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メートル法はいかにして生まれたのか? あるいは統一単位がない世界で君臨する不都合の数々

         

「1メートル80センチの身長」や「牛乳の1リットルパック」「熟成肉の300グラムステーキ」「100メートル走」という言葉から、私たちは「だいたいこれくらいの量だ、このくらいの大きさだな」と想像することができます。

ところが、「着物の身丈が四尺、袖丈は一尺三寸」などといわれた場合、大抵の人はそれがどれくらいの大きさをさしているのかわかりません。尺(しゃく)や寸(すん)は長さを測る単位で、中国や朝鮮、日本など東アジアで使われていた尺貫法(しゃっかんほう)と呼ばれる単位系に属しています。一尺は約30センチですが、和装に用いられる尺は「鯨尺」と呼ばれるもので、一般的な尺より大きく、鯨尺の一尺は約38センチです。

寸は一尺の10分の1で、いまでいうと約3センチメートルになります。だから、おとぎ話の一寸法師の身長は約3センチです。着物の身丈が四尺であれば1メートル52センチ、袖丈が一尺三寸であれば41.8センチとなります。尺や寸というといかにも昔、江戸時代くらいに使われた単位に思えますが、日本では60年前の1958年まで使われていました。

単位は地域ごとに異なっていた

このように、ものの大きさや長さ、量を測る単位は、かつては地域ごとに異なっていました。たとえばエジプトでは、腕の肘から中指の先までの長さを基準にした「キュビット」という単位を使い、ピラミッドを建築したことがわかっています。また日本では、握りこぶしの横幅を束(つか)、手の親指と中指を広げた長さを咫(あた)、両手を広げたときの長さを「尋(ひろ)」と呼んで使っていました。イギリスでは、親指の幅をインチ、足のつま先からかかとまでの長さをフート(フィート)と呼んで、いまでも長さ・大きさの単位として使用しています。

手の長さや指の大きさを使った測量は、身近でわかりやすい反面、個々人の大きさによってバラツキがあります。そこで昔は、その土地の領主や為政者など、最も身分の高い人の身体を基に大きさを決めていました。

統一単位がないことによって生まれる不都合

ただ、このやり方は1つ不都合が生じます。その土地や地域内で取引をする分には問題ありませんが、よその土地・地域と取引をする場合、同じ単位を使っていても実際の量が異なるケースがあるからです。たとえば隣の国の布一尺が40センチで、こちらの国の一尺が35センチであれば、同じ単位とはいえ、隣の国の方が損をすることになります。

こうした単位の不都合は、とくに交通や交易が広域化した近代以降のヨーロッパで大きな課題となりました。この課題に対し取り組んだのがフランスです。

新しい単位はフランスで生まれた

フランス革命後の1790年、国民議会議員のシャルル=モーリス・ド・タレーラン=ペリゴール(Charles-Maurice de Talleyrand-Périgord)が「世界中の人が使えるように、長さの基準を統一して新しい単位をつくろう」と提案しました。この決議により、学者や有識者が集まった委員会が結成され、議論の結果、「地球の子午線を基準に長さの単位を決めること」となったそうです。

そして1792年、委員会はパリを基点に北のダンケルク(フランス本土の最北端)、南はスペインのバルセロナに測量チームを派遣し、子午線の計測に着手しました。ちなみにダンケルクで測量をしていたジャン=バティスト・ジョゼフ・ドランブル(Jean-Baptiste Joseph Delambre)が、高い木の上に白い旗を目印に立てていたところ、フランス国王の白旗印と勘違いした住民と小競り合いになったという逸話が残っています。

こうしたさまざまな苦労を重ねながら、1798年に測量が完了。1799年、北極点から赤道までの子午線弧長は5130740トワーズという計算結果がはじき出され、この1千万分の1の長さを「1メートル」と定めました。

このメートル法にのっとって、1立方デシメートルを「1リットル」、1立方デシメートルの水の質量を「1キログラム」とし、100平方メートルの面積の単位を「1アール」と定めていきました。

国際間でメートル単位を使うことを定めたメートル条約

ところが、こうして苦心して定めた単位も、世界共通で使われるようになるには時間がかかりました。まずは1837年に、フランス国内でメートル法以外の単位の使用を禁じることとし、外交ルートを通じて1875年に国際間でメートル単位を使うことを定めた「メートル条約」を結びました。日本がこの条約に参加したのは、10年後の1885年のことです。

現在「SI単位」と呼ばれる国際単位系には、以下の7つが選ばれています。これらは「SI基本単位」と呼ばれています。

(1)長さの単位:名称はメートル、記号はm。
(2)質量の単位:名称はキログラム、記号はkg。
(3)時間の単位:名称は秒、記号はs。
(4)電流の単位:名称はアンペア、記号はA。
(5)熱力学温度の単位:名称はケルビン、記号はK。
(6)物質量の単位:名称はモル、記号はmol。
(7)光度の単位:名称はカンデラ、記号はcd。

単位が統一されることで、ものの量や大きさについて世界共通の認識が生まれるようになり、商取引などがスムーズに進むようになりました。

1つの基準に従い、ものの質量を整理し直すことは、いまエンタープライズIT分野で行われているデータ統合に似ています。データを統合することで、トランザクション(取引)が高速化し、ワークフローが効率化できます。

【参考文献】 
ブリタニカ国際大百科事典, 1998年第3版6刷, ティービーエス・ブリタニカ 

(岩崎史絵)

 
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