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フィジカルAIと併せて知っておきたい!万物が賢くなる「AIoT」とは? IoTと何が違う? 実際にどのような価値を生み出すのか?

         

AIの性能と市場規模は加速度的に高まっています。同様に、IoTデバイスの市場も加速度的に広がっており、国際的な調査によれば、その台数は2023年の世界全体で約159億台に達しており、2030年には321億台を超えると予想されています。

こうした中で今、特に注目されているのが「フィジカルAI」です。これはAIに現実世界を認識・操作する「身体」を持たせる技術を指します。そして、このフィジカルAIを支える重要な社会基盤となるのが、今回解説する「AIoT」です。

AIoT(AI + IoT)は、単にデバイスをネットにつなぐだけでなく、AIによってモノ自体に知能を持たせる概念です。

フィジカルAIが「物理的な動きや自律制御(ロボティクス的側面)」に焦点を当てるのに対し、AIoTは「通信・ネットワークを含むシステム全体の仕組み(情報通信的側面)」を指す、より広範な概念と言えます。

「モノのインターネット」に知能(AI)を掛け合わせることで、「万物がつながる世界」からさらに先──「万物が賢くなる世界」へ。

この記事ではAIoTとは何かから、その従来のIoTとの違いやユースケースまで、基本をまとめてご紹介します。

AIoTは‟IoT(モノのインターネット)に人工知能(AI)を組み込んだ新しいIT活用の形”

AIoT(Artificial Intelligence of Things)は、‟IoT(モノのインターネット)に人工知能(AI)を組み込んだ新しいIT活用の形”です。従来のIoTでは、センサー等のデバイスが情報を収集してネットワーク経由でクラウドなどに通信し、人やシステムがデータを解析・活用します。

一方、AIoTではこの流れにAIによるデータ分析・意思決定が加わり、デバイス自体やネットワーク上でリアルタイムに高度な処理を行って自律的に動作します。

つまりIoTが「データ収集と通信」に主眼を置くのに対し、AIoTは「データ収集+AI分析と知的なアクション」まで含めた仕組みなのです。

両者の違いを表で比較してみましょう。

【IoT・AIoT比較表】

項目

IoT(従来のIoT)

AIoT(AIを組み込んだIoT)

基本機能

センサーによるデータ収集と通信

データ収集に加え、AIによる分析と自律的な制御

制御方式

予め定めたルールや人による監視・制御

機械学習アルゴリズムに基づく高度な自動制御

主な用途

モニタリング、遠隔操作、単純な自動化

予知保全、個別化サービス、複雑な意思決定の自動化

スマート照明、遠隔監視カメラ、スマート家電

自動運転車、スマート工場、AIoT家電

こうした違いを生む背景には、AIoTを構成する要素技術の追加があります。AIoTシステムは典型的には、以下のような要素から成り立ちます。

(1)環境からデータを取得するIoTセンサー&デバイス
(2)データ送信を担う通信インフラ(Wi-Fi、Bluetooth、LPWA、5Gなど用途に応じたネットワーク)
(3)データを解析し学習するAIアルゴリズム
(4)処理を実行するコンピューティング基盤(高速なエッジコンピューティングや大規模処理が可能なクラウド)

これにより、単にデータを集めるだけでなくデバイス側でリアルタイム処理が行えるようになり、ネットワーク遅延を減らした即時の判断や制御が現実のものとなるのです。

「AIoT」はシャープが2015年に提唱した登録商標。 AIoT×家電は各メーカーがしのぎを削る重要分野に!

AIoTという用語自体は、日本の大手家電メーカーであるシャープによって2015年に提唱された登録商標です。2024年9月には同社の販売する「AIoT家電」が累計1,000機種を突破したというプレスリリースが出されています。

「AIoT家電」とはその名の通りAIoTを搭載した家電であり、単に家電をネット接続してデータの送受信を行うだけでなく、クラウド上のAIが学習・最適化し、家電自身が能動的にユーザーに寄り添うことを目指したものです。

このAIoTコンセプトに基づき、シャープはロボット電話「RoBoHoN(ロボホン)」や「ヘルシオ」などのキッチン家電、空調機器、テレビ等に次々とAIoT機能を搭載しました。また2019年にはAIoT家電を統合管理するスマートホームアプリ「COCORO HOME」を提供開始し、他社製の家電やサービスとも連携可能なプラットフォームへと発展させています。

このように、AIoTの領域での最先進企業にシャープが位置付けられることは間違いありませんが、AIとIoTの融合戦略そのものは各社が推進しており、企業によって別の呼び方や文脈で語られています

たとえば、中国のスマートフォン大手Xiaomi(小米)は2019年に「スマートフォン×AIoT」を今後10年のコア戦略と位置づけ、「スマホ+AIoT」のデュアルエンジン戦略を掲げました。Xiaomi創業者の雷軍CEOは「AIoT(=智能万物互联)」すなわちAIによる万物のインターネット化を「次世代のスーパーインターネット」と位置づけ、スマート家電を含む生活中のあらゆるデバイスを互いに連携させ、音声AIで操作できる未来を描いています。実際、Xiaomiはテレビ・エアコン・洗濯機など大家電をAIoT戦略の重要構成要素と位置づけ、スマート家電分野に積極参入しています。

シャープ以外の日本企業でも、「スマート家電」や「IoT家電」、「コネクテッド家電」など用語はさまざまなもののAI×IoTの機能を搭載した家電の開発は進められています。たとえば、パナソニックは冷蔵庫に「AIエコナビ」という省エネ機能を搭載し、7種類のセンサーとIoTひとセンサーが節電をサポートし、さらにスマートフォンと連携してユーザーの生活リズムに合わせ自動で最適冷却する仕組みを実現しています。ほかにも人間センサーや気象データと組み合わせて風量や温度を自動で最適化する「エアコン」、洗濯物の重量や布地の柔らかさを検知し、自動で洗い方を最適化する「洗濯機」など、AIoT×家電で賢く便利な機能を実現した例はさまざまで、各社がしのぎを削る重要分野となっています。

名称は異なりますが、家電の知能化・ネットワーク化による新たな付加価値創出という目指す方向性は業界全体で共有されています。

今後は各社プラットフォームの相互接続性が高まり、ユーザーから見てもメーカーを超えて家中のAIoT家電がシームレスにつながる環境が整っていくでしょう。

製造、小売、スマートシティ……5つの分野におけるAIoTのユースケース

AIoTは家電などのBtoCだけでなく、製造業、小売、物流、ヘルスケア、スマートシティなどさまざまな分野で活用が進んでいます。具体的なユースケースを詳しく見ていきましょう。

【1】製造業(スマート工場)

製造業ではIoTセンサーとAIを組み合わせたスマート工場化が進んでいます。機械設備に取り付けたセンサーが稼働音・振動・温度などのデータを常時収集し、AIがそれらを解析することで予知保全(予測メンテナンス)を実現します。これにより、故障が発生する前にメンテナンス時期を予測して部品交換や修理が行えるため、計画外のライン停止を最小化し、設備の寿命延長や修理コスト削減につながります。

また、AIがセンサーからの情報を分析して製品の品質検査を自動化したり、ライン全体の工程最適化を図ったりすることで、無駄の削減と生産性向上も同時に達成されます。こうしたAIoT活用により、製造業ではダウンタイムの短縮や品質向上、作業の自動化が進んでいくと予測されています。

【2】小売業(スマートリテール)

小売の現場でもAIoTが活用されています。店舗内のカメラや商品棚のIoTセンサーが顧客の行動や在庫状況を感知し、クラウド上でAIが消費者の嗜好や購買パターンを分析することで、パーソナライズされた購買体験を提供します。例えば、来店者の動線や滞留時間をセンサーで把握し、AIが個々の顧客に合わせた商品おすすめやクーポンをリアルタイムに配信する、といった例は典型的なものでしょう。

また、AIoTにより在庫管理の最適化も可能です。センサーが棚卸データを自動収集しAIが需要予測を行うことで、欠品や在庫過多を防ぎ、適切な商品補充と在庫圧縮を実現します。大手物流倉庫では、AIが売れ行きを予測して自動で在庫補充を発注するシステムを導入し、品切れリスクを低減すると同時に在庫コストを削減しています。このようにAIoTは小売業に個客志向のサービスと効率的な店舗運営をもたらしています。

【3】物流・輸送(スマート物流)

物流分野ではAIoTによりサプライチェーン全体の最適化が進んでいます。トラックや輸送機器に搭載したIoTデバイスが位置情報や輸送状況データを送信し、AIがそれを分析することでルート最適化や配車の効率化をリアルタイムに行います。例えば、配送車両から収集したGPSデータと交通情報をAIが解析し、その時点で最も渋滞の少ない経路に動的に誘導することで、配送時間の短縮と燃料コスト削減が実現されます。また、倉庫内でもセンサー付きのロボットが導入され、AIが指示を出して商品を自動ピッキング・仕分けする自律型ロボットの事例もあります。

【4】ヘルスケア(医療・健康)

ヘルスケア分野ではAIoTが遠隔医療や健康モニタリングで重要な役割を果たしています。スマートウォッチや医療用IoT機器が患者の心拍、血圧、血糖値などバイタルデータを常時計測し、AIが異常の兆候を分析して早期に医療従事者へ警告するシステムが実用化されています。これにより患者は自宅にいながら慢性疾患の管理が受けられ、医師は入院や対面診療に頼らずに迅速な対応が可能となります。

さらに医療画像診断では、撮影装置がIoT的にクラウドと連携し、AIが画像を解析して医師に診断支援情報を提供する例もあります。総じてAIoTはヘルスケア領域において患者の見守り強化や個別化医療の推進に大きく貢献しており、医療サービスの質向上と効率化を両立させています。

【5】スマートシティ(都市インフラ)

都市インフラにおいても、AIoTはスマートシティ実現の中核技術となっています。例えば交通分野では、道路に設置された交通センサーやカメラ、信号機のIoTデータをAIで解析し、リアルタイム交通制御に役立てられます。

またエネルギー管理の面では、街路灯やビルの照明をIoTでつなぎ、AIが人通りや明るさに応じて照度や点灯エリアを調整するスマート照明が実現しています。これにより不要な点灯を減らし、省エネと街の安全性向上を両立しています。同様にゴミ収集や上下水道管理でもセンサーとAIの組み合わせで効率化が図られています。

このようにAIoTは都市を構成する様々な要素を賢く連携させ、市民にとってより快適で持続可能な都市環境(スマートシティ)の構築に不可欠となっています。

終わりに

近年対話型チャットボットに代表されるAIが飛躍的に進化し「賢く」「使いやすく」なっていることには多くの方が同意されるでしょう。そこで、AIに弱点があるとすれば、人間のようにマルチモーダルで常時情報を取得できる「身体」がないことだとよくいわれます。

光、音、圧力、位置など膨大なデータをマルチモーダルかつ、常時取得できるIoTはそんなAIによってまさに「鬼に金棒」なパートナーと言えるかもしれません。反対にIoTの側から見ても、AIとタッグを組むことでデータから引き出される価値は飛躍的に高まります。

これからどんどん進化・拡大するであろうAIoT市場に今から注目しておきましょう!

(宮田文机)

 

参照元

・AIoT家電が累計1,000機種を突破(シャープ株式会社)|PRTIMES
・AI×IoTで、家電は進化の時代に|SHARP
・【対談】シャープ:BtoCからBtoBへの領域拡大‐メーカーが挑む 新事業AIoTの可能性と勝機|MARKETONE
・雷军:大家电是小米AIoT战略的重要组成部分|雷峰网
・令和4年度 流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業(サプライチェーンにおけるデジタル技術活用実態等調査)報告書(みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社)|経済産業省
・The Power of AIoT for Business: Revolutionizing Industries|kajeet
・画像診断バイオセンサとAIoTの融合による喉頭がん早期スマート監視(国立大学法人福井大学)|国立研究開発法人科学技術振興機構
・Number of Internet of Things (IoT) connections worldwide from 2022 to 2023, with forecasts from 2024 to 2033|statista

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