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ツールの普及を超え、データの力の解放を目指す「BIツール研究所」の取り組み

         

「データ活用に役立つとわかっているけど、コストを考えるとBI(Business Intelligence)ツールの導入に二の足を踏んでしまう」というのは多くの企業で聞かれる話。ではなぜ、躊躇ってしまうのか。
それはズバリ「そのツールを使いこなせるか自信がない」ということに尽きるだろう。

また、いざBIツールについて情報を手に入れようとネットで探しても、IT系メディアやベンダー目線の情報は溢れていても、ユーザー目線の「困りごとを解決する逆引き的な情報」が案外少ないことに気が付くだろう。しかし、ユーザーの目的はツールを「使う」ことではなく、「成果を出すこと」だ。そのため、使い方のマニュアルのような情報ではなく、そのツールがどれだけ使えるかが知りたいのだ。

そんな「BIツールに興味はあるけれど、どれだけのパフォーマンスを発揮できるのかを知りたい」という人を救ってくれるのがコミュニティだ。そんなBIツールを扱うコミュニティの1つである「BIツール研究所」を主宰する前側 将(ウィル)氏に、コミュニティの活動内容について聞いた。

文系・非エンジニアにとってBIツールはデータドリブンの入り口になる

BIツール研究所 前側 将氏

そもそもBIツールとはどんなものなのか。「BI」とは「ビジネスインテリジェンス」の略であり、「BIツール」とは一般的には「データを分析してビジネスに使えるデータへと可視化するツール」と言われている。だが、そういわれると「それはデータサイエンティストの仕事ではないの?」「なぜBIツールが必要になるの?」と疑問を持つ人もいるだろう。

たしかに「データサイエンティストの領分」ともいえるが、データサイエンティストはプログラミングなどの「理系」の知識も求められることや、現在引く手あまたの希少職種であり、育成なども難しいことから人材を確保するのが至難の業。そんな現実もあり、少し扱い方を学んでしまえば「データサイエンティストに頼らずともビジネスに使えるデータへと可視化してくれる」というBIツールに注目が集まっているのだ。

とはいえ、データを可視化できるツールというのは概念的をわかりやすく表現したもので、実際のBIツールはそれぞれの目的によって使い分け、または併用することが必要だ。ジャンルとしては一括りにされているが、それぞれのBIツールによって着目するポイントは異なる。そこが、BIツールに触れたことのない人を困惑させる。「それでも、文系の人にとっても、BIツールは最適なデータドリブンの入り口。怖がらずに踏み込んで欲しいですね」と前側氏は語る。

BIツールについて基本的なことをもう一つ挙げるなら、「ネイティブデータを用意すれば、ビジネスに活用できるデータが自動的に可視化できる」というのは、「ある意味で正しく、ある意味で勘違い」だということ。BIツールは目的をしっかりと持って使わないと、「何となくきれいなグラフができた」(可視化)は実現できるが、意思決定につながるものでなければ意味がないといえるからだ。

では、導入を検討しているいわゆる「初学者」は何をどのように選べばいいのか? 
実はその答えを出してくれるところは多くはない。すでに導入している企業に勤める知り合いや、BIツールを提供しているベンダーやコンサルティング企業に連絡をして具体的な使用方法などに聞く、というのは労力がかかるうえ、情報に偏りがありそうで気が進まない。そもそも無料・有料の差さえもわからない、といった初学者に門戸を開いているのが、前側氏の運営する「BIツール研究所」である。

初学者の拠り所・駆け込み寺としてのBIツール研究所

それぞれのBIツールはベンダーがコミュニティを運営していることも多い。だが、そうなると良くも悪くも情報の非対称性から運営ベンダーに関する情報の比重が重くなることは否めない。もちろん、導入を決定しているツールであったり、すでに購入済みのツールについて学びを深めるということであれば問題ないだろう。しかし、導入前の担当者にとっては、より広く、客観的に情報を取得したいのが本音だろう。

それに対し、「BIツール研究所」の大きな特長が特定のBIツールに偏らないコミュニティという点。コアメンバーであるBIツールの一ユーザーたちが、各ベンダーのコニュニティでは語られにくい「使いどころ」「長所」、もちろん「短所」などについても話題にすることができるのである。そのため、何もわからない初学者がまず訪れる入り口としては、非常に「入りやすい」といえる。また、「このコミュニティは学ぶ場」というスタンスであるのも、BIツール研究所の特徴。各種SNSでも活動を行っており、YouTubeのチュートリアル動画などで学びを深めることもでき、「コミュニティにいきなり参加するのは怖い」という人もアプローチがしやすい。

BIツール研究所のYouTubeチャンネルでは、BIツールのユーザーによる実際利用しているBIツールの活用法を紹介する座談会であったり、BIツールを歴史から紐解くコンテンツなどが動画っで配信されている。

このように心的ハードルが下がるコンテンツを用意しているのも、「データサイエンティストになるために未経験でPythonを学び始めたが挫折してしまった人でも、BIツールを使えばデータ活用はできることが幅広く伝わるように」という前側氏のスタンスが現れている。では、そんな「BIツール初学者にやさしいコミュニティ」を運営するに至ったのはなぜなのか。その理由は前側氏の経歴・そして考え方と深くかかわっている。

3,000人もの担い手育成で見えたBIツールのポテンシャルと課題

「もともと文系で、大学卒業後にBIツールを利用したい企業へのアドバイスを行うコンサルティング会社に入社したのがきっかけ」 と語る同コミュニティの主宰である前側氏。そこでBIツールをいわば「売る側」としてBIツールの役割や効果を学び、その後ヤフー株式会社に転職した。そこでBIツールを「使う側」に回って、ビジネスの意思決定に至るデータ分析を行う立場になった。同社内で経験を積み、BIツールを使ったデータの可視化がビジネスに大きく寄与することを身に染みて感じるようになったという。その後、BIツールの利用法などをレクチャーする立場になった時の経験も大きい。

「ヤフーでは、社内で幅広くBIツールを活用できるようにと、初学者向けのアプリを作りました。この育成プロジェクトでは、ゲーミフィケーションの考え方で景品なども用意して。グループ内で3000人もの人が参加。そのうち200人ほどは初心者からBIツールの担い手として成長しました。しかし、このプロジェクトはその先へと浸透しませんでした。というのも、仕事と並行してBIツールを学ぶというのは、制度化されていない限り時間が取れず、難しいんです。やはり個人の意欲に依るとわかりました」

と、企業内での体制化の難しさから意欲がある個人への情報提供を考え始めた前側氏。そこでBIツールを取り巻く環境について、前述のようにベンダー運営のコミュニティしかなかったことへの問題意識を持ち、「ユーザー目線でBIツールの活用方法について公平な情報を伝えてあげたい」と思ったという。

「ドラッグ&ドロップくらいの気軽さ」でデータを可視化できるBIツールというものに出会ったときに自分が感じた『データっておもしろい!』という感動をこれから接する人にも感じてもらいたい。多くの人が意思決定につながるデータの可視化でビジネスを推進していくことができるようにしたい」と、2019年9月にまずは思いをツイッターでつぶやいた。すると100名のフォロワーたちの多くが賛同、多くの仲間が集まり「BIツール研究所」を設立するに至ったという。

ユーザー目線でBIツールを比較検討できる場を作る

BIツール研究所では、現在リリースされている各ベンダーのBIツールについて、比較項目を挙げ、「★」の数で評価。その項目は「導入の手軽さ」「可視化」「データ検索」「統計機械学習」「データ管理」「総合力」で、アプリごとの特徴を表し、わかりやすく比較できるようにしている。 この評価ではベンダー運営のコミュニティでは語られることのない、「成功事例以外の課題」も加味し、リアルなユーザーたちの意見を反映。「ユーザー・ファースト」を掲げ、それぞれの良い点、課題を公表するスタンスを貫いている。

また、「初学者(検討中の人)から利用者まで」と幅広い参加者を想定しており、専門的なユーザーが学びたい人へアドバイスを送るといった交流が盛んに行われている。「このツールでは何ができて何ができないか」「人・運用上でどんな課題が起きたか」といった具体的かつ、初心者が知りたい質問などにも回答が集まり、無事に自社に最適なBIツールの導入に至ったという例も多い。

BIツールはツールに過ぎない、ツールの悩みを早く解決したい

このようにBIツールの導入が進んでいくことは「BIツール研究所」の目的の一つではあるが、それが最終目標ではない。前側氏は「BIツールは企業全体のDXを進めるためのツールであり、意思決定を促すデータの可視化ができることで、ビジネスをより円滑に進められるようになることがBIツール導入推進のゴール」と語る。つまり、BIツールを使って可視化されたデータが企業内での共通言語となり、ビジネスを推進する土壌となることを目指しているのだ。そのためにまず「導入」という壁を乗り越える人が1人でも多くなることを目指している段階だという。 その先には目指すのは、潜在的なユーザーにその価値を認めてもらい、多くのユーザーがBIツールを導入することでビジネス上の恩恵を受けること。その最終的なゴールへ至るための道筋として「やるべきことは数多くある」と前側氏は語る。

「BIツールは使用者のレベルなどを判定するような機能も、スキルを測るような制度もないんですよね。わたしたちBIツール研究所は1つのツールに縛られていないからこそ使用者のスキルを計測し、一定の基準で「資格」という形の評価をできるんじゃないかと。そういった到達点があることでやる気が起きますよね」という。

誰もがBIツールを使う時代の先にBIツール研究所が見据えるコト

「BIツール導入を推進するという活動を共に行う仲間や応援者、そしてコミュニティの利用者は増えてきましたが、BIツール導入に至っていない。それに、困っている潜在的なユーザーの可視化もまだされていない」と、今後の課題を挙げる前側氏。たしかに、会社のデータ担当的な役職につきながらも「BIツール」という言葉が何を指すのか、そしてその導入によってビジネスがどれほどドラスティックに変化するかを本当の意味で実感している層はどれだけいるだろうか。

「データドリブンによる事業の活性化とDX推進の重要性、そしてDX推進を実現するためのBIツールの役割をより多くの人が知ることで、ビジネスを推進できるようになる。その環境を実現するためにも、より多くの事例を可視化して知ってもらうことが大切。コミュニティはそのための入り口に過ぎません」 と語る前側氏。

データサイエンティストの人材不足はいまだに終わりが見えず、それに代わって「BIツールを使うのが当たり前」という時代が訪れるのは誰の目にも明らか。その時代の到来に向けて人々を先導する役割を「BIツール研究所」は今後も担っていくことだろう。

BIツール研究所 前側 将(ウィル)氏

ヤフーなどでのデータアナリスト経験を経て、動画制作SaaSのスタートアップ、オープンエイトにJOIN。
KPIの設計、データ基盤構築、各事業のデータ分析などを務める。データ可視化の実践と普及のために「BIツール研究所」というコミュニティを主催し、オンラインスクールschooなどでも講師を務める。

 

【データ活用をもっと身近に】BIツールの情報をオープン&適切に比較できるようにするためのコミュニティBIツールに関するイベントや技術情報を発信している。@bitoollabo BIツール研究所-YouTube

(取材・TEXT:取材・TEXT:株式会社ジー・ビー PHOTO:Inoue Syuhei 企画・編集:野島光太郎)

 

 
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