次世代ITリーダー、デジタルネイティブ世代は
日本企業の現状をどう捉えているのか
–CIO Japan Summit 2022 イベントリポ−ト

2022年11月、ホテル椿山荘東京で開催された「CIO Japan Summit 2022」。今年2回目の開催では「見直す・新しい風」を軸に、今の日本を最適化していくためのIT戦略 について各業界のITリーダーにご登壇いただいた。前編に続き、後編ではCIO賢人倶楽部会長の木内里美氏が議長を務めたパネルディスカッション「次世代ITリーダー、デジタルネイティブ世代は何を想う」をお伝えする。

Share!

2022年11月9日、10日の両日、ホテル椿山荘東京でマーカスエバンズが主催する「CIO Japan Summit 2022」が開催された。今年2回目の開催では「見直す・新しい風」を軸に、今の日本を最適化していくためのIT戦略 について各業界のITリーダーにご登壇いただいた。公式メディアスポンサーでもある「データのじかん」では、2日目に行われたCIO賢人倶楽部会長の木内里美氏が議長を務めたパネルディスカッション「次世代ITリーダー、デジタルネイティブ世代は何を想う」をお伝えする。

次世代ITリーダーたちは今の日本をどう見るか

パネルディスカッション「次世代ITリーダー、デジタルネイティブ世代は何を想う」。下記の次世代リーダー3人に、団塊世代であるCIO賢人倶楽部会長の木内里美氏が「日本のITやデジタル産業のこれから」に迫った。

次世代リーダー
株式会社トライグループ 取締役 髙橋義定氏
株式会社みんなの銀行 執行役員CIO 宮本昌明氏
株式会社LayerX 代表取締役CTO 松本勇気氏

木内:日本では労働生産性も報酬も上がらず、30年間低迷期が続いています。こうした日本の「劣化」の原因は何だと思いますか。

CIO賢人倶楽部 会長 木内里美氏

宮本:いきなり難しい問題ですね。最初にお断りしないといけないのは、私48歳でそんなに若くはない。だから若者の意見は後の2人にお任せします。ここから本題ですが、例えば銀行システムに何か不具合があると、金融業は世間の皆様からお叱りを受けます。でも、海外ではそうなりません。日本企業は、消費者の厳しい目に対する解決策を価格転嫁に委ねず、地道に頑張ります。それが原因の一端だと感じます。

髙橋:当社は教育カンパニーなので教育的な観点からみると、日本は「自分の意見を主張しない国」だと思います。海外のような考えを導き出す教育ではなく知識詰め込み型で、意見を主張する文化が30年間ほとんどありません。それも原因の一つだと思います。

木内:海外のエグゼクティブは、非常に熱心に働きます。でも日本はどうかといえば、働くことや勉強に対して消極的にように映ります。この点はいかがでしょうか?

髙橋:年功序列と終身雇用の影響は甚大です。30年前は当時の若者たちのハングリー精神で各産業の改革が遂行され、日本は一気に経済大国へのし上がりました。しかし今は変化を恐れすぎていると思います。

株式会社トライグループ 取締役 髙橋義定氏

メンバーシップ型雇用と新しい経営OSのギャップを見直すべき

木内:聴講者は私と同じ団塊世代もいるでしょうが、われわれに対する“忖度は要りませんから(笑)。松本さんはどうですか。

松本:日本企業には、構造的な問題があると思います。まずは旧来のメンバーシップ型雇用です。失敗しない方が出世できるため、過去のやり方が踏襲され続けます。一方で、この30年間、経営の根幹をなす“OS”が大きく転換しました。日本はそれに対応できていなくて、例えばガソリン車の時代に馬車で仕事をしているような状態となっているのが日本の現状です。一方、新しい産業では年齢に関係なく給与は上がっています。当社にも若くして高額の報酬をもらうエンジニアたちがいます。メンバーシップ型雇用と新しい経営OSのギャップを今こそ見直すべきなのではないでしょうか。

木内:今の経営者はそれをできておらず、だからこそ労働生産性も報酬も全く上がらない?

松本:1900年代までさかのぼっても、変革期には必ず20代、30代、40代の経営者が存在していました。時代が変化するタイミングで適任者を上に据え、その人を(上の世代の)賢者たちが支援するようなサポート体制が、今の日本には必要な気がします。

木内:ついこの間まで日本は海外から労働者を招き入れていましたが、その数は昨年がピークのようです。しかもこれだけ円安が進むと、日本で働く意味も薄れていきます。アジア各国の給与は軒並み上がっていますから、日本人がアジア各国に出稼ぎに行くなんてことが増えていくかもしれません。その意味でも、次世代リーダーとしてお招きした皆さんに、日本の変革を期待したくなります。

日本のITは「ワクワクしない」「遊びがない」

木内:ところで今の日本のビジネス界隈はすっかりDXブームです。皆さんはこの潮流をどう受け止めていますか。

松本:ムーブメントが起こること自体はとてもよいことです。しかし紙の仕事と比較して作業プロセスが何も変わっていないとすれば、それはDXではありません。例えば当社提供の経理サービス「バクラク」を使えば、請求書をメールで受け取ったその瞬間から請求処理が自動で始まり、記帳作業も自動で行われます。これくらいのプロセスの大転換が起こらなければ、実効性のあるDXとは呼べないと思います。

高橋:松本さんが言う通り、CX(の変革)が伴ってこそのDXです。DXはオプションとして付け加えるようなツールではありません。当社でDX推進を始めたころは、数人のDX先鋭部隊と経営者・社員との間で、常に意見の衝突が起きていました。DXとはスクラップ&ビルドです。一度破壊しなければ、何も変えられません。

宮本:われわれが提供する日本初のデジタルバンクも既存の業務プロセスや商慣習を一度破壊することから始めました。確かに日本の一般的な企業カルチャーでは、難しい面もあります。その結果として、「勇気のないDX」が蔓延っている印象です。

株式会社みんなの銀行 執行役員CIO 宮本昌明氏

木内:皆さんも実感されているようにDXは、DigitalよりもTransformationが難しい。では、Digitalの部分は「イケている」のかというと、どうもそうとは言い切れないように思います。日本のIT産業についてはどう思いますか。

宮本:AIが流行ればみんなAI、別のテックで出てくればそちらに流れる。みんな人まねをしているというか、結果的にワクワクするITサービスが国内から生まれてこない印象です。突拍子もないことをやり出すところがもっとあってもよいのでは、と思います。

高橋:遊びがないですよね。世界には技術者出身の経営者が大勢いますが、彼らは技術者としての思考法・アイデア発想を経営に存分に生かしています。日本の場合は年功序列で上がって来た人の指示によってものをつくる技術者が多い。ここにもメンバーシップ型雇用の弊害が垣間見えます。

松本:私はソフトウエアエンジニア出身ですが、誰もが喜ぶソフトウエアなり、アプリなりがなかなか出てこない現状は、発注企業とベンダーの間に落ちている不確実性を誰も巻き取っていないことが原因だと思います。発注側からすると仕様書を出したら後はベンダーの責任、ベンダーはベンダーで顧客の要求仕様に従うだけ。これではワクワクするサービスなんて生まれるはずもありません。発注側がきちんと手綱を握り、ベンダーとともにソフトウエアやサービスをつくっていく。そんなパートナーシップが求められているのだと思います。

株式会社LayerX 代表取締役CTO 松本勇気氏

日本の教育は「意思決定の機会」をつくるべき

木内:私は最近、自治体の保育園や小中学校の教育に関与しているのですが、日本の教育は均等均質で知識偏重型。その象徴が偏差値教育です。これでは個性なんて出せません。少し前までは個人のペースに合わせた「ゆとり教育」がまるで悪いことかのように扱われていましたが、私はもっと続けたらよいと思っていました。個人的にはエモーショナルさや自主自立を育む教育に期待をしていますが、皆さんはどうですか。

髙橋:日本の教育は画一的なインプット教育であり、それに対して経済成長を遂げている多くの国の教育は、自律的でアウトプット型。個別最適とも言われていますが、各々に何がしたいのか、未来をどうしたいのかを問いかけるべきです。本来、学習とキャリアはリンクするはずですが、日本はそこが分断しているのも問題です。せっかく日本には天才児を育てる環境があるのに、教育スキームが整っていないばかりに、天才児が活躍しきれていません。

宮本:採用活動をするとき、学歴は見ていません。今まで自分は何をしてきていて、これからはどんなキャリアを歩みたいか、それが当社で叶えてあげられそうかです。就職するまでの教育プロセスに変化が起こっていないのは確かですが、会社に就職するという意味ではまだ明るい未来があると思います。

松本:今の教育に一番欠けているのは「意思決定する機会」ではないでしょうか。つまり多くの人が自分で決める機会に臨まれていない。そもそも知識を入れることの意味は、意思決定の外部化にあると思います。意思決定とは問題に直面したとき、いくつかの選択肢の中からどれを選ぶか、そしてその選択に責任を負えるか。そのためにこそ知識が必要であり、教育の本懐も知識を持った上で意思決定をするというところにあるのではないでしょうか。

木内:本当はもっといろいろお聞きしたいところですが、終わりの時間に近づいてきました。最後の一言ずつコメントをお願いします。

松本:メタバースにしてもAIにしてもテクノロジーは私たちをいつもワクワクさせてくれます。今まさにそれが目の前で起きている。CTOとして自分自身をワクワクさせながら、社会を変えていきたいと思っています。

高橋:例えばWeb3.0の実現は企業だけでは難しく国を巻き込んでいかなければいけません。次のIT世界へ進むためにも、企業側から大いに発信し国を、社会を巻き込んでいきたいです。

宮本:テクノロジーにアンテナを張ることはとても大事ですが、それに踊らされてはいけません。「メタバースやWeb3.0ではこんなことができるよね」と想像できることは、実はそれほど面白くない。想像もできなかった便利さ・ワクワク感を追求していきたいと考えています。

最後に木内氏はこう締めくくった。

「人々を幸せにしなければ、ITもデジタルも意味を成しません。これから追究していくべきは、いかにして人に幸せを感じてもらえる社会にしていくか。みんなで頭を回せば少しずつ変わっていくはずです。ここにいる次世代リーダーの皆さんには、社会をけん引するリーダーとしての活躍を期待しています」

開催概要

イベントCIO Japan Summit 2022
開催日時2022年11月9日-10日(水・木)
会場ホテル椿山荘東京
主催マーカス・エバンズ・イベント・ジャパン・リミテッド

関連記事

人気のカテゴリ