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「データを捨てよ、町へ出よう」──7年で感じたリアルな場の強さ–データ界隈100人カイギキュレーターインタビュー vol.01

データ界隈のさまざまな人が集まるコミュニティ「データ界隈100人カイギ」。その発起人であり、キュレーターを務める野島光太郎さんに、立ち上げの経緯や込められた想いについてお話を伺いました。

         

カタコト英語のプレゼンで気づいたデータの魅力と強さ

佐々木:
では早速ですが、簡単にご経歴を教えてください。

野島:
私自身は、元々広告やデザイン畑でさまざまな事業やアートディレクションに携わっていました。現在は転職して、ウイングアーク1stという会社に属しています。データエンパワーメントカンパニーとして『データで世の中を変える』という言葉を標榜したIT企業でマーケティングをしております。

その中で私はソフトウェア開発や事業開発というよりは、世の中の方々にデータの価値やデータを扱うことの魅力を届けるようなメディア「データのじかん」に長らく携わってきております。「データのじかん」はさまざまな方々のインタビューや現場を取材し、コンテンツ作りをしているメディアです。

2017年にスタートしたメディアですが、その頃はまだDXやデータ、AIというものはまだ広く言われていない時代でした。それから7〜8年の間に、データやAIテクノロジーが企業活動や組織運営の中で、大変重要度が上がってきました。メディア自体も月間およそ90万人にご覧いただいているメディアとなりました。このことからも、データテクノロジーをどう自分たちの業務や社会の課題に実装するのかという点に関心が高まっていると感じています。

データ界隈100人カイギ 発起人/キュレーター 野島光太郎さん(ウイングアーク1st データのじかん編集部)

佐々木:
初めて見たときに、データの敷居の高さを感じさせない、おしゃれなサイトだなと思いました。

野島:
ありがとうございます!やっぱりデータテクノロジーは、元々内容自体が難しく、複雑なものなので、少しでもハードルを下げるような形で漫画を使ったり、イラストを使ったりは意識していますね。あとはできる限り、平易な言葉にすることも心がけています。

佐々木:
データの世界に入ったきっかけは何かありますか?

野島:
きっかけは前職時代の出来事ですね。前職がスペインの企業だったのですが、公用語が英語でスペイン語も使う場所だったんです。私は英語は流暢ではないし、スペイン語は単語のみという状況でした。お客様は基本的に海外の方が中心なので、プレゼンや提案も英語で行っていました。

以前、誰もが知る大きな企業のアジア・太平洋地域における責任者の方が日本に来た際に、10社が10分の提案プレゼンをする機会がありました。短い時間で英語も得意ではないので、Excelのマクロを使って、シミュレーションをカタコトの英語で伝えるという形で提案しました。その結果、10社の中から案件をいただき、後でフィードバックいただいたのは、「数字やデータで見せたことが分かりやすく、他の提案にはなかった」とのことで、大きなディールを獲得できたんです。

私自身は外資でも英語はあまり話せず、コミュニケーションもそんなに得意ではなかったので苦労していたのですが、データや可視化を使ってうまく伝えることで、相手の考え方や意識を動かせると気づいたのは、強烈な体験でした。言語や熱量ももちろん重要ですが、それと同じくらいデータや数字をうまく活用することは、自分自身も豊かになるという体験があり、そういったきっかけからウイングアーク1stという会社に入った形です。

境界を越えてつながる、「データ界隈100人カイギ」

データ界隈100人カイギ  コミュニティマネージャー 佐々木葵さん

佐々木:
「データ界隈100人カイギ」のキュレーターとして、参加することになった経緯を教えてください。

野島:
今回に関しては、私が発起人として「データ界隈100人カイギ」を立ち上げさせていただいた形です。「100人カイギ」は、全国の地域などで使われているイベントのフォーマットです。自治体などが主催して、地域の人をつなげたり、そこから新しいアイデアや活動を生み出す場として活用されています。

「100人カイギ」が素敵だなと背景には、私自身がメディアを運営する中で、課題感を感じたことがありました。「データのじかん」ではさまざまな取材を通して読者に届ける試みをしていて、それなりの方々に読まれているものになりました。ただ、伴走者に寄り添うメディアとしているのですが、背中を押すことに関してはすごく小さなものだと感じていました。

具体的な例で言うと、KPIBIツールというキーワードの記事が「データのじかん」にあって、立ち上げてから約5年の間、月間で2万から3万人と多くの人に読まれている記事があります。ただ、KPIの記事を読んでいる方は新規の方ばかりが来ているわけではなく、一定の人が何度も訪れているのではないかと推測しています。私たちは情報発信はしているものの、情報を受け取って理解した後、実際に取り組む挑戦まで背中を押すことができていない。それがメディアの弱さだと気づいたんです。メディアの強さは広い人に届けられることですが、長く「データのじかん」のメディアをやる中で、行動を促す力は、本当に表面的だと感じています。

そして、オンラインでつながることが当たり前になった今だからこそ、もう少し人に寄り添えるような、深い関係性を育てる場が大事だと思うようになりました。ただ情報を発信するだけじゃなくて、読者同士が出会ったり、話したりすることで、新たな行動やアイデアが生まれる。そんなきっかけを作っていきたいと思いました。

そこで、この「100人カイギ」というイベントに参加してみて、熱量も高いですし、皆さんボランティアでやっている中で、こういった場を作っている事実にとても心動かされました。これをデータ界隈で立ち上げていきたいと思ったのがきっかけです。

佐々木:
メディアでは浅く広く届くような取り組みをされていたかと思いますが、「100人カイギ」に対して寄せている期待は、それぞれのニーズがコミュニティだったり、顔を合わせたりすることによって、本当に求めていることは何なのかを理解できるという点もありそうですね。

野島:
本当にそうですね。オンラインの便利さはもちろん否定しないですが、Webだと特定の関心の範疇でしか探すことができません。しかし、「100人カイギ」のような場に行けば、全然違うテーマでデータに携わる方、異なる立場や役職でデータに携わる方とのつながりが生まれてきます。

データ界隈100人カイギでは、業界や職種、立場も異なるキュレーター(主催者)の方々に各回のテーマ設定をしていただきます。まさにこの異なる立場、多様性が、データ界隈を区切っている壁を壊すと言いますか、新たに壁のない場を作るきっかけになるといいなあと。どうしてもIT業界にいるとツールベンダーごとに情報発信が分かれていたり、役員と通常の社員で情報のレイヤーが分かれていたりしますが、それを少しでも取っ払うような場になればと思って、「データ界隈100人カイギ」という名前で「データを捨てよ」というのを一つ大きなキーワードにしています。

データ界隈100人カイギのキュレーター:毎回のそれぞれのキュレーターが、毎回テーマ、登壇者様をお招きし、組織、役職、立場、業界を超え、データ界隈の方々を繋いでいく

佐々木:
「データを捨てよ。町に出よう」というコピーは、カテゴライズみたいなものを捨てて偶発性に会いに行こうみたいな意味合いなのでしょうか?

野島:
まさに、データ界隈の皆様とのセレンディピティを期待していますね。偶発やそこからの価値を大学院で今研究しているので、別の観点からも楽しみです。

「データを捨てよ」というのは元々「書を捨てよ町へ出よう」という言葉から来ています。それはもちろん書が無駄だというわけではなくて、書も大切だが、それだけでは不十分であり、“インフラ”にとどまってしまう、という意味が込められています。データ界隈にいる人なので、元々データは大切だけれども、それとは違う領域もしくは知らない領域にちょっと飛び出そうというコンセプトですね。

競合ではなく共鳴を――メディアが集う、初回キュレーション

佐々木:
5月16日開催の一番最初のイベントのキュレーターが野島さんということで、キュレーターとしてのテーマに込めた想いを教えてください。

野島:
1回目の5月16日のテーマに関しては、私が発起人ということもあって、「データ文化を支援するメディア会」というテーマで設定しています。私自身が「データのじかん」というメディアで読者の方や世の中に少しでも役立てていただけるような形で、データやDX、AIなどのキーワードで発信しています。しかし、こういった取り組みをしているのはもちろん我々だけではありません。

2025年5月16日(金)の初回では、「Ledge.ai」「ワークフロー総研」「DOORS DX」「R²」「TECH+」など、データ文化を支援するメディアが集結し、なぜ“データ”“DX”“AI”がいま注目されるのか、メディアとしての視点や背景を語る、データ×メディア会

我々のようなやり方で発信しているメディアもあれば、別の軸でやっているメディアもあり、他にもさまざまな工夫をされているメディアやもっと大きいメディアもあります。データやAIを世の中に役立てるために日々活動されているメディア各社のみなさまを招待して、ご講演いただくことができれば、多様な視点からメディアの考え方を共有し、来場者との新たな接点を生む場にできると期待しています。

なかなか似たような領域のメディアが集まることはあまりないと思うので、ある意味競合的な意味にもなってしまうかもしれませんが、そういった方々にお力をお借りしてこの場を実現したいと考えています。

佐々木:
それぞれのメディアさんからどんな話が出てくるか楽しみですね。

野島:
そうですね。ご登壇を相談した際には、私も同じ立場なので大変緊張しながらお話をしていたんですけれども、総じてみなさんから「良い取り組みですね」と言っていただき、データ界隈がサイロ化されているという課題意識も持たれていました。

また、読者の方や来場者の方との直接のコミュニケーションの場も求められていますし、同じようなメディア同士のコミュニケーション自体も求められていると感じました。サイロを打破するという面で、業界を象徴するような素晴らしいメディア各社が今回ご登壇いただけるのだと思うとびっくりしています。

佐々木:
データについて考える場で、どんな切り口で話題を広げたいですか?

野島:
今回、特にメディア会に関して言うと、各社はメディアとして他に事業やサービスがあった上で、読者の方の課題や意識面で助けるような発信をしています。そういった面で言うと、理想とする姿は企業ごとに異なる部分もありますが、基本的には共通していることも多いと思います。

無駄をなくすことや、より付加価値の高いことを進めること、それを成し遂げる際には人間の活動を尊重しながらとか、環境に対しても配慮しながら行うという思いもあります。もちろん過程で利用するサービスや製品は違うのですが、理想の状態は各社共通しているところも多いはずです。

現在だと生成AIを活用して、提案ができることと、人間がやるべきこと。人間だからこそ生み出せる価値をどう棲み分けたり連携したりしていくのかという点について、答えはまだないかもしれません。しかし、その道筋に沿って皆さん活動していることは変わりないと思います。

当日の会話では、自分たちの違いも認めながら、共通するところも認めて、共通するところに対して皆で一緒にアプローチを探るきっかけになるといいなと思います。キュレーターの方も幅広い業界や役職を超えてご登壇者様を集めてくださるので、壁を取り払って人が集まり、その後にはサイロを破ったような取り組みのきっかけになればいいなと思います。

“まだここにいない誰か”へ――共につくるデータ界隈100人カイギ

佐々木:
最後に、登壇を検討している方々に一言お願いします。

野島:
データ界隈100人カイギは、まだ立ち上がったばかりでイベントもこれからなので、今後の来場者の方、もしくは登壇者の方と一緒に作っていくイベントになると思います。

今いるキュレーターの方も幅広い業界のさまざまな立場の方が参加していますが、全ての業界、全ての役職、全ての立場の方々を網羅できているわけではありません。そこで、ぜひイベントの中でぜひイベントの中でまだ見られない領域や、多様な観点で活躍・取り組みをされている方々に参加いただきたいです。

特に「unknown unknowns(アンノウン・アンノウンズ)」というキーワードで、ここにはないものを持っている方、もしくは全然違う観点でやっている方こそ、皆さんの知らないところを知っていただく機会を作れると思います。

データというものに少しでもピンときてくれれば、基本的にはどんな立場、どんな役職、どんな業界の方でも、この場で発信いただきたいですし、参加者の方とネットワーキングもしていただきたいと思っています。ぜひご登壇のご相談もカジュアルにコンタクトしていただければと思います。

 

データ界隈100人カイギ運営事務局 主催
データ界隈100人カイギ #1
データ文化を支援するメディア会

イベント名 データ界隈100人カイギ #1「データ文化を支援するメディア会」
開催日時 2025年5月16日(金) 18:30~21:00
会場 ウイングアーク1st株式会社コラボスペース
〒106-0032 東京都港区六本木三丁目2番1号 六本木グランドタワー36階
主催 データ界隈100人カイギ運営事務局
対象者 データに携わる全ての方
・ITツールベンダー
・コンサルタント
・Chief Data Officer(CDO)
・データサイエンティスト
・エンジニア
・ビジネストランスレーター など
参加費・定員 ・現地参加:1,000円(定員:50名)
・オンライン参加:500円(定員:50名)
・学生の方:現地・オンライン参加ともに無料(定員:10名 ※各5名)
URL 2025年05月16日開催|データ界隈100人カイギ#01|データ文化を支援するメディア会

 

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