愛知万博が成功したから大阪・関西万博も大丈夫?愛知万博の「懸念」と「実績」をデータで振り返る | データで越境者に寄り添うメディア データのじかん
カテゴリー
キーワード
愛知万博が成功したから大阪・関西万博も大丈夫?愛知万博の「懸念」と「実績」をデータで振り返る

愛知万博が成功したから大阪・関西万博も大丈夫?愛知万博の「懸念」と「実績」をデータで振り返る

2025年4月13日、大阪・関西万博がはじまってから約3カ月が経過し後半戦に突入した。開催以前・直後の報道では「関西万博は大丈夫か」というメッセージがよく聞かれたが、実施後は雰囲気も変わりつつある。筆者は開催以前から「なんだかんだ大阪・関西万博は大丈夫」と考えていた。

というのも、2005年の愛・地球博(愛知万博)も当初は苦戦したが、最終的に来場者数は目標を上回ったからだ。愛知万博はいつ、どのように目標を達成したか、そのあたりをデータを見つつ、改めて振り返ってみよう。

低迷する大阪・関西万博への機運。外国人・中国人観光客は頼みの綱になり得るか?

低迷する大阪・関西万博への機運。外国人・中国人観光客は頼みの綱になり得るか?

続きを読む 》

         

当初から心配された愛知万博

愛知万博は現在の関西万博、いやひょっとすると、関西万博以上に心配されたイベントだった。なぜなら、万博自体の存在意義が問われた時だったからだ。1990年代に入ると、IT化、グローバル化の進展により、多くの国が一堂に会する万博への疑問の声が聞かれるようになった。

現に、愛知万博の前の万博、2000年に開催されたドイツ・ハノーバー万博では巨額の赤字が発生。失敗に終わった。また、2004年に開催予定だったフランス・サンドニ万博は小規模の映像博覧会を計画したが、資金不足により中止に追い込まれた。もし、愛知万博がとん挫すると、「万博3連敗」になるところだった。

一方、万博開催に責任を持つBIE(博覧会国際事務局)も当時、危機感を共有していた。そこで、万博の存在意義に関して、「万博が地球規模の課題解決に貢献しなければならない」と提唱した。21世紀最初の万博となった愛知万博も「地球規模の課題に貢献する」というテーマを掲げ、開催へとまい進したのである。

当時の愛知万博の関係者のインタビューを読むと、一連の万博をとりまく環境により、相当のプレッシャーを感じていたという。また、国内でも愛知万博に対しては厳しい目が向けられた。開催前の人々の関心は高くなかった。

今回の大阪・関西万博は少なくとも愛知万博が受けた「万博3連敗」のような、万博の存在意義を問うようなプレッシャーは少ないのではないだろうか。なぜなら、コロナ禍に行われたドバイ万博は成功を収めたからである。

データで見る愛知万博

愛知万博は2005年3月25日から9月25日まで行われ、目標入場者数は計1500万人とした。1日あたりの入場者数になおすと、約8万1千人になる。しかし、初日から入場者数が多かったわけではない。3月25日からの第一週目は春休みにも関わらず、3月25日~31日における1日あたりの入場者数(週単位)は60,870人にとどまった。

その後、4月中旬から6月中旬にかけて、ゆるやかに入場者数は増加した。60日目にあたる5月23日に入場者総数500万人を達成。6月13日の週で、1日あたりの入場者数は125,753人(週単位)を記録した。

6月20日の週から7月25日の週までは全体的に低調であった。。愛知万博のデータを見る限り、混雑を避けたければ、梅雨の時期がねらい目だといえる。

8月8日の週からお盆の時期ということもあり増えたが、愛知万博は8月29日から9月25日までの約1カ月の間に、入場者数が急増したことだ。1日あたりの最多の入場者数は9月18日の281,441人であった。これは企業等が配布した入場券を持っている人が、最後の短期間に万博を訪れたことが考えられる。

愛知万博の最終公式入場者数は約2,200万人となり、目標入場者数を大幅に上回った。

次に入場者がどの地域から来たのか、見ていきたい。愛知万博では東海4県(愛知・岐阜・三重・静岡県)からの比率は58.1%であった。関東は15.2%、関西は12.4%となり、愛知万博が関東、関西からアクセスしやすい環境にあったといえる。

愛知万博の公式ホームページによると、1990年の大阪万博や1985年のつくば科学博と比較して、愛知万博への地元来場者の比率は低い、としている。しかし、地の利や交通機関の発達を考えると、比率が少ないからと言って、愛知県の人々が愛知万博に対して冷淡だったとは言えないだろう。考え方を変えれば、地元来場者の比率が極端に高い地方博にならず、万国博にふさわしいデータといえる。愛知万博への来場回数は初回来場者が6割を占めた一方、リピーターが4割弱も占めたのが特徴といえる。

ここでインフォプラントが運営するインターネットリサーチサイト「C-NEWS」が2005年5月18日~22日に行ったアンケート調査を紹介したい。対象者は愛知万博に行ったことがある15歳以上、有効回答数は466人だった。

調査によると、展示内容に「満足」が6割半ばだった。万博全体に対しては「満足」が4割半ばという分析を掲載した。また、「ぜひ行きたい」が2割強、「できれば行きたい」が3割強を占めた。再訪を希望する理由として多く挙げられたのが「見ていないところがたくさんある」だった。

5月中旬という早い時期の調査なので、回答者がもともと愛知万博への関心が強かった、という点は否めない。それでも、再訪希望が約5割を占めた結果を見ると、最終のリピータの比率を見ても納得がいく。

愛知万博が成功したといえる理由

なぜ愛知万博は成功したのだろうか。一般的に指摘されている理由は口コミである。先述したように、当初、愛知万博に対しては否定的な意見が相次いだ。ところが、日が経つにつれ、来訪者が口コミで万博のおもしろさが広がり、マスコミの論調も肯定的なものへと変化した。

このことに関し、財団法人2005年日本国際博覧会協会事務総長(当時)の中村利雄氏は「日々改善」を要因のひとつとして挙げた。つまり、万博協会に不満点を述べると、ちくいち改善する姿勢に徹した。この万博協会の姿勢、行動はマスコミにも高く評価された。たとえば、愛知万博でも暑さ対策が叫ばれたが、7月よりグローバル・ループ上に1824個ものドライミストが設置された。その他にも、ミネラルウォーターやうちわの配布といった細かな配慮も忘れなかった。

また、イベントの実施も挙げられている。愛知万博では特定期間の夕方から夜間にかけて、ハイレベルなコンサート「トワイライトコンサート」を開催した。つまり、再訪しても、また新たな刺激が得られる、というおもしろさがあったということだ。

最後に、来訪者同士、スタッフ同士の交流も万博成功に寄与したとのこと。次第に「見に行く」から「参加する」ために万博に行く人が増えたという。

一連の改善や刺激が来訪者の口コミやマスコミによって広がったのだろう。2005年当時は、まだまだSNSが普及していなかった時だ。肯定的な口コミは相当強かったと予想する。

報道によると万博開幕1週間で一般来場者は52万人に達成し、2025年5月30日時点で490万人を突破している。はこれは愛知万博よりも多いが、想定来場者数2820万人を達成するには、今のペースのままなら厳しいと予想できる。

しかし、今回の万博は大阪で行われていることから、口コミの強さは土地柄、大いに期待できる。また、万博に訪れた際の様子を見ると、初日にもかかわらず、スタッフと交流している姿をよく見かけた。スタッフとの交流を目的としたリピータも期待できそうだ。後は日々改善だ。今回の万博協会が愛知万博のように、きめ細やかに対応できるか否か。ここに大阪・関西万博の成否がかかっているような気がする。

著者:新田浩之
2016年より個人事業主としてライター活動に従事。主に関西の鉄道、中東欧・ロシアについて執筆活動を行う。著書に『関西の私鉄格差』(河出書房新社)がある。
 
 

参照元

×

メルマガ登録をしていただくと、記事やイベントなどの最新情報をお届けいたします。


データ活用 Data utilization テクノロジー technology 社会 society ビジネス business ライフ life 特集 Special feature

関連記事Related article

書評記事Book-review

データのじかん公式InstagramInstagram

データのじかん公式Instagram

30秒で理解!インフォグラフィックや動画で解説!フォローして『1日1記事』インプットしよう!

おすすめ記事Recommended articles

掲載特集

デジタル・DX・データにまつわる4コマ劇場『タイムくん』 デジタル・DX・データにまつわる4コマ劇場『タイムくん』 データのじかんをもっと詳しくデータのじかんフィーチャーズ データのじかんをもっと詳しく データのじかんフィーチャーズ 「47都道府県47色のDXの在り方」を訪ねる『Local DX Lab』 「47都道府県47色のDXの在り方」を訪ねる『Local DX Lab』 DXの1次情報をを世界から『World DX Journal』 DXの1次情報をを世界から 『World DX Journal』 データで越境するあなたへおすすめの『ブックレビュー』 データで越境するあなたへおすすめの 『ブックレビュー』 BIツールユーザーによる、BIツールユーザーのための、BIツールのトリセツ BIツールユーザーによる、BIツールユーザーのための、BIツールのトリセツ CIOの履歴書 by 一般社団法人CIOシェアリング協議会 CIOの履歴書 by 一般社団法人CIOシェアリング協議会 なぜ、日本企業のIT化が進まないのか――日本のSI構造から考える なぜ、日本企業のIT化が進まないのか――日本のSI構造から考える 日本ビジネスの血流である帳票のトレンドを徹底解説 日本ビジネスの血流である帳票のトレンドを徹底解説 データを武器にした課題解決家「柏木吉基」のあなたの組織がデータを活かせていないワケ データを武器にした課題解決家「柏木吉基」のあなたの組織がデータを活かせていないワケ BI(ビジネスインテリジェンス)のトリセツ BI(ビジネスインテリジェンス)のトリセツ 入社1年目に知っておきたい差が付くKPIマネジメント 入社1年目に知っておきたい 差が付くKPIマネジメント CIOLounge矢島氏が紐解くトップランナーたちのDXの“ホンネ” CIOLounge矢島氏が紐解く トップランナーたちのDXの“ホンネ” データのじかん Resources越境者のためのお役立ち資料集 データのじかん Resources 越境者のためのお役立ち資料集 AI実装の現在地点-トップITベンダーの捉え方 AI実装の現在地点-トップITベンダーの捉え方 データでビジネス、ライフを変える、面白くするDATA LOVERS データでビジネス、ライフを変える、 面白くするDATA LOVERS データマネジメント・ラジオ by データ横丁 データマネジメント・ラジオ by データ横丁 データのじかんNews データのじかんNews データ・情報は生もの!『DX Namamono information』 データ・情報は生もの! 『DX Namamono information』 ちょびっとラビット耳よりラピッドニュース ちょびっとラビット耳よりラピッドニュース AI事務員宮西さん(データ組織立ち上げ編) AI事務員宮西さん(データ組織立ち上げ編) 藤谷先生と一緒に学ぶ、DXリーダーのための危機管理入門 藤谷先生と一緒に学ぶ、DXリーダーのための危機管理入門 生情報取材班AI時代に逆行?ヒトが体感した「生情報」のみをお届け! 生情報取材班AI時代に逆行?ヒトが体感した「生情報」のみをお届け! データはともだち 〜怖くないよ!by UpdataTV Original データはともだち 〜怖くないよ!by UpdataTV Original データ飯店〜データに携わるモノたちの2.5thプレイス by UpdataTV〜 データ飯店〜データに携わるモノたちの2.5thプレイス by UpdataTV〜 インサイトーク〜データで世界を覗いてみたら〜by WingArc1st + IDEATECH インサイトーク〜データで世界を覗いてみたら〜by WingArc1st + IDEATECH データの壁を越え、文化で繋ぐ。データ界隈100人カイギ データの壁を越え、文化で繋ぐ。データ界隈100人カイギ
close close