新しいQRコード「rMQRコード」が誕生!
メリットは?
そもそも「QR」って何の略?

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モバイル決済や、連絡先の交換、荷物の発送手続きなど、日々私たちが利用しているQRコード。2022年5月、その派生系である「rMQRコード」が発表され、話題を呼びました。でも、「それで何の役に立つの?」と疑問に思った方もいるのでは?

知っているようで知らない「QRコード」をテーマに、QRコードとrMQRコードの違いや得られるメリット、含まれる情報や工夫などについて詳しくご紹介します!

※ QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です。

QRコードとrMQRコードの5つの違い──QRコードの進化で得られるメリットとは?

従来のQRコード(モデル2)とrMQRコードは一体何が違うのでしょうか?
5つのポイントで見ていきましょう!

1.誕生年


QRコードは愛知県に本社を持つ産業用機器メーカー、デンソーウェーブにて、1992年に開発がはじめられ、1994年8月8日に命名され誕生しました。一方、rMQRコードは2022年5月25日にリリースされ、同月ISOが取得されました。

2.扱えるデータ量


QRコードとrMQRコードを比較すると、QRコードの方が多くのデータ量を扱えます

【QRコード/rMQRコードの扱えるデータ量(最大)】

 

QRコード

rMQRコード

数字

7,089文字

361文字

英数字

4,296文字

219文字

バイナリ

2,953文字

150文字

漢字

1,817文字

92文字

3.大きさ


rMQRコードは、QRコードよりも最短の辺の長さを短くすることができます。その分縦なら横、横なら縦の長さは長くなりますが、これまでQRコードでは対応できなかった細長い空間に設置したりデザイン性を高めたりできると期待されています。

【QRコード/rMQRコードのサイズ(最大・最小)】

 

QRコード

rMQRコード

最大

177セル×177セル

17セル×139セル

最小

21セル×21セル

7セル×43セル

11セル×27セル

なお、「セル」は白黒の四角で構成されるQRコード(rQRコード)の最小単位です。セルを印字する大きさはプリンタの性能に左右されるのですが、「一般的なレーザプリンタの場合で、1セルあたり0.17mm程度が最小セルサイズ(※)」とデンソーウェーブ運営のサイトには明記されています。

※…引用元:QRコードの最小サイズ/最大サイズは?┃コードドットコムFAQ

4.誤り訂正レベルのバリエーション


ひずみや汚れが生じてもデータの復元を可能にする誤り訂正のレベルが、QRコードはレベルL、レベルM、レベルQ、レベルHの4段階用意されていますが、rMQRコードはレベルM、レベルHの2段階だけです。

なお、ホームドア開閉制御システムの実証実験のために訂正率50%の特別なQRコードが開発されたケースもあります。あくまで通常用意されているのが上記のバリエーションということでしょう。

【誤り訂正のレベルと対応する訂正率(%が高いほど訂正能力が高い)】

レベルL

7%

レベルM

15%

レベルQ

25%

レベルH

30%

5.形


QRコードは正方形ですが、rMQRコードは長方形です。

ここまでの内容からわかる通り、rMQRコードがQRコードと比較して卓越しているポイントは”細長い形により設置の自由度が高い”という点にあります。デンソーウェーブ社のプレスリリースでは「医療機器・医薬品の安全管理」「製造ラベルや値札のデータ管理」などが使用イメージとして示されています。

なお、省スペースに設置できるQRコードには2004年11月にJIS規格化された「マイクロQRコード」があります。そのスペックは以下の表の通り。

【マイクロQRコードのスペック】

扱えるデータ量(最大)

数字:35文字

英数字:21文字

バイナリ:15文字

漢字:9文字

サイズ(最大・最小)

最大 17セル×17セル

最小 11セル×11セル

誤り訂正レベルのバリエーション

レベルL

レベルM

レベルQ

マイクロQRコードは、扱えるデータ量がrMQRコードの10分の1程度であり、最も短い辺の長さは同じです。すなわち、マイクロQRコードよりも多いデータ量を扱いながら、QRコードよりも1辺が狭い領域に設置できるのが、rMQRコードなのです。「rM」は「rectangle Micro(長方形マイクロ)」の略であり、ここからもrMQRコードがマイクロQRコードと同様の思想のもとに発展したことが伺えます。

※数値データ引用元:デンソーウェーブ、細長く狭いスペースにも印字できる 長方形型の新しいQRコード「rMQRコード」を開発┃デンソーウェーブ

QRコードの「QR」は何の略?

さて、ここからはQRコードの仕組みについてより詳しく見ていきましょう。

みなさんはQRコードの「QR」は何の略かご存知でしょうか?

答えは、「Quick Response(迅速な対応)」です。今や世界中で利用され、2014年には日本初の欧州発明家賞を受賞するなど、華々しい実績を持つQRコードの中心的な価値に、0.03秒という超高速でのデータ読み取り能力があります。

QRコードの開発者は、デンソーウェーブのエンジニア原昌宏氏です。そもそもトヨタ生産方式の要となるカンバンをバーコードで読み取り管理するシステムを生産していたデンソーウェーブ。しかし、多品種少量生産ニーズが高まり、1次元コードの扱える情報量(最大データ量は約30文字で漢字未対応)に限界を感じたことで、縦横の2次元でデータを表現するコードの開発計画が進められることになりました。

2次元コードの形式はバーコードを縦に重ねる「スタック型」と白黒を格子状に並べる「マトリックス型」に2分され、後者の方が多くの情報を少ないスペースで扱えますが、その代わりに、複雑性から読み込みに時間がかかりやすいという欠点がありました。その解消のため、QRコードには「切り出しシンボル」というキー技術が導入されています。


※筆者作成

上記の通り、QRコードの隅に配置された、3つの四角模様が「切り出しシンボル(ファインダパターン)」です。「1:1:3:1:1」という特殊な比率で黒・白・黒のセルが配置されたこのパターンをまず検出することで、リーダーは即座にデータを読み込み始められるようになりました。さらに中央周辺下部に位置する「アライメントパターン」や、切り出しシンボルをつなぐように白黒のセルが交互に配置された「タイミングパターン」により、QRコードが曲面などに設置されたり、印刷ずれが生じたりして歪んでいても正確に読み取れるように支援されています。

また、QRコードは開発時から「誤り訂正」能力を持ち汚れや破損が生じても読み取りやすいことが指向されていました。そこでものをいうのが「リード・ソロモン符号」という冗長データです。2021年末にはQRコードのセルを徐々に消していく「闇のゲーム」が話題になったことに反応し、デンソーウェーブ社が街をモチーフにした「魔改造QRコード」をツイートにて公開していました。

QRコードを世界に広めた「オープン&クローズ戦略」

「どのような優れたコードを開発しても、社会に広く実用化されなければ企業としては成功とはいえない」

引用元:原昌宏『QRコードの開発と普及』シンセシオロジー 研究論文

これはQRコードの開発者原昌宏氏が産業技術総合研究所の学術誌「シンセオロジー」に掲載した論文の一文です。デンソーウェーブ社は、QRコードの特許を取得し、商標登録を行ったうえでその使用に対するライセンスを無償で提供することにしました。そのうえで、QRコードの読み取り技術をブラックボックス化し、リーダーやソフトウェアを販売することで、シェアと収益の拡大につなげたのです。

QRコードが世界的な技術となった背景には、技術としての素晴らしさだけでなく、その普及を念頭に置いた巧みな「オープン&クローズ戦略」があったということですね。

しかし、日本はQRコード後進国といわれる向きもあることをみなさんはご存じでしょうか?

2021年2月にアメリカユタ州のIT企業Ivantiが実施した調査によると、QRコードを使用したことがある人の割合は日本で約6割。一方、中国やイギリスでは9割近く、フランス・ドイツ・北米も日本を凌駕しています。

引用元:【世界のQRコード実態調査】日本はQRコード「後進国」?中国・欧米が使用率8~9割を超えるなか、日本は6割にとどまる結果に。┃PRTimes

もしかしたらQRコードと意識せずに実は使っているという場合もあるのかもしれませんが、これは日本のIMDデジタル競争力ランキングの低さ(2021年は28位)と符合するようにも思えます。rMQRコードが誕生したのを良い機会として、より積極的に誇るべき日本の技術を使っていきたいですね。

終わりに

「rMQRコード」のリリースというトピックを皮切りに、日本発の世界的データ伝達技術「QRコード」について解説してまいりました。

キャッシュレス化やIoT、非接触の推奨といった社会の波は、QRコードの普及をどんどん進めていくことでしょう。せっかく公共に開かれたこの技術、積極的に利用していきましょう!

【参考資料】デンソーウェーブ、細長く狭いスペースにも印字できる 長方形型の新しいQRコード「rMQRコード」を開発┃デンソーウェーブ
・「QRコードの生みの親」の原昌宏氏、「決済での使用は想定外だった」┃SciencePortal China
・QRコード®とは┃デンソーウェーブ
・原 昌宏, 岩井 誠人, 佐波 孝彦, 菊間 信良『開発物語 日本発・世界に広がる二次元コード:QRコード』┃電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン/7 巻 (2013-2014) 2 号
・原昌宏『QRコードの開発と普及』シンセシオロジー 研究論文
・【世界のQRコード実態調査】日本はQRコード「後進国」?中国・欧米が使用率8~9割を超えるなか、日本は6割にとどまる結果に。┃PRTimes
・谷井将人,ITmedia『QRコードを徐々に消していく“闇のゲーム” 実際どこまで消しても読めるのか<明日から使えるITトリビア』┃ITmedia NEWS
・意外と知らない… 「QRコード」を開発したのは日本人、その知られざる開発秘話<サイエンスZERO┃NHK
・QRコードの最小サイズ/最大サイズは?┃QRコードドットコム
・誤り訂正機能について┃QRコードドットコム
・標準化をビジネスで⽤いるための戦略┃経済産業省
・World Digital Competitiveness Ranking┃IMD

宮田文机

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