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Known unknownsとUnknown knowns 「知らないことを知っている」とは?

         

「何かが起こっていなかったという報告は、いつ聞いても興味深い。知ってのとおり、知っていると知っていること、つまり一般に知られていると私たちが知っていることがあるからだ。さらには知らないと知っていることもある。つまり、知られていないことがある、と私たちが知っている状態だ。」

人を煙に巻くようなこの物言い、マザーグースの歌詞ではありません。これは2002年のある記者会見で、イラク攻撃の正当性を追求されたラムズフェルド元米国防長官が披露したロジックです。元国防長はこのとき、他にもunknown knownsとunknown unknowns(知っていると知らないこと、知らないと知らないこと)があると述べています。

このままではいかにも政治家の詭弁という印象ですが、それぞれ意味を紐解いていくとリスク管理に役立つコンセプトになります。順番に見ていきましょう。

不確実性には種類がある

知っていること、知らないこと、知っていると知らないこと、知らないことを知らないこと、こうして書いてみるとなにかのおまじないのようにも聞こえますが、これを英語ではKnown Knowns、Unknown Knowns、Known Unknowns、Unknown Unknowns、となります。それぞれを簡単にチャートにまとめると下記のようになります。

■ Known Knowns (知っていると知っていること)

置かれている状況もとるべきアプローチも分かっている状態。例えば、オリヅルを折ってくださいと言われた場合、それを習得している人であれば、ほぼ自動的に手順を辿ってオリヅルを作成できます。また、経理係は月末に送られてくる請求書の処理をする際にいちいち手順を確認しません。それは与えられたタスクに対しての知識が十分にあり、それを行う手順を自分が知っていることを知っているからです。

■ Known Unknowns(知らないと知っていること)

それを知るべき必要性とその存在は知っているけれど、十分な情報がない状態。例えばFXをやっている人は、為替レートが常に変動することを知っており、それを利用してお金を稼ごうとします。しかし、いつどのタイミングでレートがどう変動するかは偶発的な要素(テロ、大企業の倒産、大国の首長選の結果etc)に大きく左右され、それを事前に知ることはできません。しかし、知らないと知っていることはそれについて知ろうと努力することができます。

■ Unknown Knowns(知っていると知らないこと)

知っている気はするのだけど、確信に至るような情報がない状態。いわゆる「第六感」が働いている感覚です。例えば長年の経験を持つ猟師は、何となく森のざわつきを感じ取り、獲物が近くにいると予測できます。しかしこのざわつきを理論的に説明してほしいと言われても、「長年の勘」としか答えられないのです。

もちろん勘が外れることもあります。ラムズフェルド元国防長官は、イラクの大量破壊兵器問題は自身にとって「知らないと知っていること」だったと伝えたかったのでしょう。

または、知っていることを認めたくないがために無意識に覆い隠している、という状態でもあります。幼少期の体験や家族との関係が原因でうつや怒りの発作に悩まされる人が、原因を認めるのを拒否する、といったケースがこれに当たります。

■ Unknown Unknowns(知らないことを知らないこと)

その事象について知る必要があることさえ知らず、もちろん発生の予測などできない「寝耳に水」の状態。例えば明日家に隕石が落ちてくるかどうかなど、普通は知る必要を感じることはなく、ましてや予測などできません。常に「自宅に隕石が落ちてくるかもしれない」などと心配していては、社会生活を送ることが困難になってしまうからです。非常に悲観的な言い方をすれば、私たちは皆、大なり小なり偶然の犠牲者となることを避けられないのです。

ちなみに同じ自然災害でも、大地震は「知らないと知っていること」に分類されます。いつどこで起こるかの予測は難しくても、それが高い確率で起こることは分かっているからです。

知らないことを知らない、ということはそれについてどうすることもできない、ということでもあり、ここには大きな危険性が潜んでいる可能性もあります。

日常生活でも使えるコンセプト

Unknown Unknowns以外は仕事や人間関係のリスクを客観視するのに使えます。リスクレベルは紹介した上から順に高くなっていきます。新しい事業を立ち上げたり企画に挑戦するとき、自分の置かれている状況がKnown Knownsなのか、Known Unknownsなのか知ることで、とるべき対策と行動が変わってきます。

不確実性と隣り合わせのVUCAな時代だからこそ、リスクを俯瞰するスキルを身につけておきたいものです。

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