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有事における見えない課題・感情のインサイトをデータから得るために ―WingArc1stの有事における働き方のすゝめ その1

         

世界的にコロナ感染が広がり、今や多くの国でITを活用した対策が取られている。台湾では市民が平等にマスクを購入できるよう、マイナンバーでの規制を試みたほか、「eMask」と言われるマスクマップを構築してマスク在庫が誰でも確認できるような透明性の高い仕組みを作り上げた。このマスクマップは、GitHubで公開された後多くの市民が試行錯誤を行い、改善を重ねて作られたものだということは、すでに周知の通りである。

各国で導入が進むリモートワークもITを活用した対策の1つである。リモートワークは移動時間の節約、時間の使い方の効率化、感染リスクの抑止といった効果を狙うことができ、結果として事業としての継続性が保てるといったメリットもあるが、日本での実施率も全国平均で27.9%(※1)と未だに低い。平時よりリモートワークを取り入れてきたWingArc1stにおいても、全社的にリモートワークをするにあたっては、数多くの課題があった。

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そんな中、WingArc1stが実施したのが、有事の危機管理を行える「teleWArk」プロジェクトである。teleWArkは、メンバーの勤務場所及び勤務時間・体調不良を簡単に入力でき、管理者側でリアルタイムに把握できるという社内インフラだ。オンラインで密にコミュニケーションをとりながらのアジャイル開発で進められた本プロジェクトでは、わずか2週間で第一弾がリリースされた。改善を続ける中で、リモートワーク対応への課題が浮き彫りになり、それを解決していったというが、本プロジェクトで得られた気づきや知見とは何だったのだろうか。その責任者であるWingArc1st 山本 宏樹氏、吉田 稚菜氏に話を聞いた。

当取材は新型コロナウイルスの感染拡⼤リスクを考慮し、オンラインで⾏われた。

有事における急速な変化に対応できるインフラを2週間で構築

WingArc1st 山本 宏樹氏
顧客のデータ活用とデジタル化の促進サービスを提供するDE(Data Empowerment)事業部に所属。これまでは対顧客への価値提供を主眼に置いていたが、今期から自社内業務を改革していくという目標を持っていた。本プロジェクトの企画立案を行なった責任者。

新型コロナウィルスにおけるWingArc1stの対応として、2020年1月では、まずは海外出張をやめよう、といった意見が社内で出ている程度でしたが、2月に入ってからは都内でのコロナ感染者が出始めたため、2月末には原則在宅という会社方針を出しました。この原則在宅勤務に際して、当初はメンバーの勤務状況をエクセルで管理していました。これまで平時においても在宅勤務を実施していたものの、全社在宅勤務移行の1週間後にメンバーにヒアリングしたところ、有事における在宅勤務になってはじめて見えてきた課題がありました。
具体的には「VPNにつながらない」「何回も外出するが、エクセルが共有サーバにおいてあるからリアルタイムに更新できない」「部下やチームメンバーの体調の変化が見えない」といった声が聞こえてきました。そこから、BIツールMotionBoardでメンバーの勤怠状況を管理する、という考えに至りました。3月3日にはSlack上でプロジェクトを立ち上げ、3月16日には全メンバーが入力を開始するというスピード感で作り上げています。 (山本)

エクセルでの運用から、有事における外部環境の急速な変化に対応するべく、自社のBIツールMotionBoardをベースにテレワーク管理のダッシュボードを2週間で立ち上げた。

感じられない感情、見えない課題をいかに組織として吸い上げ、どうケア・解決するか?

3月23日には、小池知事の通知もあり、会社では原則出社禁止となりました。しかし、ボードを確認すると、なんと出社しているメンバーがいたことがわかったんです。私自身も必要性があり1日だけ出社しましたが、その時に「もし誰かが感染したらどうしよう?」と一気に不安になりました。そこで、ボードから出勤状況を1人1人確認して理由を聞いたところ、「家だとVPNがつながらない」「お客様との契約だから必要だと考えていた」という事情やメンバーの考えを聞くことができました。そこから、VPNは社内のIT担当に相談して解決し、お客様とは会話をして出社回数を減らすなどの対応をしてもらっています。私たちの業務は、お客様の環境上にデータがあるため、どうしても現地に行く必要が出てきます。客先作業もZoomやVPNで対応してもらい、どうしても出社が必要なメンバーには時差出勤やマスク等の手配の対策をするなど、メンバーの安全を第一に考えました。コロナの状況が刻々と変わる中、自分たちの意思決定基準も変化しました。当初は、テレワークを効率的・効果的に進めるという基準でしたが、これに加え、安全確保と事業継続という2点に変化していったように思います。また、万が一WingArc1stから感染者が出た場合は過去2週間に遡り行動をトレースする必要があるため、従業員の勤務状況だけでなく、体調についても記録を残しておく必要があると考えました。その点で、MotionBoardは「従業員」「時間」「場所」等の情報の相関を表現するにはぴったりなツールでした。(山本)

情報・フィードバックをトリアージしながら、シンプル・スピードを最優先した有事のインフラ構築の勘所

WingArc1st 吉田 稚菜氏
WingArc1stに新卒入社し、4年目となるエンジニア。最近では顧客とのプロジェクトでプロジェクトリーダーを務めるなど、精力的に業務を行っており、本プロジェクトではチームリーダーの大橋氏の下、入力画面など画面構築を担当。

実際の開発は、企画者である山本さんの概念図とチームリーダーの大橋さんが作ったものを、要件を満たしているかどうか、ZoomやSlackを使って確認しながら開発しました。Slack上でのやり取りがかなり活発だったので、隣で会話しているのとほぼ同じスピードだったと思います。通常、お客様とのプロジェクトでは、1週間に1度の打ち合わせを設け、その中で作ったものを見てもらい、修正点を持ち帰って直していくスタイルが多いので、1日に何回も見てもらったり、改善したりする今回プロセスは、改善のサイクルが早かったと思います。(吉田)

開発者として企画者や運用者からフィードバックを多くもらう中で、意識したのは、全ての要望は受け入れられないので、何を切り捨てて何を受け入れるか、という判断をスピーディに出すということです。平時は時間もあるので代替案を用意できますが、今回は、フィードバックもらったポイントを優先順位付けし、対応したり、当該フェーズでできないものは次期フェーズに回したり、情報をトリアージしながらアジャイルで開発を進めました。(吉田)

企画者・運用者のフィードバックを逐一受けながら、システム要件、重要度から優先順位付けをしながら開発伴うコミュニケーションはすべてSlack上で進められた。

アジャイル開発をする上で重要なのは判断軸としてとにかく出していたメッセージは「スピード」です。裾野を広げて100点を取ろうとすると、どうしても時間がかかる。シンプルでわかりやすく、というのを徹底しました。データの収集ができれば、見せ方は後からでも綺麗にできるので、データの収集を急ぎました。(山本)

構築する上でのポイントは、「直感的に操作できる」「情報量を詰め込みすぎない」「汎用性があり、他社や他部署へ展開できる」という点ですね。この点は毎回意識していました。(吉田)


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取材・TEXT:大越 実 PHOTO:Inoue Syuhei   企画・編集:野島光太郎

参考資料(※1)
緊急事態宣言(7都府県)後のテレワークの実態について、全国2.5万人規模の調査結果を発表
パーソル総合研究所

 

 
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