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新型コロナウイルス感染症によって、デジタルシフトが喫緊の課題として露呈し、多くの企業が「DX」の定義が曖昧なまま対応を進めた。「VUCAな時代」と言われるようになって久しいが、ビジネスパーソンはこの不確実性に揺さぶられる時代をどのように捉え、いかにDXによって新規ビジネスを創出していくべきか。レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ合同会社ソリューションアライアンス本部 担当部長 ビジネス開発マネージャーの内田修氏は、この時代を「視界100ヤード、濃い霧のかかったゴルフコースのような時代」と表現し、その中を進むために、「3つの変革」の必要性を提唱する。

新たなビジネスに挑むチャンスが到来している

内田氏は国内留学制度により大学卒業後NTT本社にて勤務。その後IoT系ベンダーへ転職し、2018年8月からレノボグループのサーバー事業を展開するレノボ・エンタープライズ・ソリューションズ合同会社に在籍している。同社ではソリューションアライアンス本部ビジネス開発マネージャーを担当し、仮想化ビジネスに従事しているが、他方で2014年から、教育研修の企画・実施および教育支援システムの企画・開発・販売・運営などを行うNTTラーニングシステムズの協力講師として、各種セミナーや年間研修の講師として活躍している。特に近年は、DX人材教育をテーマに「DX時代に勝てる営業手法」を教えるDXインフルエンサーとしての存在感を増している。

新型コロナウイルスの感染拡大の中、内田氏が所属するレノボグループでも大きな変化が起きた。

「もとより無制限テレワーク制度を推進していたレノボグループですが、いっそうテレワークが加速しました。2020年2月27日時点の『オフィス勤務:テレワーク』の比率は80:20でしたが、3月に入ってから直ちに逆転。緊急事態宣言の期間延長が発表された後は、テレワーク率が97%になり、7月1日時点でも85%と高くなっています」

コロナ禍によって日本のビジネス環境は時々刻々と変化しているが、内田氏はこの状況をどのように見つめているのか。

「決してネガティブではなく、ある時代の変わり目として見ています。不確実性が高まった時代であり、この先、企業はさまざまなことを仕掛け、新たなビジネスへと進出するチャンスだと捉えています。変化が起きる時には、必ず新しいビジネス・教育が必要とされるものです。コロナショックや豪雨、大地震などの環境変化を含め、直近の出来事に不安を感じている方が多いと思いますが、そんな激動の時代を生き抜いていくコツは、常にいろいろな側面でさまざまなビジネスモデルやビジネスプランを複数考えること、あるいは、中長期的な視野で物事を考えるマインドを持つことにあります。私も『ピンチはチャンス』『リスクをチャンスに変える男になれ』と自分に言い聞かせ、たいていの変化を乗り切ってきました」

DX加速の鍵は「個」の成長

ピンチはチャンスにできる。しかし客観的に見れば、ビジネス環境は実に不透明だ。わずか数カ月のうちに「数年単位で起こるはずだったパラダイムシフト」が起こったともいわれる。内田氏は、この環境下を「濃い霧のかかったゴルフコース」と表現し、こう説明する。

「暗中模索という言葉がありますが、濃い霧で先が見えないゴルフコースのように、どこに球を打てば分からない、というのが “今”の状況です。2001年から2030年までの30年間の市場動向を、私は以下の図のように捉えています。

国内外でさまざまな事象が発生する中で、コロナショックの影響は甚大です。経済損失はグローバルで1,300兆円とも言われています。日本だけで見ても、仮に2年間ロックダウンが続くと、経済損失は64兆円にもなるとの試算がある。何もしなければ、リーマンショックに匹敵するほどのダメージを受けるかもしれません」

では、企業、そして私たちは、濃い霧で先が見えない中をどのように進んでいくべきなのか。内田氏は、「ビジネスモデル変革(構造改革)」「デジタル変革」、そして「人の変革」の3つの変革を提唱する。これらは「DXを加速させるための3つのKPI」であり、「このうちどれを欠いてもDXは起きない」と内田氏は話し、同時に「まずは人が変わらなくてはいけない」と“個”の成長を重視する。

「例えば、生命保険会社ではコロナの影響で対面での保険セールスができなくなりました。オンラインでの商談に臨めばよいのですが、年配の方だと対応できないケースもあります。一方内勤業務の多くが、RPAなどに置き換わる流れも進んでいます。つまり、従来のビジネスモデルや仕事のやり方に固執していては、Disruptive Technology(創造的破壊的技術)に飲み込まれ、淘汰される側に回ってしまいます。自分の頭で考え、自分の目で見て時代の先を読み取り、新しいパラダイムを自ら生み出す。これから求められるのは、DX人材としての個の成長です」

DX人材育成モデルは「Hunter×Farmer×Fisher理論」

経済産業省「DXレポート(ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開を示したレポート)の中でも、「既存システムの維持・保守業務から解放し、DX分野に人材をシフト」「アジャイル開発を可能にする事業部門人材のIT人材化」「スキル標準化、講座認定制度による人材育成」などがDXを推進する施策として挙げられているように、DX人材の育成・確保(個々の成長を含む)は、日本における目下の課題である。

そうした中、内田氏が提唱するDX人材育成モデルは「Hunter×Farmer×Fisher理論」だ。

例えば、営業職の場合、Hunter(ハンター)は狩猟型営業、Farmer(ファーマー)は農耕型営業を指す。ハンター型は狩猟用の鉄砲を打ちながら、とにかくたくさんの新規顧客を獲得するのを得意とする。新規顧客は獲得しやすく、短期的に売り上げも伸びるが、その後のフォローアップが苦手なため解約も多く出てしまう。ファーマー型は、種を植えて待つ、人間志向・コミュニケーション志向の営業パーソンだ。日本が得意としてきた営業スタイルと考えると分かりやすいかもしれない。このタイプは、顧客満足度は高いが、全体の売り上げが伸びにくいという傾向がある。

それぞれに長短はあるが、内田氏は、「DX時代は、どちらか片方のスキルでは通用しない。求められているのはFisher(フィッシャー)型人材」だと強調する。フィッシャー型人材とは何か、内田氏は自身の体験を織り交ぜながら次のように説明する。

「私は毎日、デジタルな世界にどっぷりと浸かって仕事をしていますが、週末は山奥の湖に釣りに出掛け、デジタル・デバイド・エリア(圏外エリア)の大自然の中で小鳥のさえずりを聴きながら、ゆっくり魚を釣ります。Hunter×Farmer×Fisher理論の発想は、まさにこの時、生まれました。新しいアイデアを考えるには時に自分の置かれた環境、時間を全く違う対極に変える事が必要であり、デジタル世界と現実世界の境界に新しいパラダイムシフトの可能性を見出すことがあります。

非常に敏感でセンシティブな野生の魚は、製品の品質・性能を重要視する日本市場の顧客にそっくりです。大自然の野生の魚を釣り上げるのは初心者では大変難しく、いろいろな知恵やノウハウ、環境変化に対応する仕掛けやエサの調合、釣り場のポイント選びなど、ビジネスでいうところのマーケティング戦略や販売戦略が必要です」

7つのスキルを持ち寄り最強DXチームをつくる

DX時代に立ち向かえるフィッシャー型人材として、日本市場を釣り上げる。内田氏はそのために必要な「7つのスキル」を挙げる。

「7つのスキルを、1人で全て身に着けるのが理想ですが、現実的には難しい。そこで推奨したいのは、最強のDXチームを組織することです。それぞれのスキルに特化した人材を厳選して集め、チームを結成する。さらに7人をつなぎ合わせるDXインフルエンサー(コーディネーター)を入れて、チームの結束を強くします。ただ、その際に注意が必要なのが「DX営業スキルセットMap」(下の図)です。

青枠で囲われた部分はあくまで一般的な基本スキルと応用スキル。これだけではとても通用しません。「DX営業スキルセットMap」では数学の座標に各スキルセットをプロットしてあり、縦のY軸と横軸のX軸の2つのアプローチがあります。まず、縦軸のY軸ではAI、クラウド、IoTなど、DX時代のテクノロジーはこれまでのITを超えたところにある“Disruptive Technology”のDXテクニカルスキルのアプローチとなります。さらに、横のX軸ではDXビジネススキルをプロットしてあります。X軸ではビジネスモデル思考におけるアプローチ、いわゆる産業分野に特化した業界知識も絶対に必要になるでしょう。多くの『DX推進本部』などといわれているチームが失敗するのは、青枠の中だけ、または片方のアプローチだけで物事を進めようとしていることに原因があるのだと思います。今後は、X軸とY軸の両方の面からのアプローチが必要で、斜めのZ軸に収斂(しゅうれん)する着地点がDisruptive Innovation=新ビジネス創造、いわゆるDXが起こるのです。」

ThinkIoT showcase/20のシナリオ/Intelligent Transformation
LenovoではDXビジネスモデル創造の具体的な例として、小売業、製造業、運輸業、医療の4つのインダストリー、およびセキュリティ、映像分析、ドローンなど20のシナリオを提唱している。

最後に内田氏は、「これからの未来」について、こう語った。

「明るい未来は、自分たちの頭で常に考え続け、アイデアを出していった先にあります。そして重要なのは、DXを生み出すダイバーシティー組織のピープルネットワークを保ち続けること。同じ会社の仲間、違う部門の仲間、異業種の人脈、海外の友人などとの人脈を持つことは、VUCAな時代においても宝になります。どんな環境変化や逆境が訪れたとしても、みんなでアイデアを出し、お互いを高め合える関係性は大きな力になります。DX時代における人脈づくりは、今後の明るい未来を生み出すエネルギーの源なのです」

お話をお伺いしたDataLovers: 
内田 修(うちだ おさむ)さん

レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ合同会社ソリューションアライアンス本部 
担当部長/ビジネス開発マネージャー(兼)DX人材コンサルタント
国内留学制度により大学卒業後、NTT本社/法人営業本部金融SE部にてメガバンク基幹系NW設計構築、PMを担当。1999年〜NTTコミュニケーションズへ移籍後、証券会社の基幹系、情報系NW構築。2003年〜衛星通信会社にて約5年間企業向けディザスターリカバリーPJを経て、2013年より大手外資系ベンダーにてIoT戦略プロジェクトにてグローバルレベルの実績を残す。(大手小売業、大手物流業、大手製造業グローバル展開プロジェクト、大手コンビニ全国展開など)
現在、外資系IT企業にて仮想化サーバー、ハイブリッドクラウド、エッジコンピューティング時代に向けたAI/IoTソリューションによるDXビジネス創出プロジェクト推進中。年間30回以上の特別講師をこなすDX時代のインフルエンサー。

(取材・TEXT:JBPRESS+田口/稲垣/工藤 PHOTO:Inoue Syuhei 企画・編集:野島光太郎)

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