昨今はコロナ禍によるリモートワーク、脱ハンコなどによるIT化が進み、帳票も電子化する流れが加速しています。そもそも帳票とはなにか、その役割をしっかりと把握し、時流に乗った管理ができるように解説いたします。
帳票は会社や個人事業主が取引や会計を行う中で作成される書類全般のことです。より具体的には、「帳簿」と「伝票」の両方を指します。帳票は経済活動を行う上で大切な記録であり、取引の証明としての役割もあります。
特徴 | 種類 | |
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帳簿 | お金の流れを記録して残すためのもの | 主要簿、補助簿 |
伝票 | 主に入出金記録の管理に用いる書類 | 売上伝票、仕入伝票、出金伝票な |
証憑 | 取引の証拠となる書面 | 領収書、レジペーパー、納品書など |
帳票は経済活動に伴う様々な関連書類の総称のことですが、具体的に見ていくと「帳簿」「伝票」「証憑」などに細分化可能です。それぞれの書類によって記録する目的や内容は大きく異なり、企業によって扱う帳票の種類も異なります。
主要簿 | ・総勘定元帳 ・仕訳帳 ・日記帳 |
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補助簿 | ・現金出納帳 ・預金出納帳 ・売掛帳(得意先帳) など |
帳簿は取引やお金の流れを記録するための書類で、主に会社の経営状況を把握するのに必要です。帳簿は「主要簿」と「補助簿」に分けられます。主要簿には総勘定元帳、仕訳帳、日記帳があり、所得税の青色申告を行う際に必要な書類です。一方、補助簿には現金出納帳、預金出納帳、売掛帳などの種類があり、主要簿の情報を補足する役割を果たします。
伝票は様々な取引毎に作成し、お金や物の出入の記録となる書類のこと。伝票には入金伝票、出金伝票など、様々な種類があります。
証憑(しょうひょう)とは、様々な場面での取引が正式に成立したことの証になる書類のことです。具体的には契約書や請求書、納品書などの書類が証憑に該当します。証憑書類は取引が確実に行われたことを証明する書類であることから、ビジネスシーンでのトラブル回避のためにも保管が必要です。
証憑は企業間だけでなく、自社従業員との取引でも使われ、給与明細書や退職書が例として挙げられます。
企業が取り扱う帳票書類の保管は法律で義務付けられています。ただ一口に法律で義務付けられていると言っても、実は帳票の保管に関しては「法人税法」「会社法」によって保管の対象になる書類や保管期間が異なります。
法人税法における、対象の帳票の保存期間は7年
法人税法における管理・保管が必要となる書類は主に以下のものになります。これらの書類は主に青色申告に必須の書類です。
対象の帳票 |
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契約書/請求書/納品書/貸借対照表/損益計算書/通帳/領収書/棚卸表 |
会社法における、対象の帳票の保管期間は10年
会社法における管理・保管が必要となる書類は主に以下のものです。
対象の帳票 |
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現金出納帳/総勘定元帳/売掛金元帳/買掛金元帳/売上帳/仕入帳 |
会社法上必要な帳票は、法人税法において必要な書類を作成すると自動的に内容を満たせます。そのため、法人税法上必要な帳票を10年間保管すれば、法人税法上と会社法上における帳票の管理と保存をクリアできます。
帳票の保管期間未満で帳票を破棄・紛失してしまった場合、国税当局の指導を受けることがあります。罰則規定はないため、何かしらのペナルティが発生することはありません。ただし、帳票がないと青色申告の控除や税的優遇措置が受けられない、取り消される場合があり、税務調査の際に追徴課税される可能性があるので注意が必要です。
電子帳票とは「e-文書法」で規定された電子ファイル形式の帳票のことです。具体的には紙媒体で保管が必須だった帳票をデータで保持し、ネットワークでやり取りできるようにしたものです。
帳票は原則として紙媒体での保存が義務付けられています。ただ、紙媒体での保管には印刷や保管場所などに多大なコストがかかります。そのため、2005年に企業のコスト負担軽減や業務効率の観点から帳票を電子データで管理・保管を容認する「e-文書法」が施行されました。それに合わせ、企業は電子データでの帳票の保管を進めてきました。帳票を電子化する際は以下の3点の要件を満たしている必要があります。
マイナンバー制度の導入により、様々な書類にマイナンバーの記載が必須となっています。現在、マイナンバーが必要な帳票の種類は100種類以上もあり、今後さらに増えていく予想です。マイナンバーは重要な個人情報であるため、細心の注意を払って取り扱うことが求められます。
コロナ禍によって、「脱ハンコ」「テレワーク阻害要因の排除」「オンライン手続きの推進」などIT化はさらに加速しています。こうした流れの中で、令和3年版情報通信白書では「デジタル化を前提とした業務・慣習」が問題視されています。押印や書面を前提にした手続きがテレワーク推進時には各所でネックになりました。
このようにデジタル化を前提とした業務改善が求められる中で、「帳票の電子化」は「はじめの一歩」ともいえる改革の一つです。比較的簡単に導入できるため、多くの企業で行われています。
電子帳票を導入することで企業は様々な恩恵を受けられます。特に大きなメリットとしては主に次の4つが挙げられます。
電子帳票は保管先が一元化され、閲覧性が高いのが特徴です。すぐに必要な帳票を検索でき、また作成・編集も容易です。このようにいつでも誰でもアクセスできるので、業務効率化に大きく貢献します。
電子帳票はペーパレスによる大幅なコスト削減が実現できます。紙やインク、プリンターといった備品にお金をかける必要がなくなり、帳票の保管場所の確保も不要になります。
紙媒体で帳票を保管する場合、次第に保管する書類が膨大になり、管理が大変になります。また、いつの間にか書類の一部が紛失してしまっていたなどのリスクも考えられるでしょう。
しかし電子帳票であれば、必要な帳票を一元的に管理することが可能です。セキュリティ面においても、紙媒体での管理よりも安全と言えます。
紙媒体の帳票であれば出社しなければ仕事ができませんでしたが、昨今はリモートワークなどによる働き方が多様化しています。電子帳票であればサーバーやクラウドを経由してのアクセスが可能で、いつどこからでも業務を実施することができます。
電子帳票の作成するためのツールとして「Excel(エクセル)」と「帳票作成システム」の2つが挙げられます。それぞれに使い勝手の良さやメリットがあり、自社にあったツールの使用をおすすめします。
エクセルの場合、帳票のデータベースのシートを作成し、項目を決め、データを入力して電子帳簿を作成していきます。比較的低コストで電子帳票を作成できるのがメリットと言えますが、大容量のデータを扱うのは難しく、取引先の多い大企業などには不向きです。
また手作業での入力作業であるため、数字の打ち間違いなどによるヒューマンエラーが起こることも考えられます。
帳簿システムには、スキャナで紙の帳票データを読み取って電子化できる帳票OCRという機能があります。素早く大量の帳票書類を処理でき、しかも数字の入力間違いなどのヒューマンエラーを防ぐこともできる人気の機能です。また帳票システムではボタン一つで様々な形の帳票にまとめてくれる機能があり、帳票管理に詳しくない人でも簡単に帳票業務を実施できる利点もあります。
項目 | |
□ | 自由に編集・加工ができるかどうか |
□ | データ送信のためのやりとりができるかどうか |
□ | セキュリティ対策が行われているかどうか |
□ | データの集計プロセスがわかりやすいか |
□ | 検索方法が充実しているかどうか |
□ | 自社にあったテンプレートを作成できるか |
帳票システムは様々な会社が独自の機能をつけてサービスを提供しています。どの帳票システムを使用するのがいいかは会社ごとに異なりますが、主に上記の6つのポイントを重視して選ぶといいでしょう。
ここでは国内における実際の帳票システムの導入事例をご紹介します。
・行政・自治体 ・製造 ・建設 ・食料品 ・医薬品 ・サービス ・情報・通信 ・金融・保険 ・化学 ・倉庫・物流 ・機械・電気機器 ・電気・ガス ・卸売・小売 ・ガラス・土石製品 ・教育 ・不動産 |
課題 | 基幹システムのオープン化 |
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解決策(導入時のポイント) | AIST包括フレームワークの帳票出力基盤としての実績 |
効果 | 変化に柔軟かつ迅速に対応できる帳票基盤の実現 |
基幹システムのオープン化を目的として、変化に応じて柔軟に組み替えられる基幹系情報システム基盤の構築をしました。帳票出力などの基本的な機能はシステム基盤に任せることにより、制度改正などの影響を最小限に抑え、運用ができています。
課題 | 生産管理システムの共通化 |
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解決策(導入時のポイント) | 帳簿の一極集中管理 |
効果 | 帳票開発工数の大幅削減 |
各工場で独立した生産管理システムを運用しており、非効率でした。そこで生産管理システムを共通化することで、業務プロセスを標準化、合理化することに成功しました。また、様々な帳票の出力が実現したことで開発工数の大幅削減にも繋がりました。
課題 | 帳票データ配信が集中する時期のネットワークがボトルネックになっていた |
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解決策(導入時のポイント) | ネットワークの負担軽減 |
効果 | 帳票一元管理による業務効率向上、運用負担軽減 |
膨大な帳票データの配信が集中すると当時のネットワークでは負担が大きすぎてボトルネックとなっていました。各拠点に分散していたプリントサーバを廃止して集中管理することで、業務効率化が向上し、運用負担が大幅に削減でき、結果として年間500万円のコスト削減が実現できました。
課題 | ペーパーレス化を可能とする帳票基盤の構築 |
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解決策(導入時のポイント) | SVFによる複数パターンの帳票出力 |
効果 | 印刷コストの削減、業務効率の改善 |
SVFによる帳票管理システムの実現により、今まで配布していた紙の帳票を電子帳票として提供できるようになり、大幅なコスト削減と業務効率化に繋がりました。また、各販売会社の担当者が必要な帳票をいつでも参照できる環境が整ったことでデータ分析にも活用可能になりました。
課題 | 旧システムの老朽化および、負担分散と災害対策 |
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解決策(導入時のポイント) | 大量トランザクションに耐えられるシステム構築 |
効果 | 通常時の倍のトランザクションへの対応が可能になり、2つのデータセンターで災害対策を万全にできた |
全国にあるグループ企業にサービスを提供する過程で、一箇所のデータセンターが罹災したことによって業務が止まらないよう、災害対策としてデータセンターを東西2センター制とする決断をしました。SVFを導入することで大量のトランザクションへの対応が可能になり、パフォーマンスを損なうことがなく、高い信頼性を獲得できました。
課題 | 脱メインフレーム・オープン化 |
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解決策(導入時のポイント) | 管理帳票のペーパーレス化 |
効果 | 同上 |
現在は業務そのものにリアルタイム性が求められるため、オープン系システムのメリットが大きいと判断しました。SVF導入により、一つのフォーム形式で多種多様な帳票運用の利用ができ、業務効率化が向上しました。
課題 | 複雑な帳票開発に時間とコストがかかり過ぎていた |
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解決策(導入時のポイント) | GUIによる容易な帳票開発 |
効果 | 複雑な帳票も短期間で作成できるようになった |
SVF導入により、GUIが使いやすく、複雑な帳票開発が短期間で容易にできるように。また、PDF出力が可能になったことで、紙媒体の保管が不要になり、大幅なコスト削減にも繋がりました。
課題 | 専用PCでの処理が必須で、帳票の出力に時間がかかっていた |
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解決策(導入時のポイント) | センター集約型で帳票の管理と出力を可能にする |
効果 | 即時に帳票発行が可能になり、専用紙の廃止によるコスト削減も実現 |
かつては専用PCが必須で、職員は順番待ちをしていたため、帳票の出力に大幅な時間が必要となっていました。SVFを導入し、職員は日頃使用している端末からいつでも帳票を出力できるようになり、大幅な業務効率化が実現。用紙の在庫管理やプリンターの用紙替え業務が減り、印刷コストも削減できました。
課題 | BPRによるソフト・プラットフォーム変更への対応 |
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解決策(導入時のポイント) | 既存環境での動作保証 |
効果 | 営業所へのスピーディーな帳票展開が実現 |
SVF/RDE導入により、営業所へのスピーディーな帳票の展開ができるようになりました。また、本社側は紙媒体の配送をしなくてよくなり、配送業務にかかるコストを大幅な削減を実現しています。
課題 | 貨物系システムのオープン化 |
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解決策(導入時のポイント) | SVF/RDE導入による大量印刷 |
効果 | 印刷専用端末を廃止し、プリンターの管理性が向上 |
かつては各営業店に設置した専用プリンターで帳票を印刷する必要があったため、台数が多く管理が大変でした。SVF/RDE導入し、大量印刷が実現したことで、印刷専用端末を廃止でき、また各営業店のプリンターの管理が容易になりました。
課題 | 専用用紙による帳票印刷の工数やコスト |
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解決策(導入時のポイント) | SVF/RDE導入によるプリンター機種への非依存 |
効果 | 800種類の帳票を80種類に削減 |
SVF/RDE導入により、専用用紙による帳票印刷のコストがゼロになりました。また、PDF出力が可能となったため、保管用スペースも不要になり、さらなるコスト削減に繋がりました。
課題 | 受付業務のIT化 |
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解決策(導入時のポイント) | SVF/RED導入によるセンター集中型の帳票システムを構築 |
効果 | 帳票出力業務の工数削減 |
SVF/RDE導入により、帳票出力前のクライアント設定作業がなくなり、必要な帳票を必要なタイミングで出力できるようになったことで、業務がスムーズに進むようになりました。また運用負担を大幅に削減できるようにもなりました。
課題 | FAXサービスと連携した帳票システムの見直し |
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解決策(導入時のポイント) | SVFとFNXe-帳票FAXサービスによる帳票設計 |
効果 | 初期コストの削減、業務効率化 |
既存のFAX配信システムのサポートが終了してしまい、SVFとFNXe-帳票FAXサービスを導入しました。独自にFAXサーバーを準備する必要がなく、初期コストが削減できました。また、大量のFAXを自動的の送信できるので業務効率化にも繋がりました。
課題 | 生産管理システムの老朽化とバッチ処理からの脱却 |
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解決策(導入時のポイント) | SVF/RDE導入による帳票の一元管理 |
効果 | 帳票配信のコスト削減、製品の誤配送の防止に成功した |
SVF/RDE導入により、生産管理システムで利用される様々な帳票を一元管理でき、各工場の担当者が必要な帳票だけ直接印刷できるようになったことで、各工場で年間1200万円のコスト削減に繋がりました。また、製品の配送先をリアルタイムに変更できるようになったことで、誤配送も防げるようになりました。
課題 | 帳票デザインの変更のたびにプログラムの変更が発生していた |
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解決策(導入時のポイント) | SFV導入によるメインフレームとの連携 |
効果 | プログラムとデザインの分業による業務のスピード化と顧客満足度の向上 |
センター試験後は帳票を12万人分以上作成する必要がありますが、評価基準が頻繁に改定されるため、帳票デザインの変更も頻繁にする必要がありました。しかし、帳票デザインの変更にはプログラムの変更が不可欠で、技術者がいないと新たに帳票を作成できませんでした。そこでSVFを導入し、デザインとプログラムを切り分けた運用を開始。これにより30%程度、帳票開発を効率化できるようになりました。
課題 | グローバル化に伴う帳票作成の仕組み変更に膨大な作業が必要になっていた |
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解決策(導入時のポイント) | SVF導入によるグラフ描画の表現力を重視 |
効果 | 帳票開発の効率化ができ、作業工数の削減に成功 |
グローバル化に伴い、図版など紙が中心だったやり方を電子化して刷新する必要が出てきましたが、仕組みを変更する作業が膨大という課題が。SVFの導入により、未経験者でも2〜3日で帳票のデザインができるようになり、大幅な業務効率化が実現したと同時に作業工数の削減にも繋がりました。
企業において帳票の管理・保管は大切な業務ですが、帳票の保管・管理は莫大な手間のかかる作業で、コスト的にも時間的にも負担が大きいものです。
そうした中で「帳票システムの活用」「帳票の電子化」などをすることで、負担を軽減し、コスト削減や業務効率化を実現可能です。それに加えて、帳票システムの活用から新たなビジネス戦略が見えてくることもあるかもしれません。
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