INDEX
宮西 京華(みやにし けいか)
保険会社で事務職をやっているデータマネジメント担当。歌い手動画を見るのが好き。
松田 紗友里(まつだ さゆり)
マーケティングが専門でSQLが得意。データ分析担当。ゲームやアニメが好き。
吉田 剛士(よしだ たけし)
専門はシステムだけどジェネラリストデータ基盤の構築担当。新しい技術を試してみるのが好き。
今林 健介(いまばやし けんすけ)
新設のデータ活用推進部署の部長。おいていかれないように勉強中。ゴルフや登山が好き。
データマネジメント解説、連載の第13回が始まりました。
さて、組織のMVVを決める集中討議は一通り決着がつきました。
最後に今期中に達成を目指す目標を決める時の話です。
・・・・・
MVV——つまり「ミッション・ビジョン・バリュー」についてやっと決まった。
私も議論には参加したが、役になったのかはわからない。最後に目標設定を行うことになった。
「最後は1年後に目指す目標を決めよう」
そう言ったのは、今林部長だ
「目標って……具体的にはどういうものを決めるんですか?」
私は素直に疑問を口にした。なんとなく「目標を決める」と言われると、もっと頑張ろう!みたいな気合の話かと思ってしまうけれど、そんな精神論ではなく、ちゃんと意味のあるものを決めなければならないのだろう。
「目的と目標の違い、分かる?」
松田先輩から救いの手が差し伸べられた。
「えっと……似たようなものじゃないですか?」
「うーん、少し違うかしら。目的は最終的に目指すもの。目標は、それを達成するための指標を具体的に設定するものなのよ」
私は腕を組んで考えた。目的が「会社をより良くすること」だとしたら、目標は「売上を〇〇%伸ばす」みたいな話だろうか。
「目標はSMARTに決めるといいわよ」
続けて松田先輩はさらっと言った。SMART……また横文字だ。私は思わず眉をひそめる。
「す、すまーと……?」
「SMARTはね、目標を決めるときのフレームワーク。Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性がある)、Time-bound(期限がある)の頭文字を取ったものよ」
「な、なるほど……」
言葉の意味は分かったが、それが目標とどう繋がるのかはまだぼんやりしている。
「では、意味が分かったと思うので1年後の目標を決めましょう」
なんだか腑に落ちない部分もあったが、議論は先に進んでいった。
そして、決まったのは「データを使い利益貢献した金額1億円」という目標だった。
「この目標はどのあたりがSMARTなんですか?」
やっぱりついていけていない…勇気を出して松田先輩に聞いてみた。
「一つ一つSMARTの観点で考えてみましょうか」
松田先輩が続ける。
「まず、Specific(具体的)。単に『データを活用する』ではなく、『データを使って利益貢献する』と明確にしているよね」
「なるほど、確かにふわっとした目標ではないですね」
「次に、Measurable(測定可能)。利益貢献額を1億円と設定したから、達成できたかどうかが分かりやすい」
「確かに、金額があると測れますね」
「Achievable(達成可能)はどうかしら?」
「うーん……1億円って大きいけど、不可能な額では……ないのですかね?」
「そうね、今の事業規模や成長性を考えれば、十分達成可能な数字と言えるわね」
「Relevant(関連性がある)というのはどういう意味なのでしょうか?」
「DX推進の目的が『デジタル活用による業務の効率化や顧客体験の向上』だから、それに直結しているわ」
「なるほど、会社の目的とズレていないってことですね」
「最後に、Time-bound(期限がある)。これは『1年後』と明確に設定しているから、期間内に達成しなきゃいけないという意識が持てるよね」
「確かに! 期限がないと、いつ達成するのか分からなくなっちゃいますからね」
「こうやってSMARTに考えると、目標がより具体的になって達成しやすくなるのよ」
「ありがとうございます。なんとなく分かってきました!」
「よかったわ、そしたらどうしたら目標を達成することができるのか考えてみましょう」
「……はい」
それにしても、1億円ってすごい額だ。……推し活に使えたら最高なのになあ。
・・・・・
目標を設定する意味とは何か。目標そのものの意義について、もう少し深掘りして説明します。
目標を設定することの本質的な意味は、行動の指針を明確にし、組織や個人が迷わず進むための道しるべを作ることにあります。
例えば「デジタル活用による業務の効率化や顧客体験の向上」という目的があったとします。
この目的を叶えるために漠然と目指すだけでは、どのような行動を取ればよいのかがわからず、結果的に努力が空回りしてしまう可能性があります。
そこで「利益を1億円増やす」といった明確な目標を立てることで、具体的なアクションプランを策定しやすくなり、実行に移しやすくなります。
目標はただ掲げるだけでは意味がありません。SMARTの考え方が示すように、具体的かつ測定可能で、現実的に達成可能なものでなければなりません。
たとえば、「データを活用して利益を増やす」という目標を掲げるだけでは曖昧すぎます。どのようにデータを活用するのか、どれくらいの利益を目指すのか、いつまでに達成するのかが明確でないと、実際に行動に移す際に混乱を招いてしまいます。
目標は単なる数字ではなく、組織の意義やビジョンとも結びついている必要があります。
ただ利益を増やすことだけを目標にしまうと、短期的な成果ばかりを追い求め、本来目指すべき長期的な価値が損なわれる可能性もあります。
DX推進部署の場合、データを活用することで企業の競争力を高めることが目的であり、その結果として利益が増えるという流れが理想的です。
目標とは、組織や個人が進むべき方向を明確にし、達成に向けた具体的な行動を導くための指針なのです。
よしむら@データマネジメント担当
IT業界、金融業界、エンタメ業界でデータマネジメントを担当した経験を持ち、現在もデータマネジメント担当している。データマネジメント業界を盛り上げるために、経験を通して得た知識の発信活動を行っている。
本記事は「よしむら@データマネジメント担当」さんのデータマネジメントを学べることをコンセプトの4コマ漫画「AI事務員宮西さん–データ組織立ち上げ編」のコンテンツを許可を得て掲載しています。
保険会社で事務員として働く宮西さんは、会社がAI時代に対応するために新設したデータ部門に突然配属されました。事務員からデータマネジメントのリーダーへと成長していく宮西さんの奮闘記を描いた物語。
本シリーズ「データ組織立ち上げ編」では、宮西さんがデータ利活用組織を立ち上げるまでの挑戦を描きます。IT業界、金融業界、エンタメ業界でデータマネジメントを担当した経験を持つ著者「よしむら@データマネジメント担当」さんが豊富な経験を基に執筆しています。データ組織の一員の皆様には、ぜひご一読ください。
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