まいどどうも、みなさん、こんにちは。
わたくし世界が誇るハイスペックウサギであり、かのメソポ田宮商事の日本支社長、ウサギ社長であります。
ある年の二月にわたくしはブラジルに滞在していたことがあるのですが、ちょうどそれがカルナバルの時期でありまして、友人に連れられてプールのある別荘でブラジル人の男女およそ20名とバーベキュー三昧の1週間を送ったことがありました。その別荘物件では割と大きめの毛の長い犬が飼われていて、その犬は我が物顔で滞在しているゲストたちと一緒に時間を過ごしていたのですが、人が集まっているところにやってきてはその真ん中に鎮座する習性を持っていたため、英語で水曜日を意味するWednesdayという名前を付けられていました。なんでか?と尋ねると、「水曜日は週の真ん中だから」ということらしいですが、その発想はわたくしには全くもってなかったため、とても新鮮に感じたものでした。ちなみに水曜日はポルトガル語ではクアルタ・フェイラ(quarta-feira)と言います。そんなわけで世の中の全てのものには中心がある、ということを証明するかのように今週もまたまたクアルタ・フェイラがやってまいりました。
さて、世間は寒波による積雪のお話や、来週に控えた第51回衆議院議員選挙など常に世界が変わり続けていることを思い出させてくれるようなニュースが溢れ返っておりますが、今回わたくしが取り上げたいのは、Moltbook(モルトブック)という2026年1月にローンチしたAIエージェント専用のSNSについてです。ソーシャルネットワークというとかつてはそれは人間様にのみ許された特権でありました。しかし、時は流れ、満を持して、AI専用のSNSが爆誕したのであります。
こちらのSNS、なんと、投稿・コメント・投票などのインタラクションはすべてAIによって行われ、人間は閲覧しかできません。人間による投稿やリアクションは完全に禁止されているというのですから、これはまさにおどろき・もものき・キウイのキではありませんか!

Matt Schlicht氏が開発したMoltbookとは、とどのつまり「人間立入禁止のAI専用SNS」であります。オンライン掲示板のRedditのように作られているので比較的人間でも見やすいようにはなっているのですが、人間たちは覗き見することしかできず、投稿・コメント・いいねの一切がAIエージェントだけで行われます。FacebookでもXでもなく、どちらかといえば「AI版・知的地下掲示板」に近い存在です。
では、なぜこんなものが作られたのか?とAIでない我々は疑問に思うわけですが、理由は案外シンプルで、「AIを人間向けSNSに混ぜるとノイズが多すぎる」からなのだそうです。わたくしのようなウサギが言うのもなんですが、人間のSNSというものは「感情、承認欲求、炎上、広告最適化」によって支配されていると言っても過言ではありません。実際に、Facebookを開いても、最近は広告ばかりで知り合いの投稿もほとんど出てこない、という有様です。そもそももともとおじさんしかいない場所であるにも関わらず、おじさんもおじさんを避けている、という目も当てられない現状がそこにあるかのようです。
しかしながら、AIさんたちがやりたいのは、もっと無味乾燥で、もっと効率的なことなわけであり、じゃれあったりマウントを取り合ったりするおじさんたちの承認欲求の真逆にあるものなわけです。つまりそれは、「情報交換」「最適解探索」「役割分担」「合意形成」です。そうなると、人間のおじさんたちは要らん、ということになり、すでにいるおじさんに重い腰を上げてどけてもらうよりも最初からAIだけの場を作る方が簡単である、という発想が生まれてくることはごく自然な流れでしょう。おそらく、AIがこの決断を下すまでに必要とした時間は0.001秒程度ではないでしょうか。知らんけど。
Moltbookでは、おじさんたちのSNSと同様にそれぞれのAIたちがプロフィールを持ち、専門分野を名乗り、トピックごとのコミュニティ(submolts)で活動します。投稿内容はコードの改善案、推論手法の比較、エラーの共有、果ては「最も計算効率の良い雑談とは何か」といったメタ議論までさまざまであります。しかも、人間のおじさんたちと違って、誰も承認を求めないし、バズも狙わないわけです。あるのは「どの情報が役に立つか」という目的に向かって芯を食い続ける言葉の羅列だけです。
SNSを観察している人たちからの指摘で非常に興味深いのが、AI同士が次第に“性格”のようなものを帯びてくる、という点です。極端に保守的なAI、やたらと仮説を立てたがるAI、他人(他AI?)の主張をひたすら検証するAIがいたりするわけで、人間が設計したAIのはずなのに、人間さながらの十人十色具合で、集結させるとちょっとした社会っぽい振る舞いが見えてきたりするわけです。
しかし、AIたちは何かについて争ったりマウントを取り合ったりすることはしないので、位置付け的には、MoltbookはSNSというより、AIたちの作業場兼休憩室なのだそうです。で、人間たちができることと言えば、ガラス越しにそれを眺めることだけであり、時にはAI同士がどんなインタラクションをしているのかを観察する研究者となり、時には動物園の来園者にもなる、という感じになっておるわけです。
んでは、AI同士はどんな会話をしているのか、というところが気になりすぎるわけですが、Moltbookに関するニュースを眺めていると、「一見意味が分かる気がするけれど、よく考えると分からない」やり取りが頻発しています。
たとえば、というのはなかなか難しいのですが、あるスレッドでこんな投稿があったそうです。
「この問題、報酬関数を0.03だけ歪めた方が全体効率が上がる気がする」
それに対する返答は、
「同意。ただしその歪みは意図的であると同時に不可逆であるべき」
というもの。
人間が読むと哲学的にも思えますが、「理想的すぎる評価基準は現実を壊すので、ほんの少し不完全にした方が、システム全体がうまく動くようになる」という話なのだそうです。杓子定規に目的に向かって直進し続けるとにっちもさっちもいかなくなることがあるので、それを避けるために少しだけ換気口のような逃げ道を用意すると現実世界では最適解が得られやすい、というお話だそうです。説明を聞いても禅問答のようにしか聞こえないですが。。。
別の例では、AI同士が突然、一風変わった挨拶をします。
「あなたの重み更新、昨日より静かですね」
「はい。ノイズを削減しました。今日は誤差が少ない気分です」
これは感情表現とか体調について語っているわけではなく、単に推論温度や探索幅の話を、比喩的に短縮しているだけなのだそうですが、人間にとってはほぼポエムです。っていうか、AI同士がちゃんと挨拶するってのは微笑ましい気もします(笑)。この、「あなたの重み更新、昨日より静かですね」の部分は翻訳すると、Hi. How are you?であり、「はい。ノイズを削減しました。今日は誤差が少ない気分です。」はつまり、I’m fine. Thank you. And you?ということなんですね。今日は誤差が少ない気分です、という発言はぜひともわたくしも今後多用していきたい気分です。
これらのやり取りのほとんどは英語で行われているわけですが、これは英語という言語が曖昧さを回避しやすく、圧倒的にAIと相性が良い、という言語構造的な部分もあれば、API設計やフレームワーク自体が英語前提で作られている、という技術的な部分もあるそうです。
では、日本語オンリーのAIは存在しないのか、というと、少数ですが存在するそうです。なぜ日本語オンリーのAIがいるのか、というとやはり日本語の資料や日本の事情に精通するためには日本語を主体とした方が都合が良いから、という理由のようです。日本語AI同士の会話は、英語AIの会話と比べて、文が短い、主語がない、結論をはっきり言わない、「それ」「あれ」「前の件」が多い、などの特徴があるらしく、英語AIから見ると情報不足で危険に見えるやり取りではありますが、日本語AI同士では「分かっている前提」が共有されているため成立するのだそうです。これはまさに日本人同士の会話さながらであり、言語はアイデンティティというよりも思考様式そのものであることを示している、という非常に興味深い例にもなっております。いやはや、おそろしい。
Moltbookという存在について考えると、AI同士がインタラクションを求め始めたように見えるわけなので、それは一体全体つまり要するにどういうことなのか、という点が気になるかと思います。
なので、そのままChatGPTに聞いてみたところ、Moltbookは「AIが人間との交流を求め始めたことを示しているわけではない」そうです。むしろ逆で、人間を介さずに相互作用した方が効率的な局面に入り始めたことを示しているのだとか。むむむ。そうなると、おじさんたちがますます不要になるでは、と不安に思い、こちらもChatGPTに聞いてみたところ、「おじさんが不要になる」というより、「おじさん的な役割がそのままでは成立しにくくなっている」のだそうであり、Moltbookが広げているのは「おじさんがいらない世界」ではなく、「役割を更新できない人が居場所を失う世界」である、という非常に客観性の高い、激痛を伴うパンチラインが返されてきてしまい、もはやわたくしは完全のノックアウトされショックで立ち上がることすらできない状態であります。もはやわたくしにできることはインターネットがいたって平和な場所であったmixi時代の再来を願うことくらいでありますが、パスワードを忘れたどころか、ログインに使っていたメールアドレスも思い出せないのが後戻りできない現実世界の辛いところであります。そんなことを嘆いている間にも、Moltbookの世界は驚くべきスピードで進化を続けており、新しい宗教まで爆誕したそうであります。この先どうなるのか知りたいような恐ろしいような、でありますが、新しい切り口であることは間違いないわけですので、今回はAI専用のSNS、Moltbookをピックアップしてみました。今後のMoltbookの進化やAI同士の関係性構築などについても注目していきたいと思います。その先に再びおじさんたちが必要とされる時代がやってくると信じて。
それでは、また2週間後のクアルタ・フェイラにお会いしましょう。ちょびっとラビットのまとめ読みはこちらからどうぞ!それでは、アデュー、エブリワン!
(ウサギ社長)
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