アナログな印象がある農業ですが、一部ではデータを活用して農業を効率化、または自動化する、という動きが活発になっています。意外に思えるかも知れませんが、実は農業とITは基本的に相性が良いのです。ただし、うまくデータを収集し、それを活用することができれば、という前提は付きます。
農業の場合、データを収集するだけでも大変な場合が多々あります。測定に使用するIoTデバイスも、過酷な農業現場での連続稼働に耐えうるものが必要です。その上、電源やネットワークの手配といった問題も。コンビニで売上データを集めるのとはまだ次元が違う難しさがそこには存在しています。
PLANT DATA株式会社は、データを活用して植物を育てる、という研究を行なっている会社で、植物の生体情報計測技術の開発を行っています。いわゆる研究のための研究ではなく、ビジネスとして植物を栽培するプロの農業生産者が生産現場で使えることにこだわっています。同社は、生育異常や病虫害の早期検知、労務管理や環境制御の自動化・最適化を目的とした植物の計測や分析、その活用に関するサービスを提供している愛媛大学発のベンチャー企業で、将来的にはあらゆる関連業務を自動化していくことを目的の1つとしています。
今回は、農業の現場でどのようなデータを収集するのか、またそのデータがどのように活用されているのかについて、PLANT DATA株式会社の代表取締役 北川寛人氏に話を伺いました。
現在、日本では愛媛大学と千葉大学と大阪府立大学の3校が、経産省と農水省の予算で植物工場の研究を行なっています。PLANT DATAは愛媛大学を拠点とし、同大学の農学部内にオフィスを構え、植物生態計測技術の開発を進めています。同大学は、1970代以後、植物の状態をデータ化することで栽培管理を合理化する、という「スピーキングプラントアプローチ」という基礎概念を提唱し、その概念に沿った要素技術が研究されて来ました。
今は主に3つのサービスラインを展開しています。1つはクロロフィル蛍光画像計測。これは光合成能力の測定を行うものです。植物が発するクロロフィル蛍光を画像計測することで、光合成機能障害を検出します。
2つ目は光合成計測チャンバー。これは光合成と蒸散(葉から出る水分量)がどのくらい行われているのかを実測する装置です。この装置は、10分間隔で植物の光合成速度と蒸散速度をリアルタイムで計測します。クロロフィル蛍光画像計測は植物のスペックを調べるもので、光合成計測チャンバーの方は実際のパフォーマンスを調べるものだと言えるかと思います。二酸化炭素濃度が高い場合や日差しが強い、などの好条件が揃った場合、光合成能力が低い場合でも、実際の光合成速度は高くなることがあります。
3つ目は生育スケルトン。これは実際の植物の形状をインフォグラフィック化することで、生育バランス(草勢・樹勢)を可視化します。これはテープメジャーを使ったアナログな手作業になります。簡易的な植物の計測値に強調変数をかけてインフォグラフィック化し、生育バランス(草勢・樹勢)を見える化します。
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