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2015年にプロの囲碁棋士を相手にした対戦で勝利を収め、大きな話題となった囲碁プログラム「AlphaGo」。

その後、2016年に韓国のプロ棋士、イ・セドルを、2017年には、人類最強とも呼び声の高かった中国の天才棋士、柯潔(カ・ケツ)を打ち負かしました。

さらに、同年には、人間の棋譜を参照せず訓練を行なったAlphaGo Zeroが発表されました。AlphaGo Zeroは、AlphaGoのこれまでのどのバージョンよりも強く、まさに「人知を超えた」最強の囲碁プログラムとなったのです。

今回はこのAlphaGoについて、その歴史から「スゴさ」までご紹介します!

なぜコンピュータ囲碁がこんなにも注目される?盤上ゲームとコンピュータの歴史

人間が、はじめてコンピューターゲームを発明したのは1912年のこと。数学者であるエンジニアだったレオナルド・トーレス・ケベードが開発したエル・アヘドレシスタ(スペイン語でチェスプレーヤーという意味)と呼ばれる機械仕掛けのチェス盤でした。

そして、それから半世紀以上たった1997年に、チェスで人類がコンピューターに「完敗」することになります。

当時、チェスの世界チャンピオンだったガルリ・カスパロフが、IBMによって開発されたスーパーコンピューター、「ディープ・ブルー」により6戦中2勝1敗3引き分けという戦績で打ち負かされたのです。

「ディープ・ブルー」は打倒カスパロフを掲げ開発が進められており、一度目の対戦では、3勝1敗2引き分けとカスパロフが辛くも勝利を遂げたものの、二度目の対戦にて挑戦は果たされました。

また、将棋においても、1970年代頃からコンピューター将棋の構想がはじまっていました。しかし、チェスよりも盤も大きく、コマ数も多いこと、また相手からとったコマを自分のコマとして使える、というルールの複雑さも相まって、様々なコンピューター将棋が生まれたものの、なかなかプロ相手に通用するものは出ませんでした。

しかし、日本で開発されたコンピュータ将棋ソフトウェア「Ponanza」が2013年、平手(ハンデなし)でプロ棋士に勝利しました。(Ponanzaについては開発者である山本一成氏をデータのじかんで取材したことがありますのでそちらの記事も合わせてどうぞ。)

様々なボードゲームでコンピューターが台頭する中、最後の砦として考えられていたのが「囲碁」でした。

コンピューターに局面を探索させる際、チェスでは10の120乗の、将棋では10の220乗の局面を探索する必要がありますが、局面の大きい囲碁の探索量は10の360乗に達すると言われており、まさに「ケタ違い」に難しく、コンピューターが人間に勝つのは不可能に近いのではないかと考えられていました。

そんな中で突如現れたのが「AlphaGo」だったのです。

ニューラルネットワークが後押ししたAlphaGoの大躍進

AlphaGoは、グーグル傘下のDeepMind社によって開発された人工知能(AI)です。そんなAlphaGoの最大の特徴が、ニューラルネットワークを応用しているという点。

人間が設定した評価経験則に従うのではなく、人間の棋譜のデータを元に、コンピューターが自分自身との対戦を数千万回にわたり繰り返すことで強化していきます。この際モンテカルロ木探索と呼ばれる探索アルゴリズムを組み合わせたこともAlphaGoの特徴の一つです。

そして2015年10月に、当時ヨーロッパチャンピオンだった樊麾に勝利し、大きな注目を集めました。

その後、2016年には、世界大会で18回も優勝した経験を持ち、名実ともに世界トップレベルの棋士であった韓国のイ・セドルに五番勝負で4勝1敗という戦績で勝利し、その実力が人類トップレベルのプレイヤーを凌駕するものであると証明しました。

一方、この対戦の直後、「(AlphaGoは)自分には勝てない」と豪語したものがいました。それが11歳でプロ棋士になった天才で、世界大会を総舐めし、イ・セドル相手に9勝を勝ち取っていた、まさに「人類最強」の棋士、柯潔でした。

そんな中、2017年はじめに「Master」と呼ばれる謎のプレーヤーがネットの囲碁対戦サイトに現れます。「Master」はネット対戦で日中韓のプロ棋士を相手に60戦無敗という驚異的な戦績を叩き出します。

その正体こそ、AlphaGoの新バージョン、AlphaGo Masterでした。

バージョンアップを続け、様々なテストもパスしてきたAlphaGoがついに柯潔と対戦する時がやってきます。

同年5月に実現した対局では、AlphaGoが3局中3勝という圧倒的な力の強さを見せ、ついに「人類最強」の棋士を打倒したのです。

そして、柯潔との大局を最後にAlphaGoは人類との対戦から「引退」し、人知を超えた領域に踏み出します。

AlphaGo Zeroから汎用的なAlpha Zeroへ。人知を超えた強さを身に付けたAI

2017年10月、AlphaGoの新バージョンとなるAlphaGo Zeroが発表されました。

AlphaGo Zeroは、従来のAlphaGoとは異なり、人間の棋譜データを読み込むことなく、与えられたルールにのっとってコンピューターが自分自身と対局し続けることで強化されたものでした。

そして、AlphaGo ZeroはAlphaGoの過去のどのバージョンよりも強く、誕生からわずか40日で柯潔に圧勝したAlphaGo Masterに勝利しました。

しかし、開発はここまでに止まりません。AlphaGo Zeroと同様のアプローチでチェスや将棋といった他のゲームにも汎用化したAI「Alpha Zero」が誕生しました。

そしてこのAlpha Zeroは誕生から24時間以内に、チェス、将棋のチャンピオンプログラムとAlphaGo Zeroを打ち負かしたのです。

AlphaGoが人々に与えた影響と評価

ボードゲームという領域でまさに人知を超えた能力を発揮したAlphaGoプロジェクトは、人々にさまざまな影響を与えました。

2019年に、プロ棋士を引退したイ・セドルはその理由の一つとして、「人間がAIに勝てない」ことをあげました。

また、科学雑誌「New Scientist」が2019年12月に発表した「2010年代の発見のトップ10」では、AlphaGoがヒッグス粒子の発見やゲノム編集技術CRISPRの開発、重力波の観測についで第4位にランクインしています。

さらに2020年4月、AlphaGoの開発者の1人であるDeepMindのデビッド・シルバーに計算機科学分野で強い影響力を持つ国際学会Association for Computing Machinery(ACM)から賞が贈られ、賞金、25万ドル(約2700万円)が贈られたそうです。

破竹の勢いで「世界最強」まで駆け上ったAlphaGoシリーズ。今後どのようなAIがAlphaGoのように人類を驚かせてくれるのか、楽しみですね。

【参考引用サイト】
・ AIが「最難関」の囲碁で人を超える日 
・ 2600万円以上の賞金が囲碁AI「AlphaGo」の開発者に贈られる 
・ コンピュータ将棋 - Wikipedia 
・ コンピュータチェス - Wikipedia 
・ AlphaGo - ウィキペディア 
・ AlphaGoのしくみ 

(大藤ヨシヲ)

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