DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を知っている人は多いが、CX、SXをよく知っているという人は少ないかもしれません。CXはコーポレートトランスフォーメーションで、SXはソーシャルトランスフォーメーションですが、現代の企業経営において、DXが欠かすことのできない要素であると同時に、DXからCX、そしてSXにつなげていかなければならないという内容の解説書となります。
「DX CX SX –挑戦する全ての起業に爆発的な成長をもたらす」(クロスメディアパブリッシング, 2022)の最大の魅力は、DXについて具体的な事例を挙げながら解説し、それをCX、SXへと発展してつなげていくことを解説している点でしょう。著者の株式会社INDUSTRIAL-X 代表取締役の八子知礼氏は、松下電工において製造業の上流から下流までを経験しました。その後、ビジネスコンサルティングに身を置いてきた知見をもとに詳しい解説が書かれています。
パソコンやインターネットの普及に始まり、ほとんどすべての人がスマートフォンを持ち、SNSを活用する現代において、デジタルの分野は私たちの生活になくてはならないものになりました。そのため、全ての起業においても当然のごとくDXが重要になっていく状態です。第1章では、このDXの本質について詳しく解説していきます。あらゆる分野でデータが主導する社会が到来するために、そのデータの活用が企業の命運を握っているといっても過言ではありません。一言でデータ活用といっても、何から始めればいいのかわからない企業担当者や経営者が多いと思いますが、その点も丁寧に解説しています。
データを活用をするには活用するためのデータを収集しなければいけませんが、そのデータ収集の目的をしっかりと把握することが重要だと強調します。以前であれば、とにかくなんでもデータは蓄積することが必要だと考えられていた時期がありますが、ビッグデータ時代となった今ではデータを使ってどのようなことをどうやって行くのかを明確にして活用することが最も重要だということです。
第2章では、今後20年のトレンドを読む必要性が書かれています。その大前提として、重要な5点が明示され、解説されます。
①現実世界の仮想化
現実世界のあらゆるものがデジタル化していきます。音楽業界一つをとっても、レコードからCDになり、デジタル音源のダウンロードが始まり、今ではサブスクリプションでのストリーミングサービスがあります。私たちの生活だけでなく、ビジネスの分野でも加速で貸されると考えられます。
②仮想世界のリアル化
現実世界の仮想化と逆に仮想世界のリアル化が進みます。携帯電話の例がわかりやすいですが、ガラケーからスマートフォンの進化とともに、2G、3G、4Gと大容量化が進みました。それに伴い、コンテンツの質が劇的に上がり、文字から画像に、画像から動画へと変化が起きています。デジタルの進化により、リアルに高品質な音や画像が簡単に手に入るようになりました。
③業界の境目がなくなる
企業のデジタル化により、もともとの業種に関係ない分野でのビジネスチャンスが増大しています。リアルな現場でビジネスをしていることで、その業界のデータが蓄積されます。そして、その世界で培ってきた経験と知識を元にデータを最大限に活用する方法を見出すことで、業界の垣根を越えられる企業が実際に出てきています。
④リモート化が進む
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、世界中でリモート化が進んでいます。仕事やプライベートで急速に進んだリモートを著者は大きく3つに分類して定義しています。遠隔操作や遠隔制御の分野と、体験のリモート化、さらには機器操作などの接触部分のリモート化の3つです。そして、このリモート化は今後ますます進化を遂げると予想しています。
⑤SDGsとESG経営
SDGsとは持続可能な開発目標ですが、これをもって経営をすることが企業に求められています。また、環境配慮や社会問題への対応を重視した理想的なESG経営が投資家などから注目されています。今後、企業は自社の利益だけでなく、環境問題や人権問題など配慮しながら経営を行っていかなければ継続的な事業経営が難しくなっているのです。
本書「DX CX SX –挑戦する全ての起業に爆発的な成長をもたらす」では、第1章からDXの丁寧な解説が続き、最後にCX、SXの解説が行われています。DXにより、デジタルの活用を行っていくことで、会社全体の枠組みを大きく変えていくCX(コーポレートトランスフォーメーション)に発展させ、さらには複数の会社や社会全体のあり方を大きく変えていく必要があると主張しています。企業が取り組むべき、DXの本質、方向性を詳しく解説している意味で非常に貴重な文献です。
筆者の言葉からは、DXへの真剣な取り組みから、会社全体でのCXそして社会全体の在り方も変えていくSXへ発展していくことに対する強い願いであり祈りが感じられるとともに、DXを推進する第一人者という責任も感じられます。本書では、DXの本質的な定義、そのアプローチ法、さらにDXの影の王とも言える「データ」の解説、さまざまな事例が丁寧に解説されています。編集部の勝手な今後の「期待」と「楽しみ」として、著者である八子氏の視点で「CX、SX」についてより深く掘り下げた書籍が将来発刊されることも願いつつ、データのじかんでは、CX、SXの観点で世の中、企業活動がどのように変化していくのか、引き続き伴走を続けたいと思います。
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