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DXという用語がトレンドだったフェーズは終わり、多くの大企業ではDXをビジネスにどう浸透させ、人材をいかに育成するかに心を砕いています。DXの先を見越して「VX(バーチャル・トランスフォーメーション)」や「EX(エンターテインメント・トランスフォーメーション)」、「GX(グリーン・トランスフォーメーション)」といった言葉も生まれていますが、大切なのは目先のトレンドばかり追いかけるのではなく、基本に立ち返ってDXやDX人材について正確に理解しておくことでしょう。
ここでは、DXやDX人材の定義、DX人材育成をめぐる課題やその解決方法について事例を交えて解説します。
ここでは、大前提としてDXとDX人材の定義について説明します。
日本においてDXが注目されたきっかけの一つに、2018年に経済産業省が発表した『DXデジタルトランスフォーメーションレポート~ITシステム「2025年の崖の克服とDXの本格的な展開~」』があります。
その中でDXは「企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」と定義されています。
もともとDXという言葉を提唱したスウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によると、ITの浸透は「人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」としていましたが、現在ではDXは企業戦略やビジネスの文脈で用いられることがほとんどです。
上述の定義が示しているように、DXは単に紙媒体の情報をデジタル化したり、業務効率化のためにITを活用したりすることにとどまらず、何らかの新しい「価値を創出し」、変化をもたらすことを指します。
2020年に経済産業省が発表した『DXレポート2』によると、DX人材とは「自社のビジネスを深く理解した上で、データとデジタル技術を活用してそれをどう改革していくかについての構想力を持ち、実現に向けた明確なビジョンを描くことができる人材」と定義されています。
意外に思われるかもしれませんが、DX人材には特定のITスキルが求められているわけではありません。テクノロジーについての幅広い知見は必要ですが、IT人材とは異なり、単にシステムを構築したり、ITを使った課題解決を提案したりするだけではなく、慣習にとらわれず新しいものに挑戦しようとするマインドセットが必要なのです。
DX人材の重要性が高まっている背景には、上述した経済産業省のレポートのタイトルに含まれていた「2025年の崖」があります。
「2025年の崖」とは、事業部門ごとに構築されている企業の既存システムが放置されれば爆発的に増加するデータを活用しきれずデジタル競争の敗者になるだけでなく、システム維持のコストやセキュリティリスクが高まることで、2025年以降、毎年最大12兆円(現在の3倍)の経済損失が生じる可能性がある懸念を指します。
また、少子高齢化による労働人口の減少も関係しています。各企業ともDXを進め、DX人材が増えれば、生産性の向上や業務効率の改善を期待することもできます。
DX人材育成は急務であるにもかかわらず、課題も少なくありません。ここでは、DX人材育成をめぐる課題のうち、3つを取り上げて解説します。
DX人材育成をめぐる1つ目の課題は、経済者の危機感が不足していることです。
独立行政法人中小企業基盤整備機構が2022年5月に公表した「中小企業のDX推進に関する調査」によると、対象となった全国の1,000社の中小企業経営者・経営幹部のうち「DXについて理解している」と回答した企業は全体の37.0%(「理解している」7.8%、「ある程度理解している」が29.2%)でした。さらに「DXを推進・検討している」企業は24.8%(「既に取り組んでいる」7.9%、「取組みを検討している」16.9%)に過ぎず、「取り組む予定はない」と回答した企業41.1%を大きく下回りました。
このように経営者のDXに対する理解が不足しており、取り組む意思もなければ、DX人材育成を望めるはずもありません。
DX人材育成をめぐる2つ目の課題は、DXを推進する人材が不足していることです。
一般社団法人日本能率協会が発表した「日本企業の経営課題2022」によると、「DX推進の課題」として「DXに関わる人材が不足している(採用)」と回答した経営者は83.1%で、「DXに関わる人材が不足している(育成)」と回答した経営者は85.9%に上りました。
DXを推進するためにはビジョンやアイディアが欠かせませんが、デジタル技術全般に関して精通している必要がありますし、プロジェクト・マネジメントのできる人材が求められます。少子高齢化によって労働人口全体が減少している中で、DX人材だけを社内で育成するのは困難ですし、採用によっても確保しようとしても限界があるのが現状です。
DX人材育成をめぐる3つ目の課題は、DXに求められる具体的スキルが不明確な点です。
近年、既存人材がIT技術などの新しいスキルを身に着けて市場価値を高める「リスキリング」が強調されています。しかし、実際のところ何を学んだらよいのか不明確な場合が多く、従業員のモチベーションはなかなか上がっていません。また、あくまでも施策レベルに留まっており、社内制度改革など企業全体に浸透するまではほど遠い状況です。
多くの課題があるものの、それらを克服し、DX人材の育成に成功している事例を3つ紹介します。
ダイキンは2017年にDX人材育成を目的にして「ダイキン情報技術大学」を社内に設置しました。当時、情報系技術者は前者のわずか1%に過ぎませんでした。
2018年4月に新入生向けに始まったカリキュラムでは、1年目にダイキンにおける事業・ビジョンの理解を深めるとともに、IoTやAIの専門知識などを学習、2年目には営業、開発、製造などの各部門を4カ月ごとに横断し、全体的な視点で課題を解決できる人材を育成することを目指しています。
ホールディングス体制を敷く大企業では、グループ内の連携がDXの課題といえます。
ヤンマーグループでは、2022年7月にはDXの旗振り役となる「デジタル戦略推進部」を立ち上げました。また、12月に「ユーザー会」という場を活用したグループ内におけるデータ活用の促進の取り組みをスタートさせ、グループ横断でデジタル化、DX推進の加速を目指しています。
DXの推進は大企業よりも中小企業で立ち遅れている傾向にあります。福岡に本社を構える従業員数516名の株式会社サワライズでも、ITツールを活用しながらも、新たな価値の創出を目指すDXにまでは至らない状況でした。
そこでワークショップを開催し、DXとはそもそも何かの理解度を深め、デジタル活用に必要な視点、共通意識を見につける取り組みがなされました。結果として、いままで「IT=自動化」のイメージが「コミュニケーションにつながるツール」という視点を身に着けることができました。
DXの浸透度、DX人材の育成レベルは各社で異なると思いますが、何よりも大切なのはDXによって何を成し遂げたいのかという価値を全社的に共有することです。DX人材の育成をめぐる課題はさまざまですが、まずは経営層が明確なビジョンを持つことから始める必要があります。
著者:河合良成
2008年より中国に渡航、10年にわたり大学などで教鞭を取り、中国文化や市況への造詣が深い。その後、アフリカのガーナに1年半滞在し、地元の言語トゥイ語をマスターすべく奮闘。現在は福岡在住、主に翻訳者、ライターとして活動中。
(TEXT:河合良成 編集:藤冨啓之)
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