ブース内では実際の北海道にある油圧ショベルの遠隔操作が体験できるコーナーも
ウイングアーク1stと共に出展した植村建設とアーキットは北海道に本社を構える。今回の遠隔操作を主導したのは植村建設だ。植村建設は以前から工事現場におけるショベルカーをはじめとする建機の遠隔操作に取り組んでいる。また、遠隔操作の実験場ならびに人材育成施設の拠点として、北海道赤平市に「UNiCON FIELD(ユニコン フィールド)」を設置。敷地面積は1万平方メートルに及び、遠隔操作で用いる実験用盛り土などがある。展示会では、インテックス大阪から「UNiCON FIELD(ユニコン フィールド)」にあるショベルカーの遠隔操作体験が行われた。
インテックス大阪から北海道赤平市にあるショベルカーを遠隔操作する様子
そもそも、工事現場における遠隔操作は、地方の問題を解決する手段のひとつだ。地方の建設現場では人手不足が課題となっている。また、北海道では建設業者が町の主要企業であることが珍しくない。そこで、建設現場に遠隔操作を導入すれば、特段のスキルがない人でも建機を操作できる。また、操作場所を選ばないため、都会にいながら地方に貢献できる点も見逃せない。
北海道赤平市にある「UNiCON FIELD(ユニコン フィールド)」
ところで、工事現場の遠隔操作自体は決して珍しい技術ではない。実際に、すでに遠隔操作を導入している工事現場も存在する。しかし、その多くは特殊な工事現場であり、なかなか一般的な工事現場では導入が進んでいない。理由の一つとして、建機の安全確認が挙げられる。遠隔操作の重機の動きをチェックする仕組みは必須と言える。万が一、周囲に危険を及ぼすような動きがあれば、操作者に警告を出さなければならない。しかし、このチェック体制が確立しておらず、人力に頼る現場も存在するとのこと。その結果、遠隔操作を導入したにもかかわらず、返って工事現場での人員が増えたケースもあるという。これでは、何のために遠隔操作を導入したか、わからなわからない。
隔操作は「MotionBoard」を見ながら行う
そこで、アーキットと植村建設は、日本初の「重機の自動追尾AI(仮)」を搭載した「ショベルカーの接近警報AI(仮)」を共同開発した。
本システムは現場に設置したカメラ映像をAIで解析し、ショベルカーに接近する人間を検知して警報を発するものである。安全確認をAIで半自動化することで、省人化と遠隔操縦オペレータの業務補助を実現する。さらにアーキットはネットワークカメラとAI解析により危険時に警報を発する仕組みを開発し、日本初の自動追尾AIを組み込んだ。この仕組みにより、工事現場における人員削減と遠隔操作の目的達成が可能となった。
背景には、安全確認のために別途作業員が必要となる従来の遠隔操縦の課題があった。植村建設の「UNiCON FIELD」での実証と、アーキットのAI技術が融合したことで、実用的な接近警報システムが実現したのである。
「MotionBoard」では進捗管理も容易だ
さて、ゲームコントローラー片手に、インテックス大阪から北海道赤平町のショベルカーを遠隔操作した。その際、パソコンに映し出されたボードを見ながらの操作となる。ボードには現場の様子だけでなく、現地の気温も表示されている。先ほど紹介したアーキットのシステムを通じた警報もボードに表示される。ボードには様々な情報が掲載されているが、実に見やすい。このボードはウイングアーク1stが開発した「MotionBoard」だ。「MotionBoard」は、様々な情報・データを横断的に表示することを得意としている。
重機を遠隔操作するゲームコントローラー
建設業界では、すでに清水建設や大林組などの大手企業に導入されている。現場での様子を表示するだけでなく、工程の進捗管理にも一役買っている。これまでは現場ごとに個別管理していた進捗状況も、「MotionBoard」を使えば、横断的に把握できる。
さて、肝心の遠隔操作だが、案内人の指示に従い、ショベルカーのショベルを上下にするなど、様々な操作を体験した。操作自体は難しくない。ある程度、練習すれば誰でも業務レベルでの遠隔操作が可能になるだろう。少しタイムラグがあるが、これも通信等を改善すれば、解決可能な問題だろう。
2010年代は個々の技術が開発されていった。2020年代は個々の技術を横断的に結びつけることに主眼が置かれているような気がする。横断的に結びつけ、わかりやすくなった段階で、初めて本格的に実用化できるのだ。そのように考えると、今回のウイングアーク1st、植村建設、アーキットのような取り組み事例が、次々と生まれてくるような気がする。そして、人手不足や働き方改革に対応する解決策が生まれてくるのだろう。
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