

目次

まずは制度面から整理します。
児童手当は長らく「中学生まで・所得制限あり・月1万円程度」が基本でしたが、2024年10月から大幅に拡充されます。
● 所得制限を撤廃
● 対象年齢を「高校卒業まで」に延長
● 第3子以降は月3万円に増額
これにより、すべての子どもが等しく支援を受けられ、多子世帯ほど手厚い給付が行われます。教育費のピークにあたる高校生年代への支援拡大は、まさに「2人目、3人目の壁」を下げる狙いがあります。
育児休業給付金も大きく変わります。現行では休業開始から半年間が給与の67%ですが、2025年度からは両親がともに育休を取り、一定の条件が満たせる場合、最大28日間、手取りベースで10割(実質非課税・社会保険料免除)が保障されます。
男性育休の取得率を2030年に85%まで引き上げる目標も掲げられており「収入が減るから休めない」という最大のハードルを下げる制度設計になっています。

ここで、2010年以降の婚姻や出生に関するデータを振り返ってみましょう。
● 平均初婚年齢(妻):2010年頃は28歳前後 → 2022年には29.7歳
● 第1子出産時の平均年齢:2011年に30歳を超え → 2022年は30.9歳
● 合計特殊出生率(TFR):2010年は1.39 → 2015年に1.45へ回復したものの、その後低下し2023年は1.20と過去最低
加えて、婚姻件数は減少傾向が続き、2024年はわずか48.6万組。出生数も68.6万人と、政府予測を大きく下回るペースで減少しています。
つまり制度が徐々に強化されてきたにもかかわらず、婚姻・初産年齢は上昇し、出生数はむしろ急減しているのが現状です。
では、児童手当や育休給付は出生にどの程度影響を与えているのでしょうか。研究や調査からは、次のようなポイントが見えてきます。
● 児童手当は効果が小さいが無視できない
内閣府のサーベイによると、児童手当の増額は出生率をわずかに押し上げる傾向が確認されていますが、その効果は限定的です。一方で「子育てや教育にお金がかかりすぎる」という理由で理想の子ども数を諦めている世帯は多く、特に第2子以降の出生を支える効果は期待できます。
● 父親の育休取得は出生促進に直結
サーベイによると「夫が家事・育児を分担している家庭ほどもう一人子どもを持ちたい」と考える傾向があり、育休給付100%はこの点でポジティブな効果が大きいと考えられます。実際、北欧諸国でも父親が育児に関わるほど第二子以降の出生率は上がることが知られています。
● 現金給付よりも保育・住まいの環境整備が重要
自治体ごとの比較では、児童手当上乗せよりも保育所整備や医療費助成といった現物支援の方が出生率に有意な効果を持つと分析されています。
首都圏の自治体は国の制度に加えて独自施策を展開しています。
● 東京都:「0-18サポート」で18歳まで月5,000円を支給、私立高校授業料の実質無償化など育児支援拡充。AI婚活マッチング導入など多角的支援を展開。
● 千代田区:高校生にも月5,000円の育成手当、妊娠時に誕生準備手当(4.5万円)を支給。
● 松戸市(千葉県):9年連続で待機児童ゼロを達成し、共働き子育てしやすい街ランキング高順位を維持。
こうした地域では出生数や人口流入が一定程度維持されており、「支援の厚み」が子育て世帯の定住や転入に寄与していることがわかります。
児童手当の拡充や育休給付の実質100%化は、経済的不安や仕事と育児の両立不安を和らげ、子育て世帯に安心を与える施策です。
ただし、データが示す通り「制度=出生率の回復」には直結していません。少子化の背景には、晩婚化や未婚化、住宅費や教育費の高さ、働き方や価値観の多様化といった構造的要因があります。
それでも支援策には大きな意味があります。子育て世帯が「もう一人産もう」と思える土壌づくりは、制度なしには実現できません。経済的支援・保育環境・働き方改革を組み合わせた総合的なアプローチこそが、少子化に歯止めをかける鍵となるでしょう。
(大藤ヨシヲ)
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