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現在、企業の営業力改善や組織改革の手段として注目されている「セールスイネーブルメント」。単純に営業力をアップして売り上げを押し上げるというだけではなく、組織全体の意識改善や体質改善にもつながるということで、取り組みたいと思っている企業も増えています。

しかし、実際にどんな手法で行っているのか、そもそもセールスイネーブルメントのために必要なマインドとはどんなものかわからないという担当者も多いことでしょう。

Sales Enablement Conference2019#02

2019年11月27日に開催された「Sales Enablement Conference2019#02 ~セールスイネーブルメントのパイオニアが語る。これからのセールスイネーブルメント~」では、セールスイネーブルメントを推進している企業の担当者を迎え、セールスイネーブルメントの基礎から応用、各社の事例などが赤裸々に語られました。その模様をレポートします。

「売れない理由を消していく」ことで営業力をアップ

Sales Enablement Conference2019#02
ベルフェイス株式会社 清水貴裕氏

このイベントのモデレーターであり司会進行を務めるのは、ベルフェイス株式会社 ビジネスイネーブルメントグループ マネージャーの清水貴裕氏。イベントは、清水氏と各企業のセールスイネーブルメント担当者との対談という形で進められました。

Sales Enablement Conference2019#02
株式会社セレブリックス 今井晶也氏

トップバッターは、株式会社セレブリックスで事業推進室室長を務める今井晶也氏。セレブリックスは企業の営業活動全般を支援している会社で、営業代行から営業コンサルティング、ITツール導入まで幅広く営業をサポートしています。

セレブリックスでは、営業力を高めるために成功例を真似するのではなく、「売れない理由を消していく」という手法を採用しています。そのために一番重要なことが、顧客から「買わない理由を集める」ということ。それらのデータは、営業マン一人ひとりが顧客からヒアリングすることで収集しています。

「営業マンには必ず、では来期予算を組んでいただけますか? と聞きなさいと教えています。そうすると、来期でも予算を組むことは、現時点では考えられない、という回答が出てきたりします。では、お客様が現段階で来期の予算を組みたくないなと感じる理由はどんなところですかと聞くと、買いたくないと感じた真の理由が聞けます」(今井氏)

この「買いたくない」という本当の理由を集めビッグデータとして蓄積し、営業戦略、商品戦略、マーケティング戦略に活用しています。

このように、「売れない理由」を丁寧に分析し、それらを限りなくゼロにすることで、セールスを成長させていくというのが、セレブリックスの基本思想となっているのです。

営業ノウハウをメソッド化した「攻略本」の存在

セレブリックスにおけるセールスイネーブルメントにおいて、一番特徴的なのが、営業におけるノウハウをすべてメソッド化していることです。

Sales Enablement Conference2019#02

セレブリックスでは、営業活動における成功体験および失敗体験をすべて冊子に集約。今井氏によれば「門外不出の営業レシピ。ゲームの攻略本のようなもの」とのこと。この冊子は500ページにも及びます。

さまざまな商材の営業活動を行っている同社には、商材ごとに詳細な営業データが集まります。それらを活かし、ケースごとにどのような営業活動が有効なのかを明文化することで、営業活動の向上を図っているのです。

ただし、これらのデータはあくまでも素材。マネージャーがこれらのデータを基に、いかに営業メンバーを料理していくのか。そこが重要です。

「攻略本と言っているのには理由があります。教科書や説明書は、最初しか読まない。攻略本は問題に直面したときに見るもの。考え方ではなく答えが書かれていなければ意味がありません。もしみなさんの会社で、誰がやっても同じように成果を出すためのメソッドを作るときは、体裁にこだわらず現場の生の声を反映させて、メンバーやリーダーが困ったときに、すぐにそのページにたどり着けるようにするのが大事だと思います」(今井氏)

またセレブリックスでは、このメソッドを定着させるためにオンラインとオフラインを組み合わせた反転式学習を実践しています。eラーニングによる78項目・5時間ほどの動画でメソッドを学び、オフラインによる研修で復習するという形式を導入。これにより、圧倒的に習熟度が高まりました。

オフラインの研修はロールプレイングが中心。このロールプレイングにもコツがあるとのこと。

 

Sales Enablement Conference2019#02

「ロールプレイングは最後までやってはいけません。悪いところがあればそこでいったん止めて、1個だけフィードバックをします。するとその人は、少なくともその部分は次のロールプレイングでクリアできます。これを繰り返すことで、営業活動のなかでお客様が買いたくなくなるポイントがなくなっていきます」(今井氏)

ひとつひとつ悪いところを直していくことで、最終的にすべての悪い部分をなくし、「買いたくなくなるポイント」をゼロにする。そのために、数と体験を徹底的にこなしていくロールプレイングが効果的なようです。

今井氏によれば、セールスイネーブルメントのポイントは「メソッド作り」とのこと。顧客が買わない理由をゼロにする。そのための攻略本を作り、常に最新の状態にアップデートしていくことが、セレブリックスそして今井氏のセールスイネーブルメントなのです。

食べログの「賞賛文化」を導入

Sales Enablement Conference2019#02
株式会社メドレー  山川周氏

2番目に登壇したのは、株式会社メドレー CLINICS事業部の山川周氏。山川氏は2019年8月にメドレーに入社。それ以前は食べログ営業本部で、パートナーの営業支援や、直販組織のマネジメントを担当していました。

メドレーでは、CLINICS(クリニクス)という医療プラットフォーム事業で、オンライン診療やクラウド電子カルテをドクター向けに販売するセクションに在籍。メドレーはセレブリックスとは違い、現場で仕事を覚えていくというスタイルとのこと。

営業同行などをしていくうちに、組織回りやイネーブルメントの観点での気づきがあったという山川氏は、セールスイネーブルメントに着手。その気づきとはどのようなものだったのでしょうか?

「入社してすぐは営業マンと商談同行をしていたのですが、そこから聞こえ感じとれたのは“孤独”というキーワードでした。CLINICSの営業チームは約10人と小規模なのですが、全国の医療機関を営業ターゲットにしています。そのため、出張や外出で社内を不在にすることも多くて、毎日隙間時間も無く、ストイックに商談に取り組んでいる状況でした。データベース上にはセールスのいろいろな指標は見えていますが、それ以上の生っぽい会話が足りないということはすごく感じました。」(山川氏)

Sales Enablement Conference2019#02

それまでのCLINICSは、即戦力を採用して現場に投入していくというスタイル。しかし山川氏は、組織全体で人材育成をする土壌を作ろうと働きかけました。そこで生きたのが、前職の食べログでの経験です。

「食べログでは賞賛する文化がありました。象徴的なものが“デイリーありがとう”というものです。誰々さんのアドバイスが受注につながりました、ありがとうという気持ちを、ノウハウとともに一緒に伝えるということを朝会で行っていました。メドレーでは、マネージャーも現場に出ていたので、週に1回の営業会議の場でも営業チーム全員が揃うことが難しいという状態でした。」(山川氏)

そのような状態で山川氏が行ったことが「ナレッジの共有」です。山川氏入社以前は、1週間に1回、1時間の会議を行っていましたが、ビデオ通話などを使っても全員が集まるかどうかはわからない状態。会議ではマネージャーがメンバーに対して案件の確認をする程度というものでした。

山川氏は、まずこの会議自体を変えました。

「この会議を、1on1を30分、チーム会議を30分に2分割しました。1on1のほうは、案件確認というよりはネクストアクション、どうすれば受注できるかといった思考を深めるような会話や、そこから見えてきた課題に対してどういうトレーニングをしたいと思う? というように、プロセスに向かうコミュニケーションをやるようにしました」(山川氏)

この1on1から生まれた成功体験をチーム会議に共有することで、チーム全体のナレッジとし、イネーブルメントにつなげていったのです。

商談をスムーズに進める「もぐもぐタイム」

ドクターは、基本的にとても忙しい職業です。そのため、「ここで決めなければ」という場面が多く訪れます。そのようなときに絶対受注するための施策として山川氏が導入したのが「もぐもぐタイム」です。

「カーリングの選手が競技中におやつを食べていたのが話題になりましたよね。要はブレストです。だいたい3人から4人、1案件45分で行います。このとき、結構エネルギーを使うのでおやつを食べながらブレストをしようというものです」(山川氏)

もぐもぐタイムの目的は、商談相手の状況をより深く理解することで、絶対的な自信を持って商談に挑むこと。リラックスした雰囲気でのブレスト内で出た、商談相手の情報や営業トークなどのアドバイスが、営業時のアシストとなり、商談がうまくいきやすくなるとのこと。

変化にときめくことでチャレンジができる

山川氏は、会議の仕組みを変えることと同時に、課題解決型の研修の導入も行いました。山川氏曰く「座学×実践」というやり方をとっているとのこと。もともと即戦力の人材が集まっている現場では「知っているからできる」というのが、成功につながる大きな要因のようです。そのために、PSSに基づいた課題解決営業スキルの習得を徹底的に行い、「できている」「やっている」という状態から「無意識でできる」という状態まで引き上げる取り組みを行っています。

また、セールスフォースダッシュボードも公開。受注件数や目標に対する着手見込み、担当者ごとにアポイントのキープ率などのほか、特徴的なのが従来の受注率の数値を、それぞれカテゴライズして算出しているところ。

「営業の評価は、売り上げの金額と件数で評価することが多いのですが、我々は期待されているアポイントメントに対してどれだけ打ち返しているかという見方をしています」(山川氏)

具体的には、これまでの受注率を、対面か非対面か、決裁者なのか非決裁者なのか、インバウンドリソースなのかアウトバウンドリソースなのか、それぞれのカテゴライズの平均受注率を出しています。そのカテゴライズごとの受注率は、メンバーのポテンシャル指数となります。つまりメンバーのカテゴリごとの受注率を明らかにすることで、得意なカテゴリ不得意なカテゴリがわかるのです。

それだけではなく、期待値と実際の達成率のグラフを並べることで、もっとがんばろうという気づきを与えることにもなります。

山川氏にとって、セールスイネーブルメントは「変化にときめくこと」だそう。

「変化にときめくことでチャレンジができて、そのチャレンジから成長や賞賛が生まれるという経験が、僕の中でとても心地よいものでした」(山川氏)

タイムリーに正確な情報を入力することが重要

Sales Enablement Conference2019#02
ウイングアーク1st株式会社 久我温紀氏

最後の登壇者は、ウイングアーク1st株式会社のマーケティング統括部統括部長である久我温紀氏です。 久我氏の話のメインは、セールスイネーブルメントで活用しているダッシュボードに関して。
ウイングアーク1stでは、セールスフォースに入力したデータをMotionBoardのダッシュボードで可視化しているとのこと。特徴的なのは、商談別に進捗状況を可視化しているだけではなく、期末の数ヶ月前にはその期の受注の着地が予想できるという点。すでに6年ほど運用してデータを積み上げてきたため、その精度は非常に高く、ほぼ外れることないそう。期が始まる前には、期末の営業の売り上げ着地を大まかに予想出来るため、対策を早めに実施することができるそうです。

Sales Enablement Conference2019#02

「期末の決算が終わったときに、目標達成したときでも、翌期のパイプラインがスカスカということがあります。営業はこのような自転車操業に陥りがちです。勝ち続けているセールスの方とお話ししていると共通している点は、見込客や見込商談を沢山もっている点です。この部分だけは必ず一致します。平均的な営業マンは、期末に売り上げが上がっていく傾向にありますが、できる営業マンは逆算思考で計画的に受注をつくっていくため、期末に追い込むことはしません。期末に行くに従い受注量が減っていく傾向にあります。期末は既に翌期のパイプラインの仕込みに入っているということです。」(久我氏)

「美しいパイプライン」を継続するために重要なことは、タイムリーに正確な情報を入力すること。これに関してはとにかく徹底しているといいます。ウイングアーク1stの営業はおよそ100名。年齢も22歳から63歳までと幅広い年代となっています。

このような組織でデータドリブンなやり方を浸透させるには、かなり苦労があったものと思われます。久我氏が最初にやりはじめたことは「ミニマムスタートさせる」ということです。

「2006年頃にSFAを導入しましたが、2014年の状態でも定着はしていませんでした。最初に行ったのは、予算、受注、見込商談が把握できるだけのシンプルなダッシュボードでした。また同時に予算報告のExcelを廃止もしました。これにより予算報告するためにはSFA入力が必須になります。ただ当然、定着前の時期は、営業の活動の一部案件しか登録されませんでした。そのため、意識的に会議の中でダッシュボードを見ながら会話すると、当然予算に対して見込商談が不足している状態を多々ありました。
しかし、予算ギャップをどう埋めるか尋ね、会話することを通して『実はこういった案件がある』となり、追加の案件や情報が出てきます。それを、その場で案件を入力してもらいました。こうしたコミュニケーションを繰り返していく中で、案件登録を習慣化し、定着化を図りました。案件登録が進むと、案件の進捗状況や課題などの会話が行いやすくなるし、蓄積されたデータから様々な分析ができるようになります。」(久我氏)

日常の会議でもダッシュボードの情報を活用しコミュニケーションを行い、入力の働きかけを行うことで、データを入力する習慣づけをさせたというわけです。
 さらに、最初から大量のデータを入力させようとすると、面倒くさがってやらない人も出てきます。そのための工夫も。

「また、SFA導入時に使わない入力項目が多かったため、入力項目を必要な最小限の内容に削減しました。入力が習慣化したところで、定着の状況を鑑みながら、必要性が出れば新たに入力項目を追加する。 この運用が組織的に定着し「普通の状態」になれば、新しく加わったメンバーも抵抗感なく定着していきます。」(久我氏)

毎日の少しずつの変化が見えることで
モチベーションが上がる

Sales Enablement Conference2019#02

ウイングアーク1stでは、「WAF(WingArc Forum)」という1万人規模を集客するイベントを開催しているのですが、その集客管理もダッシュボードで行っています。このようなプロジェクトでは、メンバーのモチベーションアップも重要になります。その辺りはどのようにしているのでしょうか。

「イベント集客数のダッシュボードは集客目標値と日々の推移というシンプルな棒グラフのものです。毎日一度最新の集客状況をbotを使い、Slackに配信しています。毎日の変化が直観的に分かります。組織の人数が増えると、自分一人ががんばっても意味がないと思ってしまいがちなのですが、昨日より少しでも全体に変化があると自分の活動やメンバーの活動が集積することで大きな目標に対して確実に歩みがあることを実感できます」(久我氏)

自分がやったことの成果が組織成果に繋がっていることが見えるようなものを作ること。それがモチベーションアップにつながります、営業予算も同様に朝8時には最新の営業進捗が社長や社員全域に配信されます。

データで人を殴ってはダメ

Sales Enablement Conference2019#02

データを収集して可視化するにあたり、久我氏が一番大事にしていることは「組織や個人の目的」です。久我氏は、仮説のダッシュボードをよく作るそう。その仮説ダッシュボードでは、予想と違った結果が出ることもままあります。しっかり出来ていると思っているメンバーがデータでみると実は結構課題がある。ということもしばしばありました。

しかし、そのズレでメンバーを叱責することはしないようにしているとのこと。

「まずはズレるという感覚を持ってもらうことが重要です。このズレに関しては明確に伝えます。データは事実のため、とても強力な影響力をもっています。データで人を殴りつけるのは攻撃力が強すぎるので、絶対にしてはいけません。これ、ズレてるよね、なんでだろうね、どうしたらいいかな、という会話をしていくことが重要です」(久我氏)

また、見え方にも気を遣っているそうです。

「ぱっと見た時に直観的に入ってくるようなビジュアライズでないと人間はストレスを感じます。可視化は目的ではなく、手段です。可視化した結果、行動に移していくことが重要です。どうやったら一目でダッシュボードの内容が伝わるかということをずっと考えて画面を作っています。データの単純な可視化であれば大抵は1~2時間で完了しますが、画面設計には多いときで半日ほど議論していたことがあります。それでも結局気に入らず後でまた手直しするということを繰り返しています。また、ダッシュボードが多くなると見に行くのが面倒になるので、botに必要なデータをリクエストしたらダッシュボードのデータやグラフとコメントが返ってくる仕組みを構築しました。予算の進捗状況をきけば返ってきますし、着地予想を聞けば現在のパイプラインを過去の推移データを元に予測して返すことや、顧客名で検索をすると、その顧客の企業情報や商談履歴など関連するすべての情報を引っ張って来てくれます。」(久我氏)

かなりデータを使いこなして、セールスイネーブルメントに取り組んでいる印象ですが、久我氏にとってセールスイネーブルメントとは何なのでしょうか?

「再現可能な成功のスケールです。再現性のある成功をいかに組織全体に浸透させていくか。それによって組織力が上がっていきます。トップセールスが見ている視点や行動特性、それをガイドしてくれる仕組みがダッシュボードだと思います。」(久我氏)

中途採用の人材に対する研修は?

Sales Enablement Conference2019#02

最後は、登壇者3人+清水氏によるトークセッションです。ここでは、会場からの質問に答える形で、4人がクロストークをしていきます。ここではQ&A形式でお送りします。

Q メンバーのセールス研修について、第二新卒、トップセールス、引き抜きなどレベル感がバラバラだと思いますが、それぞれどのような研修を行いますか?

今井氏 結論から言えば、全員に一定の研修を受けてもらいます。セレブリックスは営業代行の会社ですが、9割が営業未経験。営業の経験よりはポテンシャル採用を大前提としているので、営業未経験の方々にもセレブリックスの持っている顧客開拓メソッドを短期間で習得してもらい、トップセールスのエッセンスを身に付けてもらうということをやっています。気をつけているのは、同じ教育、同じ講師というところをぶらさないところです。

山川氏 メドレーでは、入社時の研修として会社や事業部理解の場がありますが、セールスに関してはドキュメントを読み込んだり、商談同行やベルフェイスの動画視聴が中心です。食べログでは1ヶ月間のプログラムが組まれていて、セールス未経験と幹部候補が横並びで受けるとこはありましたね。

久我氏 中途採用の方はトレーニングとかセミナーがあるのでそれに参加してもらって、製品の情報やプレゼン内容などを研修してもらいます。新卒に関しては専用のカリキュラムに加え、インサイドセールスを全員経験いただきます。

清水氏 ベルフェイスとまったく一緒ですね。インサイドセールスは全員やるというのが基本です。もちろんエンジニアなどは別ですけど。

Sales Enablement Conference2019#02

Q インサイドセールスを全員通過するということですが。ジュニアメンバーの成長期間としての側面が強いのでしょうか?

清水氏 ベルフェイスではもちろんジュニアメンバーの育成という面はありますが、セールスフォースをしっかり触れる素養を養ったり、インサイトセールス支援のために知ってもらうという要素が強くあります。

久我氏 インサイドセールスを経由するとセールスフォースなどのSFAやCRMツールも当然ですが、セールスが使うべきその他のITツールや最新のセールスリテラシーの基礎が結構学べますよね。私は営業を10年以上やっていましたが、訪問の時の移動時間って無駄だと感じていました。移動時間は少ない方がいい。お客様との打ち合わせに2時間確保すると、2時間丸々話しなければならないという気になりますが、テレビ会議だったら要件が終わったらすぐ終われるので、とても効率的です。そして当然移動時間は減る、そういうことが自然に身につくので、インサイドセールスを経由させることは重要と感じています。

日報は上司と部下のコミュニケーションツール

Sales Enablement Conference2019#02

Q セールスのデータを集計するためのインプットに何か工夫をしていますか?

今井氏 セレブリックスは、日報にはすごくこだわっています。なぜかというと、セレブリックスは営業代行会社ということで、クライアントに代わって営業を行っています。つまり、日報は成果物なのです。なので、単純な成果の記録というだけではなく、気づきということにすごくこだわっています。たとえば、できなかったことにどういうトライをして、どういう結果が得られたかというところであったり、実験活動の内容などは明確に記載します。また、最終的に月間のアウトプットと紐付く形で、今担当している業界の傾向としてはどういうところがネックになっているかとか、どういう理由で受注になっているかということを、数字などの定性情報として表示されるようにしています。

久我氏 私が営業責任者をやっていた頃は日報や予算報告は一切は廃止しました。SFAに入力すると自動で日報や週報を生成する仕組みを構築しました。またダッシュボードを見れば、1週間の営業成果として受注を何件獲得して、何件訪問したか、商談は何件進捗したのか、全部わかるんです。営業は活動履歴はあるけど新規案件登録がなく受注もなく既存商談も進捗していないということだと、活動内容がおかしいと直ぐに分かります。データで捕捉して、データで会話して、データから行動に移していきます。

Sales Enablement Conference2019#02

清水氏 ベルフェイスでやっている日報は、感情のためにやっています。マネージャーが部下に対して自分の想いを伝えるって難しいんです。うちの日報は最後に今日の一言のようなスペースがあって、僕が率先してふざけるわけですよ。すると、僕がどういう人であるかとか、チームの雰囲気がほぐれたりします。

今井氏 日報でどうアウトプットするのかも大事なのですが、アウトプットしてもらった内容にフィードバックするということがすごく重要だと思っていて。見ていないとメンバーから思われた瞬間、形骸化するというか、何なら悪口に変わります。そうなるとイネーブルメントなんか不可能になります。やらされているということになってしまうので。日報は、本人が記録を残して上司がアドバイスをするという、お互いの意思疎通のツール、媒介をしてくれるものにしていかないと無意味になるので、そこに気をつけたほうがいいと思います。

営業力はどうしたら上がるのか?

Sales Enablement Conference2019#02

会場からの質問コーナーの後は、清水氏を中心としたクロストークに。清水氏から「営業力はどうしたら上がるのか」という議題が上がりました。

山川氏 僕は成功体験を見せてあげることに尽きるかなと思っています。いわゆる営業教育のときに、マネージャーが新人と同行するとき、マネージャーが一番すべきことは受注するところを見せることだと思います。逆にメンバーに任せて終わって、その後に喫茶店でフィードバックするというのは、やってはいけないなと思いますね。

清水氏 僕も同じ意見です。自負が大変大事だと思っていて。以前、ベルフェイスの新卒新人に展示会に出てもらったことあるのですが、その前後でアポ率が変わったんですよね。展示会で100件とかお客さんの前でプレゼンテーションをしていたので、自分の話が伝わっているというイメージができるようになるんです。スキルは1mmも変わっていないのかもしれませんが、そういう自負によってアポ率や営業力は変わるという経験がありました。

今井氏 その人に応じて営業力を上げるポイントは違うと思うのですが、代表的なものをふたつ挙げさせていただくとすれば、まずは前提を変えられるスキルや能力が必要だと思います。買わないことが前提なので、その前提を変えるために逆算してプロセスを設計できる力と、お客さんの事業や理想を描く想像力が必要だと思います。もうひとつは、お客さんの事業や未来を想像するためのビジネス力の強化です。やはりお客さんとしては儲かると判断できるものに投資するので、その業界の最新動向などを分析して、その商材が必要な理由を見つけるということが大事だと思います。

そして最後は、「営業の仕組みや組織作りにおいて重要なポイント」というテーマに。これは全員が同じ意見でした。

Sales Enablement Conference2019#02

今井氏 いろいろありますが、ひとつだけに絞るなら、それを推進する担当をちゃんと置くこと。責任の所在を明確にしなければ優先度が下がると思います。

Sales Enablement Conference2019#02

山川氏 かぶりましたね(笑)。やはり専任者は重要だと思います。僕がその立場でやらせていただいているのですが、まあまあ人数のいる会社のなかで、今はCLINICS事業部以外の事業部にもイネーブルメントの動きが出てきています。今後はセールスイネーブルメントからビジネスイネーブルメントの領域にちょっと取り組んでいきたいなと思っています。

Sales Enablement Conference2019#02

久我氏 一緒ですね。イネーブルメントをやるのであれば、イネーブルメントに継続投資する、つまり組織化して一定数の人員や費用を投下し、かつ継続的なPDCAを回していく必要があると考えます。

Sales Enablement Conference2019#02

清水氏 僕は、すべて売り上げから考えるというのがひとつ。売り上げか利益を上げるための施策なので、データがあればいいわけではないのですよね。すべては売り上げに紐付いているかどうか。もうひとつは、すべてカスタマーサクセスに着地するというのが大事だと思っています。先ほどと同じですが、いくらデータを集めても、カスタマーサクセスに意味がないものなら、そのデータは必要ないと思います。

久我氏 営業組織の役割は、事業戦略や経営戦略、組織戦略によって変わります。自分たちの組織の役割は何なのか、事業のバリューチェーンのなかで自分がどこにいるのか、現在の経営戦略において、営業という存在が重要であるということを経営が理解し、それをメンバーに伝えていく必要があります。例えばカスタマーサクセスという役割が組織化されている企業では、営業の役目はいかにその後のLTVを拡大するか、といったKPIを設定されている組織があります。世界的な大手IT企業では、営業には販売成績だけでなく、その後の顧客の利用率を一定数評価にいれています。
つまり企業がメッセージとして「売る」だけでなく、「顧客の成功」を営業に課しているということになります。
無理やり売りつけてOKということはなくなり、自社の製品価値や提供価値がフィットする顧客にしっかりとした提案をしなければ、この目標は達成することができません。こういった経営的な意図や戦略を考えずに全体の組織設計をしていると、全部崩れていきます。そして日々事業環境やそれに伴う戦略は変化するので、組織において完成形などありません。組織状態を把握し、常にチューニングし続けていくしかないと思います。

2時間にわたるトークセッションは以上で閉幕。セールスイネーブルメントの話でしたが、単純に営業力を強化する、組織の売り上げや利益を伸ばすという話ではなく、人材育成や企業組織のあり方といったことにも通ずる話が多く、たいへん参考になりました。

セールスイネーブルメントは、企業にとってこれから重要となる取り組みです。自社の営業部門を改善する際の参考にしてください。

(取材・TEXT:三浦一紀 )

 

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