Googleアカウントさえあれば誰でも無料で利用することができて簡単に共有することができる表計算ツール「Google スプレッドシート」。かつては表計算ツールといえばExcel一択でしたが、近年では多くの企業や教育機関などでも活用されています。
しかし、Google スプレッドシートは簡単にはじめられるものの奥深く、使いこなすのに時間や知識が必要です。Googleスプレッドシートに関する様々な技術書や専門書も出版されています。
そうした中でも特に異色の作品が『転生したらスプレッドシートだった件』です。
今回は業界初?のGoogle スプレッドシート技術小説の魅力に迫ります。
「小説家になろう」や「カクヨム」といった小説投稿サイトで一大人気ジャンルとなった「異世界転生小説」。
今作は、Web広告会社でExcel職人として名を馳せた主人公、タカハシが真っ白いタイル張りの「Googleスプレッドシート」世界で目覚めます。そしてその世界ですでに「労働」していたサイトウから衝撃の事実を聞かされるのです。
「GoogleSpreadsheetsは燃え尽きたExcel職人の魂で動いているんだ」
こうしてタカハシはサイトウとともに「クエスト」と呼ばれる表計算処理任務にのぞんで行きます。
作中では、「VLOOKUP関数」や「FILTER関数」、さらには「IMPORTXML関数」までビジネスで頻繁に活用されている関数が紹介されています。
作中で紹介されている主な関数 | どんな関数? |
VLOOKUP関数 | Vは垂直を表す「Vertical」、LOOKUPは「探す」という意味で、その名の通り表の要素を縦方向に探索してくれる関数 検索条件に一致したデータを検索して取り出してくれるため、条件の合うデータを自動で取り出すことができます |
IMAGE関数 | 画像のURLを指定すればセル内に画像を表示できるIMAGE関数 仕事で活用するのはもちろん、読書リストなどを作成する際にも便利です |
SPLIT関数 | 「,(カンマ)」などの区切り文字で区切られた文字列を簡単に列に分割できる関数 |
FILTER関数 | その名の通り、指定した条件に従って絞り込んだ結果を返す関数 |
IMPORTXML関数 | URLとXPathを指定することでWebサイトのデータを収集することができる関数 |
これまでこうした関数を使ったことがない!という人は小説を読み進める中で少しずつ手を動かしていくと仕事で必要となる基本的な使い方がマスターできるでしょう。また、これらをすでに活用している人にとっては共感できるあるある満載でまた別の角度でも楽しむことができるため、初心者にもスプレッドシート職人にもおすすめの作品となっています。
さらに、作中では様々な映画や小説のオマージュや引用が散りばめられており、その一つ一つにきちんと注釈が付けられているため、新たに面白いコンテンツを見つける手引きにもなっているのです。
今作のもう一つの魅力が公式Twitter。このアカウントでは、制作秘話をはじめ様々な情報が発信されています。
そこから垣間見える「独特」な制作過程も非常に興味深いものになっているんです。
『転生したらスプレッドシートだった件』はもともと小説投稿サイト「カクヨム」で連載されていた小説。カクヨムに書きためた作品をベースに、著者であるミネムラコーヒー氏の持ち込みを行って書籍化に至ったそう。ちなみにミネムラ氏は普段、Web関係の会社でディレクターをしているということです。
企画書についてExcelの達人、熊野 整さんにもアドバイスをもらうなどブラッシュアップを重ねた結果、無事技術書を中心に扱う「技術評論社」にて刊行が決まったということです。
持ち込みを考えたときにまずやること
— 転生したらスプレッドシートだった件(公式)@技術評論社から6月22日発売 (@TenseiSheet) May 18, 2020
それは「出版企画書」の作成です🧑💼
最初に企画書を作ったときは、ちょっと技術書寄りのタイトルに寄せてたんですね😅 pic.twitter.com/FcplVmrASe
Googleドキュメントを活用した文章やストーリーの大幅な改稿を経て、いよいよ校正!という時にミネムラさんと担当編集者のかたが選んだツールがソフトウェア開発のプラットフォームであるGithub。
プルリクエスト(変更を他の開発者、この場合だと編集者に通知する)も活用し、スムーズにやり取りできたそうです。
ちなみに下読みまではGoogleドキュメントを主に利用してきましたが、校正はGithubで行います🧑💻
— 転生したらスプレッドシートだった件(公式)@技術評論社から6月22日発売 (@TenseiSheet) May 30, 2020
画像は著者校正と再校、Pull requestひとつであっさり済みます(著者校正の加筆が多く見えるのは主に空行の追加です) pic.twitter.com/Vct6j5q9Wj
また、今作はその制作過程のほとんどをオンラインで行ったそう。その際に、ちょっとしたコミュニケーションはチームコミュニケーションツールであるSlackを、情報の整理や後から見返したいメモなどはチーム向けの共有ノートサービス、Scrapboxを活用したそうです。そのため、メールの活用はほとんどなく書籍化決定までの短い期間だけだったということ。
もう一つコミュニケーションに使っているのがScrapbox、slackはどんどん流れていってしまういわゆるフロー情報、一方Scrapboxは蓄積していくストック情報として使っています
— 転生したらスプレッドシートだった件(公式)@技術評論社から6月22日発売 (@TenseiSheet) June 13, 2020
Scrapbox、著者は仕事全般で使っておりオススメですhttps://t.co/N14oKVNP2M
無事に制作過程を終え、刊行が発表されると、販促も兼ねてその過程を全てTwitterで公開するように。さらにフェーズごとにTwitterのツイートを集めて公開できるウェブサービスTogetterにまとめるなど、より広く読まれる工夫が凝らされています。
書籍の体裁からその制作過程まで新しい試みを続けた今作は、手軽に読めて様々な角度から楽しめる、一石二鳥な作品になっています。スプレッドシートの使い方を知りたい、という人はもちろん、全く興味がなくても面白く読めますのでぜひチェックしてみてください!
また、今作に限らず気になる本についてSNSなどで調べてみると新たな一面を垣間見れて面白いかもしれません。
インターネットを活用しつつ、より良い読書ライフを送ってみてください!
【参考引用サイト】 ・ 『転生したらスプレッドシートだった件』 ガチの技術系出版社から発売
(大藤ヨシヲ)
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