先に原因と結果のストーリーを考えれば、データ探しに迷わない。データ分析における逆転の発想とは。 | データで越境者に寄り添うメディア データのじかん
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先に原因と結果のストーリーを考えれば、データ探しに迷わない。データ分析における逆転の発想とは。

         

企業には営業実績や財務指標、顧客属性などたくさんのお宝データが埋もれています。組み合わせれば実務で役立ちそうですが、活用方法がなかなか見つかりませんよね。膨大なデータを使いこなす方法について、データ分析や論理思考の著書を持つ データ&ストーリー LLC代表の柏木吉基さんは、意外にも「データに触らずにデータ分析を始めるステップ」を提唱しています。

結果データだけを眺めていても答えは出ない

データ分析を活用して現場で営業の効率を上げるにはどうすればいいか。検討するときに現場でよくあるのは、最終結果のデータだけに注目することです。たとえば全体の売上が落ちた場合、データから売れ行きが悪い製品や成績が落ちた支店を探し出して原因を突き止めたと思い、多くの人はそこで思考を止めてしまいます。

しかし出てきた結果をグラフや表にしたものは単なる結果の表示や比較であり、その背景まで掘り下げる分析とは別物です。売上実績データという結果だけを眺めていても売上減の答えは出てきません。これだけの数字では結果に至るプロセスが見えないからです。

そこで私が提唱しているのは「仮説によるストーリー構築」です。データをにらんで原因を探るのではなく、まず自分なりの仮説を立て、いくつかの仮説を組み合わせて結果に至るストーリーを考えます。そのストーリーの正しさをデータを使って証明する方法です。

可能性をストーリーに置き換え、データで補完する

売上が落ちた原因を知りたいからといって、いきなり売上推移を折れ線グラフにしたり支店ごとの成績を棒グラフにしたりしても、そこに本質的な答えはありません。あくまでもそれは表面的な結果でしかないからです。私たちが最終的にやるべきなのは、売上に影響する要素を抜き出して自分なりの「原因から結果に至るストーリー」を考えることです。

売上に影響する要素は限りなくあります。製品そのものかもしれないし、特定の支店かもしれない。競合他社の新製品かもしれません。現場にいる人であれば営業に関連する事柄からいろいろ思いつくはずです。それらを抜き出したら、さらに上流で想像できる原因を考えます。製品の不具合が顕在化したかもしれない。ある支店の営業人員が急に減ったのかもしれない。他社の販促がうまかったのかもしれない。

紙に書き出せば、「売上が落ちた」という始点からツリー状にいろんな要素が連なっていくはずです。ツリーができたら、その中でどのスレッドが一番「売上が落ちた」という結果に影響を与えているか考えます。

もちろん要素は無限にあり、起こり得るすべてを書き出すのは不可能です。しかし現場を知っている人は売上を左右しそうな要素に優先順位をつけられるでしょう。ツリーの中でも「これが大きなインパクトを生んでいるようだ」と思うスレッドを抽出したら、その流れについて誰でも納得できるような説明を考えます。これがデータ分析の前に用意する「原因から結果までのストーリー」です。

ストーリーを構成している要素を確認し、それを数値で表すとしたら何を調べればよいか考えます。たとえば「A支店に大きな問題がある」という仮説から伸びたストーリーを選び、「競合他社が進出した」ことが最もインパクトがありそうだと推測したとします。

このストーリーを強化するために必要なデータは、A支店の売上推移と他社進出後の売上比較、取引先の増減数、同規模の他支店との比較や関連性の確認などでしょう。ここで初めて「探すべきデータ」がわかり、やっとデータそのものに触る段階に入ります。

ストーリーは、決して「分析手法さえ知っていれば並んでいるデータから導き出せる」という性質のものではありません。目の前にあるデータは、偶然その形に整えられて目の前にあるに過ぎないのです。今知りたい本質に迫るためには自分で仮説を作り、その仮説に沿ってデータを検証する必要があります。

仮説を立て、データを調べて仮説が裏付けられれば「競合他社が進出したためにA支店の成績が大きく下がり、全社の売上減に影響した」というストーリーの説得力が増します。プレゼンではデータ分析そのものを提案するわけではありません。ロジックを強化する数値のエビデンスをつけて、自分が用意したストーリーを提案するのです。

 
身近な課題をストーリーで解決する

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