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冬眠人脈を攻略し、営業一人あたり売り上げ2.4倍を実現 名刺と成果をバリューチェーンでつなげる現実解としての仕組み

         

営業やマーケティングをはじめとした各部署が獲得した名刺をデータ化し、管理ツールに蓄積している企業も多い。そのデータはまさに「人脈」だが、生かし切れず眠らせてしまっている企業が多いのではないだろうか。社内に眠っている人脈「冬眠人脈※」を起こし、情報としての価値を最大化するためには、社内のバリューチェーンをつなげる試みが不可欠だ。

株式会社コアコンセプト・テクノロジー(CCT)では、Salesforceとクラウド名刺管理サービスSansan、そしてMotionBoardなど複数のシステムを組み合わせることで、バリューチェーンをつなげてアカウント・ベースド・マーケティング(ABM)を実現している。そこからもたらされる、新たな営業アプローチについて聞いた。

※冬眠人脈とは、名刺には経済機会を生み出す以外にもさまざまな機能があり、売上も名刺交換以外の要因で成り立つものもある中、冬眠人脈においては経済規模を推計するため、 「名刺」を交換・共有することにより「経済効果(売上)」を生むツールと便宜的に定義。各算出数値は、このような1つの考え方に基づく近似値の推計です。

「名刺データを逃がさない」へシフト

CCTは、独自のDX支援メソッドやIoT/AIソリューション「Orizuru」を活用し、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する企業を、コンサルティングからDX組織構築まで、一気通貫で支援するプロフェッショナル集団だ。
 

同社では、名刺管理用のSansanと営業管理用のSalesforceを、データ統合ツールであるSansan Data Hubで結び、双方のデータの名寄せを可能にしている。さらにMotionBoardを使った“見える化”によって、個々のシステムに眠っていたデータを相関関係にもとづいてひも付けることで、情報としての価値を高めている。

同社ではABMという言葉が普及する以前から、顧客の分析に取り組んできた。だが当時は単純に名刺を手作業で仕分け整理するものだった。そこで Salesforceを導入したが、手入力で労力が掛かるのは変わらない。そこで、名刺管理をクラウドで一元化するためにSansanを導入したと、CCTの社長室 コンサルタント の久保朋之氏は振り返る。

株式会社コアコンセプト・テクノロジー 社長室 マネージャー  久保 朋之 氏

「Salesforce 導入当初の社員数は40名くらいでしたが、だんだん規模も人数も成長してきました。さらに中途入社も増え、役職者以外の名刺(人脈)も増えてきました。そこで全ての名刺データをSansanに入れることで、『名刺データを逃がさない』という活動に力を入れ始めました」(久保氏)

最初に着手したのは、同社の役職者及び営業のSansanアカウントを作成し、各々が所有する顧客の主要な役職者情報をSansanに入力して、名寄せツールであるSansan Data Hubを介してSalesforceに連携させる試みだった。だが、これだとアカウントを持たない社員の名刺が取り込めず、人脈の横展開も難しい。

そこで Sansanからの提案もあり、全社員のアカウントを作成し、全員の名刺を登録することに決めた。その後、さらに企業情報や業界動向を集約したセールスリサーチプラットフォーム「FORCAS」、MAツールの「Pardot」、データ収集・可視化BIダッシュボードの「MotionBoard」も連携させ、名刺情報活用のためのシステムを構築した。

同じ会社でもセールス相手によって受注金額の桁が変わる

CCTの構築したシステムの構成を見てみよう(図1)。「名刺」データはSansan Data Hubを経由し、加えて「MA」「企業分析」と3つデータをSalesforceと連携。さらにこの Salesforceで集約・統合されたデータをMotionBoardに抽出し、分析・可視化している。

図1:SansanとSalesforceの他、企業分析(FORCAS)と可視化(MotionBaord)を導入し、
データドリブン(濃淡・分析高速化・ステータス可視化)を実現する仕組みを構築

このシステム構成について、Sansan株式会社 Sansan Data Hub Unit Assistant General Manager 兼 Product Marketing Managerの久永航氏は、名刺情報活用のABMへの応用としては理想の形の一つだと評価する。

「Sansanのミッションは”出会いからイノベーションを生み出す”であり、出会いの証である全社の名刺交換情報の可視化を通じて、ビジネス課題の解決に繋がる気づきを提供しています。もちろん、名刺情報だけが全ての出会いの証ではありませんが、様々なソースの人物情報と、名刺を基に正確にデータ化された情報と連携することで、より効率的な営業アプローチができるようになります」(久永氏)

Sansan株式会社 Sansan Data Hub Unit
Assistant General Manager 兼 Product Marketing Manager 久永 航 氏

CCTがSalesforceとSansan、MotionBoardの連携によって目指したのは、ABMの情報プラットフォームづくりであるのは言うまでもない。だが久保氏は、もう一手先を行く試みとして、「ライトパーソンを見つける」というテーマを掲げていた。ここでのライトパーソンとは、商材導入に対する決裁権を持つ人のことだ。いくら頑張ってアプローチしても、決められない相手では徒労に終わる。商談相手として「最適な相手」を探すために、今回のシステムを使っている。

「実例を挙げると、当社のAI系のサービスを提供する場合、決裁者の立場により300万円規模のPoCで終わるケースもあれば、企業全体のDXに昇華し数億円規模の取引になることもある。同じ大企業の部長でも、先方の立場や役割によって受注額が変わってきます。その意味で、ライトパーソンを見極めることはビジネスとして大事であり、そこに新しいシステムの存在意義があります」(久保氏)

営業の売り上げが2.4倍に大幅アップ

このシステムは事業部間のワークフローに組み込まれ、1年が経過した。現在までの効果として、営業一人あたりの売り上げが2.4倍に伸びた。

「CCTのDX支援を支える、IT人材調達支援事業での数字です。新システムを使って、アカウントや人物を特定してアタックする先をあらかじめ絞り込み、集中的にアプローチする戦略を取っていった結果、1人当たりの営業パーソンの年商が2倍以上アップしました」(久保氏)

この効果をもたらしたのは何か。要因の一つに、Sansan Data HubはSalesforce以外のさまざまなシステムと連携してデータを収集できるため、外部から帝国データバンクの情報を導入し、以前に比べて一段と分析軸が多様化されたことが挙げられる。もう一つは、可視化のために MotionBoard を導入した結果、名刺データに濃淡を付けたり、分析の高速化やステータスの可視化が実現したことがある、と久保氏は説明する。

「これまでのセールスでは、マーケティング部門ならば新規リード何件とか、営業にしても訪問何件というだけで、KPI設定一つとっても相手に応じたきめ細かな使い分け(濃淡)がないままアプローチしていました。それが新システム導入後は、MotionBoard で可視化された情報(図2)を見ながら、見込み状況によって顧客をランク分けして、見込みの高そうな対象に絞って効率よくアプローチしていけるようになったのです」(久保氏)

図2:CCTの営業活動を可視化したダッシュボード(掲載のデータはダミーデータ)

こうして実現した“営業DX化戦略“には「デジタル領域」と「アナログ領域」の緊密な連携がある。過去の実績データから営業が最大効果を発揮できるターゲット属性を分析。そこに名刺をはじめとした情報でリードに濃淡を付け、さらに可能性の高い相手に絞り込む。その情報を渡された各事業部では、最も確度の高いターゲットに集中して営業をかけ、その結果をデータベースにフィードバックしてターゲット属性を更新・進化させる。このサイクルが回るようになった結果が、2.4倍という数字として表れたのだ。

データの濃淡だけでなく、営業現場へのデータ活用の普及にも、MotionBoardが一役買っている。

「MotionBoardでは、さまざまな切り口からデータを見ようとする場合も、その都度画面を切り替えることなく、同画面上で全てのデータを見られます。現場からもMotionBoard の画面を見て案件の状況が直感的に把握できるため、ツールの操作や画面の理解に悩まされず、本来の営業の仕事に集中できると聞いています」(久保氏)

外部の多彩なデータも含めた新たなデータ活用と成果を目指す

ウイングアーク1st株式会社Business Alliance事業推進室 室長 高橋 弘一 氏

「データ可視化の面白いところは、データが詳細に見えてくるようになると、そこから新しい気付きが生まれ、さらにインサイトに迫れるようになってくる点なんです。それは、データの分析・活用をより効果的にします」(高橋氏)

このPDCAサイクルが日常的に回るようになれば、ABMはもちろん、データドリブンマーケティング、データドリブン経営といったDXの具現化の道も期待できるのではないかと高橋氏は説明する。

久保氏は補足し、今後のデータ活用、システム活用について、社内のデータだけでなく、今は可視化されていない情報を取り入れられるようになれば、さらに視野が広がると見ている。

「今後さらに社内でのデータ活用のPDCA サイクルが高速で回るようになれば、一層の営業効率化や成果の伸びが期待できると思います。しかしそれは、あくまで現在の枠組み内の改善に過ぎません。まだ具体的なイメージはありませんが、世界のトレンドの動きや業界全体の潜在的な課題といった、外部の情報を的確に採り入れられるようになれば、そこでさらに大きな意識の転換が起きるのでは、と考えています」(久保氏)

そうした期待に応えるべく、Sansanも新たなソリューションを検討中だと久永氏は明かす。

「まだあくまで構想中なのですが、企業や人物の更なる情報を、リッチ化情報として提供していきたいと考えています。当社の最大の強みはやはり人物情報なので、アプローチ企業選定に有益な企業情報とキーマン情報の連携を通じて、ABMの効果を最大化できればと考えています」(久永氏)

“冬眠人脈”を起こし、生きた人脈として活用するCCTのチャレンジ。この試みが近い将来、パブリックデータなども含む多種多様なデータ連携と分析、そして可視化を組み合わせた営業力強化ソリューションへと進化していくに違いない。

写真(左)久保 朋之 氏

株式会社コアコンセプト・テクノロジー 社長室 マネージャー  
SIerでエンジニア・PMを経験後、食品製造卸系事業会社で全システム刷新プロジェクトを推進。現職(社長室 マネージャー)では新規事業開発の傍ら、製品特化型ラボチームの構想・立ち上げを主導、4カ月で20名規模のラボを構築。Salesforce ✕ MotionBoardを軸とした営業DX化戦略を取り仕切る。

写真(中)久永 航 氏

Sansan株式会社 Sansan Data Hub Unit
Assistant General Manager 兼 Product Marketing Manager 
大学卒業後、IT業界で10年強、SI、海外プロダクトマーケティング、クラウドサービス立上げなどを経験した後、2009年Sansanへ入社。ソリューション営業、カスタマーサクセス部長を経て、2015年にCIOとして社内のDXを推進。2018年から新規DX事業立上げに従事するとともに、顧客のDX推進を支援。2021年6月より現職。

写真(右)高橋 弘一 氏

ウイングアーク1st株式会社 Business Alliance事業推進室 室長 
クラウド事業部をはじめ、事業企画、サポート、カスタマーサクセスなど多くの部門を立ち上げ、責任者を歴任。現在はBusiness Alliance事業推進室にて事業パートナーとの協業企画・事業化を推進。2020年7月より現職。

(取材・TEXT:JBPRESS+工藤 PHOTO:Inoue Syuhei/落合直哉 企画・編集:野島光太郎)

 

 
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