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高須正和×大川真史対談 21世紀の産業革命はメイカームーブメントの先にある

         

最新テクノロジーやデータを活用する企業が一堂に会し、先進的な取り組みを共有するカンファレンス「ウイングアークフォーラム(以下、WAF)」。

2019年11月22日に東京で行われるWAFでは、世界と日本と繋げるメーカーブームメントの立役者である高須正和さんによる「21世紀の産業 ポスト工業化社会に向けたイノベーションと社会実装」というタイトルの講演を行う予定となっている。

「メイカームーブメント」とは、「WIRED」誌・元編集長のクリス・アンダーソン氏が提唱した「Webやインターネットの技術をものづくりに活かして、製造業をイノベーションする」試みから発生している。ものづくりの潮流や技術を生み出し、成熟社会における「ものづくりの民主化」となり進化を続けている。

この記事では、高須さんをリスペクトする「日本のものづくり」が研究テーマである当社データエンパワーメント調査室 室長の大川真史が、WAFを目前に控えた高須さんに21世紀の産業界についてお話を伺った。

21世紀のメイカームーブメント


大川 – 既存産業で働く多くの日本人は、メイカームーブメントの先に産業革命があることを理解していないという気がしています。このムーブメントは明らかに産業革命ではないですよね?

高須 – そうですね。

大川 – 工業化社会の中で水平分業が進展してきましたが、これからは受託開発など「仕事として誰かの代わりにものを作る人たち」は、基本的に緩やかに衰退していくと思っています。本来の「ものづくり」が、もう一度使う人の手元に戻ってくると。

高須 – ゴールとしてはそうなる。かわりに開発をする、請負開発の仕事が減っていって、自分たちのために作る人が増えてくる。それはそう思うんですけど、具体的に社会の変化がどう進んでいるかは、僕もよくわかってなくて。今でも、早稲田大学(早稲田大学ビジネススクール)で非常勤講師をしていますが、学生さんたちの多くは一部上場企業の30代の中堅社員なわけですよ。みんな、基本的には自分が生まれる前から存在している企業に入って、仕事も自分が生まれる前からあるわけじゃないですか。そういう会社が中心の日本が、Googleやアリババみたいに自分たちのためにソフト・ハード含めたシステムを開発する会社が中心の社会に、最終的にはなると思うんだけど、具体的にどうやって変化していくのかがよくわかんないのが正直なところなんですよね。今ある会社の体質が変わるのか、新しい会社が出てきて日本でもたいていの古い会社は潰れちゃうのか。

大川 – そういう立ち位置に自分がいる、ということすら見えてない人たちが多いんじゃないかと思っています。

エスタブリッシュな会社員は気が付くのも変化するのも遅くて、メイカームーブメントに参加している人たちこそ次の産業革命を起こしていく人たちなんだろうなっていつも思うんです。日本の産業構造をスムーズに転換するためには、いろいろな支援や補助の仕組み、つまり政策の方向を早く変えるべきなのですが、うまく行きそうにない。

高須 – 政策はあくまでマジョリティに向けて立案・施行されるので、しょうがないですよね。新しいことは初期は必ずマイナーで、基本的にわかる人しかついてこないので。たとえば、今の深センはとても有名だけど、2014年のメイカーフェア深センにいた日本人、多分20人くらいしかいなくて、みんな顔見ればわかるんですよ。なんなら一人ひとり名前あげられるくらいの勢いで。そのくらいしかいないわけですよ。

2014年どころか、さらに前の2012年、第1回からユカイ工学の青木さん[1]とかいましたから。青木さん、初期のHAX[2]のメンターをしていて。

20人ぐらいしかいないところから始まって、「深センでのメイカーズ面白いぞ」と思ってニコ技深センコミュニティを立ち上げて、「メイカーズのエコシステム」という本を2016年に出版したりして、2018年に僕が大メイカーズ飲み会というものを深センで主催したのですが、120人くらいまで参加者が増えました。

深センのメイカーズが面白いと感じて、わざわざ来る人が20人から120人に増えても、それは相変わらずマイナーなんですが、僕がやりたかったのは結局そういうことです。僕にとっては「世の中」ではなくて、今年は何人来るんだろうとか、そういうほうに関心があって。

他にも書籍「ハードウェアハッカー」[3]が5000から6000部くらい発刊しているんですが、あれ読んでおもしろいっていってくれる人はそんなに多くないわけですよ。それなりに分厚いし、内容も多岐にわたるから、おもしろいと思う人数は限られると思うんですけど、あれを読んでおもしろいと思う人をもうちょっと増やすとか。そういう風に考えています。

僕は今45歳だから、75歳まで活動するとしてあと30年ですよね。その間に僕が頑張って活動すれば、「ハードウェアハッカー」が1万5000部くらい売れるようになるような気がしていて。といっても1万5000部って日本全体で考えると、99%の人は別にどうでもいい話ではあるんですけど(笑)。

大川 – 僕の視野からすると、高須さんがおっしゃった「いま5000人、この先の1万5000人が日本にもいるよ」ということを多くの人が知ったほうがいいと思います。「あなたが今の5000人側に来るかどうかはともかく、個人レベルで産業を推進し革命していく人たちが、これから日本はもちろん世界的に増えていくよ」ということは知ってほしいんです。世界的に見ても、日本はかなり優位性があって国力推進の原動力になるはずなんですよね。そういう話が広く伝わればいいなと思っているんです。今回高須さんの講演も、製造業の人はもちろん、行政官や公的機関の職員の方にこそ絶対聞いてもらいたいなと思っています。

 
ハードウェアは面倒

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