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データから見る「マインドフルネス」の効果と「どこでもマインドフルネス」のススメ

         

「マインドフルネス」という単語をどこかで耳にしたことがありませんか?

最近では、マインドフルネスという言葉をテレビ、雑誌や書籍、また電車の広告で時折目にするようになりました。しかし、それが何かを知らない人にしてみれば、「マインド」と言う単語を見るとどうしてもマインドコントロールのようなマイナスな印象を受けてしまいがちです。

しかし、最新の脳科学では、マインドフルネスを行うと、ストレス緩和、自律神経の安定、脳機能の改善、ホルモンバランスの調整などの効果があることが報告されています。

マインドフルネスとは?

では、マインドフルネスとは一体何なのでしょうか?

マインドフルネスは瞑想のようなもの、という認識の方も多いかと思います。そして、瞑想と聞くと、目を閉じて座り、心を「無」にして、さとりの境地を目指す修行をすることを思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、マインドフルネスは難しく考えるものではなく、宗教性を排除した、ただ呼吸や座っている感覚に意識を向けていく初心者でも簡単に行えるものです。

マインドフルネスとは、心の「無」「有」「心地よい」「心地悪い」などを探求することではありません。

ですので、心を「無」にする必要もなく、またイメージして「有」をつくることでもありません。「心地よい」という感覚を追い求めることでもなく「心地悪い」「嫌だな」「体が痛い」という気持ちを拒絶することでもありません。

マインドフルネスとは、自らの内側を見つめてそのような自分が「今」存在しているということを良い悪いと主観的に判断することなく客観的にその自分の存在をただ見つめることです。

つまり、自分が「今この瞬間に感じている感覚」を平静な心で観察することです。まるで、第三者があなたを傍観しているように。そしてそのような自分がいることに「気づく」ことなのです。

その状態が、「今ここ」=「Be here now」という感覚です。そして、それはこの世の唯一存在する「現実」です。簡単に言うと、マインドフルネスとは、「現実」をただ見つめるということです。

しばらく続けていくとあなたは「今、ここ」という時間にとどまり始め、思考がストップし始めます。そうすると、この世の自然界では、「すべての物事はただ来ては過ぎ去っていく」=「Coming and Going」であるという自然の摂理に改めて「気づく」ようになります。

鳥たちが大空を舞い、木々が風に揺らぎ、人々が過ぎ去り、陽はまた上り繰り返していく。この世の真実は時間や空間を超えて「ただ宇宙・自然が過ぎ去っていくだけ」なのです。その大きな流れの中にただ私たちが生きているということに「気づく」こと。「今」に意識を向けて生きること。

それこそが、そしてそれだけがマインドフルネスです。

怪しいものから、心の科学へ

2007年からGoogle社が社員教育で取り入れ始めたのをきっかけに、Apple、ゴールドマンサックス、フェイスブック、インテル、マッキンゼー、NASA、YAHOO、DeNA、メルカリ、sansanなどがマインドフルネスを社員教育の一環として取り入れ始めています。また、ペンタゴンなどの政府機関でも非常事態に備え冷静な心を育むために活用され始めています。

欧米、そして日本においてもそうした世界の流れを受け、瞑想や宗教性を排除したマインドフルネスは「怪しいもの」というレッテルを貼られた存在から遺伝子・神経細胞・ホルモンに影響を及ぼす「心の科学」として今、世界的に大きな注目を集め始めています。

では、マインドフルネスが科学的にどのような効果があるのか見ていきましょう。

マインドフルネスの効果

マインドフルネスは、例えば、脳機能の改善やダイエット効果があることが実証されています。ここでは、検証例をいくつか紹介します。


検証1:脳機能の改善


ハーバード大学で行われた「1日20分8週間プログラム」の研究 により、マインドフルネスを実践することで、記憶を司る海馬の灰白質の密度が高まり、恐れや不安を抱く扁桃体の密度が減少した、という効果が報告されています。

海馬の灰白質の密度が高まることで、記憶や自己意識、同情心、考察などが向上すると言われています。また、反対に恐れや不安を抱く扁桃体の密度が減少することも分かっています。扁桃体が過剰に働いてしまうのはうつ病患者によく見られる状態です。これが減少するということは、将来や今に対する不安や恐怖が消え、気持ちが前向きになるということを意味しています。


検証2:ダイエット効果


2017年欧州肥満会議(European Congress on Obesity)において、80人の被験者をAとBの2つのグループに分け、Aのグループ40人には普通の生活を、Bのグループは食事の際にマインドフルネスを実践し、マインドフルネスのダイエット効果を検証するという研究がポルトガルで行われました。

Bのグループには、食事の際に1口1口をゆっくり「意識」し、味わい観察しながら食べることを意識してもらう、という実験を行いました。それ以外は、散歩の時間など同じ内容が与えられました。

その結果、Aのグループの平均は-0.3kg、マインドフルネスを行なったBのグループの平均は-1.9kg、と4ヶ月間の実験生活終了時の体重の減少具合の平均に-1.6kgという明らかな差が出たのです。

つまり、スマホやテレビを眺めながら、または無意味なおしゃべりをしながら食べるいわゆる「ながら食」では、無意識のうちに外側の情報に意識が向いてしまい、どのくらい何を食べているかあまり自覚がない状態です。ながら食をすることで、食べるスピードも速くなり、満腹のサインが来る前に食べ過ぎてしまいます。

マインドフルネスを行なったBグループで体重の減少が認められたのは、食事にしっかり意識を向けて味わうことで、間脳である視床下部にある満腹中枢に気づきやすくなり、それ以上食べなくてもいいという体の声を聞きやすくなったからだと言われています。

現代人が抱える2種類のストレス:現代ストレスとセルフストレス

では、ストレスを受けたときの私たちの体の反応の仕組みを見ていきましょう。

ストレスを受けるとまず脳の視床下部にある扁桃体に刺激が伝わり、そこから腎臓の上を
覆っている副腎からストレスホルモン・コルチゾールが放出します。そうすると、程よく血圧・血糖値上昇が起こり、血液を固めます。これは、わかりやすく言うと「戦闘モード」です。

この機能は、約30万年前にアフリカの大地で誕生した人類の狩猟採集民族まで遡ります。ライオンなどの天敵と出くわすと、人は戦闘モードに入り、素早く行動ができるようになります。そして敵の攻撃によってダメージを受けても血液が固まっているので流血が抑えられるのです。これは正常な私たちの生理機能です。

しかし、問題は、現代では天敵という一時的なストレスではなく、常にストレスが働いて
いる環境がある点です。つまり、血圧が常に異常に高い状態が続いる状態です。これが現代の一つ目の「現代ストレス」 です。

現代ストレスにより、記憶を司る海馬は常に動き回ることが強いられます、これにより神経細胞は縮小し、鬱や認知症・ストレスに対する耐性が弱まります。さらに、自律神経が心臓の血管を締めつけるので、不眠症や生活習慣病を引き起こすことが研究で分かっています。

さらに、2つ目のストレスは、「マインドワンダリング・心の迷走」と言われているものです。

私たちは日常生活の47%を目の前のこと以外、つまり未来や過去に費やしていることが分かっています。雑念・過去・未来に約半分もの思考を使っているのです。その数、なんと18万7000項目

これが2つ目のストレス「セルフストレス」です。

実は、ストレスのおよそ半分は私たち自身が作り出していたのです。これは現実でなく思い込みや幻想であり、これによっても海馬を弱らせストレス耐性を脆弱にさせていたのです。

さらに

①「現代ストレス」
②「セルフストレス」

が合わさると強力な「キラーストレス」となり、突然死や生活習慣病を引き起こす原因となる場合もあることが分かっています。

マインドフルネスが脳にもたらす効果

マインドフルネスは脳の下記の部分に変化をもたらすと言われています。

• 前頭前野
• 海馬
• 扁桃体

前頭前野は思考や創造性を担う脳の最高中枢、つまり司令塔の部分であると言われています。海馬とは脳の記憶や空間学習能力に関わる部分であり、秘書的な役割を果たしていると言われています。扁桃体は、情動反応の処理と記憶において主要な役割を担うとされ、ガードマン的な機能をしていると言われています。扁桃体が過剰に働いてしまうのがうつ病患者によく見られる状態が、マインドフルネスによってこれが減少する、ということは将来や今に対する不安や恐怖が消え、気持ちが前向きになるということを意味しています。

また、ハーバード大学の研究によれば、幼少期に過剰なストレスを受けた人は扁桃体が大きくなり、大人になって少しのことでストレスを感じやすくなることも分かっています。

現代の刺激の多い社会では、常に前頭前野から指令を出され海馬はストレスに常に晒されています。マインドフルネスとは「今」に意識を向けることによって、常に動きっぱなしの海馬を一休みさせることができる現代の万能薬、と言えるでしょう。

まとめると、マインドフルネスには下記の効果が期待できます。

 ⑴自分自身で作り出している「セルフストレス」 を緩和

 ⑵ストレスにより海馬が弱るのを防ぎ、扁桃体が活発になってしまう働きを抑える

インダス川流域のモヘンジョダロの遺跡の洞窟の中から、およそ4600年前のものだと思われる瞑想をしている人の姿を描いた印章が発見されたことから、瞑想は古代から受け継がれて来たストレス対策だとも言われています。これは都会で暮らしていても、呼吸を通じて自然と繋がることができる現代のストレス対策法なのです。

しかもやり方も簡単で、ただほんの少し自分を見つめる時間を「意識的」につくるだけです。

最後に:どこでもマインドフルネスのススメ

マインドフルネスの効能やその仕組みについてお話してきましたが、この原理を知っているだけでは残念ながら効果は期待できません。マインドフルネスは「実践」が全てです

マインドフルネスに関しては、本や机上の知識は役に立ちません。実践や経験が伴わず、知識だけ増えてしまうと、人間のエゴは大きくなりがちです。その結果、愛と静寂を唱えながら人を批判したり、など心に矛盾が生まれ始めます。そうなるとマインドフルネスの本質からますます離れていってしまいます。マインドフルネスは自身の「実践」 が伴って初めて完結するのです。

自分自身の経験だけでしか真実は知ることができません。

ですので、1日5分でよいので、電車の中や、オフィス、車の中やお風呂の中などどこでもマインドフルネスをぜひ実践してみてください。

そうすれば、あなたは平穏で常に心が満たされた新しい世界を発見することになるでしょう。

(松原よしのり)

 

松原よしのり:ヨガ・マインドフルネス講師

サーフィン中にアナフィラキシーショックを発病し、ヨガで克服。証券会社・芸能事務所を経て、28歳の時、単身インドに渡る。自給自足の生活を体験し持病を完治。海外に5年間滞在。マクロビオティックに出会い、玄米菜食ライフを続ける。スポーツ栄養士学校で学び食事指導も行う。大手IT企業にて夕活ヨガ・朝活マインドフルネスなども行う。
パーソナルトレーナー・タイマッサージ・味噌作り・料理教室・里山農園でイベントなどを開催。

Official Website: https://www.yoganico.com/
テレビ東京「生きるを伝える」出演(2018年6月30日放送
​著書「執着しない生き方」 Amazon Kindle

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