About us データのじかんとは?
あなたは初めてネットで買い物をした日を覚えていますか?
世界初のEコマース誕生から約25年。今や書籍や家電、日用品をネットで買うことは日常の一部です。会社やカフェ、移動中の電車内や街でスマホをいじっていてふと気になった商品をポチッと購入した経験がある方も少なくないでしょう。
2019年、グーグルがそんな現代人の消費行動に「パルス型消費」と名付けました。そのプロセスは大きく以前の常識と異なります。
今後さらなる拡大が予想されるパルス型消費の概要や仕組み、購入を促すトリガーについて本記事で押さえておきましょう!
パルス型消費は“何気なくスマホを操作するなかで瞬間的に買いたい気持ちが湧き上がり購入まで完了されるタイプの消費行動”を指します。2019年6月28日にグーグルコンシューマーマーケットインサイトチームが開催したメディア向けセミナーにて提唱されました。
「24時間いつでもどこでも買い物が可能」になり「空き時間にスマホで何となく気になっていることを調べる行為が一般化」した現代。こんな環境だからこそ、瞬間的な電流──パルス──が流れるように買い物ができるのですね。
パルス型消費は性別・年齢に関わらず起こり得ます。むしろ意外にも、EC利用率でみれば高齢者のほうが1980年代前後生まれのデジタルネイティブ世代よりもパーセンテージが高いという調査結果が総務省やインテージ社により発表されています。
出典:小林 伸一郎「買いたくなるを引き出すために – パルス消費を捉えるヒント(1)」┃Think with Google
グーグルによると、パルス型消費はそれまで主流だった消費行動と一定のプロセスを踏まない点で大きく異なります。
「認知し、関心を持ち、欲求が刺激され、記憶して、購買に至る」という行動パターンを示すAIDMA (Attention→Interest→Desire→Memory→Action)や「認知し、関心を持ち、検索し、購入し、拡散する」という行動パターンを示したAISAS (Attention→Interest→Serch→Action→Share)といったプロセスを経て消費者は商品購入に至るという考えは長年マーケティング界で主流となり続けてきました。
しかし、パルス型消費において、上記のような「ジャーニー型消費」の考えは必ずしも通用しないようです。例えばある消費カテゴリーでは、大きな「認知」を得ていた数社に売り上げが集中する傾向が解消されはじめているとか。
知ってすぐに「欲しい!」と購入するのであれば事前の認知は必要ないというわけですね。この流れをグーグルは「 Explore(探索)→ Hit(ピンとくる)→ Action(買う)」という公式でまとめています。ただしこれにはAIDMAやAISASが短期間で生じているだけではないかという指摘もあります。
とはいえ便宜的にせよパルス型消費とジャーニー型消費を区別したほうが、現代のマーケティングにクリアに取り組みやすくなるでしょう。
プロセスを踏まない買い物は以前にも「衝動買い」という形で存在していたじゃないか!
このような意見もあるでしょう。
しかし、パルス型消費は“日常的な消費行動として行われる”という点で衝動買いと異なります。
衝動買いは文字通り衝動的な購買行動で、その対象は主にブランド物や趣味のグッズなど。衝動買いの後に「今月どう過ごそう……」と頭を抱えた経験がある方も少なくないのでは?
それに対し、パルス型消費は食料品や飲料、日用品など日常的な買い物でも頻繁に行われます。購入後の後悔も衝動買いのように生じることはなさそうです。
直感的に行われるパルス型消費。消費者に訴えかけるために何をすればいいのかよくわからない……、と戸惑った方も少なくないのではないでしょうか?
そこで役立つのがグーグルが定性調査により導き出した“パルス型消費を誘発する6つの購入トリガー”です。それぞれ、特徴と反応しやすい商品カテゴリ例は以下の通り。
安全性の高い商品に反応するセンサー。
反応しやすい商品カテゴリはヘアケア、生鮮食品、自家用車など。
自分にぴったりだと感じられる商品に反応するセンサー。
反応しやすい商品カテゴリはヘアケア、生活家電・情報家電など。
コストパフォーマンスの高い商品に反応するセンサー。
反応しやすい商品カテゴリは生鮮食品、生活家電など。
売れている商品や第三者にすすめられた商品に反応するセンサー。
反応しやすい商品カテゴリは生鮮食品、生活家電など。
新商品や知らない商品、珍しい商品に反応するセンサー。
反応しやすい商品カテゴリはビール類・ソフトドリンク、自家用車など。
購入に手間がかからない商品に反応するセンサー。
反応しやすい商品カテゴリはソフトドリンク、洋服など。
6つの購入トリガーには反応しやすさに違いがあり、グーグルのアンケート調査によると最も商品全般において反応しやすさが高かったのはフォーミ―(71%)。その後に僅差でセーフティ(69%)が続きます。逆に最も反応しやすさが低いのはパワーセーブ(35%)、その次はアドベンチャー(39%)でした。
引用元:小林 伸一郎「買いたくなるを引き出すために – パルス消費を捉えるヒント(3)」┃Think with Google
パルス型消費を引き出すためには“自分にぴったりで安全な商品だ”と考えてもらうことが重要なようです。昨今の企業活動ではブランディングやコンプライアンスが重視される傾向にありますが、それはこのような消費者のニーズが敏感に捉えられた結果ではないでしょうか?
24時間どこでもスマホから買い物を行えるようになった現代に生まれた消費行動、パルス型消費についてまとめました。
ネットショッピングの一般化で買い物の仕方が変わってきたことには多くの方が気づいていたでしょうが、体系的にまとめられるとその変化に驚きますよね。
これからの販売戦略を考えるうえでパルス型消費を避けては通れないはずです。マーケターの方もそうでない方も頭の片隅に置いておきましょう!
(宮田文机)
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