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真のデータ分析には「腹を括る」人が必要

個人が原因と結果を探ってストーリーを組み立て、データ分析でしっかり裏付けが取れたとしても、組織がその分析を生かせるかどうかは難しい問題です。データ分析そのものとはまた別の課題だといえます。

私が企業研修やサポートで感じるのは、データ分析の結果を引き受ける責任者が少ないことです。「売上が落ちているのでデータから探るように」と指示があったとしても、売上とは何をさすのか、売上が落ちた原因が判明したあとにどんなアクションをめざすのか、結果について誰が責任を持つのか、曖昧なことがほとんどです。

日産では個人に任される範疇だったので「この定義で分析し、結果を考慮してこれを実行します」といえば通りました。私の場合、分析者と実行者を兼ねることが多かったので「分析して終わり」は許されません。実行と結果に対しても当然責任が伴いました。これは分析専任者と実務者との大きな違いともいえます。

実行が伴う分析を提案するので、本当にこのストーリーで合っているのか、当時は何度も何度も精査してプレゼンに臨みました。受ける上司も容赦ないチェックをして不明点があれば質問し、許される範囲のリスクであればOKを出します。お互いに分析結果について「腹を括る」という覚悟がありました。

現在の企業の多くは、データ分析にここまでの責任を負わせることは少ないのではないでしょうか。データ分析は実務者とは別の人物が行い、結果に責任を持たない立場から数字を出してくる場合も少なくありません。その数字が見当外れだったとしても誰も責任は取らずに「だからデータ分析は役に立たない」と切り捨てられてしまう。本来なら分析のおかげでもっと明確に意思決定ができるはずなのに、責任者が設定されないために正当な力を発揮できていないと感じます。

業務に当たる実務者には、せめてデータに関するストーリーを組み立て、分析と提案まで行える状況になってほしいと考えています。

日常で使うデータ分析では、高い精度にこだわる必要はありません。学問としての統計学は90%や95%という精度を求めるかもしれませんが、常に流動的なビジネスの現場ではざっくりとした方向を知るだけでも大きな判断材料になります。何の情報もない中でどちらへ進むべきかすら迷っているようなときには、分析の結果「右の方向へ進めば効率が上がるようだ」とわかるだけでも助かります。

自分のロジックで相手に意思決定させたいのであれば、ストーリーを整理してデータからエビデンスがつけられないか吟味すればいい。データを調べて「自分が考える方向は合っている」とある程度確信が持てたなら、実行者として腹を括りつつ、自信を持ってプレゼンを行えばいい。ビジネスの現場では、分析の精度を上げるより分析を使っていかに早く「攻め」に転じられるかが大事です。現場を知る実務者からぜひデータ分析を活用してほしいと思います。

お話をお伺いしたDataLover:柏木 吉基(カシワギ ヨシキ)

データ&ストーリー LLC代表  http://data-story.net/
データ分析・ロジカルシンキングを武器とした課題解決トレーナー
横浜国立大学非常勤講師 多摩大学大学院客員教授
慶応義塾大学理工学部卒業後、日立製作所入社。在職中、欧米両方のビジネススクールにて学び、2003年MBAを取得。Academic Award受賞。2004年日産自動車へ転職。海外マーケティング&セールス部門、ビジネス改革グループマネージャ等を歴任。 グローバル組織で、数々の経営課題の解決、ビジネス改革プロジェクトのパイロットを務める。2014年、プロの実務家、ビジネススキルトレーナーとして独立。データ分析を“活用”するための思考法、分析力を分かり易く伝えた著書や講義には高い定評がある。
著書に 「それ、根拠あるの?」と言わせないデータ・統計分析ができる本/日本実業出版社
データ競争力を上げる上司、下げる上司/日経BP社

(PHOTO:Inoue Syuhei  企画・構成・編集:野島光太郎)

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