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「経済大国・日本」という言葉をニュースでよく耳にします。確かにバブル期の映像などを見ていると、景気がいい国だなあという印象を受けます。しかし、私たちが日本の景気の良さを感じることが少なくなってきたように思いませんか。
私たちの実感は変わっているのに、相変わらず経済大国と呼ばれ続ける日本。
では、日本を経済大国たらしめているのは一体何なんでしょうか?
その一つが、GDP(国内総生産)です。
一言にGDPとは言っても、名目GDPや実質GDPに分かれていたり、似たような概念にGNI(国民総所得)があったり、と結構複雑です。しかも、用語の意味を取り違えてデータを見てしまうと、実際は経済的に成長していないのに、あたかも成長しているように勘違いしてしまう恐れもあります。
そこで、今回は世界のGDPランキングや一人当たりのGDPランキングを参考に、経済大国と呼ばれる国の特徴を見ていきます。さらに、GDPに関する今後の予測も併せて解説しているため、日本や海外の経済状況を知りたい方はぜひ参考にしてください。
GDP(国内総生産)とは、国内で一定期間の間に生産されたモノやサービスの付加価値の合計金額のことです。つまり、日本が儲けたお金ということになります。
では、GDPの内訳はどうなっているのか見てみましょう!
日本の国内総生産の大半を占めているのが、日本で生活する人々が日常的に行う「消費」と国内にある企業が行う「投資」の合計金額である「民需」です。
民需に加え、政府が使ったお金である「政府支出」と輸出額から輸入額を差し引いた「貿易収入」を合計した金額がGDP(国内総生産)となります。
さらに、GDPには、「名目GDP」と「実質GDP」の2種類があります。
「名目GDP」とは、そのままの金額で算出したGDPです。
しかし、GDPと同様、貨幣の価値も毎年変化するため、他の年のGDPと比較する時に、名目GDPのみでは、正確な成長率が分かりません。
そこで、対象となる期間のGDPを同じ時期の貨幣価値に変換することで正確な成長率の測定ができるようになります。これが「実質GDP」です。したがって、貨幣価値の変動を考慮せず、名目GDPで経済成長を測ってしまうと、実際はマイナスの成長率なのにプラスの成長率が算出されてしまいます。
なのでその1年間のGDPの値を他国と比較する場合は、名目GDPを、過去と比べてどのくらい成長しているかを正確に知りたい場合は実質GDPを見る必要があります。
それでは、実際に世界のGDPランキングはどういった順位になっているのでしょうか。
本記事では、GLOBAL NOTEの「世界の名目GDP 国別ランキング・推移(IMF)」を参考に、世界のGDPランキングトップ10を紹介します。現時点でのトップ10は以下のようになっています。
それぞれの国の特徴や現状を詳しく見ていきましょう。
GDPランキング1位は、25兆4627億ドルのアメリカです。
アメリカは、世界の金融市場の中心として資本市場が発展しており、世界中から資本を集める力に優れています。そのため、株価が上昇しやすく、金融環境がかなり整っていると言えるでしょう。
アメリカでは、農業やサービス業、産業などがすべてバランスよく発展しています。また、最先端技術の導入により、新規事業や事業拡大にどんどん力を入れている状態です。そのため、経済的に安定しており、経済発展のための基盤が十分に整っています。
イラク戦争や自然災害、テロなどの被害を受けているものの、世界一の経済大国の座を守り続けているアメリカ。おそらくこの先もしばらくトップに居続けるでしょう。
GDPランキング2位は、17兆8863億ドルの中国です。
中国の一番の特徴といえば、なんといっても人口の多さでしょう。中国の人口は14億人を超えており、現在世界2位の多さです。人口がとても多いため、人件費が比較的安く抑えられます。
さらに、中国では技術の発展も進んでいます。そのため、少ないコストで大量に生産できるという、大きな強みが特徴的です。特に加工貿易に強く、豊富な労働力と安い人件費、高い技術によって、経済的に良いサイクルが成り立っています。
GDPランキング3位は、4兆2375億ドルの日本です。
日本の特徴として、まず人口の多さが挙げられるでしょう。日本の人口は世界でも11位と高い順位を誇っており、GDPも高くなっています。GDPは一人当たりGDP×人口で算出されるため、人口の多い日本は比較的高いGDPとなっています。
また、海外と比較して個人消費が多いという特徴も挙げられるでしょう。日本は、海外と比較して消費税が安くなっています。そのため、低い消費税に伴って個人消費が多くなります。個人消費はGDPの多くを占めており、経済的にも良い効果をもたらします。
さらに、日本では自動車や電子機器の高品質な製造がされており、これらもGDPランキング上位の要因といえるでしょう。
しかし、直近では、日本のGDPはドイツに抜かれて4位になる可能性が高いと言われています。ドイツと日本のGDP順位の動きにも注目が集まるでしょう。
GDPランキング4位は、4兆857億ドルのドイツです。
ドイツの一番の強みは、なんといっても製造業です。自動車や化学薬品など、高度な技術による高品質な製品の輸出に優れており、EUの中でも随一の経済大国として、名をはせています。
また、インフレが高いのもドイツの特徴です。インフレが高いことで名目GDPは上昇しているものの、実質的なGDP成長率は0.1%とIMFは予測しています。
GDPランキング5位は、3兆3897億ドルのインドです。
インドは、人口が14億3000万人近くと世界一多い国となっています。この急速な人口の増加が、インドの経済成長要因の一つとも言えるでしょう。
インドのGDPが高い他の要因として、サービス業の成長が挙げられます。インドのGDP全体のうち、6割以上をサービス業が占めており、その中でもITサービス業が多くの割合を占めている状態です。
GDP成長が良く財政的利益も大きく上がっているものの、未だに貧困状態は高い率であり、悩まされています。少しずつ貧困率は減少しているものの、解決には程遠いでしょう。
GDPランキング6位は、3兆819億ドルのイギリスです。
イギリスのGDPには、ブレグジットが影響を与えていると考えられるでしょう。ブレグジットとは、EU離脱のことです。ブレグジット後は、どうしてもGDPが減少しがちです。
また、ブレグジットに加えて、ポンド安や新型コロナウイルスなど、様々なものがイギリス経済にダメージを与えています。そのため、イギリス経済は近年縮小傾向にあり、実質成長率もマイナスになっています。
GDPランキング7位は、2兆7801億ドルのフランスです。
フランスではサービス業の発展が経済成長の大きな要因となっており、GDPの中でも7割ほどの割合を占めています。フランスは観光業が盛んなため、そこを目的としたサービス業へのニーズが、経済成長のカギとなっているでしょう。
また、新型コロナウイルスの影響で減少したGDPも、順調に回復しているように思われます。政府の予測通りの回復を見せており、この先の回復にも注目が集まります。
GDPランキング8位は、2兆2442億ドルのロシアです。
ロシアでは、2022年2月に始まったウクライナ戦争がGDPに大きな影響を与えています。ウクライナ戦争開始当初は、ロシアのGDPは大きく減少しました。戦争を始めた報復として、欧米諸国からの経済的な制裁がされたのでしょう。しかし、侵攻開始時と現在を比較すると、経済水準は上昇しており、侵攻前のGDP水準を上回るほどになっています。
ニッセイ研究所の「ロシアGDP(2023年7-9月期)-ウクライナ侵攻前のGDP水準を超える」から、具体的にウクライナ戦争前と後を比較すると、第一次産業と第二次産業は侵攻前を上回っているものの、第三次産業はマイナスが目立っています。
GDPランキング9位は、2兆1379億ドルのカナダです。
カナダは石油や原油、天然ガスの産出国として有名です。さらに、森林や鉱物資源、農業やエネルギー資源など、豊富なエネルギーを有する資源大国でもあり、先進国として名をはせています。
また、上記と合わせてサービス業や製造業においても、大きな経済成長が見込まれています。
GDPランキング10位は、2兆120億ドルのイタリアです。
イタリアでは、2018年以降失業率の改善に向けた取り組みがされており、経済成長の大きな要因となっています。2020年後半に一度上昇しているものの、現在また低下しており、経済的にも良好だと考えられるでしょう。
また、2023年第3四半期は、個人消費や輸出の増加により、経済成長が上昇しました。イタリアの主産業はサービス業や観光、自動車製造業などが挙げられ、これらが重要な役割を果たしているとわかります。
ここまで世界のGDPランキングを見てきましたが、次は一人当たりのGDPランキングを紹介します。GLOBAL NOTEの「世界の一人当たり名目GDP 国別ランキング・推移(IMF)」によると、一人当たりのGDPランキングの上位3か国は、以下のようになっています。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
一人当たりのGDPランキング1位は、126,598ドルのルクセンブルクです。
ルクセンブルクは、大きさが神奈川県ほどで人口は64万人ほどです。神奈川県の人口が約906万人のため、かなり少ないと言えるでしょう。
ルクセンブルクでは、労働人口の約五分の一が金融業に勤めるほどの金融国家です。世界中の金融企業がルクセンブルクに進出しており、金融業にかなり特化した国家となっています。
さらに、他国からルクセンブルクに働きに来る人がかなり多い状態です。他国からの労働者がいる場合は、人口は出身国にカウントされますが、GDPは労働している国で計算されます。そのため、国を超えた労働者の多いルクセンブルクの一人当たりGDPは高くなります。
一人当たりのGDPランキング2位は、105,826ドルのノルウェーです。
ノルウェーは日本と同じくらいの国土面積で、人口は500万人ほどです。日本の人口が約1.3億人のため、それと比較するとかなり少ないでしょう。
ノルウェーは、国内に金融機関や大企業がありません。しかし、サービスや商品の値段が高く、高い生産性を保っています。また、社会福祉に力を入れていることでも知られています。
一人当たりのGDPランキング3位は、103,311ドルのアイルランドです。
アイルランドは北海道と同じくらいの面積で、人口は約530万人です。北海道の人口は511万人ほどであり、アイルランドの方が少し多くなっています。
アイルランドの経済は、1995年頃を境に、急激な成長を遂げました。その背景として、海外企業の進出が挙げられるでしょう。アイルランドは法人税がヨーロッパの中でも低く、さらに英語が話されているため、海外企業が進出しやすい環境が整っています。
また、高い出生率を誇っており、若い労働力が豊富なことも、一人当たりのGDPが高い要因です。労働力が豊富だと生産性が高まり、経済に良い影響を与えます。
実は、GDPは日本国民の儲けではありません。というのも、GDPには、在日外国人による消費が含まれていたり、逆に外国に行った日本人の消費は含まれていなかったりします。
そこで日本人の儲けを把握するために使われる指標が、GNI(国民総所得)です。GNIはその名の通り、国民の所得を全て合計したものです。以前は日本人が生み出した付加価値の合計金額であるGNP(国民総生産)という指標が使われていましたが、在日外国人や、国外に出る日本人が増えたことで、経済状況を捉えやすい、GNIが日本人の儲けの指標として使われるようになりました。
なぜGNIとGNPを同じように扱えるのかと言うと、生産されたものが過不足なく行き渡っている場合は、所得の合計額と生産の合計額が一致するからです。
さらに同様の前提を置くことで、モノやサービスの付加価値の合計金額であるGDPもGNI(GNP)と一致するため、これを、「三面等価の法則」と言います。
一方、SNA(国民経済計算)は、生産、消費、投資のフロー面だけでなく、資産や負債のストック面も体系的に記録する国際的な基準です。GDPやGNIとは異なり、SNAは経済全体の動きを捉えるための広範な指標として用いられます。GDPやGNIはSNAの中の一部として位置づけられており、それぞれの指標がどのような観点で経済を捉えているのかを理解することが重要です。
現実では、過剰な在庫や、物資の不足などがあるため、計算の際にその誤差を補正しています。
指標 | 定義 | 特徴 |
GDP(Gross Domestic Product,国内総生産) | ある国の国境内で1年間に生産される財・サービスの市場価格による合計額。 | 国内での生産活動の総量を示す。在日外国人の生産活動も含むが、国外での日本人の生産活動は含まない。 |
GNI(Gross National Income,国民総所得) | ある国の国民が1年間に得る所得の合計。 | 国民の所得の総量を示す。在日外国人の所得は除外し、国外での日本人の所得を含む。 |
GNP(Gross National Product,国民総生産) | ある国の国民が1年間に国内外で生産する財・サービスの市場価格による合計額。 | 国民の生産活動の総量を示す。在日外国人の生産活動は除外し、国外での日本人の生産活動を含む。 |
SNA(System of National Accounts,国民経済計算) | 生産、消費、投資のフロー面と、資産や負債のストック面を体系的に記録する国際的な基準。 | 経済全体の動きを捉えるための広範な指標。GDPやGNIなどの指標はSNAの中の一部として位置づけられる。 |
ここまで様々な国のGDPや経済事情を解説してきました。今後、世界各国のGDPはどのように変化していくのでしょうか。
まず、今後もGDPが増加していく見込がある国として、人口が増加している国が挙げられます。具体的には、インドや中国、アメリカなどが挙げられ、これらは実際にGDPランキングでも上位を獲得しています。人口が多いと自然に生産性や消費もアップし、経済的にも良い効果が多く現れるでしょう。
また、近年だと新型コロナウイルスによる経済の低迷をどこまで回復できるかが重要となります。実際にフランスなどの新型コロナウイルスから回復した国がランキング上位に入ってきています。特に貿易や観光がメインとなっている国は大きな打撃を受けているでしょう。一日でも早く回復できるようにしましょう。
日本では、少子高齢化と個人の購買力が課題となっています。2023年7月のビッグマック指数をみてみると、日本は3.17と、低い数値が出ています。ビッグマック指数とは、各国の経済力や購買力をビッグマック1つの値段で比較するというものです。最も高い数値だと、スイスの7.73となっています。購買力が低いと、経済でも成長が低くなってしまうでしょう。
今回は、世界のGDPランキングを基に、上位の国の特徴や実績、さらには今後の課題も解説しました。今回紹介した内容を簡単にまとめると、以下のようになります。
なんとなく知っている知識も多いと感じた人もいるかと思いますが、改めて用語の意味や、構成要素を知ることで、より正確に情報を把握することができます。
様々な国について紹介しましたが、未来は私たち次第。目の前の仕事でも、広い視野を持って取り組めば、モチベーションも上がるはずです。仕事をこなす中で、国内の情勢だけでなく、世界情勢もしっかり把握し、変化に対応し、また新たな変化を生み出していけば、自分も社会も成長できるのではないでしょうか?
DPは約546兆円で世界第3位となります。
なんとなく知っていた知識も多いと感じた人もいるかと思いますが、改めて用語の意味や、構成要素を知ることで、より正確に情報を把握することができます。
今回は、日本のあまり明るくない未来の可能性について触れましたが、未来は私たち次第。また、目の前の仕事でも、広い視野を持って取り組めば、モチベーションも上がるはずです。仕事をこなす中で、国内の情勢だけでなく、世界情勢もしっかり把握し、変化に対応し、また新たな変化を生み出していけば、自分も社会も成長できるのではないでしょうか?
(大藤ヨシヲ)
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