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LTVという単語を聞いたことがありますか?
LTV向上の秘訣、LTVアップを狙う営業戦略、など広告メールのタイトルにもよく使われている英語三文字のコンビネーションなので、聞いたことがある方も多いかと思います。
LTVはLife Time Value(ライフ・タイム・バリュー:顧客生涯価値)の略語で、顧客が特定の企業やサービスと取引を開始してから終了するまでの期間(顧客ライフサイクル)に、その顧客から得られる収益を算出した値のことです。Customer Lifetime Valueとも呼ばれ、CLVと略されることもよくあります。
LTVは顧客の新規獲得の施策はもちろん、既存の顧客の維持に関する施策の検討にも利用できる指標のため、マーケティングの分野で広く活用されています。
しかし、このLTVの計測方法は、サービスの形態(買い切りなのか、月額課金なのか)によって異なります。また、施策の内容によってLTVの活用方法も様々に変わります。
そこで、今回は、LTVの計測方法から活用方法まで、簡単に解説いたします。
LTVは基本的に、顧客一人あたりの平均収益(ARPU)をサービスの離脱率で割ることで算出できます。
LTV = 顧客一人あたりの平均収益(ARPU)÷ 離脱率
ARPUの求め方は、サービスの性質によって異なります。まず、買い切りの商品を売るECショップの場合。例えば、一回の買い物あたりの平均単価が2,000円、一ヶ月あたりの買い物の平均回数が2回、一ヶ月あたりの顧客の解約率が5%のサービスにおけるLTVは、
2,000(円)× 2(回)÷ 0.05 = 80,000(円)
となります。
一方で、Netflixや月額制のゲームアプリのような月額課金制の(サブスクリプション)サービスの場合は月額を一ヶ月あたりの解約率で割ることで求められます。
例をあげると、一ヶ月500円、一ヶ月あたりの顧客の解約率が10%のサービスでは、LTVは
500(円)÷ 0.1 = 5,000(円)
となります。
また、現在は、データ解析ソフトで多くのデータが取得できるため、よりデータに基づいたLTVの計測が可能になっています。
例えば、ユーザーを行動でグループ化し、セッション数やコンバージョン率を計測、集計できるコホート分析という手法を使えば、特定の月に新規入会したユーザーのみを対象に離脱率が計測できます。そのため、ユーザーのLTVが月ごとにどう変化しているのか?などの考察もできるようになっています。
一方で、LTVは顧客が短期間(1ヶ月〜1年)にリピートして購入するサービスにおいて有効となる指標です。そのため、家や結婚指輪のように一生に一度しか買わないような商品については、不向きと言えます。
新規顧客の獲得に向けて広告などの施策を打つ際に、有効な指標が、広告獲得単価(CPA:Cost Per Acquisition/Cost Per Action)です。LTVはこのCPAの上限を決める際に有効に活用できます。
例えば、月額300円で粗利率50%のサービスを考えてみましょう。このサービスの新規顧客獲得に向け、CPA1,000円で広告を打つという施策を行ってよいでしょうか?
この問いの答えを決めるのが、LTVです。例えば、このサービスの離脱率が20%だとした場合、LTVは
300(円)÷ 0.2 = 1,500(円)
となり、顧客一人当たりが生涯で支払う利益は、1,500(円)× 0.5(粗利率)で750円になります。つまり、CPA1000円かけて顧客を新規獲得しても結果的には赤字になってしまいます。
一方、このサービスの離脱率が10%だとした場合、LTVは
300(円)÷ 0.1 = 3,000(円)
となり、顧客一人当たりが生涯で支払う利益は、3,000(円)× 0.5(粗利率)で1,500円になり、CPAに1,000円かけたとしても、最終的に顧客一人あたり500円の利益が生まれます。
このように、 LTVを算出しておけば、新規顧客獲得の施策にどのぐらいの予算の上限を設定すればよいか判断する際に役立ちます。
近年、新規顧客の獲得以上に注目を集めているのが既存の顧客を維持するための施策です。
既存顧客の維持の重要性を表したのが、米国の大手コンサルティング会社であるベイン・アンド・カンパニーのフレデリック・F・ライクヘルド氏がデータを収集する中で見出した以下の二つの法則です。
LTVは、「時間」と「利益」という二つの軸で定量化された指標のため、顧客の継続率の向上がどの程度なのかを計測、判断するために非常に有効な指標と言えます。
一般的にLTVはサービスに対するロイヤルティ(愛着)が高いユーザーほど高くなるため、LTVの向上には、ロイヤルティを高める必要があります。
顧客のロイヤルティを向上させる施策として、ウェブサービスなら顧客の行動を起点に複数回のメールを送るステップメール、アプリならプッシュ通知の改善などで、接触回数や接触時の好感度を高める施策が挙げられます。こうした施策にどの程度の予算をかければよいのか、を判断するために、LTVは有効です。
例えば、月あたりの単価が1,000円、離脱率が10%のウェブサービス(原価0円)で、継続施策として顧客一人あたりの2,000円のコストをかける場合、離脱率を何%以上にすれば施策前よりも利益が高くなるかを考えてみましょう。まず、施策前のLTVは
1,000(円)÷ 0.1 = 10,000(円)
です。一人当たり2,000円のコストを考慮すると、
1,000(円)÷ (x) = 12,000(円)
となり、xは
x = 1,000/12,000
となるため、x = 0.08(小数点第2位以下を四捨五入)となり、改善後の離脱率が8%以下になれば施策にかけるコストを回収できます。
今回、LTVについて解説したことをまとめると以下のようになります。
LTVを計測することで、現状の利益だけでなく、近い将来の利益の見通しが把握できます。さらに、一度計測してしまえば、様々な施策の方針を決める際に活用できる指標ですし、データ解析ツールが発達する中で、LTVの計測はどんどん簡単になっていますので、ぜひぜひ活用してみてください。
(大藤ヨシヲ)
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