmedia ビジネスONLiNE ・杉井靖典 (著) 『いちばんやさしいブロックチェーンの教本 人気講師が教えるビットコインを支える仕組み 「いちばんやさしい教本」シリーズ Kindle版』インプレス、2017
(宮田文机)
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