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経済産業省の最新の試算(2024年)では、生産誘発額約2.9兆円。アジア太平洋研究所(APIR)の拡張シナリオでは最大3.4兆円弱に上振れする可能性が示されています。
そのうち最も効果が期待をされているのが、来場者消費です。
来場者消費は約1.3兆円超が見込まれています。世界各国の食事や物産はもちろん、SNSでは公式キャラクターのミャクミャクのグッズを購入している人もよく見かけますよね。
ついで効果が大きいのが、建設物です。大屋根リングなど、挑戦的な建築物が並ぶ今回の万博では、建設投資が8,570億円にのぼります。
さらに、訪日客350万人誘客により、MICE(企業等の会議[Meeting]、企業等の行う報奨・研修旅行[インセンティブ旅行:Incentive Travel]、国際機関・団体、学会等が行う国際会議 [Convention]、展示会・見本市、イベント[Exhibition/Event]の頭文字を使った造語)の需要も拡大します。運営・イベントの費用は6,808億円と試算されています。
来場者消費・建設投資・イベントの三つが万博による経済効果のキードライバーと言えます。
万博自体への影響をここまで見てきましたが、この項目では、地元、大阪への影響を紹介します。
万博に伴う雇用創出については、建設・運営・観光サービスで13〜15万人規模の新規雇用が見込まれています。準備段階から大阪市内の平均時給が前年比約18%上昇したという調査結果も報告されています。
大阪メトロの中央線延伸(夢洲駅、2025年1月開業)や高速道路の淀川左岸線(二期)暫定供用、会場内外5G/6G整備、自動運転・ロボット実証など、万博後のIR開発やスマートシティ化を後押しするインフラ投資も進行中です。
万博による誘客により、ホテルの稼働も活発になります。ホテルの企画・開発を行うカソク株式会社によると、開幕時点の大阪市内ホテルの1日あたりの平均客室単価は、前年同月比+46.4%、稼働率94%超だったそうです。しかし、その一方でホテル不足も懸念されています。
そうした中で、航空会社・旅行会社が周遊ツアーを強化し、京都・奈良・神戸のみならず中国・四国・九州などへの分散型観光も推進されています。国交省や地方運輸局もモデルルートを公開しています。こうした施策は、オーバーツーリズム回避と地方消費の底上げを同時に図る“分散型観光”の試金石になります。
万博の経済効果を最大化し、開催後の成長につなげる鍵は「データの活用」にあります。国や自治体は、地域別の旅行者数や消費額を継続的にモニタリングし、分散誘客策の効果を検証することが欠かせません。データ・マネジメント・プラットフォーム(DMP)で蓄積された数値を可視化すれば、混雑の平準化や周遊促進の施策をスピーディーにチューニングできることが期待されます。
さらに、5G/6GネットワークやMaaS、スマートエネルギーなど、万博で実証される最先端インフラは大会後も都市経営や新産業創出に再利用できるレガシー資産となります。これらのデータをいかに横断的に管理し、行政サービスや民間ビジネスへと展開できるかが、地域間競争の分岐点になるでしょう。
大阪・関西万博2025は経済インパクトに加え、交通・デジタル両面の社会インフラを一気に刷新し、関西発の観光・教育・文化イノベーションを全国へ波及させるポテンシャルを秘めていると感じます。それに伴い、取り扱えるデータが高度化する中で、ここで得られたデータを、観光需要の獲得や地域連携に生かすことが、ポスト万博の時代の日本の成長を握るのではないでしょうか?
(大藤ヨシヲ)
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