【中学野球チーム、どう選ぶ?②】体験・見学で何を見る? 何を聞く?‐“データにない”情報の見つけ方 | データで越境者に寄り添うメディア データのじかん
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【中学野球チーム、どう選ぶ?②】体験・見学で何を見る? 何を聞く?‐“データにない”情報の見つけ方

【中学野球チーム、どう選ぶ?②】体験・見学で何を見る? 何を聞く?‐“データにない”情報の見つけ方

現在、中学1年生の息子が小6の終わりに差しかかる頃、我が家では「中学でどの野球チームに所属するか」について、約3ヵ月にわたるチーム選びの紆余曲折がありました。前回の記事では、中学野球チーム選びが難しい背景や、子どもとの対話を通じて「どんな野球をしたいか」という軸を定め、チーム選びをはじめた経緯についてご紹介しました。今回はその続編として、実際に気になる硬式チームを見学・体験した経験から、チーム選びのプロセスについて振り返ります。不確実な情報の中からの意思決定を行った“リアル”と、それでもなお残る「決め手の見えにくさ」について、ご参考にしていただければと思います。

【中学野球チーム、どう選ぶ?①】なぜ“中学野球チーム選び”が難しい?──選択肢の多さと「情報の見えにくさ」にどう向き合うか

【中学野球チーム、どう選ぶ?①】なぜ“中学野球チーム選び”が難しい?──選択肢の多さと「情報の見えにくさ」にどう向き合うか

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先輩パパの助言──「全部見学に行ってみたらいい」

実際にチームの見学や体験に足を運ぶ前に、まずは「経験者の声を聞こう」と考えました。自分たちだけで情報を集めても限界があるだろうと思ったからです。幸い、近隣の学童野球仲間の中に、同じく硬式チームへの入団を検討しているご家庭があり、一緒に行動することになりました。さらに、その知り合いのネットワークをたどると、すでにお子さんを硬式チームに預けている先輩パパをご紹介いただけることに。そこで私たちは、まずヒアリングを実施することにしました。

その際に出てきたのが、「気になるチームがあれば、全部見に行ったらいい。こんな機会はめったにないのだから」という印象的なアドバイスです。

この言葉は非常にシンプルですが、チーム選びの出発点を大きく方向づけるものでした。インターネットや口コミから得られる情報には限界があり、最終的には現場に行って自分たちの目で確かめるしかない。そうした姿勢の大切さを改めて教えてもらった気がします。

我が家では、この助言に従う形で「できるだけ多くのチームを見学・体験してみよう」という方針を固めました。条件は2つ。「自宅から通える範囲に活動拠点があること」、そして「リーグは問わない」ということです。中学硬式野球にはリトルシニア、ボーイズ、ポニーなど複数のリーグがありますが、最初から絞り込むのではなく、むしろ幅広く体験することで違いを実感しようと考えました。

見学や体験の時期についても、タイミングを見計らう必要がありました。小学生の軟式野球チームは、強豪であれば年末まで大会が続きますが、多くのチームは10月末から11月頃にかけてリーグ戦や公式戦が終了します。6年生にとっては、ちょうど「次のステージに向けた準備期間」が始まる時期です。

我が家も例外ではなく、学童チームでの公式戦が終わった11月頃から、いよいよ本格的に見学・体験をスタートさせました。子どもの野球人生の次のステージを決める第一歩として、親子ともに期待と不安を胸に、複数のチームの門を叩いていくことになったのです。

見学を重ねても、かえって迷いは深まる

当初は、いくつかのチームを見学すれば自然と絞り込めるだろうと考えていました。ところが実際には、「見学を重ねれば重ねるほど迷いが深まっていく」という状況に陥りました。

体験の形態にもチームによって違いがあります。たとえば、チームイベントとして開催される「体験会」に参加するケースや、普段の練習に小学生が混じって体験参加できるケースがあります。前者は「お客様」として迎えられるため、すべてのメニューに制約なく参加できる点がよい点です。一方、後者は日常の練習の雰囲気が見えやすく、選手と指導者との距離感や練習のテンポなど、チームの「素の顔」を垣間見ることができます。最近では、体験会をあえて設けず、オフシーズンの練習に小学生を受け入れるチームもあり、我が家でも11月以降の週末は都合がつく限り、練習や体験会に参加を申し込み、足を運びました。

そして、12月までに7〜8チームを見学し、中には複数回訪れたチームもありました。また、学区内の(息子が通う)中学の軟式野球部の体験会にも参加し、幅広く比較しました。しかし見学後、息子に感想を聞くと「硬式でやりたい」という強い意思は一貫していたものの、個々のチームについては「ここが絶対によい」といった大きな差は感じられない様子。むしろ、親である私の印象と息子の所感が食い違うこともあり、判断は難しくなるばかりでした。

こうした迷いを前にして、私たちは「何となくの印象」に流されないよう、改めてチームを選ぶための評価軸を整理する必要があると感じました。そこで、見学の際に確認すべき質問事項をまとめ、次のステップに備えることにしたのです。

改めて整理した「評価軸」と質問リスト

見学を重ねても決め手が見えない中で、私たちは「どんな情報を基準にすべきか」を整理し、評価軸をつくることにしました。公開情報から分かる範囲は事前に調べ、現地ではそれ以外の項目を重点的に質問するようにしたのです。

質問項目の一例(我が家の場合)

○チーム理念・目標:勝利重視か育成重視か。人格形成にどう向き合うか。

○活動場所・時間:通いやすさ、活動日の多さ。

○育成方針:指導者の経験や資格、理論のアップデート、データや科学的アプローチの有無。怪我防止の取り組み(投球数や登板間隔の管理、コンディショニング)。

○出場機会:レギュラー偏重か、幅広い選手に機会を与えるか。

○進路:高校とのつながりや進学実績。勉強との両立のしやすさ。

○費用面:部費や用具代、遠征費、交通費の負担。

たとえば「チーム理念や目標」。勝利を最優先にするのか、育成を重視するのか──、その姿勢は子どもに大きく影響します。また、指導者の人柄や担当、ライセンスの有無、安全面への取り組みも重要でした。試合や練習での投球数の制限、登板間隔、ケガの際の対応など、長期的な育成方針をどう考えているかも可能な限り確認しました。さらに、勉強との両立や進路支援の姿勢、塾や模試での欠席をどう扱うかといった点も、親としては外せません。そして、費用については、部費だけでなく遠征費や用具代まで含めて具体的に尋ねるようにしました。

興味深かったのは、チームによって体験参加者への対応が大きく異なることです。体験中に親を集め、監督やコーチが直接説明する機会を設けるチームもあれば、親に自由に見学させ、近くの保護者に質問できるように配慮するチームもありました。

こうして評価軸をもとに観察や質問を重ねることで、徐々に各チームの特徴やチームカラー、保護者としての1年後のリアルな姿などが想像できるようになってきましたが、それでも「決定打」となる要素を見つけるのは容易ではありませんでした。

それでも残る“選びきれなさ”と方向性の模索

翌1月に入る頃には、最終的に候補は2、3チームに絞られましたが、それぞれに強みと不安材料があり、比較すればするほど迷いは深まります。本人の「硬式でやりたい」という希望を叶えたいと考える一方で、親としては学業との両立や費用負担、ケガのリスクなど、どうしても現実的な条件に目がいってしまうのです。

そんな折、息子の学童時代の先輩パパに思い切って相談しました。実際に子どもを硬式チームに通わせている経験者として、「試合数や出場機会は、その年の部員数やチームの強さで変わるから一概には言えない。また、リーグによって試合数や出場機会の考え方も違う」という現実的なアドバイスを得ました。

また、「硬式野球チームを“野球の進学塾”の側面もあると捉え、高校野球を見据えて進路実績を重視するのも考え方の一つ」というアドバイスはなるほどと感じました。そして、「入ってみないと分からないことも多く、そのチームが“子どもに合うか”は運の要素も大きいので、最終的にはチームの雰囲気や、子どもが行きたいと思う気持ちを重視するのがよい」というアドバイスでした。

こうした助言を受け、我が家の選択肢は2つに整理されました。一つは、強豪チームで揉まれ、野球推薦などを通じて高校進学につなげる道。もう一つは、育成重視のチームで試合機会を得ながら、学習塾との両立を確保する道です。ただ、強豪チームはスカウトに見てもらうチャンスは多そうであるものの、試合に出られなければ意味がありません。そのあたりは、息子の成長度合いや、チームメイトの実力といった「運」の要素もありそうです。

進路実績や戦績の数字は比較しやすい一方で、実際の環境が子どもに合うかどうかは数字では測れません。強豪チームで揉まれるか、育成重視のチームで出場機会を得ながら勉強時間も確保するか――、私たちは、この二択を前に、改めて子どもの意思を尊重しながら方向性を見極めていく必要があると感じました。

「理屈では割り切れないし、最後は親子でどこまで納得感を持てるか」。そんな思いを胸に、我が家のチーム選びは佳境を迎えていきました。

まとめ

体験や見学を通じて得られたのは、公開情報だけでは分からない「現場の空気」や「チームの温度感」でした。しかし同時に、それが決め手になるわけではなく、最後は親子の価値観やタイミング、そして“縁”が大きな意味を持ちます。次回は、最終的にどのような判断を下したのか。そして入団後に「入る前には分からなかったこと」について触れてみたいと思います。

書き手:阿部 欽一氏
「キットフック」の屋号で活動するフリーランスのライター/ディレクター。社内報編集、編集プロダクション等を経て2008年より現職。「難しいことをカンタンに」伝えることを信条に、「ITソリューション」「セキュリティ」「マーケティング」などをテーマにした解説記事やインタビュー記事等の執筆のほか、動画やクイズ形式の学習コンテンツ、マンガやアニメーションを使ったプロモーションコンテンツなどを企画から制作までワンストップで多数プロデュースしています。
 

(TEXT:阿部欽一 、編集:藤冨啓之)

 
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