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自動車の自動運転システムやリアルタイムでの多言語翻訳、画像認識や音声認識などIoT・AI・ビッグデータ活用の進化には目覚しいものがあります。今後もIoT・AI・ビッグデータが活用される分野はますます広がるこが予想され、ビッグデータをうまく活用できるかどうかが自社の市場ポジションを決めるといっても過言ではないでしょう。今回はIoT・AI・ビッグデータ活用についての課題と今後の見通しについて解説します。

ますます高まるAI・ビッグデータ活用の重要性

ここで2014年10月16日にGEとアクセンチュアが発表した「インダストリアルインターネットインサイト2015(Industrial Internet Insights Report for 2015)」を参考に、ここ2~3年でAI・ビッグデータ活用の重要性がどう変わってきたのかをみてみましょう。「インダストリアルインターネットインサイト2015(Industrial Internet Insights Report for 2015)」は7カ国の製造業、航空事業、発電事業、石油ガス事業、鉄道事業などの企業の経営幹部250人を対象に調査を行なったものです。

これによれば、「実際に予測分析や自社ビジネス最適化のために全社横断的にビッグデータを活用している」との回答は29%でしたが、「インダストリアル・インターネット戦略を推進するためにビッグデータを活用しなかった場合、今後1年から3年以内に現在の市場ポジションを失うことになる」の回答が66%、「ビッグデータ活用が自社にとっての最優先事項である」の回答が88%とビッグデータ活用への高い意識が見られました。

そして現在ではAI・ビッグデータ活用の重要性はますます高まり、その進化のスピードには驚くべきものがあります。リアルタイムでの音声翻訳、Alpha Goに代表されるゲーム、自動車の安全運転支援システム、顧客の行動分析と予測、インフラシステムの保全などIoT・AI・ビッグデータは様々な分野で活用されビジネスや生活に大きな影響を与えているのです。

【引用元】
 ・Industrial Internet Insights Report for 2015(PDFファイルが開きます

IoT・AI・ビッグデータを活用するための2つの課題

IoT・AI・ビッグデータの活用に対しては多くの企業が取り組む必要を感じています。しかし実際に活用して効果を得るためには、大きく2つの課題が存在します。

1つ目の課題は活用するビッグデータの整備です。ビッグデータを整備するためには良質なデータを収集するシステムやプラットフォームが必要になります。企業内においては、情報システム部門営業部門、マーケティング部門などの部門間でシステムの障壁があることも多いのですが、ビッグデータ活用のためにはデータを統合して全社横断的なデータ整備をすることが欠かせません。またビッグデータの元になるのは多くの場合顧客情報ですので、データを守るためのセキュリティ対策も必要になるでしょう。

2つ目の課題は収集したビッグデータを分析する体制です。データは日々蓄積されてどんどん大規模なものになっていきます。これに対応するためには大規模データにも対応できるスケーラブルな分析体制が必要です。

そして2つの課題に共通するのは、解決するためにはどうしても人材が求められることです。特にデータの分析については人的能力に依存する傾向が強いといえるでしょう。データ分析者(データサイエンティスト)には単純にデータを分析するだけでなく、それを元に成果につながる知見を見い出だす能力が求められます。それでは、これらの課題解決のためにはどのようにアプローチしていけばよいのかを考えてみましょう。

企業や個人の英知を集結して課題にアプローチ

ビッグデータを活用するためには文字通り膨大な量のデータを取り扱うことになります。そのため従来の顧客管理などで運用してきたデータベースシステムとは桁違いのデータを取り扱うことにもなってくるのです。また取り扱うデータも多様化し、顧客の行動履歴やログはもちろんのこと業種によってはセンサーで収集するデータも対象となります。このような大量で多種多様なデータを集約するために注目されているのがクラウドソーシングです。クラウドソーシングを利用することで大量のデータをリアルタイムで分析し、スピーディーにビジネスに反映させることも可能になります。

またデータサイエンティストの確保についても同様のことがいえるでしょう。もちろん求人での確保や社内での育成は重要ですが、データサイエンティストは不足している状況のため簡単なことではありません。そこでデータ分析が必要なときにデータサイエンティストをオンデマンドでシェアしようという動きが活発になっています。

例えば、「Kaggle」では世界各国のデータサイエンティストが参加してデータ分析を競っています。Kaggleでは企業が実際に分析してほしいデータを世界中のデータサイエンティストに提供することも可能です。このようにIoT・AI・ビッグデータ活用の課題に対しては企業や個人の英知を集結することが解決のために効果的なアプローチ法といえるでしょう。

ビッグデータがもたらすイノベーションとエコシステムへの流れ方

「良質で大規模なビッグデータによって様々なイノベーションがもたらされています。その背景にあるのが機械学習の技術にともなって、驚くほどのスピードで進化するAIの存在です。

例えば東京大学の中山英樹氏の論文「深層畳み込みニューラルネットワークによる画像特徴抽出と転移学習」によれば2015年のGoogleの画像認識のエラー率は4.82%となっています。これは人間の画像認識のエラー率5.1%を超える数値で、AIが人間よりも高い精度で画像を認識する結果となっているのです。また音声や文字画像のテキスト化も従来は人間が手間をかけて入力しなければなりませんでしたが、AI技術が進化したことにより驚異的なスピードでテキスト化できるようになりました。

Amazonでは「Amazon Mechanical Turk」として、クラウドソーシングで労働力を提供しています。例えば「製品を見せるのに最高の画像を一連の画像から選択」する画像処理、「電話帳のディレクトリリストの重複排除」するデータ検証、「ウェブサイトのレビュー、説明、およびブログ投稿を書き込み」する情報収集などの業務をオンデマンドで利用することが可能です。Amazon Mechanical Turkの特徴はコンピュータプログラムだけでは難しいタスクを人間の力と組み合わせて短時間、低コストで行えることにあります。このようにかつては人間にしかできなかったタスクをAI技術またはAI技術+人間の力で行なうことで短時間でしかも高い精度で行なうことができるようになりました。

しかしこのような技術革新は1つの企業の研究や開発だけで行なうのは難しいでしょう。そこで注目されているのが、複数の企業がパートナーシップを組んでお互いのデータや技術を活かしながら共に成長する「エコシステム」です。今後は業界の枠を超えたエコシステムでイノベーションが加速することが予想されます。

【引用元】
 ・東京大学中山英樹氏
  深層畳み込みニューラルネットワークによる画像特徴抽出と転移学習(PDFファイル)Amazon Mechanical Turk

スケーラブルなデータ分析に対応するための世界の潮流

ビッグデータを的確に分析してビジネスに活かすためにはスケーラブルなデータ分析体制が欠かせません。そのためにはデータサイエンティストを確保することが必要になります。しかしデータサイエンティストへのニーズが高まる中、日本では25万人が不足する見通しです。求人募集を行なっても応募はあまり期待できないでしょうし、応募者のデータ分析スキルを判断することも簡単ではないでしょう。

そこで注目されているのが「Kaggle」のように企業とデータサイエンティストをつなぐプラットフォームです。Kaggleでは企業が分析してほしい課題をコンペ方式で提示し、それに対して多くのデータサイエンティストが分析を行なうということが可能です。企業にはたくさんの分析モデルの中から最適なものを選択できるというメリットがあり、AmazonやFacebookなどの企業もKaggleを利用しています。Googleは2017年3月にこのKaggleの買収を発表しました。その際の基調講演で「Google CloudはAIを民主化する」と語り、「計算能力の民主化」「アルゴリズムの民主化」「データの民主化」「才能の民主化」の4つで誰もがAIを使える未来を目指すと発表しました。本格的なIoT・AI・ビッグデータの活用はまだ始まったばかりといえます。ライバルに先がけて取り組むことで、市場で大きな優位性を獲得することも期待できるでしょう。

【引用元】
 ・日本経済新聞 
   http://www.nikkei.com/article/DGXNZO57421630X10C13A7EA1000/
 ・日経ビジネスオンライン 
   http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/061700004/030900184/

お話をお伺いしたDataLover:
齊藤 秀(さいとう・しげる)さん

株式会社SIGNATE/シグネイト
代表取締役社長CEO/CDO
十数年にわたりバイオ・ヘルスケア領域を中心に幅広い業種のデータ分析・共同研究・コンサルテーション業務に従事。 2013年2月 日本初のデータ分析コンペティションサービスを設立。 2013年12月 株式会社オプトにてAI/ビッグデータ研究開発組織、データサイエンスラボ設立。2018年4月 株式会社SIGNATE/シグネイトを設立。代表取締役社長CEO/CDOに就任。
SIGNATE(旧DeepAnalyitics)(https://signate.jp)にて、多数の企業・行政のデータ活用コンペティションを実施。 様々なデータサイエンス・AIプロジェクトにおいて、企画・データ取得・分析・モデリング・運用まで幅広く支援、AI人材育成・採用サービスを展開。
【政府のデータ活用やAI人材育成等の委員活動】
経済産業省 政府衛星データのオープン&フリー化及びデータ利用環境整備に関する検討会 委員 未来投資会議 第4次産業革命 人材育成推進会議 第1回講師 自民党教育再生実行本部 第2回成長戦略のための人材教育部会講師 【AI関連の研究・教育活動】 筑波大学人工知能科学センター 客員教授 理化学研究所 革新知能統合研究センター 客員研究員 国立がん研究センター研究所 客員研究員

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